そもそも「ムサコ」ってどこの街?
武蔵小山の話に入る前に、まず「ムサコ」という略称をめぐるやりとりから始まります。
都内近郊で「ムサコ」というと、武蔵小山か武蔵小杉、中央線沿線だと武蔵小金井が候補に挙がります。ただし、どこに住んでいるかによって指す街が変わるといいます。
どこに住んでる人によって、ムサコっていう概念が変わる。
陸田さんは、「ムサコ」という呼び方の広まり方に注目します。武蔵小杉にタワマンが増え、新しく住み始めた人たちが使い始めたのではないか、という見方です。
もともとそこに住んでた人たちってムサコって多分呼んでない。
陸田さんの先輩はその辺りが地元で、タワマンができる前はNECの工場などが並ぶ工業地帯だったと話します。バスの行き先表示も「武蔵小杉駅行き」ではなく「小杉駅行き」で、地元の人はみな「小杉」と呼んでいたそうです。
一方で、キャッチーで都会っぽい響きから、いつの間にか「ムサコといえば武蔵小杉」というイメージが定着していったといいます。
武蔵小山ナンバーワンラーメン「じらい屋」 ※2026年4月閉店
話題は武蔵小山のラーメンへ。陸田さんが真っ先に名前を挙げたのが「じらい屋」です。
俺に武蔵小山のナンバーワンラーメンはじらい屋でいいです。
じらい屋は、かつて再開発前の飲み屋街にあった店です。今タワマンが建っている場所にあり、そこから移転を重ねて現在の場所に落ち着いたといいます。
再開発前の一帯は、戦後の横丁のような、ハーモニカ横丁を思わせるディープな飲み屋街だったと2人は振り返ります。
ディープな感じの、なんか戦後の感じの横丁みたいな。
肝心の味について、醤油・味噌・塩がそろい、特に有名なのはチャーシューだといいます。塊で売っていたこともあるほどの看板メニューです。
店主については、無口で偏屈な雰囲気のおじさんが、ずっと一人で切り盛りしているといいます。行列ができる有名店で、油まみれの店内も含めて武蔵小山では一番の知名度だと2人は口をそろえます。
フレンチ出身シェフの「一途」と、カツオ出汁の「ボニートボニート」
小柳さんが好きな店として挙げるのは「一途」です。元フレンチのシェフが手がけるラーメン店だといいます。
目黒雅叙園などで働いていた人がやっている店で、メニュー名にはかつて娘の名前などがつけられていたそうです。数が増えて、今は知り合いの名前などもつけているのではないか、と2人は話します。
一番有名なのは「エリ」という味噌ラーメンです。フォンドボーを使い、上にエスプーマのような泡が立った、フレンチ寄りの一杯だといいます。
すげえなんかおしゃれな味噌ラーメンだけど、ちょっとフレンチに傾いてる感じ。
食べ進めると、はじめドロっとしていた泡がだんだんスープになり、普通の味噌ラーメンに近づいていくといいます。さらに四川風のスパイスの効いたラー油を加えると、麻婆豆腐のような味に変わるそうです。
もう一つ小柳さんが好きなのが「ボニートボニート」です。駅から北側、環七を学芸大学側に出てすぐ左に入ったところにあります。
ボニートはカツオを意味するスペイン語で、その名の通りカツオ出汁をたっぷり使ったラーメンだといいます。
焼肉「ホルモン芝浦」と、知る人ぞ知る北側
続いて陸田さんが挙げたのが焼肉店です。小山台高校の近くの路地を入ったところにある「ホルモン芝浦」で、超うまいと太鼓判を押します。
ホルモンを芝浦から直送しているとみられ、小柳さんも「焼肉といえば芝浦」と応じます。ホルモン好きの小柳さんも行きたい店の一つに加えます。
話は普段あまり触れない駅の北側へ。北側には小山台高校があり、菅直人が卒業した都立の進学校だと小柳さんは説明します。
北側の商店街は短いものの、まだ再開発されておらず、昔ながらの店が残っているといいます。突き当たりの手前には、何でも置いてある中古の雑貨屋のような、少し怪しい店もあるそうです。
なんかね、あるよね。泥棒市場みたいな。そういう感じの怪しい雑貨屋さん。
さらに環七を西小山側に渡ったところにも商店街が続き、有名なピザ屋があるといいます。有名店で修業した人が営む石窯のピザ屋で、その先にはサルバトーレ・クオモもあると陸田さんは付け加えます。
高田道場と、女子プロレスラーの店があった街
武蔵小山には、かつて格闘技の拠点もありました。パルム商店街を南に進んだ通りの角、地下に高田道場があったといいます。
詳しくない青野さんが「格闘技の街としても有名なのか」と尋ねると、小柳さんは、道場はもうなくなったものの、一時期は「武蔵小山といえば高田道場」というほど知られていたと答えます。
武蔵小山といえば高田道場あるよね、ぐらい有名だった。
再開発された高田道場の近くには、女子プロレスラーの井上京子の店もあったといいます。顔にペイントをした写真が飾られているような店だったそうです。
タワマンの一階に「綺麗な焼き鳥屋」がある不思議
武蔵小山の再開発は、街の風景を大きく変えました。かつて駅を出てすぐ左手の一角は、二階建てほどの小さな店が並ぶ飲み屋街だったといいます。
三茶の鈴蘭通りとか、そういうのに似てるような感じで。
その飲み屋街は完全にタワマンになり、一階には昔からあった焼き鳥屋などが入っているといいます。ビルの一階に、新しくて綺麗な焼き鳥屋があるという、少し不思議な光景です。
あんまさ、新しくて綺麗な焼き鳥屋って見ない。
タワマンは三階ほどまで店舗が入り、パルム商店街と雨に濡れずに行き来できるといいます。駅直結に近い立地で、住みやすさは抜群だと3人は話します。
一方で、再開発によって家賃は上がってきているといいます。かつて2人が住んでいた頃は安かったものの、今は開発が進んで高くなっているそうです。目黒まで歩ける距離という利便性も、その一因かもしれません。
行列の「牛太郎」と、立ち飲み「晩杯屋」1号店
飲み屋の話は続きます。駅からすぐの「牛太郎」は、コの字型のカウンターの店で、開店前から常連が並ぶ人気店だといいます。
夕方ちょい前ぐらいにそこの近く行くと、もう開店前に人がガーって並んでんの。
もつ焼き系が有名な店で、3、4年前に一度潰れたものの、復活したという話も聞いたと小柳さんは話します。
そして武蔵小山を語る上で外せないのが、立ち飲みチェーン「晩杯屋」です。今はいろいろな街にありますが、その1号店が環七沿いのすぐ近くにあるといいます。
店名は「晩杯屋」と書き、吸血鬼のヴァンパイアとかけた名前だと2人は説明します。渋谷や新中野など各地に展開する人気店の、始まりの場所が武蔵小山にあるというわけです。
詳しくなかった青野さんも、意外な奥深さに驚いた様子でした。ただし「ムサコ」と口にして、武蔵小杉と間違えないよう念押しされる一幕もありました。
まとめ
武蔵小山編の後半は、ラーメン、焼肉、ピザ、立ち飲みと、街に詳しい2人が名店を次々に挙げていく食の回でした。再開発でタワマンが増える一方、昔ながらの飲み屋街や北側の商店街、格闘技の記憶も残る街の重層的な魅力が語られました。
- 武蔵小山ナンバーワンラーメンとして挙がったのは、チャーシューで有名な「じらい屋」
- 一途の「エリ」は、泡が立つフレンチ寄りの味噌ラーメンで、食べ進めると味が変化する
- 焼肉なら芝浦直送の「ホルモン芝浦」、カツオ出汁のラーメンなら「ボニートボニート」
- かつては高田道場や女子プロレスラーの店もあり、格闘技の街としても知られた
- 立ち飲みチェーン「晩杯屋」の1号店は武蔵小山の環七沿いにある







