提案ではなく「相談に乗る」?前回の振り返り
前回の厚利少売ラジオは「厚利少売の提案」がテーマでした。すがけんさんは、提案は難しいからこそ、値付けをし、提案する相手を変え、内容をブラッシュアップしていくものだと振り返ります。
前回の放送からは、リスナーが考えている提案をお便りで送り、二人が添削する企画も生まれました。川原さんは、提案は自分の中で考えていたフェーズから相手と接続していく段階であり、最も違いを生むパートだと話します。
だからこれ買ってくださいみたいなのをみんな提案だと思ってますけど、相手は何が困ってるんだろう、相手は何が欲しいんだろうから始まるのが厚利少売的な提案なんですよね。
すがけんさんによれば、厚利少売の提案にはヒアリングや調査が含まれます。川原さんが「提案」に代わる言葉を探すと、すがけんさんは「相談に乗る」、あるいは「壁打ちします」でもいいと答えました。
だから、それだけ高いお金を払ってでも変化を作れる内容の相談に乗るってことですね。
「これ買ってください」と商品を差し出すこと
相手の困りごとや欲しいものを聞き、変化を作れる相談に乗ること
車の本質価値は「速さ」だけなのか
今回のテーマ「付加価値と本質価値」は、二人の著書『厚利少売』でも分けて書かれている考え方です。川原さんは、番組の基礎にある「価値は相手の変化量」という捉え方に触れ、その価値を付加価値と本質価値に分けて解説してほしいと投げかけます。
すがけんさんはまず、多くの人がなんとなく思っている価値は「機能」だと指摘します。車なら速く走ること、という分かりやすい機能の先に、もう少しだけ本質的な価値があるのではないか、というのが本質価値という言葉を分けた理由です。
最近の車には周囲にカメラが付き、事故を起こしにくくなっています。車をさほど大事だと思っておらず、あまり乗らない人にとっては、速さよりも安心安全が欲しい価値になった、とすがけんさんは説明します。
ここで川原さんは「車にカメラがいっぱい付く」を、車内で自撮りするカメラだと聞き間違えていました。ところがその勘違いから、話は思わぬ方向へ広がります。
自分に向くカメラがいっぱいついてて、SNSに勝手にアップしてくれたら、いやでもそれも本質価値かもしれない。
すがけんさんは、自動運転が進めば車内で何をするかが問われると話します。自動車メーカーは「Netflixが見られる」の一択になりがちですが、二人で乗ってポッドキャストやYouTubeライブを配信でき、編集もしやすい車なら、それが現代の車の本質価値になるかもしれないというのです。
移動中を発信で価値提供側に変えられるってすごい変化です。
速く走る
車が持つ分かりやすい機能としての価値
安心安全
外側のカメラで警告音や自動ブレーキが働く
車内で発信する
自動運転で空いた移動時間に配信や編集ができる
テスラとスペースXに見る本質価値のアップデート
川原さんは、テスラはすでにまったく違う価値を提供し始めていると話します。テスラ車が増えるほどデータが共有されて安全性が増し、自動運転が普及すれば移動中が自由になり、ゆくゆくは車がタクシーの代わりに稼いで購入価格以上を生む可能性もある、という見立てです。
話題はイーロン・マスク氏のもう一社、スペースX ── イーロン・マスク氏が設立したアメリカの宇宙開発企業。ロケットを再利用してコストを下げる取り組みで知られていますへ移ります。川原さんは、宇宙船を毎回壊していてはコスト的に無理なため、戻ってきたロケットを「お箸」のようなアームでつかむことに成功した件に驚いたと話します。
すがけんさんによれば、宇宙に行くだけでは時間もお金もかかりすぎるため、今イーロン・マスク氏が準備しているのは別の使い方です。ロケットを垂直に打ち上げると地球の回転を受けるので、降りたときには別の基地に着陸できる、という地球旅行のような移動インフラだといいます。
だからそのロケットの本質価値を見直してったら、なんだこれ。逆にすごい遠くまで行くには時間もお金もかかって難易度も上がるけど、今の技術で上がって下がってくるだけで地球の中どこでも行き来できるやんってなっちゃった
時間もお金もかかり、難易度も高い
地球の回転を利用し、地球上の別の場所へ短時間で移動できる
川原さんは第一原理 ── 物事をそれ以上分解できない根本的な事実や原則から考え直す思考法。イーロン・マスク氏が重視していることで知られますという言葉を挙げ、自然の流れに抗わずに価値にする力に感心します。
ダムや水車は「自然の力」をどう価値に変えたか
すがけんさんは、ロケットと似た話としてダムを挙げます。水を貯めて一気に流せば電力を作れるという水力発電は、ものすごく原始的でありながら、自然の力をエネルギーに変える仕組みです。
川原さんも、川の流れで水車を回して餅つきのような作業をさせるのも同じだと応じ、風も同様だと付け加えます。
ただ川が流れてるのを見た時にそれ(水車のアイデア)が思いつけるかどうかですよね。
すがけんさんは、価値があるものは世の中にたくさんあり、見過ごされているだけだと話します。そのものの本当の良さを引き出す観察をすれば、商売にできることは思っている以上に多いかもしれない、という見方です。
なぜ歌舞伎町は海外の人に「クール」に見えるのか
川原さんは、見過ごされている価値の例として、日本人には当たり前でも海外の人が来ると急に話題になるものを挙げます。たとえば歌舞伎町は、日本人にとってはネオンで騒がしく、ゴミゴミしてちょっと危ない場所かもしれません。
でもあれ(歌舞伎町)が海外の人来た瞬間にフォトジェニックであるっていう、まさにクールでイケてるっていう風になったりするわけですよ。
すがけんさんは「サイバーパンクな世界が本当にあったんだ」という反応になると応じます。自然が多い場所や均質的な街から来た人にとって、ネオンやノイズにあふれ、スクラップアンドビルドを繰り返す東京は、ほとんど他にない街だといいます。
二人はニューヨークとの違いにも触れます。ニューヨークは緑が多く、建物も歴史を感じさせるものが多い一方で、工事がなかなか終わらない、と笑い合いました。
ネオンで騒がしく、ゴミゴミして危ない雰囲気の街
サイバーパンクのようでフォトジェニックな、異質でクールな場所
ここって汚いって思うんじゃなくて、世界から見たら本当に異質なクールな場所なんだって思えるかどうかが、僕らが本質価値を感じれるかどうかですよね。相手に合わせて。
映像の仕事をしている川原さんは、日本人と海外の人とではカメラを構える場所がまったく違うと話します。しかも、本人が価値があると思って撮っているからこそ、その映像はかっこよく見えるのだそうです。
価値は一定ではない。売り手がすべき「相手探し」
すがけんさんは、商売をする人の究極の誤解は「価値は万人に対して一定である」と思い込むことだと指摘します。作り手が価値を生み出しているのだから、受け手が感じる価値も同じはずだと考えがちですが、実際には相手によって価値が違います。
例に挙がったのは著書『厚利少売』そのものです。書いた二人、すでに1冊持っている人にとっての追加の1冊、一度も見たことがない人とでは、同じ本でも感じる価値がまったく違います。川原さんは、読んで実践し収入を10倍にした人が得る価値も違うと付け加えました。
| 受け手 | 受け止め方 | 感じる価値 |
|---|---|---|
| 書いた二人 | 作り手として本を見る | 書き手ならではの価値 |
| すでに1冊持っている人 | もう知っているので要らない | 追加の1冊には低い |
| 一度も見たことがない人 | 「何それ?」と欲しくなる | 新しい価値を感じる |
| 読んで実践し収入を10倍にした人 | その後の成果につながった | まったく違う大きな価値 |
相手によって同じものでも感じ方がまるで違う、下手したら180度違うのが真実なんで、僕らは相手探しなんですよ。
すがけんさんによれば、売り手は相手を探すところから始めなければなりません。同じものをAさんの10倍に感じてくれるBさんがどこにいるのか、という問いから商売が始まります。
川原さんは、すがけんさんが当初「時給30万円」と設定したときの考え方と同じだと話します。単価が高ければ顧客の数は少なくてよく、日本や世界に10社ぐらいはいるはずなので、その10社を探す、という発想です。
すがけんさんは、提供できる能力は一定でも、それを「もっと高くても買いたい」と言ってくれる人がどこかにいると話します。自分の住む街にはいないかもしれないその人を探すことこそが、厚利少売の努力だといいます。
付加価値を足す「おまけ病」はなぜ危ないのか
川原さんは、単価を上げようとするとき、努力の方向として付加価値をいっぱい足そうとしてしまうのではないかと問いかけます。すがけんさんは即座に「おまけ良くないです」と答え、幕の内弁当にたとえました。
その唐揚げが美味しかったはずなのに、自信がないから卵焼きもつけて、明太子もつけて、煮物もつけて。で、気づいたら唐揚げがちっちゃくなってて、本当の大事な価値はなくなってっちゃう。
すがけんさんは、値下げやおまけで何とかするのはやめたほうがいいと話します。それでも多くの人がやってしまうのは、本質価値探しや相手探しはすぐに結果が出ないのに対し、値下げやおまけは今日できてしまうからです。
値下げやおまけで集まるのは、もっと安くしてほしいという、いいお客さんではない人たちです。その声を聞いて「あと20円安く」「のり弁みたいに海苔も」と要望に応え続けると、何屋かわからなくなり、最後には「安くしろ」と言われてしまう、とすがけんさんは話します。
今日すぐできるが、値下げ要求と細かい要望が増え、何屋かわからなくなる
すぐ結果は出ないが、単価が上がり、自信と時間を得てサービスを改善できる
すがけんさんは、本質価値を見つけ、高くても買いたい相手に高く提供することで単価が上がると話します。単価が上がれば自信がつき、時間をかけてサービスを改善でき、来年の今日の自分を楽にすることにつながります。
だってどっちも努力だし、みんな努力してるのを知ってるからこそ、これを聞いて未来を楽にする努力に入ってもらいたいなって心から思ったら、あんな顔になりました。
ビジネス用語「解像度」はもともと何を指すのか
後半はコーナー企画「ビジネス用語の世界一分かりやすい解説」です。今回の用語は「解像度」で、すがけんさんは解像度はもともとIT用語だと思っていたと切り出します。
すがけんさんの説明では、モニターの映像は人の顔そのものではなく、砂粒より小さいドットが集まったものです。1つ1つのドットの色を変えることで映像ができており、そのドットの集積が解像度にあたります。
Macのモニターなら、ざっくり2000×1000で約200万の点があります。これが2×2の4ドットだったら、映像はモザイクのようになり、二人の顔は判別できません。
紅白になっちゃうわけですよ。でもそう見えないでタクミさんに見える。そう見えないでスガケンに見える。これが解像度の高さなんですよね。
白い点と赤い点しかなく、「赤と白」としか呼べない
すがけんさんと川原さんだと見分けられる
ビジネスで「解像度が低い」とはどういう状態か
すがけんさんは、ビジネスの解像度に置き換えた例として、今「タピオカ屋が流行っているから売れる」と言うのは解像度が粗すぎると話します。一方、最近のトレンド、買っている女性像、トップインフルエンサーの移り先まで踏まえて「早めに仕掛けよう」と言えるのは、解像度の高い会話だといいます。
川原さんは、厚利少売でいう解像度には、買う側の顧客理解の精緻さがかなりの位置を占めていると気づきます。すがけんさんもそれに同意しました。
すがけんさんは椅子の例も挙げます。「椅子は年間これぐらい売れているから作れば売れる」は解像度が低い一方、デザイナーズチェアが単価10倍でも売れていて、コロナ禍で家の居心地を良くしたい人が買っている、という説明は解像度が高いといいます。ただし、すがけんさん自身「実際かどうかわからない、適当なおとぎ話」と断っています。
すがけんさんは、解像度は顧客やビジネスモデル、商品など多岐に転用できる言葉だからこそ、混乱も多い言葉だと話します。マーケティングという言葉と同じで、広すぎて深すぎるのです。
もう広すぎ深すぎでどこを指摘されたかさえわかんないんで、これ。「具体的に言うとどの辺ですか」って、どうせバカだから聞いちゃう。
社長に「解像度が低い」と言われたら、持ち帰らずに「お客さん側ですか」などと具体的に聞き、ギャップを埋めるべきだとすがけんさんは話します。コミュニケーションで解像度という言葉を使うときは気をつけたほうがいい、という指摘です。
解像度を高めるには何をすればいいのか
川原さんは、すがけんさん個人として解像度を高めるために何をしてきたかを尋ねます。すがけんさんの答えは、小さく分けて考えることから始まる、というものでした。
4ドットだと僕らは赤白って言われちゃうんだけど、200万ドットだとスガケンと川原拓巳になれるわけじゃないですか。ってことはもう点の数を増やしていくしかないんですよね。
すがけんさんによれば、本なら中身と紙に分けるように、連想ゲームで大きな存在を細かく分けていきます。分ける過程で無駄な分け方にも気づきますが、ぼんやり見えていたものを細かく分けることが最初の一歩だといいます。
分け方は日々ためておけるものです。人の会話を聞いて、ビジネスの話は「お金・商品・顧客」の3つに分けられると気づくこともあれば、マーケティングが4P ── マーケティングの基本要素であるProduct(商品)、Price(価格)、Place(流通・場所)、Promotion(販促)の頭文字をとった枠組みですの4つに分かれると知ることもあります。
マインドマップを描ける人は何が違うのか
川原さんは、解像度が高いと感じる人の特徴として、マインドマップをきれいに描けることを挙げます。すがけんさんは、そういう人はマインドマップを何度か書いていると応じます。
すがけんさんによれば、違いは情報の整理の仕方にあります。普通の人は本の段落を覚えますが、解像度の高い人は言葉同士の関係やキーワードの分岐で整理しています。
段落ごとに文章を記憶し、文章同士の整合性を見ない
言葉の分岐や関係で整理し、矛盾にも気づける
文章で覚えてる人は記憶ゲームだから変数になってない、掛け算とかになってないんで、矛盾がないんですよね。
すがけんさんは、これは特殊な訓練だが訓練すればできると話し、小説をマインドマップに書き換えてみる方法を勧めます。川原さんは、厚利少売ラジオ自体をマインドマップで整理すれば、話同士のつながりに多くの気づきがありそうだと語りました。
番組の最後には、2024年11月24日に開催される出版記念イベント『厚利少売』の告知があり、オンライン参加も募集していると案内されました。
まとめ
今回の厚利少売ラジオでは、価値は機能ではなく相手によって変わるものだという前提から、本質価値を見つける観察と相手探しの重要性が語られました。後半では「解像度」を、細かく分けて見る力として捉え直し、その高め方が示されました。
- 価値は万人に一定ではなく、同じものでも相手によって感じ方がまるで違う
- 車やロケット、歌舞伎町の例のように、視点を変えると見過ごされていた本質価値が見えてくる
- 値下げやおまけを足す努力は今日できるが、来年の自分を楽にはしない
- 高くても買いたい相手を探して単価を上げることが、厚利少売の努力になる
- 解像度を高めるには、大きな存在を小さく分け、分け方をためていくことが出発点になる

