「社労士なんていらない」と言われて落ち込んだ日々
吉田優一さんはこの回で、時々耳にする「社労士なんていらないよね」という声について考察し、反論を試みます。
吉田さんによれば、社労士として10年以上働くなかで、「社労士ってつける意味ありますか?」と聞かれることは実際にあるといいます。
最初のころは、この言葉に強く悩んだと吉田さんは振り返ります。自分の仕事は意味がないのか、不要なのかと落ち込んだ時期もあったそうです。
最初は私、これ言われてすごい悩んだし、俺の仕事、意味ないのかとか不要なのかっていうふうに落ち込んだ時期もありました。
ただ、10年もやってくると見えてきたものがあると吉田さんは話します。不要論を言いたい人がどういうことを言いたいのか、わかってきたといいます。
税理士・弁護士・社労士を「顧問型3士業」として比べる
吉田さんはまず、社労士が何と比較されて「いらない」と言われるのかを整理します。比較対象に挙げるのは、他の士業です。
社労士の仕事にはいろいろなパターンがありますが、一番多いのは労務顧問だと吉田さんは説明します。会社の労務管理、つまり人の管理を手伝い、経営をバックアップする形です。
吉田さんは、税理士・弁護士・社労士の3つを、自身で顧問型3士業と呼んでいるといいます。似た形で顧問契約を結ぶ士業として、この3つを比較していきます。
税理士は電気・水道、弁護士は病院・消防署
吉田さんはまず、税理士を身近なものに例えます。税務代行を担う税理士は、事業にとって電気や水道のようなインフラだといいます。
特に法人の場合、法人税の申告は税理士がいないとできないと吉田さんは指摘します。電気や水道を引かないと生活できないのと同じように、事業会社にとって必ず必要な存在だという説明です。
なんで、税理士さんっていらないよねっていう人、あんまりいないんですよ。
次に吉田さんは、弁護士を病院や消防署に近い存在だと例えます。予想しないような事態が発生したときに、解決をお願いする相手だからです。
世の中に「病院がいらない」「消防署がいらない」と言う人がいないのと同じで、弁護士も「いらないよね」と言われることはないと吉田さんは話します。
電気・ガス・水道のようなインフラ。法人税の申告などに不可欠で、なくては事業が成り立たない
病院や消防署に近い存在。予想しない事態が起きたときに解決を頼む相手
社労士はエステやジムに近い——だから「いらない」と言われる
ここからが本題です。社労士は「つけても意味ないじゃん」と言われることがあると吉田さんは切り出します。
吉田さんは、社労士の業務の正体を、一般の事業でいうとエステやジムに近いものだと考えていると話します。
社労士の業務の正体っていうのは、一般の事業でいうとエステとかジムに近いと思ってます。
吉田さんによれば、エステやジムは、例えば戦争のような状況になれば「いらないよね」となってしまうもので、絶対に必要とは言えない存在です。
そのうえで吉田さんは、エステやジムと社労士の共通点を説明します。ある程度きれいな人やガッチリした肉体を持つ人が、より良い自分になりたいと思って通う。それがエステやジムだといいます。
社労士も同じだと吉田さんは話します。ある程度売上が立ち、組織らしくなってきた会社の経営者が、「もっと会社を綺麗にしたい、かっこよくしたい」と思って労務顧問を頼むという構図です。
だからこそ、社労士も「いらないよね」と言う人が出てくるのはしょうがない、と吉田さんは受け止めています。
不要論を言うのは「身なりに無頓着な人」と同じ
吉田さんは、社労士不要論を唱える人を、エステやジムに行かない人になぞらえます。世の中には身なりに無頓着な人がいる、という話です。
例えば、髭が生えっぱなしのまま歩く人、太っても対策しない人、肌がガサガサでも気にしない人。そういう人にエステやジムを売っても買ってくれない、と吉田さんは説明します。
エステやジムの商売は、元から綺麗な人がさらに綺麗になりたい、元からかっこいい人がよりかっこよくなりたいと思うところに成り立つ。社労士も同じように考えなければならない、というのが吉田さんの見方です。
吉田さんは、うまくいっていなさそうな社労士事務所の売り方にも触れます。エステやジムでいえば、身なりに無頓着な人に無理やり売っているケースが多いように見えるといいます。
例えば、身なりに無頓着な人に安いクーポン券を渡して来てもらっても、来なくなる。割引サイト経由の客は一回二回で終わり、正規料金になると辞めてしまう、という例えです。
吉田さんはこの構図から、美意識の低い会社に売ってもうまくいかないと整理します。
うまくいくのは「美意識が高い会社」に売ったとき
一方で、社労士のサービスがうまくいくのは、美意識が高い会社に売ったときだと吉田さんは話します。
「もっと自分の会社を綺麗にしたい、うまくやっていきたい」と考える会社に売ると、販売しやすく、お客さんも満足しやすいといいます。
吉田さんは、そういうお客さんが買ってくれるという前提を持つことを勧めます。お客さんから見て「いい社労士事務所だよね」と見える設計をすれば、双方にとって良い関係が続いていくという考えです。
社労士を必要とする会社の3つの特徴
吉田さんは、ここで解像度を上げて、どういう会社が社労士を必要とするのかを整理します。会社経営には経営者の考え方が色濃く出るという前提から始めます。
1つ目は、しっかりとした労務管理をやりたいと思っている経営者の会社です。
吉田さんによれば、社会保険の手続きや給与計算がいい加減でも会社は潰れないといいます。本来払うものが違うタイミングで請求されるだけで、儲かっていれば理論上は払えるからです。
ただ、いい加減な管理をしていると従業員からクレームが出ることがあります。そういうのが嫌だという経営者や、従業員に会社への誇りや愛着を持ってほしいと思う経営者は、社労士を必要としていると吉田さんは話します。
2つ目は、しっかりとした労務管理をやらないと商売が成り立たない業種です。具体的には、労働集約型のビジネスだといいます。
吉田さんは、医療機関・飲食・IT系を例に挙げます。IT系ならエンジニアとうまくやっていかないとプロダクトが作れないため、労務管理を避けて通れないという説明です。
この場合、経営者自身が労務管理に興味がなくても、トラブルにならない設計をしたいというニーズが出てくると吉田さんは話します。
3つ目は、外圧で労務管理の体制をしっかりしなければならなくなるケースです。例えばIPOや、将来的なM&Aを検討している状態です。
吉田さんによれば、特にIPOのときは、労務管理の面で100点に近い点数を取っていないと上場できないといいます。そのため、上場を検討する会社は早い段階から社労士をつけて会社を綺麗にしたいと考えることが多いそうです。
IPO支援ができる社労士かどうかで選び直す
吉田さんは余談として、IPOを支援できる社労士とできない社労士がいると付け加えます。支援できる社労士を探してつけることが非常に重要だといいます。
もし現在の社労士がIPOに対応していないのであれば、変更するのも一つの選択肢に上がってくると吉田さんは話します。
さらに吉田さんは、自身の事務所についても触れます。吉田さん自身を含めてIPOの支援実績があり、今も支援しているため、該当するお客さんがいたら声をかけてほしいと呼びかけました。
まとめ
吉田優一さんは、社労士を税理士や弁護士のようなインフラ型ではなく、エステやジムのような「より良くなりたい会社が使うもの」と位置づけました。だからこそ不要論が出るのは自然で、大切なのは美意識の高い会社に届けることだと整理しています。
- 税理士は電気・水道、弁護士は病院・消防署のような「必須インフラ」型の士業
- 社労士はエステやジムに近く、より良くなりたい会社が使うため「いらない」と言われやすい
- 身なりに無頓着な人=美意識の低い会社に無理やり売ってもうまくいかない
- 社労士を必要とするのは「労務管理をやりたい経営者」「労働集約型の業種」「IPO・M&Aで外圧がかかる会社」
- IPO支援ができる社労士かどうかは選定の重要なポイントになる




