人が増えて給与を決めきれない、その悩みの正体
今回のリスナーからの質問は、半年に一回の給与改定に関する悩みです。
半年に一回給与改定を行っているのですが、人数が増えてきて、一人一人の金額を考えるのが大変です。悩んでなかなか決められません。いい方法はありますか?
吉田さんは、この相談者はおそらく会社の社長だろうと推測します。スタッフが増え、それぞれと面談するだけでも大変になっている状況だと見ています。
さらに難しいのが、一番重要な「金額をいくらにするか」の部分だと指摘します。
誰々さんの給与これにするって決めた後に、別の方の給与を考えてたら、やっぱり最初の方の給与を見直さなきゃいけないなとか言って、堂々巡りになって、悩んで悩んで決められないみたいな状態だと思うんですよ
この堂々巡りを抜け出す方法として、吉田さんが挙げたのが人事評価制度です。
人事評価制度を作って、会社の給与の決まり方っていうのをシステムで客観的に決めていくっていうのが一つの解決策になると思います
人事評価には「価値を測る」以外のもう一つの目的がある
そもそも人事評価制度とは何を指すのか。吉田さんは、人事評価には二つの側面があると説明します。
一つ目は、スタッフの仕事ぶりや能力を定期的に評価し、給与や賞与、昇格といった人事的なポストに反映させることです。文字通り、労働者としての価値を測る役割です。
ただ吉田さんは、この「人事評価制度」という言葉があまり好きではないと言います。もう一つの、より本質的な目的があるからです。
人事評価っていうのは成長支援、スタッフさんの成長支援っていうのが、本来は主たる目的であるはずなんですよ
定期的に面談をして、どこを改善すべきか、逆にどこがよくできたのかを上司が部下にフィードバックする。これに大きな意味があると話します。
評価制度があれば、その会社で「仕事ができる人」がどういう人なのかが言語化された状態になります。すると、どの方向に進めば評価されるのかが分かりやすくなるというわけです。
仕事ぶりや能力を定期的に評価し、給与・賞与・昇格に反映させる
面談やフィードバックを通じて、どう頑張れば評価されるかを本人に示す
上司も同僚も評価する、多方向のフィードバック
ここで安田さんが、以前働いていた会社での経験を思い出します。従業員が上司から評価されるだけでなく、その逆もあったといいます。
吉田さんは、それは上長評価だと応じます。部下が上司を評価することで、横柄な態度やパワハラが起きにくくなり、上司が一人一人の部下と向き合うようになると話します。
似たタイプとして、スタッフ同士が評価し合う評価もあると紹介されます。グレードで定めた基準だけでは拾いきれない頑張りがあるからです。
あの人はもう困った時に最初に助けてくれて、すごく助かってるんですっていうのは、もしかしたら上司と部下の評価だと出てこないかもしれない
そうした一対一の評価では見えにくい貢献を、スタッフ同士の評価で拾い、給与や賞与に反映していくという考え方です。
評価制度がないと、社長の「その日の気分」で給与が決まる
安田さんが、冒頭で出た「人事評価制度を作るのが大事」という話を、もう少し詳しく尋ねます。
吉田さんはまず、評価制度がない状態で何が起こるかを説明します。中小企業の社長は非常に忙しく、ルーズな管理になりがちだといいます。
その時の気分とか当期の業績とかで評価しちゃって、なんかすごく心が広くなってる時に給与改定したら、とあるスタッフさんの給与がものすごく高くなってると
こうしたばらつきは不公平を生みます。だからこそ、社長の独断ではなく客観的な基準を作り、それに当てはめて決めるべきだと話します。
さらに厄介なのが、一度バラバラになった給与を統一基準に戻す難しさです。
高く引きが大きくなった時に高い給与を出しますって言ったのを、後から下げるっていうのは、法律的にもすごく難しいので
だからシステムを作ることは、スタッフのためであると同時に、何より社長自身のためでもあると吉田さんは言います。
「頑張ってるのに評価されない」が起きる本当の理由
スタッフから見ても、会社がどういう人を評価しているのかが明確になれば、どう頑張ればいいかが分かります。逆にそれが曖昧だと、努力の方向がずれてしまいます。
確かに、その努力の方向性が真逆の可能性もありますよね
吉田さんは、よくあるパターンとして残業の例を挙げます。
遅くまで残ってるから私は頑張ってるってスタッフさんが思ってたとしても、社長の方は、遅くまで残って仕事の遅いスタッフだなって内心思ってるかもしれない
もし会社が「所定時間内に効率的に終わらせるのがいい」と考えているなら、それを評価制度としてメッセージにしないと、そのスタッフはいつまでも気づけません。
評価基準を明示することが、会社とスタッフのミスマッチを埋めることにつながる、というわけです。
評価制度を作るべき人数は「学校のクラス」がヒント
では、いつのタイミングで人事評価制度を作るべきか。吉田さんの答えは明快です。
私は30から40ぐらいのスタッフになったら、遅くとも作った方がいいと思います
その根拠として挙げられたのが、小中学校のクラスの人数です。1クラスが30人から40人だったのは、一人の先生が見切れる最大人数がそのくらいだからではないか、という発想です。
同じように、会社もそれくらいの人数になったら客観的な仕組みを入れて評価したほうがいいと話します。ただし、急成長を前提とするスタートアップなどでは、早めに作っておくのも一つの選択だと補足しています。
評価制度は「会社が大事にしていること」から作る
具体的に何を決めればいいのか、安田さんがおすすめを尋ねます。吉田さんは、評価制度は会社によってそれぞれ違うと前置きします。
決める順序が重要だといいます。まず会社全体として何を大事にしているのかを明確にし、それを細かい評価基準に落とし込んでいく流れです。
大事にすることを明確化
会社全体として何を大切にしているのかを社内で言語化する
評価基準に落とし込む
明確にした価値観を、細かい評価基準へと具体化する
等級制度で運用
等級制度を作り、半年〜1年ごとに評価して昇給などに反映する
ここが非常に難しいため、自社で決められない場合は外部の専門家に相談したほうがいいと勧めます。専門家は他社の事例やノウハウを持っているからです。
自身のいいところって人間気づけないと思うんですけど、会社も同じで、自分たちの強みって外の人と話すことによって自覚するっていうこともあるんで
オーソドックスな運用として、等級制度をしっかり作り、半年に一回や一年に一回評価する例が挙げられます。一番いい評価なら昇給、真ん中ならそのまま、といった形で決めていくことが多いといいます。
まとめ
給与を決めきれない悩みの根本には、社長の独断による評価のばらつきがあります。吉田さんは、人事評価制度で決め方を仕組み化し、会社が大事にすることを明示することが、社長にもスタッフにも役立つと話しました。
- 人事評価には「労働者としての価値を測る」と「成長支援」の二つの目的がある
- 評価制度がないと社長の気分や業績で給与がぶれ、後から統一基準に戻すのは法律上も難しい
- 何を評価するかを会社が明示しないと、スタッフの努力の方向がずれてしまう
- 評価制度は遅くとも30〜40人になる前に作るのが目安
- まず会社が大事にすることを言語化し、それを評価基準へ落とし込む。自社で難しければ外部専門家に相談する






