ゲストは上場企業のバックオフィスを経験した税理士
今回のコラボ回のテーマは、「税理士がおすすめする開業後の立ち上げ方」です。ゲストとして、税理士法人G&Sソリューションズの清水宏久さんが招かれています。
清水さんは、会計事務所で税理士資格を目指しながら経験を積んだ後、上場準備をするベンチャー企業に転職したという経歴の持ち主です。
1社目の上場準備はうまくいかなかったものの、2社目で上場までのプロセスを経験し、上場企業のバックオフィス全般を担当しました。その後、2014年に税理士として独立しています。
じゃあ経歴としては、事業会社での上場経験もあり、一方で税理士としてお客さんを支援する経験もありっていう、そういうキャリアなんですね。
はい、おっしゃる通りです。
連続起業家でもない限り、開業を経験するのは一生に一度あるかないか、というのが吉田さんの実感です。そこで、開業したばかりの人が何から手をつければいいのかを、清水さんに正面から尋ねます。
会社立ち上げたら何すればいいんですか?
開業後にやることを整理する4つのステップ
清水さんは、会社設立後にやることはネットで調べればたくさん出てくるものの、効率的に進めるには順番があると話します。大きく4つに分けて考えているそうです。
会社立ち上げた時にやることっていうのは、ホームページとかで調べればたくさん出てくるんですけれども、効率的に進めるにはやはり順番というのがありまして、大きく4つ考えています。
1つ目は、会社を設立するための法務的な手続きである設立登記です。2つ目は、会社ができた後に税務署などへ出す税務関係の届け出です。
3つ目は、それと並行して行う社会保険や労働保険への加入手続きです。そして4つ目が、税務の届け出を済ませた後に行う銀行口座の開設だと清水さんは説明します。
設立登記で会社に「人格」を持たせる
最初のステップである設立登記について、吉田さんが具体的な作業内容を尋ねます。ここを主にサポートするのは司法書士だと清水さんは補足します。
清水さんによると、個人としてではなく会社が主体的に事業活動を行えるようにするには、法律上、会社に人格を持たせる必要があります。
法務局に行って、こういう会社という存在を認めてくださいという手続きをするのが設立の登記手続きになっています。
吉田さんが「設立すると登記簿謄本が取れるようになるのか」と確認すると、清水さんはその通りだと答えます。社会保険の手続きを依頼される社労士側は、この場面には立ち会わないことが多いそうです。
税務の届け出は消費税のポジション取りが要
登記が済んだ次は税務の届け出です。清水さんはまず、会社ができたことを知らせる「法人の設立届」を税務署に出すと説明します。
それ以外にも、必須ではないものの出しておいた方がよい届け出があります。代表的なのが青色申告の届け出と、消費税に関する各種届け出です。
清水さんは、届け出の中でも消費税関係が一番注意が必要だと位置づけます。設立から一定期間は消費税を納めなくて済む免税のポジションを取れるからです。
ただしインボイス制度が始まった今は、免税事業者だと取引上不利になる場合があると清水さんは指摘します。逆に、当初赤字が続くなら課税事業者を選んで消費税の還付を受けられる場合もあるそうです。
この辺っていうのが、本当にこの会社の事業の内容ですとか、いつぐらいからどんな収益が立つ見込みなのかとか、そういう会社の状況によって全く選択する余地が変わってきます。
吉田さん自身は、開業がインボイス制度前だったため届け出は不要だと考え、簡易課税がよいという情報くらいしか知らなかったと振り返ります。赤字なら還付の可能性があるという話は初耳で、奥が深い分野だと驚きます。
これってなんか正しい判断をするには、税理士に相談するのが一番ってことですよね。
特にインボイス制度が始まって、さらに複雑になってますし、いろんな判定が近年コロコロ変わって、かなり複雑になっているので、本当にここは相談することをお勧めします。
社会保険と労働保険はどちらが先か
3つ目のステップである社会保険と労働保険は、社労士である吉田さんが説明します。法人を作って税務の届け出を出すと、ここで分岐が生まれます。
スタッフを雇う場合は労働保険への加入が必要になります。労働基準監督署に手続きをしたり、雇用保険の設置届をハローワークに出したりする必要があると吉田さんは述べます。
一方で、労働保険より先に加入することが多いのは社会保険だと吉田さんは言います。一人会社の社長でも役員報酬が発生すれば社会保険に加入しなければならないためです。
社会保険に先に入って、その後に労働保険に入るっていうケースが、取り扱ってるケースだと多いかなと思います。
銀行口座は税務の届け出後でないと開けない
最後のステップは銀行口座の開設です。清水さんはここでのポイントを2つ挙げます。1つは、税務の届け出の後に手続きを進めるという順番です。
清水さんの知る限り、ほとんどの銀行が口座開設時に税務署への届出書を求めてきます。そのため、税務の届け出が済んでいないと口座を開設できないという点に注意が必要です。
税務署への届出を済んだ後でないと銀行口座の開設ができないというところはご注意いただければと思います。
吉田さんが、資金調達などで早めに動きたい場合の対処法を尋ねると、清水さんは、その段階ではまだ会社の口座がないため個人の口座でやりくりするしかないと答えます。
つまり法人口座が必須なら、登記からその手前の届け出までをとにかく早く進めるしかない、というのが清水さんの整理です。
登記をして、登記簿謄本が出来上がったら税務の届出ができるようになって、その税務の届出をしたら、今度銀行口座の開設が進められるようになってという順番になります。
ネット銀行は開設しやすいが機能に落とし穴
銀行口座の開設で注意すべき点について、清水さんはマネーロンダリング対策などで口座開設自体が近年難しくなっていると話します。
その中でも比較的開設しやすいのがネット系の銀行だと清水さんは言います。PayPay銀行やGMOあおぞらネット銀行などを使ってスタートする人が多いそうです。
ただしネット系銀行は機能に制限があり、後々困って信用金庫や地方銀行の口座も開かざるを得なくなることがままある、と清水さんは注意を促します。
結構ネット系銀行だとできること、機能に制限があって、結局後々困ったことが起こって、信用金庫とか地方銀行の口座を開かないといけないということになることがままあります。
具体的にどんなことで困るのかという問いに対し、清水さんは社会保険料の口座引き落としができない、税金の還付の受取口座として指定できない、といった例を挙げます。
清水さんが今おすすめしているのはGMOあおぞらネット銀行です。海外送金はほぼできないものの、それ以外はほとんどでき、1つ開設しておけば支障なく事業活動ができると顧客にすすめているそうです。
余談なんですけど、私は住信SBIネット銀行にしちゃったとか言ったらすごい失礼なんですけど、結果やっぱりGMOあおぞらネット銀行との機能比較だと劣る部分もあるので。
4つのステップをあらためて並べると、最初に登記、次に税金の届け出、必要であれば労働保険・社会保険の届け出、最後に銀行口座の開設、という流れになります。
バックオフィスは「どこまでやるか」を見極める
手続きを終えるとそこから企業活動が続いていきます。吉田さんが、リスナーに伝えたいことを尋ねると、清水さんはスタートアップとのやり取りを例に話し始めます。
バックオフィスはやろうと思えばどこまでも細かくできる一方で、設立したばかりの会社がどこまでやるべきで、どこから先は今やらなくていいのかを話すことが多いそうです。
たとえば経理では、上場企業がつけるような会計帳簿までは中小企業に求められていないため、ある程度力を抜いてうまく回せばよいと清水さんは言います。
ただし、これだけはやってほしいという点もあります。会社のお金の流れを漏れなく記録することと、その基になる証票類をきちんと保管することです。
会社のお金の流れというのを漏れなく記録しておくことと、その基になっている証票類ですね、レシートとか領収書、そういったものはきちんと保管しておいてくださいというところだけは強くお願いしております。
定型業務は士業に任せて事業に集中する
記録と証拠を残したうえで、具体的にどう回していくのがおすすめかという問いに、清水さんはややポジショントークになるかもしれないと前置きします。
それでも清水さんは、税理士事務所や給与計算を扱う社労士事務所などをうまく活用し、業務をできるだけアウトソースしていくことをすすめます。
起業する人は優秀で、調べれば何でも自分でできてしまいます。しかし、そこに時間をかけるのはもったいないと清水さんは考えています。
ただでさえ起業すると、本当に皆さんおっしゃるのが、こんなにやることあると思わなかったっていうぐらい、いろいろとやることが膨大に出てくるので。
だからこそ清水さんは、定型的なルーティン業務はフィーもそれほど高くない士業に任せ、効率的なやり方を最初に会社に導入してしまう方が後々の成長につながると話します。
吉田さん自身も開業時はお願いするタイプで、設立登記は司法書士に、税務関係の届け出や記帳はすべてアウトソースしていたと明かします。それでも中の情報を外の専門家に出すだけで大変だったと振り返ります。
番組名どおりの10分を大きく超えたところで、清水さんが最後にリスナーへメッセージを送ります。士業は多くの会社のバックオフィスを見て、効率的に回すノウハウを多く持っているといいます。
多少のフィーはもちろん発生はしますけれども、それを上回るメリットを得られると思いますので、効率的な会社運営、事業に集中できる環境っていうのを作り出してもらえればと思っています。
なお、清水さんは次回もゲストとして登場し、IPOについて話す予定だと吉田さんが予告しています。
まとめ
このコラボ回は、会社設立後にやるべきことを「登記→税務の届け出→社会保険・労働保険→銀行口座の開設」という順番で整理し、消費税のポジション取りや銀行選び、バックオフィスの任せ方まで、税理士の視点で具体的に語られました。
- 開業後の手続きは、登記→税務の届け出→社会保険・労働保険→銀行口座の開設の順で進めると効率的
- 税務の届け出では消費税のポジション取りが最も注意点で、会社の状況により選択が変わるため税理士への相談がすすめられる
- 銀行口座は税務の届け出後でないと開けず、ネット系は開設しやすい一方で機能制限に注意。GMOあおぞらネット銀行がすすめられた
- 会社のお金の流れの記録と、レシートや領収書などの証票類の保管は最低限やっておくべきこと
- 定型的なバックオフィス業務は士業にアウトソースし、事業に集中する環境を最初に作るのがおすすめ





