29歳・多趣味の男性ゲスト、6年通う「爪目的」の常連
第5回のゲストは、永田さん。自身を「29歳の男性で、車、カメラ、ゲームとか趣味がたくさんある人間」と紹介します。
いつかさんと永田さんの出会いは2020年ごろ。就職で広島に帰ってきてすぐの、22歳の頃だったといいます。ちょうどお店が始まったばかりのタイミングでした。
僕が就職で広島に帰ってきてからすぐぐらいに、お店はやり始めました。
以来6年、途切れることなく通い続けている常連客です。今回はその「通い始めたきっかけ」から話がひもとかれていきます。
看板の「500円」と、格闘ゲームで痛む指先
通い始めた理由は、レクト内のわかりやすい場所にあったお店と、店先に出ていた「爪先を整えるの500円」という看板でした。
(お店が)レクトの中で分かりやすい場所にあって、中の様子が伺いやすいっていうのと、店の前に爪先整えるの500円でよっていう看板が出てたんですよ。
もう一つの理由が、趣味の格闘ゲームでした。永田さんはアーケードコントローラーという、ボタンを押すタイプのゲームをしています。
自分で爪を切るときは深爪などの失敗が多く、ボタンを押すときに痛みを感じていたといいます。そんな失敗のさなかに、あの500円の看板を思い出したそうです。
失敗しながらふと思い浮かべたのが、なんか500円で整えてくれるってあったよなみたいな。一回行ってみるかって言って。
整えた翌日に大会優勝。「願掛け」になった爪
一度お店を見て、後日あらためて来店。すると、そこから思わぬ変化が起きたと永田さんは語ります。
その後からめっちゃゲームの調子が良くて。ボタンの押しやすさとかあるんですよ、本当に。
爪を整えた後、格闘ゲームの大会で優勝したというのです。この事実は、いつかさんも知らなかったと驚いていました。
それ以来、永田さんにとって爪を整えることは、ゲームの調子を左右する「願掛け」のようなものになりました。大会は土日にあることが多く、その日の夕方に「いつか行こう」と考えるようになったそうです。
もう願掛けじゃないですけど、大会がだいたい土日にあるんで、その日の夕方ぐらいには(爪を整えに)いつか行こうみたいな。
操作で使うのは右手のほとんどの指。左手はスティックを握るため、右手の指先の状態が特に重要になります。深爪すぎても長すぎてもだめだといいます。
押すのは基本的に右手の親指以外、人差し指、中指、薬指、小指も。深爪するとまた違うんですよ、本当に。長すぎてもやだし。
「身だしなみ」ではなく「道具」から始まった習慣
もともとは身だしなみのためでもなく、あくまでゲームのために整え始めた爪。ただ、続けるうちに気持ちは少しずつ変わっていったといいます。
最初はそうだったんですよ。でもやっぱり、ずっとそれに慣れていくと、指先が綺麗なのはいいなみたいになって。
スマホを触るときなど、日常の場面でも「深爪で汚いより、整っているほうがいい」と感じるようになったそうです。当初の実用一辺倒からの変化でした。
いつかさんたち店側は、若い永田さんが来てくれたことを「意識の高い最近の若者」なのかと受け止めていたといいます。実際のきっかけとは大きく違っていました。
(意識高い系)ではなかった最初は。
続けるうちに、周りから褒められる経験も出てきました。職場やプライベートで、女性から「爪先綺麗だよね」と言われることがあったそうです。
女の子とかに爪先綺麗だよねって褒めてもらうことがあるんですよ。あ、見られるんだみたいなのは。
男性がネイルサロンに通うこと、年齢より先にある壁
男性客としてネイルサロンに通ううえで、永田さんが最初に意識したのは年齢よりも性別だったといいます。
そもそも年齢より先に性別がありますよね。ネイルサロンで男性が行くっていう。
入りやすい店構えでなければ足を運べなかったと振り返ります。初回は電話で「男子でもいいんですか」と確認したうえで来店したそうです。
電話で聞いたんですよ。男子でもいいんですかみたいなことを聞いた覚えがあります。いいですよって言ってもらえたから、じゃあ行ってみようみたいな。
通ううちに、奥さんと一緒に来る人など、他にも男性客がいることに気づき、不安は薄れていったといいます。
一方、店側にも戸惑いはありました。いつかさんは、年の差もあり、初めはどう話しかけていいかわからなかったと明かします。
私たちはちょっと年の差もあるし、どんな話しかけていいんだろうみたいな。無口なんかなと思ってたり。
永田さん自身も、ネイルサロンが初めてで、美容室のように話すものかどうかもわからなかったといいます。距離が縮まったのは、お互いに少しずつだったようです。
僕もネイルサロン自体初めてだから、髪切る時に美容師さんと話すみたいな感じで、喋るかどうかすらも僕もわかってなくて。
2週間に一度。居合と武道が求める爪のケア
今では2週間に一度は通うようにしていると永田さん。その理由には、ゲームだけでなく武道もあります。
これ僕ほんと油断したら即割れるんですよ。
永田さんは居合という武道もしています。日本刀を振る際、素足で激しく動くため、足の爪に負担がかかって割れることがあるといいます。
居合、武道ですよ。日本刀を振ったりしてる時に、足の爪の方が負担を受けてビリッて割れたりするんで。最低でも2週間に一回は行っておきたいなと。
この日も、週末に旅行を控えて来られなくなるため、平日ながら仕事が早く終わったタイミングで来店したそうです。通うことは、すでに生活のルーティンに組み込まれています。
自分で爪を切ることはもうなくなり、「使い方を忘れたんじゃないか」と笑うほどでした。
色は塗らない。「整える」だけで気持ちがリセットされる
爪を整えるだけでなく、色を塗ってみることには関心がないのか。いつかさんの問いに、永田さんはゼロではないと答えつつ、まだためらいがあると打ち明けます。
塗る、色を付けるってなると、どういう目で見られるんだろうみたいなのは、ちょっとまだあるかもしれないですね。
そのため、今は長さと形を整えるだけ。それでも「わかる人はわかる」ほど、仕上がりは違うと感じているそうです。
永田さんにとって、爪を整えることは実用面だけの行為ではありません。気持ちの切り替えにもつながっていると語ります。
(爪を整えると)やっぱりリセットされるんでしょうね。大会に行く前には絶対爪切らなきゃと思ったぐらいなんで。
握力や力の伝わり方に爪が影響すると永田さんは確信しています。居合の前、ドライブの前にも整えておきたいといいます。
この習慣はこれからも続けていくつもりだと永田さん。ゲームの先行きはわからなくても、居合は年を取っても続けていきたいからこそ、素足で激しく動く自分のために爪を整えておきたいと語りました。
まとめ
永田さんにとってのネイルは、おしゃれや身だしなみではなく、格闘ゲームのボタン操作や居合という「やりたいこと」を支える道具の手入れでした。実用から始まった習慣が、いつしか気持ちをリセットする時間へと育っていったことが伝わる回です。
- 通い始めたきっかけは「爪先を整える500円」の看板と、格闘ゲームでのボタンの押しにくさだった
- 爪を整えた後に大会で優勝し、以来「大会前に整える」ことが願掛けのようなルーティンになった
- 男性がネイルサロンに通ううえでは、年齢より先に性別の壁を意識し、電話で確認してから来店した
- 居合で足の爪に負担がかかるため、2週間に一度は整えるほど生活に欠かせない習慣になっている
- 色は塗らず長さと形を整えるだけだが、握力や力の伝わり方に影響し、気持ちのリセットにもなっている






