バックパッカーで40カ国を回った先で見つけた「お金を稼ぐことが共通語になる国」
品田さんは18歳のときにアフリカをバックパッカー ── 格安の宿や移動手段を使い、長期間かけて各地を旅行するスタイルの旅行者。品田さんは10代でアフリカ約40カ国を巡ったと話していますで40カ国ほど回り、その中でナイジェリアとコンゴを「一番クレイジーな国」だと感じたといいます。
品田さんが指摘するのは、日本にいるとアフリカを外交官やODAといった「お金稼ぎと関係ない仕事」で想像しやすい、という点です。
バックグラウンドや価値観が違っても、稼ぐという目的のためなら人が力を合わせられる。品田さんはこの感覚を、アフリカに来て初めてはっきり理解したと振り返ります。
だからこそビジネスをしようと考え、最初は商社に入り、インフラやエネルギーの開発と投資に携わりました。
既得権益が牛耳る資源国に訪れた、2015年からのテックブーム
品田さんによれば、当時のナイジェリアのような資源国は、既得権益を持つ人たちが政治・経済・ビジネスを牛耳る状態に近かったといいます。
その後、インドやシリコンバレーで起きていることを見ながら、海外に流出していたナイジェリア人が自国に戻る流れが生まれます。
20代30代の世代が外の新しい技術を使って国づくりをしようというムーブメントが起きたのが、2015、6年ごろだったと品田さんは話します。
品田さんは、ここから次の10年、15年で世代交代が起き、新しいやり方でオーナーシップを持って国を変えていく時代が始まるだろうと見ています。
ちょうどそのタイミングで自身もベンチャーキャピタル ── 将来性のあるスタートアップに出資し、成長後の株式売却などで利益を得る投資会社。VCと略されますを始め、何もなかったところから飽和に近づくまでの期間に、先陣を切って投資できたと語ります。
120億円ファンドの正体と、日本の民間資本という「特殊さ」
品田さんによると、ケップルアフリカベンチャーズの累計ファンドサイズは120億円ほどで、日系では最大の規模になっているといいます。
収録中に工場で停電が起き、品田さんは「ナイジェリアらしい」とそのまま話を続けました。インフラが悪くても、フィンテックなどでは先進国より早く成長する例が多いといいます。
インフラがこういう風に悪いナイジェリアでも、フィンテックみたいな最新のテクノロジーは、もうリップフログって言うんですか、先進国よりも早く成長する例もたくさんある。
ファンドには日本の固めのお金、アメリカのファミリーオフィス、ナイジェリアの銀行の資金が入っています。品田さんは、日本の民間企業のお金がかなり入っている点が特殊だと話します。
既存産業や先進国という「硬い側」の資金と、リスクを取って新しいアイデアを持つ人たちをつなぐことこそ、ベンチャーキャピタルの本質的な役割だと品田さんは考えています。
さらにケップルは、地元の投資家やPEファンドとジョイントベンチャーを組む点も特徴です。日本人だけでは手を出しにくい現地のオペレーションや規制の問題を、現地パートナーと組むことで手助けできる仕組みにしているといいます。
決済や物流のテックのレイヤーができれば、その上に日本の事業を乗せられます。品田さんは、投資先が作ったインフラを組み合わせることで、日本企業にとって参入しやすい環境を作れると語ります。
評価額3000億円のムーブと、決済を変えたマネーポイント
代表的な投資先の一つが、自動車ファイナンスの会社ムーブです。品田さんによると、評価額はツービリオンドル、日本円で3000億円以上に達しているといいます。
今回のエピソードでのムーブは、Uberなどのドライバー向けに車のファイナンスを提供する事業です。すでに日本のタクシー会社を買収したり、スズキやトヨタ系のVC、三菱東京UFJからも資金が入っているといいます。
もう一つの投資先が、決済サービスのマネーポイントです。品田さんは一番最初のラウンドから出資し、すでにユニコーンに成長したといいます。
ナイジェリアの決済はもともと現金中心でした。Akimは、味の素の事例で従業員と一緒に紙幣を数える描写に触れ、その回収オペレーションの大変さを振り返ります。
今回のエピソードでのマネーポイントは、口座を簡単に分けられ、小口の卸への営業・回収プラットフォームとして機能し、カード決済用のPOS ── 店頭でカード決済などを処理する端末やシステム。マネーポイントは加盟店にこの端末をセットで提供しています端末もセットで提供しています。
品田さんは、こうしたモデルが生まれる理由を、ナイジェリアではBtoBとBtoCの境目がほぼないことに求めます。個人で事業をやる人が多く、大企業への就職が難しいマーケットだからです。
個人の消費と事業の支払いが混ざり合い、事業自体も大きなバリューチェーンに組み込まれている。品田さんは、そのユースケースを全部理解したからこそ、このモデルを作れたと語ります。
この構造は日本にも欧米にも存在しません。品田さんは、複数階層のディストリビューションを反映したUIやUXに落とし込めている点が、ナイジェリアでユニークなところだと話します。
成功するファウンダーは「既存産業を知る20代後半〜30代前半」
Akimが、ナイジェリアで伸びるサービスを作るファウンダーはどういう人たちかと尋ねます。日本では、天才的な若い世代がスマホネイティブでいきなりすごいものを作る、というイメージを持たれやすいと品田さんは言います。
しかし品田さんによれば、ムーブもマネーポイントも、実際は既存産業をよく知り、そこでの課題をよく分かっている人が多いといいます。
品田さんは、多くのファウンダーが既存産業をデジタル化する事業から始め、そこからスピンアウトして、元いた銀行業界などをリプレースするほどにピボットして大きくなる、というストーリーが多いと説明します。
その背景として品田さんが挙げるのが、テックだけで解決できる課題がほとんどないというナイジェリアの現実です。オペレーションが混乱し、既存インフラが機能していないからです。
欧米はインフラが機能しているからこそ、純粋にテックだけで勝負できる。一方ナイジェリアは、オペレーションのガタガタさを含み込んだ解決策でないと成功しづらいと品田さんは言います。
品田さんによれば、ナイジェリアのスタートアップの伸び方には特徴があります。一度キュッと伸びたあとフラットになり、オペレーションの課題を乗り越えると再び伸びる、という踊り場があるといいます。
既存インフラが機能しているため、尖ったテックだけで勝負できる
オペレーションと既存インフラの課題を含み込んだ解決策でないと成功しづらい
Amazonが撤退した理由と、ローカル企業の強さ
Amazonがナイジェリアで思うようにいかず、ローカルのECのほうが強かった例をAkimが挙げます。品田さんは、その背景に物流インフラの問題があると見ています。
品田さんによれば、Amazonにとって重要度の高くないナイジェリア市場のためだけにオペレーションを最適化するのは、非効率だと考えられます。
だからこそ、現地で育った競合を後から買収すればいいと考え、一度撤退して5年後、10年後でもいいというアプローチになりうると品田さんは説明します。
一方で品田さんは、ナイジェリアの評価額はかなりディスカウントされているとも言います。世界のジャイアントが、ナイジェリアだけに尖ったオペレーションを1000億円で買収したいかというと、そうはならないからです。
そのため、マネーポイントもケニアやタンザニア、エジプト、DRCでもできるという、アフリカ全体に共通するオペレーション基盤を示すことが重要だと品田さんは語ります。
今回のエピソードでのムーブは、それを証明した存在だといいます。ナイジェリアから中東、インド、南米へと展開し、自動運転の流れに乗ってアメリカでもオペレーションするまでに至ったと品田さんは話します。
品田さんは、ナイジェリアのビジネスモデルだから世界に広がれた、というより、難しい事業環境で作れたファウンダーの強さのほうが大きいと強調します。
ナイジェリア人の「サバイバル能力」と、田舎出身者すら威圧感を持つ理由
Akimは、ナイジェリアは人口が多く教育熱も高いのに、日本では「貧しい国」と思われがちだと指摘します。実際にはとても優秀な人が多いといいます。
Akimによれば、ナイジェリア出身で欧米の優れた大学に進み、Googleなどに勤めてから戻って成功する、タレントベースの実力を持つ人がいるといいます。
品田さんは、ナイジェリアはロールモデルの多様性がすごいと語ります。日本は成功者のロールモデルの幅が狭い、という対比です。
ナイジェリア人が成功してる事例って、やっぱどの国行っても一人はいるんですよね。産業の違いも国の違いも超えてる。
品田さんは、その強さは人口だけでなく、サバイバル能力や適応力にあると見ています。停電のように何が起きるかわからない環境が背景にあるからです。
品田さんは、ナイジェリアのナイジャー州の知人の例を挙げます。ラゴスから見れば田舎でゆっくりした土地の出身でも、東アフリカや南部アフリカに行くと、早口でよく喋る威圧感のある人物として警戒されるといいます。
Akimは、他のアフリカの国でナイジェリア人が「仕事を取ってしまうから来るな」と警戒される話を聞いたことがあると応じます。品田さんは、それが南アフリカとナイジェリアの外交関係の悪化にもつながっていると話します。
日本人の「色のなさ」がVCソーシングで武器になる
Akimは、日本発のVCで信用がない状態から、どうやってマネーポイントの初期のような良い案件に出会えたのかを尋ねます。
品田さんはまず、もともと既存産業側にいたネットワークを挙げます。次に、頭脳流出した人材の回帰を見てアメリカでMBAを取り、そのネットワークも取り込めたことを挙げます。
3つ目に品田さんが挙げるのが、起業家同士のピア評価のネットワークです。誰がいけているかは本人たち同士が一番わかっており、そこに入ると自然と良いつながりが生まれるといいます。
そして品田さんが強調するのが、日本人の「色のなさ」です。ナイジェリアでは自分の癖もほぼないに等しく、誰とでも仲良くできると言います。
その警戒心のなさに加えて、大きなチケットサイズや日本企業とのつながり、ジョイントベンチャーによるPE的な機能を提供できることが、追加の価値になると品田さんは説明します。
Akimも、日本は色がついていないぶん、案件の枠を埋めたいときに呼ばれやすいと同意します。中国人同士やナイジェリア人同士では避けたいという感情が生まれても、日本に対してはそれが起きにくいというポジショニングの話です。
点と点のマッチングをやめ、「塊」で日本企業とつなぐ
Akimは、アメリカなどさまざまな資本が入る中で「日本マネー」がナイジェリアで喜ばれるのかを尋ねます。品田さんは、日本企業のブランド力やオペレーションの強さは最初のフックになると言います。
ただし品田さんは、年間売上100億円に満たないスタートアップと巨大な日本企業がコラボするのは実際には難しく、実現できていない部分のほうが多いと率直に語ります。
そこで品田さんが今取り組んでいるのが、点と点のマッチングはやめるという方針です。身の丈が合わず、スタートアップ側にも日本企業に合わせるリソースがないからです。
代わりに品田さんが目指すのが、決済、マーケティング、EコマースのBtoB機能、そして現地のジョイントベンチャーが持つ薬局チェーンなどを組み合わせた「塊」を作ることです。
品田さんは医薬品を例に説明します。スタートアップ1社では市場シェア2%でも、マネーポイントが決済を提供する薬局を全部組み合わせれば数百億円分のPOSデータが取れ、店舗や物流の在庫管理技術も加わります。
こうして塊を作れば、日本の医薬品メーカーや薬局チェーンにとっても身の丈が合い、対応しやすくなると品田さんは語ります。
従来: 点と点
スタートアップ1社と巨大な日本企業をマッチング。身の丈が合わず実現しにくい
組み合わせ
決済・マーケティング・EコマースBtoB・薬局チェーンなどを束ねる
塊として提示
数百億円のデータや店舗・物流を含む有機的なグループを作る
日本企業とつなぐ
規模が合い、日本企業が対応しやすくなる
LPを集める時代の終わりと、「1億円を3000万円×3回」で回す発想
Akimが、塊を作ることで投資リターンだけでなくシナジーを示し、LP営業ができるのではと尋ねます。品田さんは、ファンドのLPを集める時代は終わりに近づきつつあると答えます。
品田さんによれば、LP出資から新規事業がうまくいった事例はアフリカに限らず多くありません。ファイナンシャルリターンは取れても、事業会社の本当の目的である本業の成長にはつながりにくいからです。
品田さんが提案するのは、1億円を一つのプロジェクトに投じて失敗したら撤退、という日本企業にありがちなやり方を変えることです。
品田さんによれば、VCが10社に分散投資すればリスク分散はできても、事業会社が自分の事業を3回回したことにはなりません。VCの役割はそこまでにとどまりがちだといいます。
そこで品田さんは、多くの成功・失敗事例を見てきた経験を生かし、日本企業と一緒にイテレーションを繰り返せる仕組みを提供したいと語ります。すでにある現地スタートアップの機能を組み合わせ、実証実験しやすくする発想です。
品田さんは、スタートアップやVCを経験した人材が既存産業に流れ込んでいる点にも触れます。そうした人材が現地のアセットを束ね、事業会社の中で実験しながら事業を伸ばすことが、次に起きることだと見ています。
Akim自身も、超トラディショナルなサンダルの製造業のオペレーションにAIを入れ込む例を挙げます。既存産業側に、スタートアップ的なやり方を知る人材が染み出していく動きが今後のテーマだと二人は語ります。
オールドマネーとニューマネーを融合させる、ダンゴテIPO
Akimは、ナイジェリアにはダンゴテのようなオールドリッチと、マネーポイントのようなニューリッチがくっきり分かれている印象があると指摘します。
品田さんは、そのダンゴテのIPOこそが、この二つの断絶を融合させるきっかけになっていると見ています。アフリカ市場で最大級のIPOだからです。
Akimがダンゴテ氏を紹介します。アフリカ系で一番の富豪で、日本の資産家ランキングに入れても2位ほどになるといい、今回のIPOでさらに順位が上がる可能性もあると話します。
Akimによれば、ダンゴテ氏は約3兆円を投じた製油所を持ち、単一ラインでは世界最大の製油量を誇ります。2ライン完成すれば世界最大の製油所となります。今回のIPO規模は7兆円で、アフリカ史上最大級だといいます。
品田さんが最も面白いと感じているのが、「ダンゴテミーム」の広がりです。1株525ナイラ、10株から買えるため、5250ナイラ、およそ500円で株主になれます。
一食抜くとか二食抜いてダンゴテの株を買ったぞみたいな感じで、「なんで俺は自虐会議に呼ばれないんだよ」みたいなくだらない投稿がぶわーって上がってて。
品田さんは、これが投資機会の民主化だと語ります。証券投資プラットフォームのバンブーには、このIPOに伴って1000万人の新規株主が入るといいます。
品田さんは、これまで財閥のビジネスにオーナーシップを感じられなかった人たちが、IPOによって初めてそれを持てるようになった点を重視します。
郵便貯金との相似と、国民が国のインフラに参加する意識
品田さんは、日本の産業発展の歴史を引き合いに出します。戦後、ゆうちょ ── 旧郵便貯金。全国に広がる郵便局を通じて国民の貯蓄を集め、そのお金がインフラ投資などに回された仕組み。品田さんはナイジェリアで起きつつある状況と重ねていますという仕組みで国民の貯蓄を集め、それをインフラ投資に誘導できたことが大きかったといいます。
品田さんは、日本が戦後に負けても国のインフラを海外資本に牛耳られなかったのは、国民の資産を動員できたからだと説明します。
そして今、ダンゴテのIPOによって、ナイジェリアでも国民が国のインフラに参加しオーナーシップを持てる状態が生まれつつあると品田さんは見ています。
Akimは、これもテック側があってこそ実現したと指摘します。バンブーのようなプラットフォームやSNSが浸透した若い世代があってこそ、クリプトのような広がりが生まれたという見方です。
品田さんによれば、バンブーはもともとナイラ下落時に、ナイジェリア人でもアメリカ株に投資できるプラットフォームとして始まりました。それが今、ダンゴテIPOによってナイジェリア国内株への投資に人々が熱中し始めているといいます。
3つの成長が同時に起きる国へ、ナイジェリアの波及効果
Akimは、ダンゴテIPOがITの人が耕した畑と巨大財閥の畑をつなぎ、ナショナリズムにまで及ぶ点を面白がります。しかもそれが民間主導である点がナイジェリアらしいと語ります。
品田さんは、アフリカとインドを比較します。インドは既存産業、スタートアップ、国内金融市場の3つの成長が同時に起きるため止まらない、という対比です。
一方アフリカは国内の金融市場が浅く、国内で資金調達しにくいため、海外VCに頼ってきました。品田さんは、既存産業とスタートアップももともとつながっていなかったと言います。
品田さんによれば、ナイジェリアでは常にどれかが足りず、順番に「次はこっちの番」と補ってきました。今は既存産業の側にナイジェリア人の資本が再流入し始めているといいます。
そこにダンゴテIPOで金融市場のリキディティが加われば、3つが同時に成長していくイメージが出来上がりつつあると品田さんは語ります。
品田さんによれば、3つの成長が揃っているのは今のところエジプトくらいで、南アフリカのヨハネスブルク市場も一定の規模があります。そのなかで西アフリカの中心ナイジェリアで起きることには、大きなインパクトがあると見ています。
品田さんは、ナイジェリアの金融市場が育てば、ガーナで成功した会社がナイジェリアで上場するようなことも起き、周辺国への波及効果も大きいと考えています。
事業ごとに切り分けてIPOする、ダンゴテの戦略
Akimは、ダンゴテが基本的にアフリカ市場に上場していく方針で、簡単にはロンドンやアメリカに出ない点に触れます。事業はエチオピアやセネガルのセメント工場など、拡大を続けているといいます。
品田さんによれば、ダンゴテは事業を切り分け、事業単位でIPOさせる戦略を取っています。セメント事業はすでに上場済みだといいます。
品田さんは、コストセンターとプロフィットセンターを上手に切り分け、一番儲かるところは自分で持ち続けている可能性を指摘します。個人でIPOしても90%以上を保有しているという話も出ました。
欧米は過去の痛みで、ナイジェリアは未来志向で判断する
Akimは、イランとの衝突のタイミングとダンゴテのタイミングが重なり、ナイジェリアの為替が日本円などより強くなっている実感を語ります。
品田さんは、去年ぐらいまでは欧米企業の撤退ニュースのほうが多かったと振り返ります。一方で水面下では、ナイジェリア人投資家が既存産業に資金を入れ始めていたといいます。
Akimは、ティヌブ政権がガソリンの補助金を撤廃し、価格が2倍3倍になった経緯に触れます。品田さんも、この10年で中間所得層がほぼ消えたと言われた、急激な改革と為替下落があったと補足します。
品田さんは、欧米企業が過去の痛みの積み重ねで撤退を判断するのに対し、ナイジェリア人投資家は未来志向で判断すると対比します。
Akimは、途上国のフェーズを通ってきたナイジェリア資本、インド資本、中国資本のほうが「このフェーズは大変でも伸びる」というコンセンサスを持っている、と応じます。
日本コンテンツをアフリカへ、川中・川下を作るという構想
Akimが、品田さんが今後注力したい領域を尋ねます。品田さんはまず、VCのファンドライフ10年という区切りをもったいないと感じていると語ります。ナイジェリアのスタートアップはEXITまで10年では足りないからです。
もし今知ってるトヨタが生まれて、まだみんながトヨタ車に乗る手前の投資家だったとして、そこで売っちゃったらなんてもったいないんだろうって思うんですよ。
品田さんは、創業期から知りファウンダーと近い距離にいた立場だからこそ、VCという枠組みを超えて彼らと一緒に事業を作っていく必要があると考えています。
もう一つの領域が、日本コンテンツのアフリカ展開です。品田さんは、日本のコンテンツが影の産業として育った経緯に複雑な思いを持ちつつ、エンタメ消費の担い手がアフリカにも存在する点に注目します。
品田さんが挙げるのが、日本の弱さです。技術や素材を作る川上は得意でも、それを世界に流通させる川中・川下が苦手だといいます。
品田さんは韓国を例に挙げます。KドラマやKポップから、KコスメやKフードへと影響が波及し、パッケージ化された「Kの消費」の塊が生まれているという説明です。
品田さんは、この塊を作るにはファンを押さえ、彼らのデータを取ることが必要だと語ります。日本企業にとってブラックボックスだった川下・川中を、日本人としてまとめ上げる役割にオポチュニティを感じ、その取り組みを始めていると話します。
インドと同じ道をたどるナイジェリアの、データ消費量の伸び
Akimは、一人当たりGDPの低さや違法サイトの視聴といった、ナイジェリアのコンテンツ市場への典型的なツッコミを挙げ、それでも注目に値するのかを尋ねます。
品田さんは、具体的な数字を示します。今インドは月間一人当たりのデータ消費量が約36ギガバイトで、日本企業が海賊版の多いインドにこぞって進出しています。
そのインドは7年前まで12ギガバイトで、ナイジェリアの現在の水準とほぼ同じだといいます。データ消費量の増え方は直線的ではないため、ナイジェリアもあと2、3年で今のインドの水準にたどり着くと品田さんは見ています。
品田さんは、市場が大きくなれば海賊版うんぬんよりも、見る側の要望や欲しいものの質が上がっていくと語ります。ただし、この市場は日本企業には遠すぎてブラックボックスであり、誰かが見える化する必要があるといいます。
品田さんによれば、収益化はBtoCだけではありません。コンテンツ消費者が増えるほど、日本企業の製品のタイアップというBtoBの収益も生まれます。これこそが、1ドルのコンテンツで1.8ドルの収益を生む塊づくりだと語ります。
参入したい人へ、「失敗を許容し、面白いからやる」という入り口
最後にAkimが、アフリカのビジネスに取り組みたい人はどういう切り口で参入すべきかを尋ねます。品田さんはまず、失敗を許容できないことが日本の大企業文化の難しさだと指摘します。
品田さんは、Akimも自分も失敗しているが、個人として腹をくくれば数年で何回か失敗してもいいと思える、と語ります。大企業のプロジェクトなら、失敗した担当者は日本に追い戻されて終わってしまうからです。
品田さんは、日本を出てくる人には、面白いことをしたい、一旗上げたいという気持ちがあるはずだと言います。だから焦らず、少しフラフラする期間があっても構わないと語ります。
品田さんは、Akimやガーナで活躍する人など、ロールモデルが徐々に増えている点にも触れます。ロールモデルが増えることは、ナイジェリア人が成功している理由の一つでもあると語ります。
Akimは、「産業がいい」というテクニカルな話ではなく、ミスってもいいという大らかさと、面白いからやるという姿勢のほうが参加の仕方として適切だと受け止めます。品田さんも「そういうことだね」と応じ、11年の経験に裏打ちされた対話を締めくくりました。
まとめ
ナイジェリア在住11年の品田さんが語ったのは、テックと既存産業が融合し、金融市場までが動き始めたナイジェリア市場の姿でした。成功するファウンダー像から、ダンゴテIPOがもたらす意識の変化、日本コンテンツの展開構想、そして参入する人へのメンタリティまでが一つの流れとしてつながっています。
- ケップルアフリカベンチャーズは累計120億円を投資し、日本の民間資本が入る点や現地とのジョイントベンチャーが特徴
- ナイジェリアで成功するファウンダーは、既存産業を知る20代後半〜30代前半が多く、テックだけでは解けない課題を含み込んで事業を作る
- 日本人の「色のなさ」はVCソーシングで武器になり、案件の枠に呼ばれやすいポジションを生む
- ダンゴテのIPOは投資機会を民主化し、オールドマネーとニューマネー、そして国民の意識を融合させるきっかけになっている
- 参入の入り口は特定の産業選びではなく、失敗を許容し「面白いからやる」というメンタリティにあると品田さんは語る




