そもそも中小企業はなぜ採用に困るのか
今回のテーマは「中小企業の採用はなぜうまくいかないのか」です。挑戦的なテーマで話すのは緊張すると前置きしつつ、吉田さんは中小企業の採用の難しさを語り始めます。
吉田さんが労務相談に乗っていると、労務に力を入れる理由をよく聞くと「人が取れないから」「いい人が来てくれないから」だという経営者が多いといいます。だからこそ就業規則を整備したいと考える方が結構いるそうです。
吉田さん自身が経営する社労士法人ONE HEARTでは採用にかなり力を入れており、ノウハウも溜まってきたため、その内容を共有する回になっています。
中小企業はやっぱりどこも採用困ってるなっていうのは感じてます。
採用がうまくいかない一番の原因は「ターゲット理解」
吉田さんが挙げる採用がうまくいかないパターンの一つ目は、採用ターゲットを自分で理解していないことです。
そこで吉田さんは、採用市場にいる人を2×2のマトリックスで分類する考え方を提示します。ONE HEART流のターゲットの捉え方です。
1つ目の軸は「出社かリモートか」です。ハイブリッドもありますが、基本は会社に出社するか、在宅でリモート勤務するかのどちらかに分かれると説明します。
2つ目の軸は「優秀かそれ以外か」です。縦に出社かリモートか、横に優秀かそれ以外かの線を引いてイメージするよう促します。経営者は当然、優秀な人を採用したいと考えるからです。
なぜ「出社×優秀」を狙うと勝てないのか
何も考えずに進むと、中小企業の多くは「出社で優秀な人」を採用しようとする、と吉田さんは指摘します。会社まで来てくれて、細かい指示をしなくても以心伝心で動いてくれる人を望むわけです。
しかし、中小企業は大企業と比べると労働環境で劣る面が多いといいます。退職金制度がない、ボーナスがそこまでない、年収も良い状態ではない、といったケースが多いためです。
その状態で「出社×優秀」を狙うと、GoogleやAmazon、トヨタや任天堂といった人気企業と比較されてしまい、一般の中小企業はなかなか勝てないと吉田さんは話します。
そういう人(出社×優秀な人)は正直中小企業だとなかなか採用できないかなと思います。
余談として、Amazonが出社に回帰する、オンライン会議で知られるZoom ── オンライン会議ツールを提供する企業。リモートワークの代名詞的存在として語られている。も出社に切り替えてきた、というニュースにも触れます。
ただし吉田さんは、それを世の中全体の流れと受け取るのは注意が必要だとくぎを刺します。人気企業だからこそ優秀な人に出社を要請できるのであって、そうでない会社が出社を求めれば「辞めます」という人も出てくるからです。
出社を諦めるか、優秀さを諦めるか
「出社×優秀」は大企業が採用してしまう。ではどうするか。吉田さんは、出社を諦めるか、優秀さを諦めるか、どちらかを選択しないと中小企業の採用はうまくいかないと言います。
一昔前は出社が前提だったため、優秀ではない層を採用して教育で補うのが中小企業の採用戦略でした。社長が細かく教えてやりくりする形です。
しかしこのやり方は大変だと吉田さんは振り返ります。一度で覚えてくれない、何回教えても覚えてくれないという人と働くと、上司も社長も、一緒に働くメンバーも負担が大きくなります。
その負担はスタッフ同士の不満につながり、退職を招くこともあるといいます。だからこそ中小企業の採用や労務は難しいのだと吉田さんは説明します。
出社は維持できるが、教育に手間がかかり負担が大きい。従来型の中小企業の戦略
リモートを前提に優秀な層を狙う。ONE HEARTが舵を切った戦略
ONE HEARTが選んだ「リモート×優秀」戦略
そこでONE HEARTは、リモートで働いてくれる優秀な人を採用する戦略に舵を切ったと吉田さんは明かします。コロナ後にこう舵を切った会社は多いといいます。
実際にリモートで優秀な人が多く在籍してくれており、経営者としてもストレスなくよくやってくれていると感じているそうです。
リモートの教育は「計画的にやれば楽」
一方でリモートには苦労もある、と吉田さんは認めます。代表的なのが教育の難しさです。
ただし吉田さんは、教育が難しいのはリモートの教育がまだ研究し尽くされていないからだと考えています。突き詰めればリモートのほうが楽だという見方です。
理由として、動画コンテンツで教える、あらかじめ研修の面談日時を決めておくなど、計画的に進められる点を挙げます。しっかりやればリモートのほうが教育しやすいといいます。
対照的に、あまり良くない出社型の会社では教育が計画的でないと指摘します。すべてOJT ── On the Job Training。実際の業務を通じて仕事を覚えていく教育手法。ここでは計画性のない場当たり的な教育の例として挙げられている。で、たまたま来た仕事を題材に覚えていくため、スキルが万遍なくつかず、レベルが上がっていきにくいというのです。
だからリモートワークでは、来た仕事を題材にするのではなく、教育カリキュラムを作ってそれに沿って教育すべきだと吉田さんは話します。ONE HEARTでも教える内容をリスト化し、順番に教えているそうです。
来た仕事を題材に覚える。計画性がなくスキルが偏り、レベルが上がりにくい
動画コンテンツやカリキュラムで順番に教える。計画的に進められる
これからの組織設計は「中核業務を誰に渡すか」で変わる
最後に吉田さんは、リモート時代の組織設計について語ります。今は出社スタッフに中核業務を渡し、リモートスタッフにサポート業務を渡すケースが多いといいます。
具体例として、出社スタッフが接待や接待ゴルフなどで中核業務を担い、リモートスタッフは産休・育休明けで子どもが小さい人が事務的なサポートを担う、という人材活用の形を挙げます。
しかし吉田さんは、この形は中小企業では続かないと考えています。理由は一貫していて、優秀層は大企業が採用してしまうからです。
そこで吉田さんが描く未来は逆です。出社スタッフにサポート業務を渡し、リモートスタッフに中核業務を渡していくという組織設計です。
リモートを好む人は自立的な人が多く、責任のある業務を渡すとしっかりやってくれる、というのがその根拠です。リモートのスタッフがウェブ会議で経営会議をして方針を話し合うような形を想定しています。
出社はパートやアルバイトで固めて郵送業務などを担ってもらう。吉田さんは、そういう会社が生き残っていくと考えています。
出社スタッフが中核業務、リモートスタッフがサポート業務
リモートスタッフが中核業務、出社スタッフ(パート・アルバイト)がサポート業務
一度これ(リモートワーク)経験したら出社には戻れないですよ。
リモートワーク中心の会社を経営し、自身もそう働く吉田さんは、優秀な人ほど一度リモートを経験すると今後もリモートで働きたいと思うはずだと話します。そうして次第にリモートへシフトしていくと見ています。
まとめ
中小企業の採用がうまくいかない大きな原因は、大企業が押さえる「出社×優秀」を狙ってしまうことにあります。吉田さんは、出社か優秀さのどちらかを諦め、リモートで優秀な層を計画的に育てる方向へ舵を切ることを提案しています。
- 採用がうまくいかない一因は、採用ターゲットを自分で理解していないこと
- 「出社×優秀」層は大企業が採用するため、中小企業は勝ちにくい
- 中小企業は出社を諦めるか優秀さを諦めるか、どちらかの選択が必要
- リモートの教育はカリキュラム化して計画的に進めれば、むしろ教育しやすい
- これからはリモートスタッフに中核業務を渡す組織設計が生き残るという見立て





