適性検査は本当に「採用の合否判定」だけでいいのか
今回のテーマは、AIを使った「攻めの適性検査」の活用方法です。適性検査は、採用選考の段階で受けてもらい、それっきりになっているケースが中小企業では多いと吉田さんは話します。
吉田さんによれば、そもそも適性検査をやっていない会社のほうが、絶対数としては多いのではないかとのことです。
そのうえで、AIが発展した今なら、適性検査で集めたデータをもっと使えるのではないか、という問いが今回の出発点になっています。
中小企業やスタートアップでよくある使い方は、問題社員を回避するために適性検査を使うパターンです。社会性が全くない人や、極端に自己中心的な人を採用すると、小さな企業では大きなリスクになるためです。
具体的には、個性的すぎる結果が出た人を採用選考の段階で落とす、という使い方が一般的だと吉田さんは説明します。当社でも従来こうした使い方をしており、現在も続けているとのことです。
適性検査をAIに読み込ませると、人材配置の答えが出てくる
今回吉田さんが注目したのは、従業員と上司自身の適性検査の結果をAIに読み込ませると、さまざまな考察が出てくるという発見です。
質問の仕方としては、まず自分が社会保険労務士法人の経営者であることを伝え、スタッフに受けてもらった適性検査の結果をPDFで読み込ませます。そのうえで「どんな人材配置が最適ですか」と尋ねるそうです。
すると、たとえばAさんは顧客対応で力を発揮するタイプ、Bさんは他のスタッフをサポートするバックオフィス向き、といった提案が返ってきます。
さらに、コラム作成のように一つの業務の中で完結し、他人とのやりとりがあまり生じない仕事に向く人、といった具体的な示唆も出てくると吉田さんは話します。
前提を伝える
自分が経営者であること、法人の従業員規模などをAIに説明する
結果を読み込ませる
スタッフの適性検査の結果をPDFで読み込ませる
配置を尋ねる
「どんな人材配置が最適ですか」と質問する
提案を受け取る
Aさんはフロント対応、Bさんは後方支援、といった配置案が返ってくる
興味深かったのは、AIが導き出した配置と、吉田さんが実際にスタッフの仕事ぶりを見て決めた配置が、非常に近かった点だといいます。
一方で、吉田さんが一人の人間として見ている範囲には限りがあるため、それ以外の気づきも得られたとのことです。
AさんとBさんが組むとうまくいくのか、AIに聞いてみた
AIの活用は、個人の配置だけにとどまりません。吉田さんは、AさんとBさんが組んだときにうまくいくパターンと、うまくいかないパターンも考えてもらえると話します。
たとえば、ルールを厳格に解釈するタイプの人が、ある業務をメイン担当とサブ担当の二人で受け持つ場合を挙げています。ルールがきっちりしていれば二人ともルール通りに動けてパフォーマンスが出ますが、ルールが定まっていないと二人ともストレスを感じる可能性がある、という示唆です。
こうして、このスタッフの組み合わせではここに注意、という点をAIが教えてくれるといいます。
吉田さんの会社では、一つの業務に対して窓口担当と副担当の二人体制をとっています。基本は窓口担当が全部進めますが、業務量によっては副担当も動くため、その組み合わせの注意点をAIで学べたそうです。
共感力が低い上司に、AIが出した意外なアドバイス
ここからは、上司としての自分をどうするか、という話に移ります。吉田さんは、会社の中で一番しっかりやらなければならないのは代表である自分だと考え、上司としての自分の適性検査もAIに読み込ませました。
スタッフに指示やフィードバックを出すとき、どんな出し方がいいのかを尋ねると、相手ごとに具体的な方法を教えてくれたといいます。
たとえば、この人には週に一回ワンオンワンで困ったことを必ず聞く、この人には方針を決める前に確認リストを出す、といった提案です。
指示の期限についても、「3日以内にやってください」と切ったほうが楽な人もいれば、期限を切らずにある程度任せたほうがやり切るタイプの人もいる、という違いを教えてくれたそうです。
どちらがよいかは会社の方針やスタッフの力量、考え方によりますが、この人には期限を切るべきか否かまで示してくれた点を、吉田さんは評価しています。
なかでも一番勉強になったのは、吉田さん自身の適性検査から出た注意点だといいます。ロジカルな話し方をすると言われる一方で、共感力が非常に低いという結果が出ているそうです。
でも一方ですね、私共感力すごい低いんですよ。適性検査だと共感力(が)下位2、3パーセントに分類されるぐらい(低いんです)。
そんな吉田さんに対してAIが出したのは、スタッフとやりとりするときは必ず感情面の情報を得るように、というアドバイスでした。「困っていることはありませんか」「助けがいる点はありませんか」と聞くと、上司と部下の関係性が良くなるのではないか、という内容です。
採用で使い切らず、二次利用したほうがいい理由
話を適性検査全体に戻すと、多くの会社では採用面接時の合否判断の材料として使い、そこで使い切りになっています。吉田さんは、その後も二次利用したほうがよいと提案します。
せっかく適性検査にお金を使っているのなら、人材配置などにも効率よく活かせるほうがよい、という考えです。
これまで適性検査の結果は量が多く分析が大変でしたが、AIなら早く的確に分析してくれるため、こうした使い方はおすすめだと吉田さんは話します。
- 自社の従業員配置をAIに分析・提案してもらう
- スタッフの組み合わせごとの注意点を洗い出す
- 上司として、部下ごとの指示・フィードバックの出し方を確認する
社労士や労務部門の担当者であれば、社内で適性検査の内容をAIに読み込ませて分析するだけでなく、顧客企業への提案としても展開できるのではないか、と吉田さんは締めくくっています。
まとめ
採用で取ったきりになりがちな適性検査を、AIに読み込ませて人材配置やマネジメントに活かす、という「攻めの活用法」を紹介する回でした。自社で実践して得た気づきを軸に、適性検査の二次利用の可能性が語られました。
- 適性検査は採用の合否判定だけでなく、AIによる分析で人材配置に二次利用できる
- AIはスタッフの組み合わせごとの相性や注意点も示してくれる
- 部下ごとに最適な指示・フィードバックの出し方をAIから助言してもらえる
- 共感力が低いという自分の結果に対し、感情面を聞くようAIから助言された経験が語られた
- 適性検査にお金をかけているなら、二次利用で効率よく活かすことが提案された






