なぜ「チャットツールは絞る」から始めたのか
今回のエピソードで吉田さんが語るのは、社労士法人ONE HEARTがGoogleチャットに対応し始めたという話です。まずは、これまでどんな業務フローだったのかから話が始まります。
開業した当初、ONE HEARTはお客さんとのやりとりを全部Chatworkでやるという方針を宣言していました。理由は品質管理と、従業員の負荷軽減のためだったといいます。
吉田さんは、チャットツールがバラバラな状態がいかに大変かを具体的に説明します。ある会社はChatwork、次はSlack、別の会社はMessenger、また別の会社はLINE、さらに別の会社はマイコモンといった状態です。
こんな状態っていうのはやめた方がいいです。理由はなんでかというと、高確率で見逃しが起こるからです。
見逃し以外にも理由があります。チャットツールごとにファイル添付のやり方や改行の操作が微妙に違い、誤爆につながりかねない点です。
改行については、ENTERキーで改行できるのか、CONTROL+ENTERキーなのかがツールで違うと吉田さんは指摘します。ツールを絞れば生産性も品質管理も上がり、見逃しも減ると考えたわけです。
そして吉田さんが一番やってはいけないと挙げるのが、あるお客さんの個人情報を別のお客さんに送ってしまうことです。ツールを絞ればこうした事故も少なくなるはずだといいます。
こうした理由からChatworkのみで開業しましたが、スタートアップなど幅広いお客さんへの対応を考え、Slackも加えることになりました。その後は長い期間、ChatworkとSlackの2つでお客様と連絡するというルールで進めてきたそうです。
この二大巨頭を押さえておけば、なんとか大体どこの会社もコミュニケーションできるんじゃないかっていう風にずっと思ってたんです。
ChatworkとSlack、それぞれの強みと弱み
吉田さんは、10分で労務がわかるラジオという番組の趣旨からは少し脱線すると断りつつ、ChatworkとSlackのメリット・デメリットを整理します。
Chatworkのメリットは、ビジネス版LINEのような感覚で使える点です。ご高齢の方を含め、ITリテラシーがそこまで高くない人でも簡単に使えるといいます。
一方でデメリットもあります。無料プランだと一定期間を過ぎると昔のチャットが追えなくなる点です。吉田さんは30日か40日だったと記憶しており、情報管理の観点からお客様に勧めづらくなったのが現実だと話します。
続いてSlackです。Slackも無料プランだと過去の閲覧制限があり、そこはChatworkと同じデメリットだといいます。
Slackのメリットは、チャットツールとしての洗練度です。スレッド文化を使いこなせる会社なら、複数の話を同時並行でスムーズに進められ、後から遡って確認するのもスムーズだと吉田さんは評価します。
さらにAIボットや他のSaaSと組み合わせ、特定の条件で通知するといった業務フローへの組み込みもしやすい点を挙げます。吉田さんは、リアルオフィスの延長線上に会社がバーチャルにあるような感覚になるのがSlackのメリットだと表現しました。
ただしSlackは高機能ゆえに、ITリテラシーの問題でお客さんがついてこられない懸念もあるといいます。なお、Slackにはシングルチャンネルゲストという仕組みがあり、それなら無料でも閲覧制限はないものの、1つのチャンネルにしか呼べないなどのデメリットもあると補足しています。
ビジネス版LINEのように誰でも簡単に使えるが、無料プランでは一定期間で過去のチャットが追えなくなる
スレッド文化やAI・SaaS連携で高度なコミュニケーションができるが、ITリテラシーの高さが求められる
Googleチャットを導入した2つの理由
前置きが長くなったところで、本題のGoogleチャットの話に入ります。吉田さんがGoogleチャットを導入した理由は大きく2つあります。
1つ目は、お客様からの要望です。問い合わせの段階からGoogleチャットでやりとりしたいという声が増え、対応したら嬉しいかと尋ねると、ありがたいと言われるケースが増えてきたといいます。
2つ目の理由は、AIです。GoogleにはGeminiというAIがあり、そこに寄せていくのが合理的だとみんなが言っていると吉田さんは話します。
吉田さんによれば、税理士業界などでもGoogle Workspaceに全てのデータを集約する方が合理的だという考えが増えてきているといいます。Googleドライブに入ったデータをAIに分析させ、提案につなげたいという狙いです。
AIとGoogle Workspaceを組み合わせると何ができるのか
吉田さんは、Google Workspaceの中で業務が完結するとどんなことができるようになるかを、具体例を挙げて説明します。
たとえば過去に作った資料を別の会社向けに作り替えたいとき、その資料がどこにあるかわからないという場面が、社労士の業界でもあるといいます。
Google WorkspaceやGeminiの中で業務が完結していれば、こうした探し物をAIに頼めるようになるといいます。
(AIに)入社誓約書の雛形を(数)年ぐらい前に作ったと思うんですけど、これ出してもらえませんか?とか言ったらバーって出してくれるはずなんですよ。
吉田さんは、これは1つの例に過ぎないとして、他の活用例も挙げます。格納された給与データをもとに人事評価制度の提案につなげたり、就業規則の提案につなげたりといった使い方です。
さらに、格納された就業規則と給与計算の成果物の違いを点検させることもできるはずだといいます。だからこそ、社内も社外もGoogleチャットにコミュニケーションを寄せた方が中長期的には強いという結論につながっています。
Googleチャットが覇権を取ると考える理由
吉田さんは、今のチャットツールの二大巨頭はChatworkとSlackで、そこにTeamsが加わってくるとみています。しかし数年後にはGoogleチャットが覇権を取るのではないかと予想します。
その根拠として吉田さんが挙げるのが、ネットワーク効果です。かつてLINEが日本を席巻し、今もプライベートのチャットツールとしてダントツなのは、みんながLINEを使っているからだといいます。
LINEを使っていないと、同窓会やPTAの連絡の際に1人だけ除外されてしまう。だからみんなが使っているツールほど便利になるというのがネットワーク効果だと吉田さんは説明します。
Googleは今、Workspaceへ業務を寄せる会社が増えており、Googleチャットを使う人も増えていくはずだといいます。そうなると、LINEのグループのように、Googleを使っていない会社が取り残されていくのではないかと考え、導入を決めたそうです。
Google+の失敗と、それでも覇権を取ると考える根拠
吉田さんは、自分の予想が外れるパターンにも触れます。Googleチャットが流行らず撤退してしまう可能性です。
その例として挙げるのが、かつてGoogleが肝煎りで始めたSNS、Google+です。結局撤退したこのサービスがなぜFacebookやX(Twitter)に勝てなかったのか、考察記事は無限にあるので興味がある人は読んでほしいと吉田さんは話します。
吉田さん自身の理解はシンプルです。Googleは検索や情報収集、あるいはGoogle Workspaceでの仕事という認知だったため、SNSで友達とつながる感覚があまりなく、普及しなかったのではないかと考えています。
その上で吉田さんは、Googleチャットは覇権を取ると予想します。理由は、Googleチャットの目的が仕事のコミュニケーションであり、Google Workspaceを契約する人の目的も仕事だからです。
(Googleチャットとの)目的が共通化してるはずなんですよ。だからそのままなんかすんなりGoogleチャットの流入っていうのは増えてくるんじゃないかなと思ってます。
この予想に基づいて、ONE HEARTはまずGoogleチャットに対応したと吉田さんは説明します。もしGoogleチャット非対応がネックで顧問を迷っている会社があれば、ホームページには書いていないが対応したので活用してほしいと呼びかけました。
チャットツール総括と、労務との意外なつながり
最後に吉田さんは、各チャットツールの総括を語ります。まずChatworkについては、Bパス構想などで頑張ってはいるものの、チャットツールとしての洗練度で見ると続けていく理由が薄くなってきたといいます。
吉田さんは、Chatworkを使い続ける理由が、これまでデータを蓄積してきたからという以外になくなってきたと感じています。AIが実装されて返信案が出てくる、他のツールと連携して業務効率化できるといった機能がなければ、使い続ける人は減っていくのではないかと予想します。
Slackについては、AIが入っていて、ワークフローで他のツールとつなげる構想が実際にあるといいます。たとえばキントーンとSlackをつなぐこともできます。
ただし吉田さんがSlackのAIの上位有料プランを使ったところ、思ったような回答は返ってきませんでした。自分宛にメンションされたメッセージを1週間分点検し、回答し忘れているものをリストアップしてほしいと頼んでも、期待した回答は来なかったといいます。
吉田さんは、GoogleカレンダーやGoogle Meet、Googleチャットが連携し、良いサービスになってくれたら助かると期待を述べます。
そして今回のテーマが労務とどうつながるかにも触れます。たとえばLINEで業務時間外に連絡していると労働時間に当たるかという論点が出てくるように、チャットツールへのこだわりも労務に間接的につながってくるといいます。今日の配信を聞いて見直したくなったら参考にしてほしいと締めくくりました。
まとめ
社労士法人ONE HEARTがGoogleチャットを導入した背景には、お客様からの要望とAI活用という2つの理由がありました。吉田さんは、Google WorkspaceへのデータとAIの集約が業務を強くするとみて、Googleチャットが将来覇権を取ると予想しています。
- ONE HEARTは品質管理と負荷軽減のため、当初ChatworkとSlackにツールを絞っていた
- Googleチャット導入の理由は、お客様からの要望とGeminiによるAI活用の2つ
- Google Workspaceにデータを集約すれば、資料検索や提案・点検をAIに任せられると期待している
- ネットワーク効果を背景に、数年後はGoogleチャットが覇権を取ると吉田さんは予想
- チャットツールへのこだわりは、労働時間などの労務論点にも間接的につながる






