「それがなかったら生まれてなかった」文具マーケット
文房具に関するものなら何でも出展できた即売会「文具マーケット」が、2026年6月の第11回で一旦フィナーレを迎えました。冒頭、お二人はこの回を「絶対設けなきゃいけない」と思っていたと話します。
この番組は、お互い水に関わる名前を持つ車椅子ライターの波子と、文具と当事者デザインの研究家やまめが、文具や道具、インクルーシブデザインについておしゃべりするポッドキャストです。
今回は「文具マーケットありがとう」という回でございます。
そうなんです。
(この回は)絶対設けなきゃいけないって思ってたんですよね。
私たち、文具マーケットに結構お世話になりましたからね、本当に。
文具マーケットがなかったら生まれてなかったものがたくさんあったし、それにもれなく我らの活動は大いに含まれていたよねという感じが。
本当にそう。まず思い出を語りますか。
文具マーケットのホームページとかを検索して見てみると、過去の開催データっていうのがあって。
そうそう、第1回からおでかけ文具マーケットも含めて、ずっとあります。
文具マーケット自体は、文具好きの個人、団体、企業、店舗、そこら辺全然ごった混ぜで、オリジナルのグッズ作ったりとか、中古文具のガレージセールOKっていうのとか。
私たちみたいに同人誌を販売するとか、波子さんみたいに、商業出版誌を自分の在庫として持っているものを販売するっていうのもありだったりとか、本当にそこは大きく開かれたというか。
文房具に関するものなら何でもみたいなね。文具好きの文具好きによる文具好きのためのみたいな、そういう感じ。「目指せ文具界のコミケ」みたいな感じで開催されて、規模も大きくなっていってる感じではあったんですけど。
この間の2026年6月にあった第11回で一旦の休止というか、とりあえずフィナーレというか、そういう感じだったんですよね。
やまめさんは、最初の方からお手伝いというか参加というか、そういう感じで出てたんでしたっけ?
今ずらっと画面に並んでいるイベント一覧を見てみると、東京以外でやってる回っていうのが、京都、福岡、大阪と3回分あるんですけど。
それ以外ですと、第7回と第10回の2回以外は出てる。
出てない方が少ないっていうね。
やまめとして出ているのは第5回からなんですけど、第1回から第4回も、文具王工作室の売り子でレジ役はしていたので。
ガラス張りの会場に、ふらっと人が入ってくる
伝説の第1回は2022年9月11日、出展20卓に来場者300人。会場が外から見えるガラス張りだったことが、内輪だけでない広がりを生んだと、やまめさんは振り返ります。
その、伝説って言っていいと思うんだけど、伝説の第1回がね、出店者数20卓っていうのがあったんです。
2022年の9月11日(日)に、3331 Arts Chiyodaでいいのかな。
このスペースも文具マーケットが開催されたすぐ後に、その場所ごとなくなっちゃったんですけど。
秋葉原から歩いて行けるみたいな場所で、学校の跡地みたいな感じ。そこだけ空気が落ち着くみたいな雰囲気です。
アート系のギャラリー展示みたいなのをやってたりとかする脇で…同時にやってるイベントもあったんですよ。右がアート系、左が文具マーケットみたいな感じで。
文具マーケット20卓で、写真とか(ホームページに)出てるんですけど、まあ人がすごくて。
そうなんだけど、20卓しか出てない会場に、来場者数がなんと300人だったんです、この日。
すごいことよね。20卓に300人よ。トータルだけどね。一気に300人来たわけではもちろんないでしょうけど。
(第1回は)20卓なので、両脇一列ずつしかないんですよ。10、10みたいな感じで、みんなその間を通っていくって感じなんですけど。
そこの場所がマンションとかいろいろあるところだったのもあって、ベビーカーを押している家族がふらっと前を通りがかって、「あれ、何やってるのかしら?」って。
そこ(会場)、ガラス張りなんですよ、外に向けて。それで入ってきてくださる方もいたので、必ずしも内輪だけのノリっていうわけじゃなくて。
その日見て、その日入ってくる方っていうのもいらっしゃるのが、まあ新鮮というか。
やっぱ文具系イベント、知り合いに声かけたら知り合いばかりみたいな、ちょっと同窓会チックになってしまうところがあるよなというのを、心なしか思っていたところに。
こういうイベントが、「開きますよ」っていうのを大きく言ったイベントができたのは、結構やっぱ大きかったですよね。
扱ってるものが文房具だからさ、ふらっと入った人も「あ、なんかいろいろある」っていう感じで、興味を引きやすいっていうのはすごく大きいと思うのよね。
ガラス張りでふらっと通りかかった人が入れる場所で開催するイベントとしては、すごく「あり」というか。「どの立場で言ってんねん」って感じだけど(笑)
私は(第1回には)行ってないので聞いたりしただけですけど、「あ、すごいいいイベントだわ」と思って。「近かったら行くのに」みたいな感じだった。その時はね。
文具っていうのを知ってる気持ちでいるけど、入って中身を見てみたら、例えば古い文房具があったりとか。
全然知らないオリジナルのものを作ってるとか、「いっぱい紙モノばっかり集めてます」みたいなのとか。
知ってるつもりでいたところの世界がぶわって広がる感じの面白さみたいなのを、体験してもらいやすいコンテンツっていうところはありますよね。
「めっちゃ人来る」初出展の戸惑いと、読者に会える喜び
第2回から会場は五反田TOCビルへ移り、60卓・来場者1000人に拡大します。波子さんはこの第2回で初出展し、計4回出展しました。
第1回がそうやって2022年9月に開催された後、第2回から会場がガンと大きくなるわけなんですけど。
2023年2月25日に、五反田TOCビル、東京卸売センター ホールHっていうところで行われまして
これがだから60卓、倍に増えて、来場者数も1000人っていうね。私はこの第2回から参加したんですけど。
これすごい人やったもんね。第2回、初めて行った時に、「めっちゃ人来る」と思って。
入り口から6番目ぐらいの配置だったかな。最初来た人は、奥まで行きたいから、目の前を通り過ぎていくわけ。
向かい側がバラエティーに富んだ文具を置いてるお店の方だったので、そこに立ち止まる人もいて。奥に行く人と立ち止まる人でね。
しかも2月だからみんな服装がごついので、押し合いへし合いが発生するような位置だったの、最初の。
すごいびっくりして。だから、なかなか声かけどうしたらいいかがわからなかった、最初。初めてだったので。
フリーマーケットしか参加したことがないから。野っぱらにピクニックシート敷いて座って、アクセサリー売るようなやつしか参加したことなかったから。
編集さんと一緒に本を売るつもりで行ったわけなんだけど、「え、どうしましょう」みたいな感じで、2人して(笑)
「おはようござ……こんにちは」みたいな感じ。そんな弱々しい声かけしかできないのを覚えてます。一番最初、スタートね。
波子さんは何回参加なんですか?
私ね、合計4回行ってて。第2回、第3回、第5回、第8回か。2023年だけ年に2回出て、あとは毎年1回ずつ出てる感じだったので。
最初の年だけ、えっと2月と9月だったかな?に出まして。
2月、9月ですね。
そうそうそう、2月、9月。その後は5月に出てる。その次の年から、年に3回、1月、5月、9月みたいな感じになったのよね。
それで私は、最初の年は年に2回行ったけど、次の年から「2回行くのはしんどい」ってなって。交通費と宿泊費を入れると、赤は決まってるからね。
イベントに行って、普段はできない、読者の人に直接話しながら本を売るっていう、そういう体験をしに行ってる感じだったので、私の場合は。
直接話しするっていうのが本当にやっぱり良くって。
文具マーケットがなかったら、会って喋ってとか、サイン書いてとか、そういうことは多分できてないと思うので、それはすごく良かったと思う。
だから第2回も、最初の方こそちょっとたどたどしかったんだけど、お昼ぐらいから販売経験のある友達が手伝ってくれて。
「波子さん、私手伝います」みたいな感じでやってくれて、それでめっちゃ売り上げが伸びまして、彼女のおかげで。
さすがプロ。
そう、さすがプロ。だから、本の売り上げの冊数だけで言うと、第2回が一番多かったの。
まあね、持ち込んだ数がちょっと多すぎたからね。ほとんど家に持って帰る羽目になりましたけどね。
波子さんが東京に出てきてくださったりとか。(その)モチベーションというか。
年2回はしんどいなとか、その他の予定とか、いろんな状況はあったとしても、こっち(東京)に出てくるっていうことがすごい多くはないじゃないですか、もちろん。
「呼ばれる」とかではなくて、「自分で出てくる」っていうモチベーションとか理由みたいなところが作れてたのは、なんか良かったんだろうなって思ってました。
確かに、東京に行くっていう機会としてもそうだなと思うし。初回だけは編集さんと2人でやったんだけど、「2人では無理だな」って、その時2人とも思って。
だから第3回以降は、助っ人を2人頼んで、3人でやってたわけなんです。知り合いにがっつり会うっていうのも結構大きくって。
朝からずっといて、打ち上げでご飯食べてみたいな。そういうのもすごい楽しかった。
(お手伝いは)単に出店者の一人として入場できるっていうだけの特典でお願いしてるからさ、「ごめんなさい」って感じなんですけど。「すいません、買い物はしてきて」みたいな。
楽しかった。やまめさんは、第5回の時にね、やまめデビューをね。
「どこに発表したらいいんだろう?」と考えずに済んだ
やまめさんにとって、文具マーケットは活動を始めるきっかけそのものでした。同人誌即売会という選択肢を探す前に、文具の本を出せる場がすでにあったと語ります。
そうなんですよ。だから「文具マーケットがなかったら、私はこの活動をしてなかったな」というのが、「ありがとう、文具マーケット」のやっぱ一番大きいとこですよね。
ほんとそう。だって、「売る」っていう場所があったから、「書こう」っていうのがちょっとあったわけでしょ、やっぱり。
あ、もちろんそうですよ。
後からこの話すると思うけど、「場所がなくなる」っていうのが、結構ちょっと痛手ではありますよね。こういう場所がなくなっちゃうっていうのはね。
コンテンツ作る側としては、やっぱ代えがたいものにはなっていたところはあるなと思っていて。
第1回から第4回まで売り子として出てて、その雰囲気の良さであったりとか、「ちゃんと興味持って聞いてくれる人が来てくれるんだな」っていうところで。
そうそう、ほんとそう。それよ。
私、コミケ行ったことないんですけど、本家コミケね。
あそこにブースとして出すのは、例えばブング・ジャムの他故壁氏さんみたいな歴年の選手たちとは、また感覚が違うと思うんですよ。新規参入していくとすると。
初っ端からそこ(コミケ)っていうのは、なんか、あんまり自分がイメージできなくて。
ただでもさ、いわゆる二次創作の同人誌の頒布場所としてはいっぱいあるやんか。コミケも、やっぱり二次創作で大きいわけやんか。
二次創作の同人誌はコミケ以外にもいっぱい場所はあるけど、いわゆる研究系の同人誌をそれだけでっていうのって、多分そんなにたくさんはなくて。
東京ではね、ちょこちょこ「おもしろ同人誌バザール」とか、そういうのがあったりするけど、なかなか地方でそういうのってあんまり。
ZINEっていうのが世の中に出だしてから、ZINEの方が多分ちょっと近いんだろうなっていうのは思ったりはするんですけど。ただ、「ZINEなのか?」っていうのはあるよね。
え、私、(自分の本を)ZINEだと思ったことは正直なくて。
「自分がやまめとして活動しよう」「本を書こう」って思った時に、「同人誌の即売会に出展しよう」っていう選択肢が、そもそも思いついてなかったなというのを今思い出して。
なんか、「文具マーケットがあるし」みたいなとこだったんですよ。
最初、私の1作目は『インク沼の観察』なので。インクルーシブデザインについて語るだなんて、全くもって思ってなかった頃ですよ。
万年筆インクで、あとペンプロッターで遊び始めて、そういうことをやりたいなって思ったりとかした時期だったので、本当に「文具についてなんかやるか」みたいな。
「これを言いたい」っていうのが先にあったので、そこの入り口がすでに「ありますよ」っていう状態だった。
それはすごい大きかったので、「私はこれを作ったけど、どこに発表したらいいんだろう?」っていうのを考えたことがなかったっていう。
そういう意味では恵まれてたよね、だからね。文具マーケットがあったから。文具のことを書いてるから。
だからね、第一興味レベルクリアじゃないですか。
そうそう。しかも、来る人はもう、買う気で来てる文具好きの人やから。いろんなクリアができてるというかね。
で、他にも同人誌出してるブースがあるのもわかってたしね。
文房具系同人誌という、他では成り立たないであろうジャンルが、ちゃんと数ブースあった。で、最終的には一列分あるみたいな状態になってて。すごいですよね。
だってあの時は、「いつかこれは文具界のコミケになるもんだ」と我々も思ってたしね。
(第5回は)大田区産業プラザPiOの大展示ホールで、すごく広いところで120卓でね。来場者1800人っていう感じで、だんだん規模も大きくなってきてて。
主催の中村さん、きだてさんだからこその空気
やまめさんは、主催者が中村さんときだてさんのお二人だったからこそ「ゆるくなんでもあり」の空気が成り立ったと話します。そこから、出張版の京都会場に客として行った波子さんの思い出へ話が移ります。
なかなかイベントって難しいんだなって思ったりもしますし。主催してる中村さんときだてさんのお二人がね、回してたじゃないですか。
ブング・ジャム関連とかで、きだてさんとは繋がりがあったし、人となりを知っているのもあったと思うんですけど。
中村さん、きだてさんじゃない方がやってたら、この「ゆるなんでもあり空気感」というのは成立してなかっただろうなと思って。
それはそう思う、私も。
その空気を保ちつつ、マネタイズというか、会場をどこ押さえるかであったりとか。
ゆるくなんでもありだよってしておく部分と、シビアに冷静に選択をしていかなきゃいけない部分の、結構切り替えがいる役割だったんだろうなと思ってて。今思うとね。
なんで、すごいこう、「お疲れ様でした」というか。
本当、私たちはお二方および大勢のスタッフの皆さんのおかげでね、すごく楽しく毎回参加させていただきました。出店する方としてもそうだし、客として行くのもね。
客としては、おでかけ文具マーケットっていう出張版が合計で3回あったんですけど、初めての出張版が京都で、2024年7月に。それはね、近いからと思って。
そこ(京都)はね、34卓で、来場者数450人って感じだったんですけど。
すごい、それもすごいですよね。
言ったかもしれないけど、すごく家を出るのが遅くて。「会場に14時半に到着するってなんか遅いわ」って言われるっていう感じだったので。
「1時間半でどれだけ回るねん」っていうのを、最初からブースで普通に喋り倒すっていう訳の分からない行動をしてしまって、結局10卓ぐらいしか回れなかったっていうね。
お客さんいいな。あ、私、お客さんしたことないんすよ。
さっき「出てなかった」って言ってた第7回と第10回に関しては、7回は正月の1月4日なんですよ。「地元におんねん」っていうのが1つですね。
第10回は、「そもそも出ない」っていう話で登録はしてなかったんですけど、だから「この回にお客さんできるぞ」ってちょっと期待してたんですよ。
なんですけど、当日思いっきり風邪をひきまして。
2月やからなぁ。
しかもちょっとコホコホみたいな話じゃなくて、がっつり熱出るタイプの、動けませんタイプの風邪でして。
そっかそっか。残念、それは。
1回から11回まで、私は、目の前に広がるたくさんのブースを見ながら、自ブースから動けないという(笑)
自ブースを離れられない出展者の事情
出展者は複数人でも自分のブースをなかなか離れられない、という話に。第11回に初めて客として行った波子さんは、車いすで混雑した通路を進む難しさと、会場を眺める新鮮さを語ります。
出店者もさ、例えば複数で出店してる場合、お客さんがちょっと引いた時に1人が行けばって、聞いてらっしゃる方は思われるかもしれないんですけど、なかなか難しいよね。
そうなんですよ。あれって、複数いるかいないかじゃないんですよね。
難しいのよ。1人で出店されてる方で、札出して席外される方ももちろんいらっしゃる。でも、あれはかなりの思い切りが必要で、やっぱり。
「どうしてもちょっと回りたい」っていう、強い意志と思い切りが必要で。「いない時にお客さんが来られて、もし私に会いに来られたら」とか思っちゃうと、離れにくい。
お手洗いに行くついでに、帰ってくる時にちょっと大回りして様子眺めるぐらいのことはしたことあったけど、買い物はなかなか難しいところがございますわね。
あ、でも車椅子やと、ちょっと行きにくいっていうのもあったけどね。なかなか通路がね。
人がごった返してますもんね。
そうなの。この間、第11回最後の時は、初めて客として行ったんですけど、結構ブース詰め詰めな感じで、通路の幅も最低限な部分もちょっとあって。
本当に混んでるところは、何回か行って「あかん、あかん」って引き返してっていう感じで。邪魔にならないところで、待機したりっていう時間が結構あって。
でも待機しながら周りの空気感を眺めながら、「自ブースを出してない時って、こんなゆったりした気持ちで会場を眺められるのね」みたいな、そういう感じだった(笑)
自分でブース出してると、基本的に私は毎回、ゼリー飲料というか。昔の言い方だとウィダーですか? 10秒飯タイプのやつをすすりながらっていう感じなので。
基本的にお昼は諦めてますね。
「インクルーシブデザイン」が伝わらない、という発見
第11回で、お二人はインクルーシブデザインをテーマにした新刊を頒布しました。手売りの場で、文具好きの人たちにこの言葉が伝わらないことを改めて実感したといいます。
この直近の、メモリアルな第11回の時に、新刊出したじゃないですか、この間。
で、それ(新刊)を「どちらで販売しましょうか」という課題がね、ちょっと残りまして。
ウェブショップとしては、文具王工作室のBASEのショップ通販の方で販売もされておりまして、そこには『インク沼の観察』1も2も一緒に並んで置いてある状態なんですけれども。
さっきも波子さんおっしゃってましたけど、リアルの場で手売りして、「ちょっと気になってるんですよね」とか「これはどういうものなんですか?」って聞かれること自体も、勉強になるって言ったらあれですけど。
「インクルーシブデザイン」っていう言葉を使っちゃうじゃないですか、どうしても。すると伝わらないんですよね、やっぱ文具界隈の人たちには。
「ああ、そうだよな」って、自覚してたつもりだったけど、ちゃんと分かってなかったなとか、忘れてたなみたいな、その認識のレベル感を改めて感じることができたり。
思い直すことができるとかいうのも、すごくありがたかったなと思っていたので。
本当に、「ユニバーサルデザイン」っていう言葉は、ようやくだいぶ浸透してきたぐらいのところでね。インクルーシブデザインっていうのは、まだまだ一般的ではないというか。
ちょっと補足が必要というか、確かにそれをちょっと今回、売りながら感じたっていう話をね。
「実物(の文具を)置けばよかったね」とか。
そうしたらよかったねっていう話をちょっと後からしたね。
回を重ねて改善する、が次はもうできない
波子さんは自著を売るなかで、本で紹介した文具の販売を始めるなど、回ごとに工夫を重ねてきました。その改善を試す場がなくなることを惜しみます。
私も一番最初本を出す時、本だけだと伝わらないと思って、(本に)載せてる文具を私物で全部持ってって、お試しをしてもらいながら「こういう文具が載ってます」って。
その時も何人もの人が、文具の方を「え、これは買えないの?」って。「紹介してる本なんです」って言ったら「そうなんだ」ってスルーされるっていうことがすっごく多くって。
普通に買えるものだけど、そういう人もいるのかもと思って、第3回からは、自分で(文具を)買って、定価の後ろを切り捨てて売るっていう。単に代理購入みたいな感じの。
一応ちゃんと「よろしいですか?」って(運営に)許可を得てからですけどね。文具を買ってくれる人も、やっぱりすごくいることが分かって。
それもやっぱ、一回出て「あ、やっぱりそうか」って分かって、2回目改善するっていう感じで。
最後、第8回は、自分の手書きで書いたしおりとか、はがきとかも売ってみたら、ちょこっとだけど売れたりとか、「その場で書いてください」って言われて書いて売ったりとか。
回を重ねるごとに、そうやって改善していけるものなわけやけど、せっかくの素敵な場所がもうなくなってしまったからさ。今回改善点を感じても、次はもうないっていうのがね。
まあ文具の領域に関しては、っていうことですよね。
そうそう。でも文具の話もメインの一つなので、ここでならそれこそ「コクヨの名前を出せば」みたいなさ。
一般層じゃないと考えられる。
コクヨを知らない人は、多分あの会場に一人もいないでしょ。
我々にとっての強みが発揮できる土台の場所がなくて、次もし売るとしたら、全くの初心者として新天地に行かなあかんわけやんか。
新天地では「文具が楽しい」の説明から
次の頒布先として、やまめさんは評論系同人誌の即売会を挙げます。文具の楽しさを説明する必要が出る一方、「本であること」の不利が消えるという利点もお二人は見出します。
行くとしたら、例えば評論系同人誌と呼ばれる、文字多め系というか、フィクションじゃない同人誌の、「鉄道についていっぱい考えました」とか「グルメ本出します」とか系のところかなっていう感じはあるんですけど。
そうすると、ここでは文具っていうのが楽しいジャンルなんだよっていうところを説明しなきゃいけないとか、立ち振る舞いはもちろん変わりますよね。
そういう評論系同人誌の即売会にも、そっちの良さっていうのはもちろんあって。
読むのが平気な人(が来る)。我々の本、思った以上に文字多くなってしまって。文章詰め詰め度すごいじゃないですか。
文具マーケットが我々にとってどんなに利点だったかっていうことだけをいま焦点当てて言ったけど、文具マーケットにおいて不利な点でいうと、文具じゃないってことなのよね。
文具に関してるけど文具じゃないっていうのは。
そうそう。
本ばっかりのところだと、それはなくなるので。本を買いに来てる人ばっかりだから。
(本を)買いたい人たちもたくさんいらっしゃると思うので、新鮮な感じで「あ、こんな本あるんだ」って思ってもらえると、手に取っていただけやすいのかなっていう気が確かにしてて。
それはね、確かに挑戦する意義はちょっとあると思う。お作法とかは全く違うので、ある程度下調べは必要かもしれませんけれども。
経験のある友達とかに、どんなもんか聞いてみたりしたいし、出していきたいですね。
そういうところに出すには、品数がいるやんか、きっと。
そこはね、あんまり心配してなくて。
なぜなら、波子さんにはご自身の著書もありますし、あと今回の新刊っていう、2つあれば違いますよ。1と2の差は大きいと思う。
本屋さんに売ってる本を売っても大丈夫? 文具マーケットでは一応OKって言われたけど。
割とOKだと認識しています。回によってレギュレーションは違うっていう前提はありつつも、定価を割って売るとかはあんまり良くないというようなことはありますけど。
今のところ大丈夫なもの(商業本の販売)を見たことがあるっていう感じですね。
あと、文具王工作室の私としては、商品はございますので。文具王も今回新刊2冊ありますし、個人誌としてね。商業出版に関しては我々の比じゃないぐらい出しているので。
ってことは、東京が多分多いと思うねん、きっとそういうイベントって。おそらくね。
これからの売り方っていうのは本当にこれからなんですけど。文具マーケットなかったら、多分私たち、インクルーシブデザインっていう名目だけの本にしてたんじゃないかなと思ってて。
おお…そうかな。
もっと文具成分少なめというか、情報の比率の塩梅が違ってたのかもなぁとかって思って。
文具から紹介しなきゃいけない、さっきのリテラシーの部分をすっ飛ばして考えられる良さみたいなのはあったんで。私としては、作り方が変わったかもなぁと思ってて。
最後の日にかかった虹と、運営の「一緒に盛り上げる」姿勢
第11回の終了後、雨の会場に虹がかかったという話から、運営が回ごとに改善を重ね、出展者と一緒に盛り上げようとしていた姿勢へ話題が広がります。
余談ですけど、最後の回の最後、運営さんたちが片付けして「お疲れ様でした」っていうお話をしてた時に、この時も雨だったんですけど、虹がかかったらしいですね。
あ、そうらしい。私もXの投稿で見た。台風が来た時でね。想像してたよりはマシだったけど、ずっと雨で。思ったよりはお客さんがすごく来てくださってね。
ずっと降ってたのが、終わった後、建物の奥にね、虹がかかる様子がね、ちょっとね。
我々の身を置いているコミュニティが運営さんたちに近いところにあるので、「俺毎回お手伝いしています」みたいな方とかのことを知っていたりするので。
回ごとに運営さんたちも、「ここが良くなかった、次はこうしよう」とか、「今回はこういう運用方法を導入したんや」みたいなこととか。
「アナウンスを入れました」とか。運営ブースで、カタログ以外の商品を売っている即売会ってあんまないんじゃないかなと思ってて。「運営が放出するコレクションってなんやねん」って(笑)
応援グッズとかは確かにあると思いますけど、「運営がコレクション持ってるとは」みたいな感じで、一緒に盛り上げようとしてくださる感じとか。
いいものにしたい活動がやっぱ現場目線というか、そういうところがすごくあったので、雰囲気の良さとか、作品を出しやすい空気とかにはつながってたんだろうなと思って。
いろいろ思い返してって「あの時ちょっと手伝えたらな」とか後から思ってしまうところは申し訳ないなと思うんですけど、あのメンバーでいてくださっててよかったなと思って。
あわよくば、何かつながる糸口があるのであれば、同じ名前なり、違う名前なり、規模が違うなり、変化はあったとしても、同じ空気感を持った復活というか。
またそういう場に出展できると嬉しいなっていう気持ちにはなりましたね。
「20卓の空気感」が最後まで生きていた稀有なイベント
波子さんは、規模が大きくなっても第1回の20卓の空気感がそのまま生かされていた点を、文具マーケットの稀有さとして挙げます。
本当に感じたのは、私は第1回は行ってないけど、卓数が増えても、多分一番最初の20卓の時の空気感が割とそのまま生かされたイベントだったんじゃないかなと思ってて。
ああ、それはそうかも。
それは、なかなかできないことだと思うので。
規模がでかいと、やらないといけないことが多分いっぱい増えてきてさ。大きい会場であればあるほど、使用料とかもだんだん膨れ上がってくるわけだし。
そういう大きい会場になっても、あの空気感が保てる、そういう運営さんだったんだなっていうことは、すごく覚えておきたいなと思うし。
できればあの空気感が、誰かがすごく無理をしないとできないっていうのじゃなくて、ちょうどいい塩梅の規模で、またできたらいいのになっていうのはすごく思うね。
いや、そう、わかる。何かをやれば、その反対の意見が出るのはやっぱ世の常というか。
例えば他の大手のハンドメイドのイベントとかも、ブースの応募者が殺到するので「完全に抽選です」と言いつつも、「売れるブースばっかり出してんじゃないの?」みたいな指摘を受けるとか。
それで揉めるとかね。でも運営側からしたら、「抽選って言ってるんや、抽選で頑張ってるんやないか」っていう感覚のところもあるかと思うんですよ。
全部がそうかわからないところはありますよ。何か言われたら何かが起こる、というのはつきものだと思うので。
だから理想的な環境って作るの本当難しいんですけど、でも多分一番難しいところをクリアしてたっていうのがすごく。
そう、あの雰囲気でしょ? 雰囲気でしょ、とりあえずね。
雰囲気、雰囲気。
本当にそうだと思う。出展者の皆さんもそうだし、運営さんがものすごく心配りをしてくださったからこその空間ではもちろんあるんだけれども、それがなかなか稀有でしょうなっていうのがね。
ここで生まれたやまめは、川を上っていく
最後に、文具マーケットから生まれた2人の活動とこのPodcastを振り返り、運営への手紙を書くような気持ちで感謝を伝えて締めくくります。
私が初めて出る大きなイベントが文具マーケットで良かったなと思うし、そこに4回も出展できたっていうのはすごく良かったなと思ってる。
私なんて生んでいただいてて。
ね。ほんとよ。ここで生まれたね。
ここから生まれたやまめは、ちゃんと川を上っていくべく頑張りますので。
ほんまに。私思ったけどさ、この番組スタートしたのは2024年8月ですからね。2人とも本出してっていうのもちょっとあったよね。番組始める時に。
産声を上げた勢いの一環ですよ、この番組は。
そうそう。文具マーケットがあって生まれましたっていう感じ。やまめさんも生まれたし、このポッドキャストも生まれましたっていう。本当に育てていただいてありがたい。
この思い、運営さんに伝わるといいなって思いながら、お手紙を書く気持ちで私いま喋ってます。
参加させてもらった我々にとっては、本当に唯一無二の、他にない稀有なイベントでございました。ありがとうございました。
めっちゃ語ってしまった、いっぱい。
名残惜しいんですよ、これ。
そうなの。名残惜しいけど、でも次のステージを我々探さないといけない。
はい、差し迫った課題もありますので、次のステージに。頑張りましょうという。
頑張りましょうね。
いつもの締めでございます。
本日もお聞きいただきましてありがとうございました。よろしければ、番組のフォローもよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
まとめ
波子さんとやまめさんは、20卓・来場者300人から始まった文具マーケットが、お二人の活動とこのPodcastを生んだ場だったと振り返りました。買う気で来る文具好きの人たちに直接本を届けられたことや、規模が大きくなっても初回の空気感が保たれていたことが、繰り返し語られています。一方で、改善を試す場がなくなり、次は評論系同人誌の即売会などの新天地で「文具が楽しい」から伝える必要があるという課題も見えてきました。
- やまめさんは「文具マーケットがなかったら活動をしていなかった」と語り、発表の場を探す必要すらなかったと振り返る
- 波子さんにとっては、読者に直接会って本を届け、東京へ出てくる動機にもなった場だった
- 手売りの場で「インクルーシブデザイン」という言葉が文具好きに伝わりにくいことを実感した
- 運営の心配りによって、20卓の初回の空気感が大規模になっても保たれていた稀有なイベントだった



