評価者はどうやって公平さを保っているのか
番組にはリスナーから、公平な評価をめぐる質問が届きました。
以前の放送で、人が人を評価するのは難しいとおっしゃっていましたが、実際の会社で評価者はどうやって公平な評価になるようにしているのでしょうか。
吉田さんはまず、この問いの難しさを率直に認めます。
おっしゃる通り、すごく難しい問題で、人が人を評価する以上は100パーセント公正な評価というのはないものだと思います。
ただし、人間である以上、評価には一定の傾向があると吉田さんは続けます。その傾向を事前に評価者へ伝えておくことで、評価のブレを減らせるといいます。
それを事前に、評価する方に研修という形でお伝えすることで、評価のブレとか評価の傾向をなくす。評価者訓練というのをやっています。
大きな企業ほど、定期的に評価者研修 ── 評価する立場の管理職に、評価の基準や陥りやすい偏りを事前に学んでもらう研修。評価のブレを減らし、被評価者からの不満を防ぐ狙いがある。を実施し、一般スタッフからクレームが出ない形にしていると説明されます。
こうした評価の偏りは「評価バイアス」と呼ばれ、種類はたくさんあります。今回はそのなかから3つが紹介されます。
吉田さんは、意識すれば必ず防げるわけではないものの、3つとも知っておいたほうがよいと話しています。
最後の印象に引っ張られる「ピークエンドの法則」
1つ目はピークエンドの法則です。まずはその中身から説明されます。
ある出来事を経験した際に、人間はその感情がピーク、最高潮の時の話と、その出来事の最後の話をもとに、全体を判断する傾向があるそうなんですね。
吉田さんはサッカーの試合を例に挙げます。決勝点を挙げた瞬間や、最後にPKを外した瞬間は、強く記憶に残るというわけです。
これは組織の評価でも同じだといいます。期末に良い成績を上げた社員は、そこに引っ張られて高く評価されやすくなります。
仮にその人がそれまですごく酷い成績だったとしても、最後にすごくいい成績を出せば高評価になる。
逆に、期首に良い成績を出しても、その後の状態が良くなければ、あまり評価されない傾向があると指摘されます。
だからこそ、最後や感情のピークが全体の判断に影響することを事前に伝えておけば、そこを意識して平等に評価できるようになるといいます。
良すぎた時だけとか、悪すぎた時だけを見ずに、普段どうだったかもちゃんと見ておこうね、ということですかね。
そうですね。
なぜ評価は真ん中に寄ってしまうのか
2つ目は中央化傾向です。極端な評価をつけたがらない、評価者側の心理から説明されます。
5段階評価で5をつける、いい方はいいですけど、1をつけるのはものすごく辛いわけですね。
なぜ1なのかと問われれば、理由を説明しなければなりません。加えて、上司としては部下から好かれたいという人情もあると吉田さんは話します。
上司としては、本音を言えば部下から好かれたいとか、部下から人気のある人でありたいと思うのが人情ですから、極端な評価はつけづらくなってくる。
その結果、5段階評価なら真ん中の3ばかりが増えてしまいます。すると、誰が良くて誰が悪いのか分からなくなり、評価をやる意味が薄れてしまうといいます。
そこで吉田さんがすすめているのが、真ん中のない評価制度です。5段階を4段階にすれば、中央の選択肢がなくなります。
4段階にすれば、真ん中がないから、いいか悪いかどちらかになるわけです。
研修で教えることも重要ですが、仕組みそのものを真ん中が選べない設計にすることで、このバイアスを避けられるのではないかと述べられます。
聞き手の安田さんは、自身の実感を交えて反応します。
もうすごく今まで、3に逃げてきた人生だったなというのをすごく感じたんですけど、これ日本人的な思考なのかもしれないですね。白黒つけづらいというか。
吉田さんも、多くの管理職が3に逃げていると認めたうえで、本人の成長という観点からも良し悪しをはっきりさせたほうがよいと話しました。
自分の得意不得意が評価を歪める「対比誤差」
3つ目は対比誤差です。評価者自身の得意不得意が、評価の基準になってしまう現象です。
評価者自身の得意不得意、これを基準に評価をしてしまうとか、評価が引っ張られてしまうという現象です。
吉田さんは営業を例に挙げます。お客さんとのコミュニケーションが得意な上司の場合、うまく話せない部下に対して厳しくなりがちだといいます。
なんであいつうまく喋れないんだろうみたいな形になって、厳しい評価になってしまうんですね。
逆に、自分が苦手なことを軽々とこなす部下には、甘い評価をしてしまう可能性があると続きます。
その理由を、吉田さんはこう表現します。
だからこそ、自分の得意分野と苦手分野を自覚したうえで評価すれば、より客観的で平等な評価に近づくといいます。
評価者の人って自己分析はすごい必要なんじゃないかなって思いました。自分の才能に改めて気づき、不得意なことも認識して、そこをフラットに見ていけるようにしなきゃいけない、ということですね。
吉田さんは、自分を知る手がかりとして、これまで評価されてきた実績や適性検査を挙げます。
たとえば計画性が高いと出た人は、部下が計画通りに動くことを「当たり前」と片付けてしまいがちです。しかしそれを計画通りにやるのはすごいことだと評価する姿勢が重要だと述べられます。
評価だけでなく人間関係にも効くチェックポイント
安田さんは、3つのバイアスは評価する立場でなくても、自分の人間性を見直すチェックポイントになると感じたと話します。
吉田さんも、これは上司と部下だけの話ではないと応じます。友人関係や家族関係でも同じように出てくるといいます。
私がすごく部屋を綺麗に片付けているからといって、家族が片付けていないのにイラッとした時があったとする。それはちょっと自己反省して、片付けられない人もいるんだなという風に優しくなる。これが対比誤差の使い方なのかなと思います。
この例が実話かどうかを安田さんに問われると、吉田さんは笑って言葉を濁しました。
それはちょっと言えないですね。
最後に、今回のテーマは評価バイアスであったとまとめられ、番組は締めくくられました。
まとめ
人が人を評価する以上、完全に公正な評価は難しいものです。だからこそ、陥りやすい傾向を知っておくことが、公平さに近づく第一歩になります。今回は評価者が知っておくべき3つのバイアスが紹介されました。
- ピークエンドの法則: 最高潮の時と最後の印象に引っ張られず、普段の状態も見て評価する
- 中央化傾向: 極端な評価を避けて真ん中に寄せがち。真ん中のない評価制度など仕組みで防ぐ
- 対比誤差: 評価者自身の得意不得意が基準になりやすい。自己分析でフラットな評価を目指す
- 3つのバイアスは、評価の場だけでなく家族や友人との関係を見直すチェックポイントにもなる






