そもそも給与明細には何が書いてあるのか
今回のテーマは、給与から天引きされたお金はどこへ行くのか、という話です。
吉田さんがこのテーマを取り上げたきっかけは、給与明細を意外と見ていない、どう見ていいのかわからない、という声を聞いたことだといいます。
給与明細は会社ごとにフォーマットが違いますが、大きく分けると3つの項目が載っていると吉田さんは説明します。
勤怠
いつ出勤して何時間働いたのかを示す
支給項目
基本給や各種手当など、支給されるお金
控除項目
社会保険料や税金など、天引きされるお金
1つ目の勤怠には、出勤日数や実際に働いた労働時間が載ります。所定労働日数と実際の労働日数に加えて、欠勤があればその日数、年次有給休暇を使えば有給の日数も入ってきます。
正社員なら残業のない職場のほうが珍しいので、残業時間も勤怠に含まれます。深夜労働にあたる22時から朝5時までの時間数も、給与計算の仕方が変わるため別に書かれることがあります。
なんか一言で言うと、いつ出勤して何時まで残ってたのか、何時間その月働いたのかっていうことが書いてます。
支給項目で見落としがちな残業手当のチェックポイント
2つ目は支給項目です。ここにはまず基本給が載り、そこに通勤手当が加わるのが一般的だと吉田さんは説明します。
ここから先は会社ごとに異なり、業績手当、家族手当、住宅手当など、それぞれの会社で定められた手当が載ります。
吉田さんが注意して見てほしいと言うのが残業手当です。定額残業手当やみなし残業手当が付いていないなら、残業すれば残業手当が付くはずなので、それがちゃんと付いているか確認したほうがよいといいます。
そのうえで吉田さんは、社労士の立場から言いづらいとしつつ、給与計算は意外とミスも多いと話します。
もし受け取った給与明細がこれおかしいんじゃないかって思ったら、ぜひその会社の社長であったり、総務の人とか給与計算担当してる人に相談した方がいいです。
もらいすぎていれば後から返さなければいけませんし、不足していればその分ずっと損をすることになります。言うのは気が引けても、後から発覚すると会社のお金の処理を直すのが大変なので、気づいたら早めに伝えたほうがよいと吉田さんは勧めています。
税金より社会保険料のほうが高いという事実
ここからが本題で、3つ目の控除項目、つまり給与から天引きされているお金の話です。
吉田さんはこの控除項目を、奥深いというか闇深いというところだと表現します。給与計算でも、この控除項目を作るのが意外と難しいそうです。
引かれているものは大きく社会保険料と税金の2つに分けられます。ここで吉田さんが強調するのが、ほとんどの人が社会保険料の方が高いという事実です。
一般的な感覚では税金のほうが高いと思われがちですが、実際は逆だといいます。吉田さんは給料30万円の人を例に、具体的な数字を挙げます。
大体6000円から7000円ぐらい
大体4万5000円ぐらい(額面の15パーセント程度)
所得税は6000円から7000円しかかかっていないのに対し、社会保険料は4万5000円ほどかかっている。これだけでも金額の違いがわかると吉田さんは話します。なお金額は時期やタイミングによって違いがあります。
ところがなぜか皆さん敏感なのこの税金の増税。消費税が少し上がるってだけで結構大騒ぎになるんですけれども、社会保険料の料率っていうのは、実は厚生年金とかもずっと上がり続けてるんですけど、それに対しては何も言わない。
健康保険料と介護保険料は何を支えているのか
ここからは社会保険料の使い道です。社会保険料の項目としては、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、そして雇用保険料があると吉田さんは説明します。
まず健康保険料は、病院に行ったときの自己負担以外の部分を補填するために使われています。
たとえば風邪で病院に行っても、窓口で請求されるのは医療費全体の3割だけです。残りの7割を健康保険料がまかなっているため、比較的安い金額で医療サービスを受けられると吉田さんは説明します。
次の介護保険料も似た考え方です。増えている介護施設を利用するとき、全額自己負担ではなく一部が自己負担、残りが介護保険料から出ます。
病院を利用したときと同じで、介護施設を利用した際の自己負担以外の部分に、介護保険料が使われているということです。
厚生年金保険料は将来の年金だけではない
3つ目の厚生年金保険料は、一番には将来の年金のために使われています。ただし正確には世代間扶養で、今集めたお金が、今まさに年金を受け取っている人へ流れていく形だと吉田さんは補足します。
65歳以降や60歳以降に特定の条件で出る年金の財源が、この厚生年金保険料です。
さらに吉田さんは、一緒にするのはどうかと個人的には思う、と前置きしつつ、障害年金や遺族年金というイレギュラーな給付にも触れます。
若くして亡くなった場合には一定の要件で遺族年金がご遺族に出ますし、重い障害を負った場合には障害年金が出ます。厚生年金保険料は、こうした年金の財源にもなっています。
失業保険だけじゃない、雇用保険料の使い道
社会保険料の最後は雇用保険料です。会社を退職してハローワークに行くと、一定の条件で給料の代わりになるものがもらえます。一般には失業保険や失業手当と呼ばれるもので、その財源が雇用保険料です。
さらに吉田さんは、雇用保険料は使い道が幅広いと話します。雇用保険に加入している人を教育する際の教育給付や、育児休業中の給料代わりに国から出る育児休業給付金の財源にもなっています。
ただし主には失業保険の財源になっている、と吉田さんはまとめます。ここまでが社会保険料で、天引きされている金額の大半を占めます。
所得税と住民税、それぞれの行き先
最後は税金の話です。給与からは所得税と住民税が引かれます。
所得税は主に国の運営費に使われます。わかりやすいところでは、国会議員の給料、国防費、社会保障関係の費用などです。
一方の住民税は、都道府県や市区町村の行政サービス、一言で言うと市区町村の運営費に使われます。
なお、会社によってはレクリエーション費や積立費といった別の項目が引かれていることもあります。おかしいなと思ったら、何の費用なのかを会社に確認したほうがよいと吉田さんは話しています。
まとめ
給与明細は勤怠、支給項目、控除項目の3つに分かれ、天引きされたお金の大半は社会保険料が占めています。それぞれの保険料や税金が何を支えているのかを知ると、給与明細の見え方が変わってきます。
- 給与明細は勤怠、支給項目、控除項目の3つに大きく分かれる
- 天引きされるお金は多くの人で税金より社会保険料のほうが高い
- 健康保険料は医療費の自己負担以外、介護保険料は介護施設の自己負担以外をまかなう
- 厚生年金保険料は将来の年金に加え、障害年金や遺族年金の財源にもなる
- 雇用保険料は失業保険が主な使い道で、教育給付や育児休業給付金にも使われる






