初のスペシャルゲスト・尾原和啓さんの異常なライフスタイル
番組初のスペシャルゲストとして、尾原和啓さんが登場します。自己紹介からしてすでに常軌を逸しています。
転職15回やってる人間のクズで、バリとシンガポールの二拠点生活をベースとしながら、年間100フライト、世界を放浪しながら本を書いたり、いろんなことをしてる人間でございます。
転職15回のうち、クビになったのは最初のマッキンゼーだけ。新しい環境に飛び込んでも、3日後には「10年いるような感じだよね」と言われるほどの適応力が特徴です。
いかにクイックにブート、その次の天地で再起動して、転職した3日後には「尾原って10年いるような感じだよね」って言われるようになるっていうのがまあ特殊。
田中さんは、尾原さんの著書『プロセスエコノミー』を3回読み直し、note のメンバーシップも購読していたと明かします。ただ、あまりの情報量に「途中からついていけなくなって解約した」というエピソードも飛び出しました。
カクヨムのランキングまで押さえる情報量
けんすうさんが尾原さんの異常さとして挙げたのが、話をしていて「尾原さんの方が知らないこと」がほとんどない、という点です。象徴的なのが、ウェブ小説投稿サイトカクヨムKADOKAWAが運営する小説投稿サイト。ユーザーが自作の小説を投稿・公開でき、ジャンル別のランキングも公開されている。の話題でした。
ウェブ小説のこのランキングのこの位ぐらいの話をした時に普通に知ってるみたいな。
とりあえずでもトップ10は全部カバーするもんでしょ。
なぜそこまで押さえているのか。理由は「先行指標」としての価値にあります。
ただインディーズなんですけど、異世界転生ものとか、今アニメ界を席巻するものの数年前の兆候が見えるっていう先行指標なんですよ。
田中さんはこれを「東京ホット100じゃなくて、インディーズのチャート全曲がわかりますみたいな感覚」と例えていました。
一日の情報摂取量と「2.7倍速」ポッドキャスト
気になるのは、そもそも一日にどれくらいの情報を摂取しているのか、という点です。
基本的にはヘッドセットずっとしているので、空き時間は基本的には2.7倍速で常にポッドキャストが何かかかっているか、最近はOpenCloで情報を吸い出したものをNotebookLMでポッドキャスト化してくれるので、自分で作ったポッドキャストがずっと流れているっていう状態がまずベース。
そのうえで、朝6時から8時を「プレゼントタイム」と決め、友人へのおすすめメッセージを毎日30通ほど送っているといいます。ベースとなるのは、論文30本・Kindle本5冊・漫画3冊という一日の摂取量です。
論文を一日大体30ペーパーぐらい読んで、Kindleブック一日5冊ぐらい読んで、あとまあここ我々の共通点ですけど、漫画を大体一日3冊ぐらい読むっていうのがまあベースラインですよね。
驚くべきは、平常運転のポッドキャスト再生速度です。田中さんが「2.7倍って聞き取れるんですか?」と尋ねると、こう返ってきました。
忍者が毎日竹を飛ぶと、ちょっとずつ竹が伸びていくと、竹を超えるジャンプ力が起こるっていう、当たり前の基礎訓練あるじゃないですか。これを音声版で。
2.7倍速はまだ「途上」で、体調が良ければ3.6倍、集中して聴くときは4.2倍までいくといいます。逆に2.4倍しか聴けない日は「今日はスローペースにしなきゃ」と、脳の回転速度のバロメーターとしても機能しているそうです。
「本はメートルで買え」
論文30本、本5冊、漫画3冊を一日で読む。この物量を可能にしているのがメートルで読む方法です。
マッキンゼーって本当に3ヶ月単位で相手の会社の本質を手繰るようなプロジェクトに、素人な状態で入るわけですよね。そうすると最初の一週間で、この業界の流れどころか、コア技術は何なのかとか、地政学は何なのかとか、あらゆるジャンルを速習しなきゃいけないんですよ。その時に学んだ考え方が「本はメートルで買え」なんですよね。
冊単位ではなく、メートル単位で買う。そしてそれを一日で読む、というのが尾原さんの速習術です。ではどう読むのか。ポイントは「全部理解しようとしない」ことだといいます。
本をバラバラっと見て、「これ多分こういうこと書いてある本だな」っていうものを見たら、「この本から僕は何を得たい?」っていうゴール設定するんですよ。
ゴールを決めてからパラパラとめくると、その関心に沿って情報が目に飛び込んでくる。200ページの本なら、一周およそ2分の拾い読みで済むそうです。
拾い読みして、まだいけそうだなと思ったらゴール設定し直すんですよね。また2分で拾い読みする。大概の本は3周ぐらいするといける。
つまり6分ほどで一冊を「インデックス化」してしまう読み方です。全体像のマップが頭の中にできあがるので、必要になった時に必要な章だけを本格的に読み直せばよい、という発想です。
AIで論文をスクショ→PDF→NotebookLMポッドキャスト化
この読み方は、AIの発達によってさらに進化しました。論文を読み込む際のワークフローは次のようになっています。
今日はあるクライアントに関して、あるバイオ系の特定領域の新しいAIを使ったやり方に関して徹底的に論文を読もうと決めた時に、20個とか30個ぐらい論文読むんですけど、気になるページをiPadで丸してスクショして、っていうのをひたすら溜めて。ここから先が大事なんですけど、これをPDFにするんですよ。スクショしたページだけを。
気になるページだけを集めた1本のPDFを作り、それをNotebookLMGoogleが提供するAIノートアプリ。アップロードした資料をもとに要約や質問応答、音声ポッドキャストの自動生成などができる。に投入します。すると、AIが「この関心事はこうまとめられます」と体系化までしてくれるといいます。
赤丸で丸をしたところだけを全体のストーリー作ってくれって言うと、AIちゃんが「多分この関心事はこういうふうにまとめることができますね」みたいなことを体系化やってくれるんですよ。
かつて頭の中で作っていた「マップ」を、AIに任せられるようになったわけです。SNSでブックマークしたポストも、そのままOpenClow(要確認: OpenClow)にディープリサーチをかけ、調査結果をポッドキャスト化して聴いています。
論文をスクショ
気になるページに丸をつけながらiPadで大量に保存する
PDFに集約
スクショだけを集めた1本のPDFを作成する
NotebookLMで体系化
AIが赤丸箇所からストーリーとまとめを生成する
音声で高速消費
自動生成されたポッドキャストを2.7倍速以上で聴取する
思想の上流を定点観測する
情報収集の思想として尾原さんが挙げるのが、「思想の上流」を押さえるという考え方です。世の中のムーブメントを起こす発信者を定点観測し、彼らの発言の文脈ごとインストールしていくのだといいます。
この人が何か話し始めると世の中のムーブメントが起きるよっていう、この川の上流にいる人が発信した瞬間に、その人が発信したことよりも、その文脈とか解釈に詳しくなるっていうことをひたすらインストールする。
さらに徹底しているのは、その発信をディープリサーチにかけ、ファクトチェック付きでポッドキャスト化して聴いているという点です。けんすうさんが「これどう思いますか」と聞くと、5分後には40ページのPDFレポートが返ってくる、という体験談も紹介されました。
「これどう思いますか?」って聞くと、なんか20件ぐらいのメッセージで返ってきて、その後に40ページぐらいのPDFができて返ってきて怖いんですよ。
返信をそのままコピペしてOpenClow(要確認: OpenClow)に流すだけで、雑談している間に調査ブックが仕上がっている、という仕組みです。
iモードで培った「先を読む」情報設計
けんすうさんは、尾原さんのすごさを「ディープリサーチで知ったかぶりをしているのではなく、既存の知識との掛け算で返してくる」点にあると指摘します。その原点にあるのが、iモードNTTドコモが1999年に開始した携帯電話向けインターネット接続サービス。日本のモバイルインターネットの草分けとなった。の立ち上げ経験でした。
iモードって本当に幸せなプロジェクトで、ドコモとして「もしもしハイハイの電話からデータ通信を使う」っていう世界に誘わないと限界が来る。人口の3%の人がモバイルめっちゃ使うんじゃなくて、人口の100%の人が少しでも情報を使う世界を作りたい、というのに準備期間を3年使わせていただけたんですよね。
3年後の未来から逆算する経験を通じて、「今仕込むべき情報」と「一度設計すれば10年変わらない部分」を切り分ける訓練を徹底的に積んだそうです。
後からアップデートされていくけど、ここは一回設定しちゃうと10年変わらないから、ここだけはしっかり作んなきゃいけないみたいな区分けみたいなことを徹底的に訓練させていただいた。
ビジュアルメモリーと「掛け算だけに脳を使う」思考法
これだけの量を摂取して、脳は本当に処理できているのか。田中さんの素朴な疑問に、尾原さんは「ここだけは真似できないかも」と前置きしつつ、自身の特性を明かします。
もともと僕ビジュアルメモリー持ちなんですよ。一回見て覚えられると、本とかが楽しくなくなるんですよね。単なる記憶ゲームのものって全然意味ないじゃないですか。子供の頃から「あの本とあの本って多分こういうことだよな」みたいな、本と本の掛け算ゲームが自分にとっての本当の読書になる。
普通の人が「記憶」に使うワーキングメモリを、尾原さんは「知識と知識の掛け算」に振り切って使っている、という自己分析です。田中さんは、これこそAI時代に最適化された脳の使い方だと反応します。
Facebookが出たことで、人間はダンバー数って言って、友達としてネットワークを持てるのは500人までっていうのが脳の容量で決まってる、という話があった。でもSNSが出てきて、ダンバー数を支えている脳の[[扁桃体::脳の側頭葉深部にある領域。感情や情動、社会的認知に関わるとされ、近年はSNS利用との関連を指摘する研究もある。]]が肥大しているっていう事実がある。
もしかしたらAI時代、目の前のことを覚えるのは全部AIに任せられるから、抽象的なインデックスだけ覚えて、人間はインデックスの掛け算をすることだけに脳が特化していくっていうこともあり得るんじゃないかな。
現場に行く理由——well grounded hypothesis
情報収集はデジタルだけで完結しません。尾原さんは世界中を回り、まだ無名の起業家にも直接会いに行きます。その理由を、「well grounded hypothesis(現場に根ざした仮説)」という言葉で説明します。
きっちり今世の中で起きていることに根ざして仮説を出したものは、あんまりずれないって思ってるんですよ。
たとえるなら「風が吹けば桶屋が儲かる」。理屈のうえでは成立しますが、一つひとつの確率が実感を伴わないため、当たらない仮説になってしまう、という指摘です。実際に上海に行き、AIエージェントで予約できるサービスを自分で体験し、現地の人に「日本人をどう思っているか」を直接聞くといった取材を続けているといいます。
well groundedなものを拾い集めるためにどこに行かなきゃいけないの?じゃあ最前線に行った方がいいよね、っていう話になってる。
マクドナルドで「ポテト10人前」のグループインタビュー
現場感を掴む方法として印象的なのが、地方のマクドナルドで行っていたという即席グループインタビューです。深夜のマクドナルドで、あえてポテトを10人前まとめて注文するのがコツだといいます。
2階のコーナーに持っていって、酔っ払った口調で「いや、おっちゃん間違えて10人前も買ってもうた。誰か食ってくれへんかな」みたいな感じでドカーンって置くんですよ。明らかに怪しいじゃないですか。でもポテトって最強の魔力の匂いがあるので、大体ちょっとヤンキーなお兄ちゃんが最初食べ始めて、2人3人たむろってくると、いろんな方々が来てくださる。
集まってきた若者に「最近スマホで何してるの?」「夜どんなことしてるの?」と聞いていくというやり方です。ポテト10人前、約3000円。フィールドマーケティングとしては破格のコストだと、けんすうさんも唸ります。
「風が吹けば桶屋が儲かる」型。理屈は通るが確率が実感を伴わず外れやすい
well grounded hypothesis。現地・現物で確率を体感してから仮説を組む
岡田斗司夫式「4つの目」と常時4つの議事録
これだけの経験をどう記録しているのか。尾原さんは、酔っ払ったふりで話を聞いた直後にトイレの脇でノートパソコンを開き、ガーッと議事録に落とし込むのだといいます。
情報収集したものって必要な時に取り出せばいいから、全部知ってる必要性ないですよね。
さらに独特なのが、思考そのものが「4つの議事録」の形で走っているという点です。頭の中で独り言を回すのではなく、常に4つのメモが同時に立ち上がっている、というのです。心の師匠として名前が挙がったのが岡田斗司夫評論家・作家。『東大オタク学講座』などで、オタク的鑑賞法として複数の視点でコンテンツを見る「4つの目」を提唱したことで知られる。さんでした。
オタクというのは常に3つ4つの目でものを見るんだと。映画を見る時に、純粋に楽しむ心、ディレクターの心、プロデューサーの視点、そして歴史家としての視点。これを愚直にやってたら、1つの目から2つの目になり、3つ4つになっていく。
会議中は、この4つの視点それぞれに対応するメモを立ち上げているそうです。相手の発言をそのまま書く議事録、表情の変化からディレクター的に読み取ったこと、プロジェクト全体を俯瞰するプロデューサー視点、といった具合です。
プレーヤーの目
その場を素直に体験・楽しむ視点
ディレクターの目
演出・表情・カット割りなど、目の前の展開を読む視点
プロデューサーの目
全体尺・座組み・ゴールから逆算する視点
歴史家の目
作品や発言の背景・系譜・影響関係を捉える視点
勝間和代さんとの対談で見せた、田中渓の視点切り替え
この「4つの目」は、他人の振る舞いを見るときにも働いています。尾原さんは、田中さんが勝間和代さんと対談した回についても、細かく分析していました。
最初は二人が交錯するっていう役割で始まったんですけど、瞬間的にディレクターの視線が入ったのか、受け手として引き出した方がいいみたいに変換されてやってて。でも全体の尺を見た時に、田中渓さんとしても爪痕を残しておかなきゃいけないから、後半になると自分のキャッチコピーみたいなものも入れていくみたいな。ディレクターとプロデューサーとプレーヤーの視点をメタに切り替えながらやられてるな、って思いながら見てる。
田中さんは「そのディレクターの方が途中でサジを投げてしまって、自分で仕切るしかなかった」と裏側を明かし、その意図を汲み取られたことを素直に喜んでいました。
まとめ
転職15回、年間100フライト、二拠点生活という尾原和啓さんのライフスタイルは、単なる勤勉さの延長ではなく、独自の情報OSに支えられていました。マッキンゼー流の「本はメートルで買え」に始まり、AIによる論文の体系化、思想の上流の定点観測、そして現場での即席インタビューまで。共通するのは、「全部を覚える」のではなく「必要な時に必要な情報を引き出せる状態にする」という発想です。
- 情報摂取のベースは、論文30本・Kindle5冊・漫画3冊、そして2.7倍速のポッドキャスト
- 本はゴール設定→2分の拾い読み→再設定を3周。200ページの本を約6分でインデックス化する
- 論文はスクショ→PDF→NotebookLMで体系化し、AIが作った音声を高速で聴く
- 思想の上流にいる発信者を定点観測し、ディープリサーチとファクトチェック付きで文脈ごとインストールする
- 現場に足を運びwell grounded hypothesisを積み、岡田斗司夫式「4つの目」で常時4つの議事録を書く
