靴屋が「測る前に売る」順番を逆転できた理由
この回は、支部長がAIに原稿を整理してもらい、そこに自身の視点を載せて音声化している実験的なAIポッドキャストです。事実やニュアンスがずれる箇所が混じる可能性があるため、気になった情報は一次ソースの確認がすすめられています。
今週のテーマは「え、そこがやるの?」という視点でつながる3本です。靴屋が測る前に売る話、製紙会社が半導体材料を作った話、170円のマイコンが人の顔を描く話が並びます。
1本目は、買ってから足を測る靴の話です。普通の靴は店で試着してサイズを選んで買いますが、この靴は先にオンラインで買い、あとから足を測って一足ずつ作ります。
注文はオンラインで30秒ほど。そのあと足を3次元で測り、そのデータから一足ずつ設計して3Dプリントし、10日ほどで届くという流れになっています。
靴屋が測る前に売っちゃうのよ。
家で履いたら微妙に痛いという経験について、支部長は足のせいではなく、サイズの刻みに足のほうを合わせているからだと指摘します。左右で違うはずの足に、量産の都合が優先されているという見方です。
作っているのは大阪のディフドという会社です。2022年にミズノからの出向起業で生まれたスタートアップで、代表の清水祐一さんはミズノで靴の開発をしていた人だと紹介されています。出向起業 ── 企業に在籍したまま、その企業の技術や人材を生かして新しい会社を立ち上げる起業の形。大企業の外で新規事業を育てる手法として使われる。
製品名はディフ3Dで、9月1日に販売が始まりました。値段は総計2万5000円、税込だと2万7500円です。
この靴の特徴は金型を使っていない点です。靴は通常サイズごとの金型で大量生産するため、25.0、25.5、26.0といった刻みになり、左右も同じ型で作られます。
同社が医療従事者100人に聞いた調査では、サイズが合わないことが原因で来院した患者を見た人が54%、左右差を健康面で心配している人が74%だったとされます。みんなが薄々知りつつ、量産の都合で目をつぶってきた問題だと語られています。
ディフドは足を左右それぞれ3次元で測り、ディフドエンジンという自社開発の自動設計システムに通します。同じデザインでも中の形が一人ひとり違うデータが出てきて、片方だけ幅が広いといった違いにも左右別々の設計で対応できます。
素材には、ゴムのようにグニャッと曲がる柔らかいポリウレタン系の樹脂を使い、靴を丸ごと一足ずつ3Dプリントします。支部長は、印刷が地味に難しいフィラメントで売り物の品質を出すには相当な調整が必要なはずだと話します。
正式販売までに30人で検証し、試作は200回以上行われたとされています。
支部長がものづくり視点でグッとくるのは、測ってから作るというやり方が、実は昔の靴屋の当たり前だった点です。職人が足を見て木型を削り一足ずつ縫っていた工程を、スキャナと自動設計と3Dプリンタで置き換え、2万5000円まで下げたと整理します。
金型を捨てたから在庫を持たなくてよく、注文が来てから作るから売れ残りが出ません。工程を変えたら商売の順番まで変わっちゃったという点が、この話の核だと語られています。
一方で、今の生産体制は月80足で大量生産はできず、計測も大阪拠点や出張、自宅撮影で手間が残るという課題も正直に語られています。それでも、順番に踏み切れたのは作り方が変わったからこそだとまとめられます。
製紙会社の王子が「半導体の材料」を作った話
2本目は、やっている会社そのものが意外な話です。半導体の最先端の材料を、製紙会社が作りました。
主役は王子ホールディングスです。ノートやコピー用紙、段ボールで知られるこの会社が、9月4日に木から作ったフォトレジストで幅10ナノメートルの直線パターンを作れたと発表しました。
半導体の回路作りでは、シリコンの上に感光性の薬剤を塗り、光を当てたところだけ性質を変えて回路の形を焼き付け、いらない部分を溶かして削ります。この薬剤がフォトレジストで、その性能でどれだけ細い線が引けるかが決まると説明されます。
半導体の微細化って露光機の話ばっかり注目されるけど、実はレジストが追いつかないと線は細くならないのよ。
10ナノメートルは、A14世代と呼ばれる2028年以降の最先端ロジック半導体が必要とする細さだとされます。露光にはASML製で1台何百億円もするHigh-NA EUV(開口数0.55の次世代露光技術)が使われました。High-NA EUV ── EUV(極端紫外線)を使う露光技術のうち、レンズの開口数(NA)を高めてより細かい回路を焼き付けられるようにした次世代方式。ASMLが装置を製造している。
評価は、ベルギーのimecという世界最高峰の半導体研究拠点との共同研究で行われ、幅10ナノの直線と直径16ナノの穴の両方が形になったとされます。エッチング、つまり実際に削る工程まで通っている点も語られています。
10ナノメートルは髪の毛の太さの1万分の1で、ウイルスより小さい幅です。その線を光で焼き、薬品で溶かして綺麗な直線にしていると説明されます。
ここで「なぜ製紙会社が」と思うところですが、答えは材料にあります。今のレジストはPFAS(有機フッ素化合物)を使っており、これは分解されにくく体に蓄積するため「永遠の化学物質」とも呼ばれています。PFAS ── 分解されにくく環境や体内に残りやすい有機フッ素化合物の総称。撥水・耐熱性などで幅広く使われてきたが、健康や環境への影響が指摘され規制が進んでいる。
欧州を中心に規制が進み、半導体の現場は性能は出るのに使えなくなるという板挟みになっていると語られます。業界は代わりの材料を本気で探している状況です。
王子が持っているのは木質バイオマス、つまり木の成分を化学的に加工する技術です。紙を作るために100年以上木を分子レベルでいじってきた会社であり、そのノウハウでフッ素を使わずに性能と安定性を両立させたレジストを作ったとされます。
開発の流れは、2024年に先にEUV対応版を作り、2025年からimecと組み、今回がHigh-NAでの実証という段階です。
支部長がこの話で痺れるのは、王子がここ数年、パルプからエタノールを作る、セルロースで燃料電池の電解膜を作るなど、木を紙以外の何かにすることを続けてきた点です。
紙の需要が減るのはわかりきっているため、自分たちの強みを「紙を作ること」ではなく「木の成分を扱えること」だと定義し直したことが要点だと語られます。その延長線上に半導体があったという整理です。
支部長はこの構造を、聞き手の会社にもそのまま当てはまると話します。強みを製品名で言っているうちは、その製品が古びたら終わりだという指摘です。
170円のマイコンに「顔」を描かせた人の工夫
最後の3本目は、170円のマイコンに絵を描かせた人の話です。RP2350というRaspberry Pi Pico 2に載っているマイコンが対象になっています。
このマイコンは1個1ドル、日本円で170円くらい。メモリはRAMが520キロバイトで、メガでもギガでもなくキロだと強調されます。マイコンを触る人ほど「無理でしょ」と思う数字です。
CPLDCUという名前で活動しているTimさんが、このマイコンで拡散モデルを動かし、128×128ピクセルのカラー画像を1枚10秒から20秒で生成しています。
拡散モデルは、ノイズだらけの画像から少しずつノイズを取り除いて絵にしていく方式です。Stable DiffusionやFluxなど、今の画像生成AIの主流がこの方式だと説明されます。拡散モデル ── ランダムなノイズから少しずつノイズを除去していくことで画像を生成する機械学習の手法。近年の画像生成AIで広く使われている。
通常はGPUと何ギガものメモリが必要ですが、Timさんのモデルは290万と170万パラメータの2種類で、Fluxの4000分の1の規模でも顔が出るとされます。
支部長は、この番組で以前に6502で言語モデルを動かした話やESP32で言語モデルを動かした話を扱ったと振り返り、今回は文字ではなく絵という点が新しいと位置づけます。
どうやって520キロバイトに押し込んだかが工夫の塊だと語られます。128×128のカラー画像はそれだけで48キロバイトあり、直接扱うとメモリの1割が絵だけで消えてしまうためです。
そこでTimさんはVAEという圧縮機で画像を24分の1の潜在空間に縮め、その小さい世界の中で拡散モデルを回すことにしました。ただし絵を縮めても、今度はモデルの重みが乗らないという問題が出ます。
290万パラメータを普通の32ビットで持つと11メガを超えるため、重みを8ビットの整数に落とします。落とすと品質が崩れますが、その分を量子化後に自分自身を教師にして学び直す自己蒸留で取り戻したとされます。
それでも全部をRAMに置くのは無理なため、フラッシュメモリからDMAで少しずつ流し込みながら計算し、RAMには今使う分しか載せません。さらに、男性か女性か、笑っているかどうかといった条件付けは、ネットワークをやめて参照表に置き換え、拡散のステップはたった8回に絞られています。
学習はRTX 5090で2週間、夜ごと回されました。そして支部長が一番言いたい点として、Timさん本人がブログで「コードの下働きの多くはClaude CodeとFactory.aiに任せた」と書いていることが紹介されます。
この番組の原稿を書いてるのと同じ会社のAIです。マイコンに絵を描かせるAIを作るのにAIに手伝わせてる。
支部長はE資格を取ってAIの実装をやっている立場から、この話でうなるのはモデルを小さくする技術そのものより、どこを捨てるかの判断だと語ります。
解像度は128で十分、条件は5通りで十分、ステップは8回で十分と、すべて用途に対して「十分」を見極めて削っているため170円で足りると整理されます。そして、その「十分」を見極める目は、そのまま製品設計の目だと語られます。
「意外」は外から見る側の思い込みだった
靴屋が測る前に売り、製紙会社が半導体材料を作り、170円のマイコンが顔を描く。3本とも「そこがやるの?」に見えますが、当事者からすると持っている技術の素直な延長だと語られます。
意外に見えるのは、外から見てる側の思い込みなんだよね。
並べてみると、靴屋は昔の職人の工程を新しい道具で取り戻し、製紙会社は木の成分を扱う技術を別の市場に持っていき、マイコンの人は用途に対して十分な線を見極めて削っただけだと整理されます。
支部長は、意外に見えるのは外から「靴屋はこう、製紙会社はこう」と決めつけているからだと指摘します。ものづくりの強みは製品の名前ではなく、その裏にある工程や技術のほうにあるという結論です。
そうすると、まだ行ったことのない場所でその技術が使えることに気づく、という呼びかけで締めくくられています。
まとめ
今週の3本は、靴屋・製紙会社・170円のマイコンという意外な組み合わせでしたが、いずれも当事者にとっては持っている技術の素直な延長でした。共通するのは、強みを製品名ではなく工程や技術で捉え直すという視点です。
- ミズノ発のディフドは、金型を捨てて注文後に足を測り一足ずつ3Dプリントすることで、商売の順番まで逆転させた
- 王子ホールディングスは、強みを「紙を作ること」から「木の成分を扱えること」へ定義し直し、その延長で半導体用レジストに到達した
- 170円のマイコンでの画像生成は、圧縮・量子化・自己蒸留に加え、「どこまで十分か」を見極めて削る判断が核だった
- 3本に共通するのは、自分の仕事を製品名ではなく「何ができる技術か」で言い直すと、別の市場が見えてくるという視点
- この回はAIが原稿を整理した実験的なAIポッドキャストのため、気になった情報は一次ソースの確認がすすめられている
