なぜ今ポルケッタを取り上げるのか
今回のテーマは、店の名物料理でもあるポルケッタです。
kojiさんは、以前も少し話したことがあるかもしれないと前置きしつつ、改めて深掘りすると話しています。
きっかけは、店のホームページへの検索流入でした。パスタや篠栗町パスタなどで訪れる人がいる中、最近「ポルケッタ」というワードが増えてきたそうです。
「ポルケッタ」単体や「ポルケッタとは?」で検索したとき、オッタントットのホームページが上位に表示され、そこから見に来る人が多いといいます。
最近ちょっと気になるワードが入ってきてまして。それがポルケッタなんですよね。ポルケッタという単体のワードだったり、ポルケッタとは?で検索かかってたりして、その時にもオッタントットのホームページが割と上位に表示されていると。
何かのきっかけで興味を持つ人が増えているのだろうと考え、今回おさらいすることにしたそうです。
ポルケッタとは何か、アリッチャとIGP
ポルケッタは、言わずと知れたイタリアの伝統料理です。オッタントットでは豚バラ肉を使っていますが、古くは、そして今でもイタリアでは豚の丸焼きのことをポルケッタと呼びます。
エリア的にはローマ近郊のアリッチャという小さな街の名物です。EUが定めるIGPに認定されているのが、このアリッチャのポルケッタだと説明されています。
kojiさんはIGPを「この地域の特産ですよっていうハンコをEUが押している感じ」とかみ砕いて説明しています。アリッチャ以外で作られたものは「アリッチャのポルケッタ」とは名乗れません。
同じイタリアではモデナのバルサミコ酢、イタリア以外ではスコットランドのスコッチウイスキーなども、同様の考え方の例として挙げられています。
IGPの規定では、アリッチャのポルケッタはメス豚を使い、調味料は塩、コショウ、ニンニク、ローズマリーの四種類のみとされています。
この四種類だけで作られたものが「ポルケッタ ディ アリッチャ」と名乗れ、それ以外のものは同じ街で作られても「ポルケッタ」と分けて呼ぶそうです。
ちなみにアリッチャには、ポルケッタを仕込む専門の職人という職業もあるらしく、kojiさんも驚いたと話しています。
大地の女神と豚の丸焼きの由来
ポルケッタは、五月の春の収穫祭で作られていた料理だと語られます。キリスト教に関わるお祭りで、日本でいう五穀豊穣祈願のような位置づけかもしれないと説明されています。
この祭りでは、大地の実りの女神マイヤに捧げる料理としてポルケッタが作られていたそうです。
イタリア語で豚肉を意味する「マイヤーレ」は、この女神マイヤに捧げる料理だったことが語源になったと言われています。さらにマイヤは英語の五月「MAY」の語源にもなったと語られています。
豚の丸焼きの作り方も紹介されています。豚のお腹を割き、骨と内臓をすべて抜いて肉と皮だけにした状態で、塩、ニンニク、ハーブなどを詰めます。
それを棒に刺してじっくり焼くことで、皮はパリッと、肉はガッツリした仕上がりになります。そのまま食べたり、パンに挟んでパニーニとして食べたりするそうです。
皮をパリッとさせておくと、翌日など冷めてからもその食感がなくならないらしいと話されています。
二千年前のレシピ本と美食家アピキウス
ポルケッタの歴史は古く、二千年前にはすでに食べられていたのではないかと言われています。
その根拠として、人類最古のレシピ本と言われる「アピキウス」が挙げられます。正式には「デッレ・コキナリア」という料理書のタイトルで、四、五世紀ごろに作られたものだと語られています。
「アピキウス」という名は、一世紀ごろに実在した美食家マルクス・ガビウス・アピキウスに由来します。彼が考案した料理や当時の貴族が食べていた豪華な料理のレシピを、後世の料理人たちが編纂したものだそうです。
三、四世紀経ってからまとめてるっていうのも、なかなかの時代感だなと思うんですけど。アピキウスが書いたわけではないんですよね。なんだろうな、クックパッドみたいな感じなんですかね、今でいうと。
この書物の中には、ハーブやスパイスを詰めてローストした子豚という記述が数回出てくるといい、これがポルケッタなのではないかと言われています。
当時の書物はパピルスや羊の革などに記されていたようで、印刷や記録の詳細ははっきりしないとしつつ、そうした古い書物にすでに記述があった点が語られています。
また、ローマ帝国五代目の皇帝で暴君として知られるネロが、ポルケッタを大好物としていたとアリッチャでは言い伝えられているそうです。
食への執着が極まった美食家の逸話
ここからは完全な余談として、美食家アピキウスの逸話が紹介されます。食への執着が段違いの人物だったといいます。
エビを大きくするために豚肉を餌にしようとした、という説が残っているものの、kojiさんは信憑性は乏しいと感じています。より立派なザリガニを求めて旅をしたという記述もあり、そちらが本当ではないかと話しています。
豚のレバーを美味しくするため、餌にドライイチジクを与えたり、蜂蜜入りのワインを飲ませてから屠殺したという逸話も紹介されます。いわばフォアグラの豚肉版のようなものです。
財産も豊富だった彼ですが、ある日残りの資産を計算すると1,000万セステルティウスしかなかったといいます。現在の日本円で数億から数十億に相当すると言われる額です。
それでも満足な美食は得られないと考え、自ら服毒自殺をしたと伝えられています。一方で、借金取りに追われ、空腹になるくらいなら死んだ方がましだと考えたという記述もあると紹介されています。
お金がいっぱいあったのに、これじゃ足りないって言って死んだっていう方がぶっ飛んでて、話としては面白いんじゃないかなとは思いますけどね。
日本に伝わったポルケッタと店での作り方
イタリアで二千年前から食べられてきたポルケッタは、日本にも伝わってきました。おそらく1990年代のバブル期、イタ飯ブームの頃だろうと語られています。
パスタやピザといったカジュアルな料理が広まる中、ポルケッタはマニアックな部類でした。本物にこだわるシェフが一部で作り、マニアックな客に向けて提供していたのではと想像されています。
近年はSNSの普及もあり、少しずつ認知が上がってきたのではないかとkojiさんは考えています。何かのきっかけでワードに触れた人が検索し、店のホームページに行き着いているのだろうという見立てです。
オッタントットでは豚バラ肉を使い、調味料は塩、ニンニク、そしてフェンネルシードの三種類です。
フェンネルシードを使う理由は、以前ポルケッタを調べたとき、現地では塩、ニンニク、野生のフェンネルシードが欠かせないと書かれていたのを見たからだと語られています。
珍しいスパイスではあるものの、イタリア系の輸入食材屋で普通に手に入るため、イタリアでは一般的なスパイスなのだろうと話されています。
国内では豚の肩ロースを使う店もあります。kojiさんも一度試したものの、普段と同じ作り方では硬く仕上がったため、豚バラに戻したそうです。やり方次第では柔らかくできたかもしれないと振り返っています。
現地イタリアでは、豚の丸焼きのほか、レストランでは豚ロースを芯にして周りを豚バラで巻く二段構えのスタイルがメジャーだと記述にあったと紹介されています。
kojiさん自身も、地ビールのイベントでイノシシを使い、小さめの部位をバラで巻いてポルケッタにしたことがあるそうです。バラの脂のジューシーさと、中の赤身のしっかりした肉感の両方が楽しめる技法だと説明しています。
なぜ塩・ニンニク・フェンネルの三つに絞ったのか
イタリアでは伝統的にハーブやスパイスをふんだんに使うレシピが基本です。これは肉の質や保存状態が関係していると考えられます。
冷蔵庫が普及していなかった時期が長く、肉の臭みが強かったため、それを消す目的でハーブやスパイス、ワインへの漬け込み、ビネガーなどが使われていったのだろうと語られています。
一方、現代の日本は冷蔵技術が発達し、何より肉質がよいとkojiさんは話します。畜産では最高レベルの肉を作っているのではないかという見方です。
ただし質の好みはあり、日本は脂の甘さやサシを重視する傾向があるため、赤身好きには苦手かもしれないと補足されています。スペインのイベリコなどは日本ほど脂が乗っていない印象だと話されています。
臭みが少ない日本の豚では、ハーブやスパイスは必須ではないと考え、必要ないと思ったものを省いた結果、塩、ニンニク、フェンネルシードの三つに落ち着いたそうです。
八年で変化した提供方法と仕上げ
八年やってきた中で、提供方法も少しずつ変化してきました。
以前は、豚バラを巻いて焼き、一日休ませてからオーダーごとにカットし、フライパンで表面を焼いてからオーブンで温める方法でした。今はフライパンのみで完結させています。
弱火でじっくり焼くと、表面がパリッとなったころに中まで温まる状態になるとわかったためです。そのほうが表面のパリッと感も出やすいといいます。
仕上げには、十年熟成のバルサミコ酢を軽く煮詰めたものをかけ、ポメリーの粒マスタードを添えます。
以前はピンクペッパーを使っていましたが、最近はカカオニブに変えています。
きっかけは、隣の飯塚市にあるビーントゥーバーのチョコレート屋「カカオ研究所」の社長が来店した際、ポルケッタにカカオニブが絶対合うと持ってきてくれたことでした。
何しろやっぱりこの社長の熱量がすごかったので、カカオ研さんが言うのであれば、これはもう使った方がいいのかもしれないということで、最近ではピンクペッパーではなくてカカオニブを使っていますね。
酸のある香りが油感を中和し、料理を邪魔しない点が合っていたそうです。
また、肉料理はサラダと一緒に食べてほしいという思いから、サラダもたっぷり添えています。イタリアンパセリも欠かせないと考えていますが、今は畑で育っておらず切らしているとのことです。
マイナーだからこそ、篠栗で食べてほしい
認知度が上がってきたのではと語りつつ、kojiさんは裏付けとなるデータがないことを正直に認めています。
いろいろ調べても、ポルケッタというワードはまだまだマイナーだと感じるそうです。データがないこと自体が認知度の低さの表れだと考えています。
それでも、篠栗町のオッタントットならいつでも食べられると力を込めます。時々切らすこともあるものの、切らさないようにしているそうです。
煮込んでもないのにこんな柔らかいの?っていうふうに驚くと思うんですよね。ほんとオッタントットの名物ですから、ぜひとも篠栗のオッタントットにご来店くださいということで。
お知らせ
最後にお知らせです。まずワインシェアとして、ユカセレクションのワインを無料で提供できているとのことです。生産者はジェシカ・リトーで、マコン・フィッセというワインです。
この無料提供は、普段は来店客からのチップで成り立っていますが、今回はROOMの「ユルム部屋」のサブスク売上が大きく入っているそうです。
ユルム部屋には毎月550円で入れる「ワインシェア基金」というコミュニティがあり、そのメンバーからの支援が反映されていると、kojiさんは感慨深く感謝を述べています。
ROOMというサービスを使って、番組のコミュニティ「ユルム部屋」を運営しているという仕組みです。無料でやりとりでき、概要欄から参加できます。
オリジナルビール「ユルム」は在庫が残り六本で、次の納品からは生ビールでの提供を予定しています。約五十杯ほどのため、金曜土曜など日を決めて提供する形を考えているそうです。
SUZURIでのグッズ販売もあり、こちらの売上もワインシェアのチップに入るとのことです。
番組への感想やお便りは、Xのハッシュタグ「おカン」、ユルム部屋のフリーチャット、概要欄のメールフォームから送れます。
まとめ
ポルケッタは二千年の歴史を持つイタリアの伝統料理で、その背景を知ると一皿の見え方が変わってきます。オッタントットは日本の良質な豚と向き合い、必要なものだけに絞った独自の形にたどり着いています。
- ポルケッタはローマ近郊アリッチャの名物で、IGP規定では塩・コショウ・ニンニク・ローズマリーとメス豚のみが認められている
- 女神マイヤに捧げる料理が語源とされ、人類最古のレシピ本アピキウスにも子豚のロースト記述が残る
- オッタントットは臭み消しが不要な良質な日本の豚に合わせ、塩・ニンニク・フェンネルシードの三つに絞っている
- 仕上げはバルサミコ酢と粒マスタード、そしてカカオ研究所社長の勧めで加えたカカオニブが特徴
- まだマイナーな料理だが、篠栗町のオッタントットではいつでも柔らかいポルケッタが味わえる
