ゲストからの逆質問で始まる「喫茶店トーク」
今回はローカル企業経営ラジオに山野千枝さんを引き続き迎えた回です。番組は京都の桺本頌大さんと鹿児島の小平勘太さんが、事業承継と経営の現実を語る内容です。
前回の収録の感想を聞かれた山野さんは、緊張していた最初とは違い、収録を忘れるほどの雰囲気だったと話します。
なんかもう緊張してたんですけど、最初は。でもやっぱりなんかすごいホーム感で、収録してることを忘れました、何度も。
本当ダメですね。喫茶店トークでしたね。
収録前の空き時間で、山野さんから相談したいことがあると聞いた桺本さんは、そこから話を始めることにします。
「環境をつくる団体」が抱えるコミュニティの難しさ
山野さんはまず、ベンチャー型事業承継という団体の立ち位置を説明します。コンサル会社ではなく、後継ぎが挑戦を続けられる環境をつくる団体だと言います。
ベンチャー型事業承継っていう団体は、「後継ぎが挑戦を重ね、続けていける環境を作る」っていうことをすごく大事にしてるんですね。
その環境づくりの手段としてオンラインコミュニティも試したものの、うまく機能しないと山野さんは悩みを打ち明けます。
その自走していくようなコミュニティにするのってすごい難しかったりとか、駆け出しの後継の人たちの課題と、本当に世代交代が目の前になったりとか、ファイナンス上の問題を抱えてたりとか、皆さんの課題がまちまちなんですよね。
後継ぎの置かれたステージや環境によって課題がまちまちで、ふわっとしたオンラインコミュニティでは何も解決できないと感じていると言います。
さらに山野さんは、自分自身が群れるのが苦手な性格だと明かします。目指すのは経営者団体ではなく、必要なときによりどころになる場所だと話します。
子供の頃からもう団体行動とかマジ無理で、修学旅行とかで意図的にはぐれるタイプだったんですよ。
必要な時に、その人が必要な時によりどころになるような場所を作りたいっていうのをずっと考えてるんですけど。このテクノロジーとかの力を借りて、どんなものができるんでしょう。
テクノロジーの力を借りて、後継ぎがよりどころにできる環境はどうつくれるか
テクノロジーでは解けない「心理的安全性」の壁
相談を受けた桺本さんは、これはAIやテクノロジーで解決する話ではないのではと返します。個人に変化を起こすきっかけをどうつくるかの問題だと捉えます。
なんかテクノロジーではない気はしますね。AIでどうこうみたいなことではないですよね、これは。
山野さんも、後継ぎが抱える課題には家族のことや「恥部」のような話も多く、ワイワイしたコミュニティでは相談できないと補足します。
心理的安全性がある中じゃないと絶対言えない話とかすごい多いんですよ。家族のことであったりとか、恥部みたいな話とかも多いし。
メンター制度を設けて体験のシェアで悩みを解決しようとしているものの、それでもよりどころとしては作りきれていないと山野さんは言います。
鹿児島の「湯之元後継ぎ合宿」という一つの答え
桺本さんは、その環境づくりの一つの形が小平さんの取り組みでできている気がすると指摘します。鹿児島の湯之元に全国から後継ぎが集まってくる合宿です。
小平さんは、一日ずっと経営の話をして、最後にバーベキューを食べて温泉に入って帰る会を、今年だけで4〜5組受け入れたと話します。
一日ずっと経営の話して、最後バーベキュー食べて温泉入って帰るみたいなのがいっぱい、四、五組来たかな。今年だけで。
山野さんは、その5〜6人の会で胸のつかえを吐き出す空気を最初からつくれているのか、と踏み込んで尋ねます。
その胸のつかえみたいなものをこう吐き出す空気を最初から作れてるもんなんですか?その五、六人の会って。
小平さんは、それは意識していると答えます。まず自分の自己開示から始め、ラジオでも言えない大変な経験を先に話すのだと説明します。
まず僕、自己開示からスタートしようか。こんなことを考えてずっと経営してきたって話をして、言えない大変なことがいっぱいあるから、ラジオとかでも。
その後は一人ずつの壁打ち会に移り、今いちばんの課題をみんなで相談します。15分の予定が1時間に伸びることもあると言います。
小平さんは、AIの時代には平均的な答えはすぐ手に入るものの、それでは個人の納得は得られないと話します。だからリアルな場やローカルツアーの機会提供に意味があると言います。
「言われたら断れない」ツアーをコンテンツ化する
小平さんは、環境を変えるツアーという形を提案します。後継ぎは「言われたら断れない」人が多く、信頼できる社団が声をかければ参加してもらえると言います。
言われたら断れない後継ぎは多いので、他の知らない旅行会社に言われたら絶対やらないと思うけど、社団が言うんだったらまあやりますよみたいな。
さらに小平さんは、社団がハブになって支援先を紹介する構想も語ります。承継に強い会計事務所や弁護士とアライアンスを組み、社団が窓口になる形です。
山野さんは、実際にそうした場面が起きていると応じます。先代が急に亡くなり、経営者保証を数日以内に外す相談が持ち込まれた例です。
先代が急に亡くなって、経営者保証をこのタイミングで外す相談みたいなのが、数日以内に何とかしなきゃいけないみたいな話があって。
山野さんは、団体に認定サポーター制度があり、弁護士など専門家に相談できる仕組みを紹介します。小平さんも初めて知ったと反応し、公的機関のように頼れる場になると評価します。
後継ぎ同士のM&Aと「託す託される」承継のかたち
話は後継ぎ同士のM&Aへ広がります。小平さんは、後継ぎのメンバー同士で信頼を前提とした事業譲渡をやってもいいのではと提案します。
跡継ぎのメンターとメンバーの中でのM&Aとか普通にやってもいいんじゃないかな。信頼を前提とした譲渡をしっかりとやれるようにする。
山野さんも、これは事業化できないか検討中のポイントだと明かします。後継ぎは一度承継を経験しており、「託す託される」感覚を分かっている点が強みだと言います。
黒字廃業するっていう会社がこれだけ多いんだったら、ちゃんと託せる相手に渡していくっていう中に、後継ぎ同士っていうのはすごくあるだろうなと思っていて。
山野さんは、自分たちの周囲の事業承継は本来のM&Aとは違い、もっと「託す託される」世界だと整理します。だからこそ新しいM&Aのあり方を提案できるのではと考えています。
価格の高さが軸になりやすく、外資系ファンドが高値を出すこともある。金額中心で続きにくい面がある
会社が持つ物語も含めて引き継ぐ、「託す託される」感覚を前提とした第三者承継のあり方
小平さんは、会社が持つ物語ごと引き継げる第三者承継のあり方はもっとあっていいと同意します。山野さんもその考えを大事にしていると応じます。
「愛がなくなったら終わり」と後継ぎのムーブメント
小平さんは、支援機関が多くある中でこの団体をとても好きだと語ります。優しさを持つ団体だとして、長く付き合いたいと話します。
山野さんは、ミツフジの三寺さんらと食事をした際に言われた言葉を紹介します。社団は愛がなくなったら終わりだ、というものです。
社団は、愛がなくなったら終わりだと。愛をベースに設計しなさいって言われました。
小平さんは、社団のお金がなくなっても出す後継ぎはいくらでもいると軽く返し、支える後継ぎは多いと桺本さんも同調します。
そのうえで小平さんは、後継ぎのイメージを「カタカナ後継ぎ」に変えていく社会の認知変化をどうつくるかが大事だと述べます。
後継ぎのイメージを本当にカタカナ後継ぎに変えていくかっていうのの、社会の認識変化、認知変化をどうやって作るか。
カタカナ後継ぎを世界標準ワードにする
山野さんは、海外から評価されると国内の評価が上がる日本の傾向を挙げ、「カタカナ後継ぎ」を世界標準ワードにしたいと語ります。
カタカナ後継ぎをやっぱり世界標準ワードにして、オックスフォード辞典に載せたいっていうのは本当にあって。
山野さんは、海外の経営者が日本に事業承継や長寿企業の考え方を学びに来て、その様子が海外メディアに取り上げられるところまで持っていきたいと展望を描きます。
小平さんは、ロールモデルなき時代の背景を語ります。スタートアップに張った結果、いちばんイケてるのが軍需産業だという状況に疑問を示します。
一番イケてるスタートアップなんて軍需産業だし。そっち張っていいの?みたいなのはあるし。大企業は大企業で失われた三十年作っちゃったし。
どんな会社のあり方がロールモデルかが世界的に求められている今、カタカナ後継ぎ的なあり方を発信できれば一つの軸になると小平さんは言います。
山野さんは、後継ぎは一周回って新しく、最先端だと捉えます。今ある価値を最大化するために工夫し、未来につなげる営みだと語ります。
一周回ってすごい新しいっていうか、最先端だと思うんですよね。今ある価値を最大化していくために人間が工夫するっていう。
小平さんは、後を継ぐこと自体が非合理でわざわざする行為だからこそ、世の中の関心を引きやすいと付け加えます。
波を支える「ギブアンドギブ」と受け入れの姿勢
桺本さんは、経済資本ばかり追う流れから文化資本や地方へ目が向き始めている所感を述べます。スタートアップから中小企業の承継へ関心が移りつつあると考えています。
山野さんは、この波が作れているのは自分事で考える人たちのおかげだと振り返ります。小平さんが体調の悪い中で合宿を受け入れた例を挙げます。
それなのにずっとお肉焼かされるっていう。重たい話聞かされるみたいなのって、本当にギブアンドギブアンドギブなんですよね。
山野さんは、彼らがその恩を次の世代に送ってくれるなら小平さんはよしと思う人だろうと語り、そうした人たちが波を作っていると話します。
桺本さんは、湯之元の後継ぎ合宿は5〜6人集まれば日程調整して受け入れると案内します。プロボノとして毎月1〜2件は可能だと話します。
山野さんは、こうした人が各地方に一人ずついてくれたら最高だと応じ、桺本さんもその情景を思い描きます。
最後に桺本さんは、突然ファンドに会社を売って海外へ行く可能性もゼロではないと冗談めかしつつ、そんなことをしても楽しくないだろうと締めます。
金あっても別に生活変わんないし。
まとめ
後継ぎが挑戦を続けられる環境づくりは、オンラインコミュニティやテクノロジーだけでは解けないという相談から、リアルな場の設計と後継ぎ同士のつながりへと話が展開した回でした。心理的安全性と「愛」を軸に、カタカナ後継ぎを社会に、そして世界に広げる展望が語られました。
- 後継ぎの環境づくりは、自走するオンラインコミュニティでは難しく、必要なときのよりどころとなる場が求められている
- 家族や恥部のような話は心理的安全性のある場でしか開示できず、テクノロジーより個人の変化を起こすきっかけが鍵になる
- 鹿児島の湯之元後継ぎ合宿は、自己開示から壁打ち、バーベキューへと続くリアルな場として機能している
- 後継ぎ同士のM&Aや、物語ごと引き継ぐ「託す託される」第三者承継のあり方が検討されている
- 「カタカナ後継ぎ」を世界標準ワードにし、日本発のロールモデルとして発信する展望が語られた




