一般出展とエリア出展は何が違う?
ゲームマーケット ── 日本最大級のアナログゲームの展示・販売イベント。個人サークルから企業まで多くの出展者が新作ボードゲームなどを頒布しますには、曜日や日程の違いのほかに、出展形態の異なるプランがいくつか用意されています。前回の配信で触れたチャック袋横丁、長机を借りる一般出展、そして広いスペースを借りるエリア出展です。
一般出展は長机を1卓、または2卓借りるプランです。エリア出展はテーブルではなくスペースそのものを借りる形で、大きな企業や売れっ子作家のサークルが使っているイメージが強いとManaさんは話します。
多くの出展者は一般出展で参加しているのが実情です。そのため、いつエリア出展に挑戦するのかは、多くのサークルが気にしているポイントだとManaさんは考えています。
机2台では手狭になる、という悩み
一般出展では最大でも180センチの机を2台並べる程度で、スペースは「横並びで少し長い」くらいにしかなりません。人気が出てくると、この広さでは足りなくなってきます。
手狭になる理由として、Manaさんは並べる商品数、たくさん来るお客さんの列の整備、そして試遊卓を何卓も立てたいという希望を挙げます。こうした事情から、一般出展をしている人の中には、いつかエリア出展をしたいと考える人も多いのではないかと話しています。
すごく人気が出ていくと、やっぱりどれだけの商品数を並べるのかであったりだとか、お客さんがたくさん来てしまうので、列の整備どうするのかであったり。
100万円かかるエリア出展のコスト
エリア出展ではスペースしか貸してもらえないため、机などの備品も、ブースの設営もすべて自分たちで用意する必要があります。その結果、費用は100万円ほどかかることもあるそうです。
Manaさんも、このコストをペイできるだけの販売が見込めなければ、エリア出展はまだ早いというイメージを持っていました。
ほんと机とかも全部自分で準備する必要もありますし、いわゆるイベントの設営ですね。その部分も全部自分たちでやんなきゃいけないと。
「エリアなら売れる」という思い込みと、意外なレポート
Manaさんはもう一つ、エリア出展のほうが一般出展より物が売れるというイメージも持っていました。一般出展はサークルがずらっと並ぶため埋もれやすい一方で、エリア出展なら目立ち、多くのお客さんを同時に相手にでき、試遊もたくさん回せるからです。
そんな中、先日のゲームマーケットで一般出展からエリア出展に移ったサークルの事後レポートを読んだといいます。企業ではなく、一般出展でたくさん売れていたため次はエリア出展に挑戦した、という個人サークルの記録です。
その結果ですね。うん、一般出展の時の方が売れてたって言ってるんですよ。え、そうなの?っていう感じでした。
同じ商品でも目立つエリア出展のほうが売れる、と考えていたManaさんにとって、この事例は興味深いものだったと話しています。
なぜエリア出展では前半が暇になったのか?
Manaさんが要因として注目したのは、お客さんの動き方の違いです。一般出展では開場直後に人が押し寄せ、待機列や予約の受け取りで忙しい前半が勝負になり、後半は通りがかりの人への当日販売を伸ばしていく流れになります。
ところが、レポートによるとエリア出展では前半がむしろ暇だったといいます。記事では、エリア出展は大きな企業や人気サークルのように見え、在庫もたくさん用意されているだろうというイメージが働いたのではないかと分析されていました。
在庫が切れるかもしれないという心理から、予約したり開場直後に急いで買いに来たりする
在庫が多そうに見えるため、後で買える、通販も出るだろうと購入を後回しにされる
一般出展で前半に人が集まるのは、売り切れて手に入らないかもしれないという「残りわずか」に近い心理が働いているからだとManaさんは考えます。エリア出展ではその心理が働かず、「どうせ通販が出るでしょ」と後回しにされたのではないか、というのがレポートの見立てです。
来場者として振り返ると、エリアは最後に回していた
Manaさん自身も、ゲームマーケットに遊びに行くときは、まず売り切れそうなブースから回り、エリア出展のブースは一番最後に回していたと振り返ります。
残り数が少なければとりあえず買おうっていうような動きになるんですけども、余裕があれば試遊してから買おうみたいな考え方になるんですね。
さらに試遊卓が埋まっていれば、その購入はまた後回しになります。「買わないとなくなる」という動機が消えたことと、後回しにされたことが重なって、購入の伸びが弱かったのではないか、という内容にManaさんは「目から鱗」だったと話しています。
売上が下がり、コストは上がるという厳しさ
レポートのサークルは、一般出展のときのほうが販売個数が伸びたそうです。エリア出展には100万円近くかかるため、本来なら一般出展のころよりかなり多く売らなければ利益が残りません。
コスト増
出展料・設営費・人件費で100万円近くかかる
必要販売数の増加
一般出展よりかなり多く売らないとペイできない
実際の販売
一般出展のときより販売個数が伸びなかった
販売がその水準に届かなかったと書かれていたことから、Manaさんはかなり厳しい状態だったのではないかと推測しています。
Manaさん自身は作品数を増やし続け、毎回全作品を持ち込むという「他の人にはお勧めできない」やり方をしています。いずれ手詰まりになったらエリア出展に挑戦したいと考えていましたが、この話を聞いて、ギリギリまで一般出展で頑張りたいと思うようになったそうです。
エリア出展で苦戦する人、うまくいく人の違いは?
Manaさんは前回のゲームマーケットでエリア出展をした人の記事を何本か読みましたが、多くの人が苦戦していたといいます。人件費、出展料、設営費とコストがかさむため、数百個売れた程度ではペイできないこともあるそうです。
人気サークルには小箱を専門に扱うところが多く、単価が低いぶん、エリア出展では販売個数をかなり増やさなければなりません。一方で、うまくいっていそうなのは、1000円〜3000円ではなく1万円近い重めのゲームを扱うサークルでした。
単価が低く、コストを回収するには販売個数をものすごく増やす必要がある
1万円近い価格帯でコアなファンが来て、1個あたりの利益率も高い
重めのゲームに小箱も組み合わせて売れば、エリア出展のメリットを享受しやすいのではないかとManaさんは話します。また、海外のお客さんは一般出展をざっと見回るよりエリア出展のほうが立ち寄りやすいという話もあり、海外対応できる人がいるとよいのもエリア出展の特徴だとしています。
エリア出展は何のためにする?
いろいろな事例を見たうえでのManaさんの結論は、たくさん売って利益を出すなら一般出展が一番よさそうだ、というものです。
では、エリア出展は何のためにするのか。Manaさんは、ブランディングを高めたい、ゲームの認知を広めたいなど、出展そのものをプロモーションにしたい人に向いていると考えます。大きな看板のように一般出展では掲げられないものを立てられるのも利点です。
特に試遊卓をたくさん立てられる点が大きいといいます。ゲームマーケットの後半、とくに日曜は、欲しいものを買い終えて次に買うものを試遊で決めたい人が多く、エリア出展ならそうした人に「実際に遊んだことがある」という認知を一気に広げられます。
その認知をもとに通販で売る、次回作を告知する、人気作の拡張版につなげる、あるいは重めのゲームでコアファンに確実に売りつつ小箱も一緒に販売する。こうした展開を考えるサークルがエリア出展に向いているとManaさんはまとめます。
Manaさんが思い描く「お店のような」エリア出展
Manaさんもいつかはエリア出展をしたいと考えていますが、どのタイミングで踏み切るかは悩ましいと話します。
Manaさんが理想とするエリア出展は、試遊卓をたくさん並べる形よりも、多くの作品が並ぶお店のような空間です。来場者がウィンドウショッピングのように見て回り、その場で少し遊ぶこともできる形を思い描いています。
ちょっと企業っぽいような、1個の作品をガンガン売っていくっていうよりも、そのサークルっていうようなものの価値みたいなものは伝えていけるようなエリア出展にしたいなとは思うんですけども。
出展プランはレベルアップではなく目的で選ぶ
Manaさんは各出展プランを目的ごとに整理します。前回の配信で扱ったチャック袋横丁はゲーム作りに特化し、繰り返し売りながら商業化を狙う場として、一般出展は自分で作品を作って売るうえで効率的な場として位置づけています。
| 出展プラン | 向いている目的 | 補足 |
|---|---|---|
| チャック袋横丁 | ゲーム作りに特化し繰り返し売る、商業化を狙う | 販売は100個までという限界がある |
| 一般出展 | 自分の作品を作って販売する | 販売の効率がよい |
| エリア出展 | ブランディング、通販、広報やプロモーション | 企業価値を上げるフェーズ向き |
以前のManaさんは、チャック袋横丁で試し、売れたら一般出展、さらに売れたらエリア出展へと段階的に上がっていくものだと考えていました。今は、レベルアップではなく目的によって最適なプランが違うと捉え直しています。
一般出展でも100個売れなかったりとかもしますし、中にはエリア出展でも100個売れないようなところももしかしたらあるのかもしれません。
ゲームを売りたいのか、自分の作品を売りたいのか、自分の企業や顔を売りたいのか。それぞれの思惑によって最適な出展プランは変わる、というのがManaさんの考えです。
ゲームマーケット秋とエッセンの日程重複で変わること
Manaさんは、来年のゲームマーケット秋がドイツのエッセン ── ドイツのエッセンで毎年開かれる世界最大級のボードゲーム見本市「SPIEL」のこと。世界中のメーカーが新作を発表しますと日程が重なるという話も聞いたといいます。大きな企業の多くがエッセンに行き、日本のエリア出展では企業の出展が例年より少なくなるのではないかと見ています。
そこでゲームマーケット事務局がエリア出展の料金を下げれば、挑戦する人が増え、いつもと違う雰囲気のゲームマーケットを楽しめるかもしれない、とManaさんは期待を寄せています。
Manaさん自身は、一般出展でもう少し売れるようになったり、手狭でどうしようもなくなったりしたらエリア出展を検討するつもりです。実際に出展したときには、また配信で報告したいと話しています。
まとめ
一般出展からエリア出展に移ったサークルが、かえって販売個数を落とした事例をきっかけに、Manaさんはエリア出展を「売上を伸ばすための上位プラン」ではなく、認知やブランディングのための選択肢だと捉え直しました。出展プランは段階ではなく、目的に合わせて選ぶものだという考えです。
- エリア出展は在庫が多そうに見えるため、「売り切れる前に買う」心理が働かず、購入が後回しにされやすい
- エリア出展は100万円近くかかることもあり、数百個の販売ではペイできない場合がある
- 1万円近い重めのゲームを扱うサークルや、試遊で認知を広げたいサークルはエリア出展と相性がよい
- たくさん売って利益を残すなら、一般出展が効率的だとManaさんは考えている
- 出展プランはレベルアップではなく、ゲーム・作品・企業の何を売りたいかという目的で選ぶとよい

