著者より熱い男・川原卓巳はなぜ生まれた?
今回の厚利少売ラジオは、いつもと役割を入れ替えて、すがけんさんが司会を担当しています。テーマは「なぜ川原卓巳は厚利少売にときめいたのか」です。
すがけんさんは、『厚利少売』の著者は自分であるにもかかわらず、川原さんのほうが常に熱く語っていると冗談まじりに紹介します。川原さん本人も、気づくと著者以上に話してしまうと恥ずかしそうに認めます。
俺やべ、また本人よりすげー喋ってる。
ただ、すがけんさんはその熱量を歓迎しています。厚利少売という言葉自体は二人が生み出したものではなく、近年ほとんど使われなかった言葉を引っ張ってきたものです。だからこそ、自分より熱い人がどんどん現れてほしいと話します。
これはだからむしろ今後僕らより(厚利少売に)熱い人が現れてほしいぐらいなわけじゃないですか。
川原さんはこの関係を聖火ランナーにたとえます。すがけんさんからトーチで火をもらったら、自分のトーチは油がひたひたで、思った以上に燃え上がってしまったというイメージです。
火種
著者のすがけんさんが厚利少売という言葉と考え方を持ち込む
引火
パスを受けた川原さんが、著者以上に燃え上がる
延焼
二人より熱い実践者が次々に現れることを願っている
ときめきは直感から始まり、意味は後からわかる
川原さんは、厚利少売にときめいた理由を、実はきちんと考えたことがなかったと打ち明けます。もともと直感型で、ロジックより「この話は絶対に伝えなきゃいけない」という感覚が先に来たといいます。
すがけんさんは、「ときめき」は近藤麻理恵さんが新しい命を吹き込んだ言葉だと指摘します。川原さんは合理的でも打算的でもなく、儲かるからでもなく、感覚として厚利少売に出会ってしまったのだと整理します。
川原さんによれば、ラジオやすがけんさんとの対話を続ける中で、ようやく理由が言語化され、筋が通ってきたそうです。そして、近藤麻理恵さんの片づけを広めたときも、同じように「なぜやっているのか」は後からわかったと振り返ります。
片づけの現場で鳥肌が立った瞬間とは
川原さんが近藤麻理恵さんの仕事をボランティアで手伝い始め、本格的に仕事にしていく頃のことです。片づけの現場でお客さんの変化を目の当たりにし、背中まで鳥肌が立つほど興奮したといいます。
散らかった部屋を物理的に整える、お手伝いさんのような仕事
人の人生に真正面から向き合い、生き方を考え直したり変えたりする場をつくる仕事
すがけんさんはこれを「本質価値が全然違った」と表現し、川原さんもまさにそうだと応じます。川原さんは、この仕事を広めれば自分の命がもっと意味のあるものになると感じたそうです。
(素直というより)抗えない感覚だった感じ。どっちかっていうと。
川原さんはそこから、会社員を続けながらも頭の中はずっと片づけを広めることで回っている状態になりました。ただ、スタート時点では意味もやり方も勝ち筋もプランもなかったといいます。
雑誌の取材では「最初に描いた戦略はどんなものだったのか」とよく聞かれるそうです。川原さんの本音は、本当に何もなかったというものでした。
なんかやばいだけはよくわかるけど、それがなぜやばいのかと、何がすごいのかと、(世の中に)どう必要とされてて、誰に届くのかは結局後で全部理解していくっていう感覚なんですよね。
すがけんさんへの興味はどこから始まった?
川原さんは、厚利少売との出会いも片づけとほぼ同じだったと語ります。きっかけは、すがけんさんが時給30万円で働き、どんな転機を経て今の仕事をしているかを書いたnoteの記事でした。
その後オンラインで話すようになり、話のネタの引き出しや視野、頭の回転、本質を突く力のどれもが面白いと感じたそうです。仕事で変化を起こし、結果を出し続ける人は他にいないと思い、まずすがけんさん自身に強い興味を持ったといいます。
すがけんさんは「言葉では聞いても、度合いはわからない」と返し、川原さんは「彼氏彼女か」とツッコミを入れます。川原さんは、その本気度の証拠として、自分のスケジュールに占めるすがけんさんの割合の多さを挙げます。
だって今、(匠書房から)出てる本、マリエさん、僕、スガケンさんだからね。もうこれが多分事実よ。
当時はまだ出版社すらなく、『厚利少売』は発売が延びなければ匠書房の第1号出版になる予定だったと二人は振り返ります。川原さんにとって、すがけんさんと近藤麻理恵さんは「ファミリー」のような存在だといいます。
「高く売る技術」から厚利少売へ、どう結晶化した?
本づくりのための取材を重ねる中で、すがけんさんの考えは厚利少売というコンセプトに結晶化していきました。すがけんさんは、最初は「高く売る技術」から始まり、余計なものが取り除かれてキラキラしたものになっていったと話します。
川原さんの視野が開けたのは、すがけんさんが福沢諭吉 ── 明治期の思想家・教育者。『学問のすゝめ』で、身分ではなく学問によって人生が開けると説き、近代日本の価値観に大きな影響を与えましたの『学問のすゝめ』を引き合いに出したときでした。大きな時代の流れの中で今必要とされている概念こそ厚利少売だと気づいたといいます。
川原さんの見立てでは、薄利多売は言葉にもされないほど世の中に浸透し、できることはやり尽くされています。みんな苦しいのに止まり方もやり方の変え方もわからない、チキンレースのような状態です。
浸透
薄利多売が当たり前になり、できることはやり尽くされた
行き詰まり
みんな苦しいが、止め方もやり方の変え方もわからない
下地
厚利少売の覚悟や痛みを受け入れてでも変わりたい土台ができた
確信
==絶対に今伝えるべきだ==と川原さんは感じた
すがけんさんも、川原さんがプロデュースで出会うIT関係者やネイリスト、アーティストなど業種はさまざまでも、結論は「薄利多売をやめて厚利少売へ」に行き着くと指摘します。川原さんも、解像度を上げきると解法はそこしかないと話します。
すがけんさんは、川原さんが著書で掲げた「Be Yourself」の考え方にも触れます。会社員でも副業でも派遣社員でも、個人として自分らしく生きることを突き詰めると、薄利多売では無理だというのです。
川原さんは「片づけの伝道師」だった?
川原さんは最近、なぜ片づけの次が厚利少売だったのかもわかってきたといいます。自分個人として成し遂げたいことは実はあまりなく、「これはやばい」と思ったものをみんなに勧めるのが好きなのだと気づいたそうです。
すがけんさんは「根っからのインフルエンサー」と表現します。今は言葉が陳腐になっただけで、Forbesで世界に影響を与える人として選ばれるような存在が本来のインフルエンサーであり、伝道師だと補います。
(メディアって)媒介するっていう意味で、何かをいいものをこう広げていったりしていくことをメディアっていう言葉の語源なんだけど、なんかそれが生き物みたいなんですよ。
大量生産・大量消費の社会で、片づけは何を変えたのか
川原さんは、産業革命以降に大量に作って売れるようになり、インターネット革命でワンクリックで物が届くようになった流れを振り返ります。物がなかった時代には、多くの人が良いものを受け取れるようにすることが善とされていました。
しかし現代では行き過ぎて、服の半分以上が客の手に届かずに捨てられるような状況になっていると川原さんは話します。それでも人類は、それ以外の生き方を学んでいないというのが川原さんの問題意識です。
個人の単位では、物を持ちすぎて家が散らかる状態が日本だけでなく世界中で起きていると、川原さんはこんまりの仕事を通して気づきました。近藤麻理恵さんは、片づけをメソッド化し、言語化して人に伝える力を持っていた人だといいます。
川原さんは、近藤麻理恵さんが物を持ちすぎず最適な量に整える生き方へのシフトのきっかけを作ったと考えています。自身もそれに100パーセントコミットし、すべてを投げ出してやってきたと話します。
世界一になっても世の中は変えられない?
川原さんは、言い方は難しいとしながらも、片づけの道でできることはやり尽くしたと感じています。知ってもらう手段としてNetflix ── 世界190以上の国と地域で配信されている動画配信サービス。近藤麻理恵さんの番組もここで世界に届けられました以上のものはほぼなく、番組は世界一になりました。
さらに、近藤麻理恵さんの名字や愛称の「こんまり」が、片づけるという意味の英語になるところまで来ました。残るのは多言語での展開などで、大筋ではやりきったという感覚だといいます。
すがけんさんは、片づけは物が余っている先進国でないと役に立ちにくいと指摘します。川原さんも、物が足りない段階の人はもっと欲しい、豊かになりたいと考えるため、片づけが求められるのは「もう物はいらない」と感じた後のフェーズだと話します。
ぶっちゃけ、うわ、世界一って言われるようになっても、あんま世の中って変えられないんだっていう喪失感だったんですよ。
散らかっている人は依然としていて、企業側も物を大量に作り、安いものを増やす動きはむしろ加速しています。すがけんさんは、企業が株価で動いている以上、売上を上げるには多く売るしかなく、多く売るなら薄利にせざるを得ないと説明します。
株価
企業は株価を上げることを求められる
売上
株価を上げるには売上を上げるしかない
多売
売上を上げるにはたくさん売るしかない
薄利
たくさん売るなら薄利にせざるを得ない
川原さんは、減らす側に回りたい人が世界にこれだけいると見えたことはやってよかったと話します。それでも、その人たちと手を取り合っても企業の動きを緩めることすらできないと感じ、喪失感を抱いたといいます。
宇宙を片づけに行こうとした時期があった?
すがけんさんが「世界一の次は宇宙一しかない」と茶化すと、川原さんはどこでも話していないという告白をします。次の目標がわからず、本気で宇宙を片づけに行くのかと模索した時期があったというのです。
じゃあ例えばイーロンがコロニー作るんだとしたら、そこを散らからないようにするみたいな。人類の発展に貢献していくのかなとかも考えたのよ、事業として。
すがけんさんは「めちゃくちゃこじれてる」と笑いつつ、それだけやりきったということだと受け止めます。川原さんも、重箱の隅のような方向に頭を使いまくっていたと認めます。
川原さんは当時、片づけの側からは加速させるより今の良い状態を長く続けるほうがいいと気づき始めていました。中国のように発展が進んだ国も候補にはあるものの、国のブロックなどの難しさもあり、すぐには動けない状況でした。
企業側に「違う成長」を示せたら何が変わる?
川原さんの中で、次に何ができるのかを考えていたタイミングと、厚利少売が出てきたタイミングは重なっていたといいます。それは、物をたくさん作らなくてもしっかり利益が取れ、しなやかに成長できる方法でした。
俺片付け側で個人からやろうと思ってたけど、企業側に違う成長を示せたら、もっと捨てなくていい未来とか、(中略)生き方を変えていける可能性あるんじゃない?って思えて
すがけんさんは、年末に同じ話をしたときにも川原さんが「ピカーっと」輝いていたと振り返ります。そして、個人と企業の両方に取り組まなければならないと続けます。
すがけんさんの説明では、こんまりの片づけが世界中に広がれば、企業は物が売れなくなって困ります。そこで厚利少売は、買う数を増やさず、価値を上げて高く払ってくれる人を増やすという選択肢を企業に示します。
すがけんさんは、根幹はラグジュアリービジネスだとしつつ、富の分配がいびつになっている中で、多く持つ人からきちんとお金をいただく考え方だと話します。
ときめくものだけを買う価値観が広がり、物を持ちすぎない生き方へ移る
数を売らず、価値を上げて高く買ってくれる人に届ける成長へ移る
すがけんさんは、消費者が物をいらないと言えば企業は困り、企業が良いものを作っても消費者がいらないと言えばミスマッチになると指摘します。ときめくものを買う価値観が広がるほど、企業は安心して厚利少売に進めるというのがすがけんさんの見方です。
なんか100着買うんじゃなくて、10着、10着買うんじゃなくて1着ってなるんだったら、1着の予算は100倍になるわけじゃないですか。
2カ月着続けたパーカーが教えてくれること
すがけんさんは、服好きの自分でさえついたくさん買ってしまうと打ち明けます。今着ているパーカーは2カ月ほど着続けていて、その間に買った服は何だったのかと振り返ります。
さらにすがけんさんは、この1年ほど1足の靴だけをすり切れるまで履いていると話します。川原さんも「必ず戻っていく服がある」と共感し、それが本来は最上の喜びだと応じます。
うわ、これ破けてもまだ履きたいんだよなと思う靴がいいし、(中略)このパーカー着心地いいんだよなが一番いいわけで。
すがけんさんは、近藤麻理恵さんの個人の片づけと厚利少売の間にあるのが、川原さんの「Be Yourself」だと位置づけます。人が人らしく生きようとする前提があるからこそ、個人は勇気を持ってときめきに振り切れ、企業も信じてものづくりに打ち込めるといいます。
なんか使命を今言語化されて、なんか魂が喜んでいるっていう。
ビジネス脳とたどり着いた「約束の地」の違い
すがけんさんは、自分と川原さんでは厚利少売への喜び方が違うと話します。すがけんさんは「ビジネスでうまくいくなら厚利少売」というビジネス脳で結果を出す立場で、あえて対比するとそうなるといいます。
その成功と苦悩のアップダウンを繰り返しながらたどり着いたオアシスみたいな(厚利少売の)捉え方だから、これがついに約束の地なのかみたいな感じじゃないですか。
川原さんはこれを聞き、近藤麻理恵さんとの関係でも同じことをしていたと気づきます。セコイア ── シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル。数多くの著名テック企業に初期から投資してきたことで知られますの投資家と話すうちに、人類の課題を解く話ばかりするようになったそうです。
一方の近藤麻理恵さんは、物をどの引き出しにどう入れると一番気持ちいいかに最高の感覚を得る、片づけオタクのプレイヤーでした。川原さんが熱く語っても、熱量が違いすぎたといいます。
片づけが人類の課題をどう解き、世の中をどう変えるかに興奮する
どの引き出しにどう入れると気持ちいいかという、足元の片づけそのものに情熱を持つ
すがけんさんは、この関係をテスラやスペースXのイーロン・マスクと技術者の「博士」にたとえます。博士は技術的な課題を解くことに関心があり、それが世の中をどう変えるかにはあまり興奮しないだろうというわけです。
投資家に厚利少売を届けたらインパクトは大きい?
話しながら川原さんは、セコイアほどの規模を運用する投資家や、その投資先企業が厚利少売を取り入れたら大きなインパクトがあるのではと思いつきます。すがけんさんも、薄利多売の市場で厚利少売のビジネスが成り立つなら、投資家にとって良いカウンターカルチャーになると賛同します。
川原さんは早速、DMを送るために厚利少売を英語でどう言えばいいかを考え始めます。すがけんさんは、ハイリスク・ハイリターンのように、ローマージン・ハイマージンといった言葉で説明できそうだと提案します。
川原さんは、パートナーと普通にショートメールでつながれる距離感は自分の貴重な資源だと気づきます。かつてはそのショートメールが届くたびにビクッとしていたと、笑いながら振り返ります。
なんかやっぱり改めて僕は(厚利少売に)出会えてよかったし、もっと自分も実践したいし、やる人を増やして、そっち側に世の中を持っていきたい。
すがけんさんも、ラジオで一人でも実践者を増やすとともに、今年は企業への取り組みも進めたいと話します。
自分を「左下」に置き続けるという思考法
最後にすがけんさんは、A4の紙を横にしてグラフを描く話をします。成長は左下から右上へ伸びていきますが、自分が右上にいると思うと余白がなくなり、成長できなくなるといいます。
すがけんさんは、成功したい人ほど右上にいると錯覚したがるものの、それには何もいいことがないと続けます。まだまだやれると思えると、勝手に余白が見つかってくるため、脳トレとしてもお得だという考え方です。
川原さんは「常に左下に自分を置いて、右上に広大な可能性がある」と受け止めます。番組の最後には、川原さんが厚利少売を広げることが自分の一番やりたいことだと語り、リスナーに同志として力を貸してほしいと呼びかけました。
まとめ
川原卓巳さんにとって厚利少売は、こんまりの片づけを世界一に導いた後に感じた喪失感の先で出会った、次の使命でした。個人の片づけと企業の厚利少売を、Be Yourselfがつなぐという未来像が、二人の対話の中で言語化されました。
- 川原さんは、片づけも厚利少売も直感でときめき、その意味は後から理解してきた
- Netflixで世界一になっても、大量生産・大量消費の流れは変えられないという喪失感があった
- 個人がときめくものを選ぶ片づけと、企業が価値で稼ぐ厚利少売は両輪だとすがけんさんは語る
- その土台には、人が自分らしく生きる「Be Yourself」がある
- 自分を常に「左下」に置くことで、成長の余白が見つかり続ける

