社労士事務所にもブラックが多い、という前提
今回のテーマは「ブラック社労士事務所の見分け方」です。社労士事務所への転職を考える人に向けて、どうすればブラックな事務所への就職を避けられるかが語られます。
まず前提として、吉田さんは意外とブラックな社労士事務所は多いと指摘します。業界の中にいる人ならわかる話だといいます。
よくある誤解として、社会保険労務士は労働基準法を勉強しているのだから当然法令遵守していて、残業代も1円単位で支払われ、福利厚生も充実しているはずだ、という見方があります。しかし吉田さんは、それは大きな間違いだと話します。
士業ってこう頑張って働くから、長時間労働になったり、場合によっては会社の経営がうまくいってないとかだと、残業代払わない事務所っていうのもあります。
だからこそ、しっかり見分けて転職しないと失敗する、というのが吉田さんが最初に伝えたい点です。
見分け方①「売りたい商品が明確じゃない」事務所は危ない
1つ目の見分け方は「売りたい商品が明確じゃない」ことです。何の商品やサービスを売りたいのかがはっきりしない社労士事務所は、ブラックになりがちだといいます。
来た仕事全部引き受けちゃうみたいな。
吉田さんは、そういう事務所で働くとどうなるかを具体例で説明します。月曜から金曜まで、毎日違う業種の仕事に追われる状態です。
月曜
運送業の労務管理の資料を作成
火曜
介護・福祉系の処遇改善加算の資料を調べる
水曜
労働者派遣法の勉強
吉田さんによれば、この3つの例はどれも社労士業務のなかでも難しいものです。毎日違う業種の難しい仕事をこなしていたら、すぐに労働時間がなくなり、残業しないと終わらなくなります。
一方で、専門特化している事務所は事情が違うといいます。派遣専門、介護の処遇改善加算専門、運送専門といった事務所です。
専門的な業種に対して社労士業務の中で難しい難易度が高い業務を高く売っていい単価でやれてると思うので、ホワイトになりやすいと思うんですけど。
反対に「何でもやります」という事務所は、難しい内容を一から調べてやらなければならず、非常に大変になります。
見分けるには、ホームページや代表の先生のキャリアを見るのが有効だと吉田さんは話します。士業事務所は代表の得意不得意が事務所のカラーになりやすいためです。
見分け方②「サービス規格が定まっていない」とパンクする
2つ目の見分け方は「サービス規格が定まっていない」ことです。たとえ運送業に特化すると決めても、それだけでホワイトな事務所になるわけではないと吉田さんは言います。
専門を絞ったうえで、さらにサービス規格を考える必要があるといいます。顧問料を高めにして手厚くやるのか、安めにして追加料金で調整するのか、といった戦略です。
これが普通の会社経営なんですよ。なんですけど、士業事務所ってよくわからないのは、サービス規格が定まってない士業事務所、結構多いです。
規格が決まっていないと、お客さんに言われるまま何も考えずに引き受けてしまうことになります。吉田さんは、ブラック化しやすい典型例として「顧問先の従業員との直接やりとり」を挙げます。
通常は、顧問先の労務担当者や社長が情報を取りまとめ、社労士事務所は担当者一人とやりとりを続けます。これが普通のサービス規格です。
ところが規格が定まっていないと、たとえば従業員30人がバラバラに社労士事務所へ連絡してくる状態になり、すぐに時間がなくなってしまいます。
吉田さんは、料金とサービス範囲の釣り合いも重要だと指摘します。人事総務業代行として月額30万円で受けているならまだしも、顧問料5万円で同じことをやればすぐにブラック化するといいます。
見分け方③「常に求人が出ている」事務所への注意
3つ目の見分け方は「常に求人が出ている」ことです。これはあらゆる業種に共通するといいます。
吉田さんは、自分の事務所で求人をして気づいたこととして、社労士事務所は一枠に何人も応募が来る買い手市場になっている場合が多い、と話します。だからこそ常に求人が出ているのはおかしい、といいます。
常に求人出しっぱなしっていうことは慢性的に人手不足なんです。
売りたい商品が明確でなく、サービス規格も決まっていないと、スタッフが疲弊してどんどん辞めてしまう。だから常に求人を出さなければならない状態になっている可能性が高い、というのが吉田さんの見立てです。
ただし例外もあるといいます。拡大志向の良い会社で依頼が殺到し、人が足りていないケースです。とはいえ、気をつけたほうがよいと吉田さんは付け加えます。
応募前と面接で、どこまで見極められるか
では実際にどう見分けるのか。吉田さん自身、かつて社労士事務所への転職に失敗し、半年で辞めた経験があると打ち明けます。
応募前にできることとして、まずホームページなどの公開情報から「売りたい商品」を確認し、キャラクターが立っている事務所を選ぶことを勧めます。
もう一つは料金表の確認です。安すぎるところはブラック化しやすいといいます。単価が低いと、多くの客を担当しないと売上が立たなくなるためです。
面接では悩ましい点があります。残業時間などを根掘り葉掘り聞きすぎると、採用確率が下がってしまうためです。
しつこく残業時間何時間ですか?とか聞くと、この人もしかしたら残業してくれないのかなと思って採用されない可能性もある。
そこで吉田さんは、聞きやすい切り口を提案します。売りたい商品やサービス規格に関する質問から逆算するやり方です。
どういうお客さんが多いんですか?とか、どういうサービスを売ってるんですか?とかっていうのを聞いた時に、それって世の中から必要とされてそうですよねっていう回答が返ってくるような社労士事務所だったら、就職する価値があると思います。
反対に、その質問に対して「来た仕事は全部引き受けています」ともごもごした答えが返ってくる事務所は、ブラック化する可能性が高いので気をつけてほしい、と吉田さんは締めくくります。
まとめ
社労士事務所にもブラックな職場は少なくありません。吉田さんは、売りたい商品・サービス規格・求人の出し方という3つの視点から、転職前に事務所を見極めることを勧めています。
- 士業だから法令遵守しているとは限らず、ブラックな社労士事務所も存在する
- 売りたい商品が明確でない事務所は、難しい仕事を何でも引き受けてブラック化しやすい
- サービス規格が定まっていないと、客の言いなりになり時間もやりがいも失われる
- 常に求人が出ている事務所は、慢性的な人手不足のサインである可能性が高い
- 応募前は公開情報と料金表を確認し、面接では扱う客層やサービス内容から逆算して質問するとよい



