そもそも「働ける外国人」と「働けない外国人」がいる
吉田さんはまず、日本国内にいる外国人が全員働けるわけではないという前提から話し始めます。同じ外国人でも、働ける人と働けない人がいるという点です。
その区別を決めているのが在留資格です。在留資格 ── 外国人が日本に滞在し、どんな活動ができるかを定めた資格。永住者や留学など複数の種類があり、就労の可否や範囲が資格ごとに決まっている。何を根拠に日本に滞在しているかによって、就労の可否や範囲が変わってきます。
例えば在留資格が永住者の人は、日本人と全く同じように働けます。一方で、短期滞在という在留資格の人は、アルバイトも含めて日本で働くことはできません。
労務管理でよく出会うのが、技術・人文知識・国際業務という在留資格だと吉田さんは説明します。この場合は、その在留資格にマッチした仕事しかできません。
技術・人文知識・国際業務であれば、通訳やデザイナーなど、資格に関連性のある業務に限られます。関連性のない仕事はさせられない、というルールがあります。
つまり、その人が働ける人かどうかが、外国人を雇用できるかどうかの分岐点になります。
もし短期滞在のように働けない人を雇って働かせてしまうと、不法就労を助長したことになり、法律違反になると吉田さんは注意を促します。
在留カードの確認と、失効・偽造をどう見抜くか
では在留資格はどう確認するのか。吉田さんによると、やり方はシンプルで、在留カードを出してもらえば確認できます。
在留カードには、永住者や技術・人文知識・国際業務といった在留資格が書かれています。それを基に、その人が何を根拠に日本に滞在しているのかを判定していきます。
ただし現実的な問題として、在留カードには偽物も多く出回っていると吉田さんは指摘します。失効した在留カードを提示してくるケースもあるといいます。
これを確認するには、在留カードの番号を打ち込んで有効性をチェックする方法があります。出入国在留管理庁の在留カード等番号失効情報照会を使えば、そのカードが期限切れかどうかを確認できます。出入国在留管理庁 ── 外国人の出入国や在留の管理を担う法務省の外局。在留カードの有効性を確認できる照会サービスを提供している。
正直なところ在留カードの不正は多いため、こうした確認は必ず怠らないようにしましょう、と吉田さんは繰り返します。
留学生のアルバイトは「週28時間」という厳格な壁がある
ここからは外国人の雇用管理の基本です。吉田さんは、在留資格に合致した仕事以外はさせないという大前提に加えて、落としがちなポイントを挙げていきます。
日本の大学などに留学している人は、在留資格が留学になります。留学生は学業のために来日しているため、原則として日本で働くことはできません。
ただ、資格外活動許可を得てアルバイトをしているケースは、かなりの割合であると吉田さんは話します。資格外活動許可 ── 本来の在留資格の活動以外に働くことを認める許可。留学生などが取得することでアルバイトが可能になる。
問題は、この許可を取れば何時間でも働けるわけではない点です。資格外活動許可があっても、働けるのは週28時間までです。
そしてこの週28時間は非常に厳しく、少し超えたぐらいなら大丈夫、ということは許されません。厳密に週28時間を超えて働かせることはできない、と吉田さんは念を押します。
労務に詳しい人ほど注意したいのが、変形労働時間制との合わせ技です。変形労働時間制 ── 一定期間の中で週ごとの労働時間を調整し、平均で法定労働時間の範囲に収める制度。労働基準法に定められている。例えば第1週に40時間、第2週に10時間働いて平均25時間ならセーフ、という発想が出てきます。
しかしこれはアウトだと吉田さんは断言します。週28時間は在留資格を定める法律で決まっている一方、変形労働時間制は労働基準法の話であり、法律が違うため合わせ技はできない、という理由です。
さらに落とし穴となるのが、卒業後の扱いです。留学生は卒業した後は働けません。
例えば3月7日に卒業する場合、感覚としては学生気分の3月31日まで働けそうに思えますが、卒業日より後は働けないと吉田さんは説明します。ここが見落としやすい注意点です。
教育の在留資格でも英会話学校では働けない、という落とし穴
在留資格による就労の可否は厳格で、働けそうで働けない微妙なケースもあると吉田さんは言います。その一例として教育の在留資格を挙げます。
中学校や高校で教師をするのは教育という在留資格に当たります。この資格で滞在している人は、当然、中学校や高校で働けます。
ところが、その人が学校の勤務を終えた後に英会話学校でアルバイトをしたいと思っても、それは原則できません。
理由は、英会話学校で働くことが技術・人文知識・国際業務に該当するからです。同じ「教える」仕事でも、在留資格の区分が変わってしまうわけです。
吉田さんは、法律が実態に追いついていないのではないかとも感じると話しつつ、こうした落とし穴があるからこそ、一人ひとりの在留資格を確認し、自社の業務に従事できるかを判定した上で進めることが重要だと強調します。
もしある日突然、実は働けない在留資格だったと分かれば、そこから業務は止まってしまいます。欠員補充も大変なので注意してほしい、と吉田さんは付け加えます。
外国人雇用ならではの論点、文化と宗教の違いにどう向き合うか
最後に吉田さんは、相談に乗る中で見えてきた、外国人雇用ならではの労務管理の論点を挙げます。それが文化や宗教の違いです。
日本は無宗教と言う人も多く、宗教色が強い国ではないのかもしれない、と吉田さんは前置きします。その上で、まず文化的な面から話を進めます。
外国の人にはそれぞれ母国があり、母国には母国のルールがあります。例えば、その国の正月にあたる時期に家族が集まって里帰りする習慣が、日本のカレンダーと一致するとは限りません。
そのため、母国の正月にあたるので1週間や2週間帰りたい、と会社に相談されるケースは多いといいます。どういうときに母国へ帰るのかは、採用の段階で聞いておいた方がよいと吉田さんは助言します。
価値観の違いも論点になります。日本では家族が病気になっても仕事を優先する人が多く、やむを得ない場合を除いて、それを理由に会社を辞める人はあまりいないのかもしれません。
一方、文化によっては、家族が病気になったから看病のために辞める、あるいは1〜2か月国に帰りたいという人もいます。自国の文化や本人の価値観と、会社が持つ価値観とのすり合わせをしておいた方がよい、と吉田さんは話します。
宗教への配慮も欠かせません。場合によってはお祈りの部屋を用意したり、宗教上の食事に対応したりする必要が出てきます。
例えば豚を食べてはいけない宗教もあるため、会社でお弁当を販売・配給しているケースでは、特定の宗教向けのメニューを用意することもあるようです。
吉田さんは、外国人雇用は難しいものの、ポイントは外国人という塊があるわけではなく、人それぞれ、国それぞれで文化があることだとまとめます。そこをちゃんと研究した上で受け入れていくことが重要だと締めくくりました。
まとめ
外国人を雇う前には、まずその人が働ける在留資格かを確認し、在留カードの有効性までチェックすることが出発点です。その上で、留学生の労働時間制限や卒業後の扱い、文化・宗教の違いといった外国人雇用特有の論点に一つひとつ向き合う姿勢が求められます。
- 在留資格によって働けるか、どんな仕事ができるかが決まる。永住者は日本人と同様に働け、短期滞在は働けない
- 在留カードで在留資格を確認し、偽造や失効に備えて失効情報照会で有効性もチェックする
- 留学生のアルバイトは資格外活動許可を得ても週28時間まで。変形労働時間制との合わせ技は不可で、卒業後は働けない
- 同じ「教える」仕事でも、教育の在留資格では英会話学校で働けないなど、働けそうで働けない落とし穴がある
- 正月にあたる里帰り、家族の看病、宗教上の食事や祈りなど、文化・宗教の違いは採用段階からすり合わせておく






