任天堂、売上減でなぜ利益が2.5倍になったのか
今回のテーマは2つの決算ニュースからスタートします。1つ目が、任天堂の売上が約10パーセント減ったのに、営業利益が2.5倍になったという話です。
谷田さんはまず結論を提示します。任天堂はもう、単なるゲーム機を販売する会社ではなくなっているという見方です。
今まではファミコンがあって、スーファミがあって、DSがあって、Wiiがあって、64があって、いろいろハード機を販売する戦略が全体的にありながら、
そのゲームハードの一番の使い方は僕たちが一番詳しくわかってますよ、というゲームをリリースして、ゲーム機の販売で多くの利益を出していく会社だったと思うんです。
その構図が、今回の決算では変わって見えるといいます。長く続くIPを持つ会社が、中長期で利益を出すフェーズに入っているという、この番組で繰り返してきた見立てと重なる話です。
数字を追うと変化がはっきりします。売上は5200億円で10パーセント減。それでも営業利益は1425億円で、2.5倍になっています。
Nintendo Switch 2は四半期で382万台、累計で2368万台。ゲームソフトも946万本と好調でした。
谷田さんは、利益が2.5倍になった理由を3つに分けて整理します。
利益率の高いソフト比率の上昇
ハードより原価の安いソフトの売上が増え、粗利率が改善した
映画IPの大ヒット
マリオ関連の映画が世界で興行収入10億ドル超。IP関連収入は約350億円で前年の約2倍に
一時的な要因
アメリカの関税還付で3億ドルほど。これは一時的なものかもしれないとされる
つまり、ゲームを売るのはもちろん、ゲームを売らなくてもIPが稼ぐという事業が育っているというわけです。
谷田さんは他社の決算にも触れます。スクエニは営業利益88パーセント増、純利益2.8倍で、PS独占をやめてマルチ展開したHDゲームが利益を後押ししたといいます。
カプコンもIPビジネスが強く、ストリートファイターのスロットやグッズなど、ライセンスが得意な会社だと語られます。
市場全体の見立てもアップデートされています。数年間は横ばいややや微減が続いていましたが、最近は市場全体が伸びているといいます。
マーベル格ゲーの失速と、ビッグウォークが6日で100万本
2つ目は、同じ週に出た2本のゲームの対比です。片方は超大型の格闘ゲーム、もう片方は全く違うジャンルのインディゲームでした。
マーベルの大型格闘ゲームは評判も良く、キャラの必殺技も引きが強く、かなり売れそうな雰囲気だったといいます。
発売前のBETA版はSteamの過去最高の同時接続が行ったって言ってましたね。同時接続で3万3千人。
ところが製品版は約2万4千人と、ピークのおよそ3分の1にとどまります。レビューも47パーセント評価で、賛否両論の状態になっています。
谷田さんは、失速の原因はゲームの面白さではなく、遊ぶ手前の「障壁」にあると分析します。
環境面の問題
PC版の性能問題や、PlayStation Networkアカウントが必須という仕様
発売停止国の発生
アカウントが作れない国で、一時最大132カ国がSteamで発売停止に
アンチチートへの反発
チート対策の仕組みへの反発も起きた
ゲーム自体は悪くなく、約40万本は売れています。それでもアカウント必須などの環境が障壁になり、触れない人が増えたことで急ブレーキがかかったといいます。
一方で好調だったのが、ビッグウォークです。いたずらガチョウのアンタイトルグースゲームを作ったスタジオの、7年ぶりの新作です。
内容は、12人までがオーストラリアの荒野を一緒に歩いて喋るというもの。谷田さんは「それだけのゲーム」と表現します。
十二人までただオーストラリアの荒野を一緒に歩いて喋るっていう、なんかそれだけのゲームなんですけど、これが6日で100万本ぐらい売れた。
前作は同じ数字に3カ月かかっており、しかも今回はPS Plusで無料配布しながら有料でこの数字だったといいます。
「頭の中が面白い」と「見て面白い」──ゲームの面白さの正体
なぜビッグウォークが売れたのか。谷田さんは、配信がそのまま広告になるゲームが増えていることを挙げます。
友達と遊ぶ体験そのものが商品になっていて、人に言いたくなる、配信で見たくなること自体が広告代わりになっているという見立てです。
そのうえで、谷田さんは自分なりの観点として、ゲームの面白さには種類があると語ります。
やっている本人の頭の中はめちゃくちゃ面白いが、見ていても面白くないことがある
外から見ても面白さがちゃんと伝わる。頭の中が面白くないのに見て面白いゲームはなかなかない
ビッグウォークは、みんなで歩いて話すというデザイン自体が、体験をそのまま作り、遊んでみたくなるタイプだと整理されます。
谷田さんは、めっちゃカメラという別作品も引き合いに出します。フレンドスロープというジャンルが注目され、大きな成果を上げているといいます。
790円のゲームが、3カ月で、2人のアカウントで開発されたものが、2千万本売れた時代になりました。
谷田さんは、時代の変化をこうまとめます。大型IPと大型資本が設計ミスで負けることがある一方で、勝ち筋は別のところにあるという見方です。
この点は自身の経験とも重なるといいます。ゲームがきっかけで友達ができたり、仲良くなったりすることが、遊ぶ理由になっているという実感です。
渋谷のゲームセンターで知り合った人間と会社作ってとかってると、完全に、ストリートファイターやってたおかげで起業までいきましたみたいな体験ですよね。
ゲームがきっかけで人生の体験価値や人間関係が広がる。そうした外側に遊ぶ経験や体験が作れていることが、いまのゲームにフィットしていくのではないかと語られます。
予選落ちからの世界一──鉄拳のパキスタンの新星
最後に、どうしても話したかったという話題として、eスポーツの鉄拳部門が取り上げられます。
コロナ前後に「鉄拳にはパキスタンの英雄がいる」と話題になったことがありました。今年のEWCの鉄拳部門でも、パキスタンのズバイル選手、通称ズバ兄が優勝しています。
谷田さんが注目したのは、その勝ち上がり方です。遠征に慣れたタイプではなく、当日のラストチャンスクオリファイから勝ち上がって本戦出場を決めたといいます。
決勝までずっと勝ち上がっていって、韓国のローハイ選手を最後5-0ストレートで優勝。
2連覇中の選手やレジェンドを初日で下す波乱の大会で、アルスラン・アッシュに続くパキスタンの新星が現れた形です。
今日の問いかけと次回予告
谷田さんは、この回の問いかけを提示します。テーマは、マーベル格ゲーで話題になった「障壁」です。
買う気が失せるような障壁を感じたゲームは、あなたにも経験がありますか。
次回については、谷田さんがGamescomに行く直前に収録する予定だといいます。
EWCが閉幕するため総合優勝したチームの話や、Gamescomで何を気にして見に行くのかを話したいとしています。
まとめ
今回は決算とヒット作を通して、いまのゲーム業界の勝ち方が語られました。IPで多面的に稼ぐことと、ゲームの外側に遊ぶ理由を作ることが、共通するキーワードとして浮かび上がります。
- 任天堂は売上10パーセント減でも営業利益2.5倍。ソフト比率の上昇と映画IPの大ヒットが要因
- いまのゲーム会社は、長く売れるゲームを作り、そこからIPに転換していく戦い方が求められる
- マーベル格ゲーはアカウント必須などの「障壁」で失速。面白さ以前に、遊ぶ手前の環境が明暗を分けた
- ビッグウォークは6日で100万本。配信や体験そのものが広告になり、外側に遊ぶ理由を作った
- 鉄拳ではパキスタンのズバイル選手が予選から世界一へ。鉄拳には数年に一度、新星が現れる






