なぜ広告に頼ろうと思ったのか
この回でManaさんが取り上げるのは、ボードゲームのSNS広告についてです。活動を始めたばかりの頃に、個人でSNS広告を出稿したらどうなるのかを実験していた時期があり、その実体験をもとに話が進みます。
Manaさんがまず考えたのは、作ったボードゲームを多くの人に知ってもらう必要があるということでした。ゲームマーケットで発売される情報がユーザーに届かなければ、そもそも知られず、買ってもらえないという課題です。
当時のManaさんのXのフォロワーは数百人ほどで、自分のアカウントで発売告知を投稿しても反応が得られませんでした。そこで手っ取り早く思いついたのが広告だったといいます。
本当、世の中のビジネス的なものといったものは広告を打って、で、実際にそれが購買活動に影響する。
一般的なビジネスは広告宣伝費と実売のバランスを見て、反響が良ければ広告量を増やしていく。そのイメージから、ボードゲームも広告を使ったほうがいいのではないかと考え、実際に何本かXで広告を打ってみたそうです。
インプレッション課金で見えた「見られても買われない」現実
Manaさんが広告先にXを選んだのは、ボードゲーム好きな人がXに多い印象があったからでした。試したのは、投稿を課金して表示を伸ばすブースト機能と、Xの広告プラットフォーム経由での出稿の2種類です。
結果は微妙だった、というのが率直な感想でした。インプレッション、つまり表示数はとても伸び、いいねなどのエンゲージメントも得られはしたのです。
Manaさんが試した予算は、3000円を何回か、あるいは1万円ほどをかけるといった試験的なものでした。まずは知ってもらうことを優先し、インプレッションを課金対象に設定したといいます。
ターゲティングも幅広く誰でもではなく、日本国内で20代から40代へと絞りました。SNS広告は対象年齢や地域を細かく設定できるためです。
それでもインプレッションは軽く何万といく一方で、広告がうまく機能したという体感は特にありませんでした。これだけ表示されたのになぜ、という疑問が残ります。
エンゲージメント課金でも購買につながらなかった理由
次にManaさんが試したのは、エンゲージメント課金です。これはどれだけ見られても課金されず、いいねやリポスト、コメントなど、見た人が何かリアクションをしたときに課金される設定です。
これでも反響は得られ、いいねは余裕で何百といきました。しかし、なかなか購買にはつながらなかったといいます。
そこでManaさんは、誰がいいねをしてくれたのかを分析しました。すると、地域や年齢のターゲティングはうまくいっていた一方で、いいねをくれた人たちはそこまでボードゲームファンではなかったのです。
全然ボードゲームのアカウントといったものには届いていなかった印象があります。
Manaさんによれば、X上でボードゲームをやっている人に限定するターゲティングは難しいといいます。広告プラットフォームはプロフィールなどを基に判断するため、日々の投稿から「この人はボードゲームが好き」と見分けるのは難しいためです。
化粧品のように誰もが使う一般大衆商品なら、地域や年齢のターゲティングで十分かもしれません。しかし特定の趣味の領域になると、まったく関係ない人にも広告が届いてしまうと指摘します。
広告を見て「面白そう」「綺麗だな」と手軽にいいねを押す人はいても、そのライトなユーザーが実際に買うか、ゲームマーケットに来るかは別の話です。当時Manaさんが使っていた販売経路はBoothのみで、わざわざpixivアカウントを作って買うのかと考えると微妙だった、と振り返ります。
この経験からManaさんは、SNS広告での認知獲得は失敗だと判断し、それ以降は試していないそうです。
鍵は「属性」。すでに好きな人が集まる場所を狙う
なぜボードゲームで広告が難しいのか。Manaさんはその理由を、ニッチな特定ジャンルであることに求めます。広告プラットフォーム上では、日々の投稿から熱量あるボードゲームファンを判断するのが難しいのです。
そこでManaさんが重要だと考えたのが、横のつながり、つまり属性でした。ボードゲーム好きという属性の人たちが集まっているところを狙うのがポイントになると考えたのです。
X全体からボードゲーム好きを探すのではなく、すでにボードゲーム好きが集まっているアカウント、いわゆるインフルエンサーに案件として依頼する。そうすればフォロワーやボードゲームに興味がある人たちに情報が届くと考え、Manaさんは探し始めました。
そこで見つけたのが、ボードゲームを一言で紹介する「ボドゲの紹介屋さん」というアカウントです。写真と一言だけというシンプルなフォーマットで、フォロワーは7万人ほど、投稿には何万から何十万というインプレッションがついていたといいます。
明らかにその一言で喋っているボードゲームの投稿に反応してくれる人で、そこに興味があってフォローしている人にターゲティングができたらとても強い。
広告よりも「フォーマット通りの投稿」が効いた
Manaさんは、そのアカウントのフォロワーに向けて広告を出すこともできると知っていました。しかし、流れてくるだけの広告では興味を持ちづらく、あくまで広告に過ぎないと考えます。
フォロワーに最も効果があるのは、そのアカウント自身の投稿です。写真一枚と一言というフォーマットが好きで、手軽に見る人たちがフォローしているからです。そのためManaさんは、できればそのフォーマット通りにやりたいと考えました。
結果として、インフルエンサーに案件として依頼したところ、インプレッションも反応も伸び、購買にもつながったといいます。属性の重要さを実感した場面でした。
X案件の弱点は「資産性がない」こと
一方でManaさんは、Xでのインフルエンサー案件には弱点があるとも話します。その時の即効性は強いものの、資産性がなく、後々何かに使いにくいという点です。
比較として挙げるのが、YouTubeなどの動画系インフルエンサーへの依頼です。一度投稿された動画は資産的価値を持ち続けます。
Manaさんによれば、動画はゲームマーケットのサイトに載せたり、当日の店頭でPCやタブレットで流したり、通販サイトに掲載したりと、長期的に付加価値として利用できるといいます。
動画系のインフルエンサーへの依頼はその後も使い続けられるため、費用対効果を回収していけます。しかしXの広告は一時的なもので、その時いくらかけていくら儲かったのかを計算しなければなりません。
即効性は強いが資産性がなく、その時限りで費用対効果を計算する必要がある
投稿が資産価値を持ち、サイト掲載や店頭表示など長期的に使い回せる
Manaさんの実感では、X案件はコスパが微妙で、ペイできてはいなかったといいます。完全な赤字というわけではないものの、長く続けられるか、回収した予算をまた広告に回せるかと考えると、高頻度で回すのは難しいという結論でした。
たどり着いた答えは「投稿ベースで属性の連鎖をつくる」
ボードゲーム好きが集まるところにアプローチできると気づいたManaさんは、Xそのものをちゃんと伸ばしていく必要があると考え、Xを伸ばす活動を始めました。
Manaさんは、Xの発想は逆転していると説明します。狙った人に投稿するのではなく、自分が投稿したものに同じ属性や興味を持つ人が寄っていくという考え方です。
寄ってきた人は同じ属性なので、リポストや反応をしてくれます。すると、その反応した人のフォロワーにも投稿が届いていきます。
つまり、広告ベースではなく投稿ベースで伸ばしていけば、フォロワーが少なくてもちゃんとした属性に届く、というのがManaさんの考えです。
狙った人に情報を届けようとするが、趣味の領域では関係ない層にも届いてしまう
投稿に同じ属性の人が寄り、その反応が同属性のフォロワーへ連鎖して広がる
プレゼントキャンペーンは「量より質」で考える
フォロワーを伸ばす手段として、Manaさんはプレゼントキャンペーンにも触れます。以前の回でも話した通り、自分の投稿を広めるうえで重要なポイントになるといいます。
プレゼントキャンペーンはそもそも反応が良く、タダでもらえるという理由で参加率が高くなります。最も強いのは現金やアマギフの配布ですが、そこに落とし穴があるとManaさんは指摘します。
現金が欲しい人はボードゲームに限らず膨大にいます。そのため、狙ったターゲット以外にも反応され、自分の投稿が現金目当ての懸賞アカウントの方向へ伸びてしまう恐れがあるのです。
Manaさんの体感では、投稿が届くのはフォロワーやターゲットの半分から4分の1ほど。その貴重な部分が懸賞アカウントに使われるのはもったいない、と話します。
そこでManaさんが勧めるのは、インディーズのボードゲームそのものを景品にすることです。ボードゲームが欲しい人しか参加しないため、その人たちを通じてボードゲーム好きへ届くルートを開拓できます。
Manaさんも最初のプレゼントキャンペーンでは大きな伸びはなかったものの、定期的に繰り返すことで、Xのシステム的にも自分がボードゲームのアカウントだと認識され、ボードゲーム好きに届きやすい状態が少しずつできてきたといいます。
フォロワー4000人でも高い反応を得られる理由
Manaさんは現在フォロワーが4000人ほどですが、そのほぼ全てがボードゲームに興味がある関連アカウントになっていると考えています。投稿が届く先もボードゲーム関連が中心です。
そのためManaさんは、ボードゲームに関する情報をいろいろな角度で投稿しています。ゲーム制作向け、ゲームプレイヤー向けなど、関わり方の違うルートをそれぞれ伸ばしていく狙いです。
結果として、4000人というフォロワー数の割にインプレッションやエンゲージメントは高く、何万インプレッションもよく出て、大体どの投稿でも1000は超えてくるといいます。
この背景にはXのアルゴリズムがあります。見た人がリアクションすると良い投稿と判断され次へ広がる仕組みのため、ボードゲーム好きに届けばリアクションが起き、さらに同じ属性へ広がっていくのです。
ボードゲーム好きに投稿が届く
同じ属性のフォロワーに情報が到達する
リアクションが起きる
いいねやリポストがつき、良い投稿と判断される
同属性へさらに広がる
反応した人のフォロワーにも届き、連鎖が続く
結論は「自分の投稿こそが最大の広告」
Manaさんは、広告を使えば情報がパッと届くものの、それは汎用的な商材向けだというのが体感だと語ります。
ニッチな商材であれば、ニッチな市場同士のつながりを構築する必要があります。そのためには、地道にXのフォロワーを伸ばし、ボードゲーム好きと交流し、アルゴリズム的にも情報が届くようにしていく地道な活動が欠かせない、と改めて感じたそうです。
さらにManaさんは、広告はすぐお金が溶けると注意を促します。上限を設定していても、インプレッションやリアクションが伸びるたびに残金が減っていき、精神的にもくるものがあるといいます。
最後にManaさんは、投稿が広告広告し続けていると嫌われて逃げられてしまうため、どんな投稿がいいのかは別の機会に話したいと締めくくりました。無料で今からでも続けられるX上の定期的な発信こそが、SNS上の最大の広告になるという結論です。
まとめ
Manaさんの実体験からは、ニッチな商材であるボードゲームにおいて、一般的なSNS広告が期待通りには機能しなかったこと、そして最終的に「属性への地道な発信」という答えにたどり着いたことが見えてきます。
- インプレッション課金でもエンゲージメント課金でも、表示や反応は伸びたが購買にはつながりにくかった
- SNS広告は趣味の領域だとターゲティングが難しく、ボードゲーム好きに限定できないのが失敗の要因だった
- すでにボードゲーム好きが集まるインフルエンサーへの案件は効果があったが、X案件は資産性がなくコスパは微妙だった
- プレゼントキャンペーンは現金より商品を景品にし、量より質でボードゲーム好きに届けることが重要
- 無料で続けられるX上の定期的な発信こそが、ニッチな商材にとって最大の広告になる





