前編のおさらいと、後半で扱う3つのテーマ
この回は「給与計算ミスを防ぐ6つの方法」の後編にあたります。吉田さんはまず前編の内容を振り返っています。
前編で扱ったのは、スケジュールと賃金制度をシンプルにすること、そしてスタッフ教育の3点でした。後編ではその続きとして、4つ目から6つ目を解説していきます。
前の週ではスケジュールと賃金制度をシンプルにするっていうのと、スタッフ教育について話しました。
転記回数を減らすと、なぜミスが減るのか
4つ目のポイントは、業務フローを洗練させることです。吉田さんは具体的に転記回数の少ない業務フローを作ることが重要だと話しています。
ミスが起こりやすいのは、目的ごとに別々のソフトを導入していて、そのデータが連動していないケースだといいます。
たとえば従業員名簿、社会保険手続きを管理するソフト、給与計算ソフトがそれぞれ独立している状態です。給与計算には生年月日などの個人情報が必要で、住所も後の工程を考えるとソフトに入れておく必要があります。
問題は、その情報の入れ方です。履歴書から従業員名簿へ手打ち、労務管理ソフトへ手打ち、給与計算ソフトへ手打ちと繰り返すと、入力回数が増えるほどミスが起こりやすくなります。
やればやるほど、入力回数が増えれば増えるほど、どうしても伝言ゲームになったりとか、入力回数が多いことによってそこでミスが起こりやすいんですね。
吉田さんが挙げるミスの少ない流れは、SmartHRを社員マスターにして、API連携でマネーフォワードクラウド給与へデータを流し、さらにOfficeStationに取り込むというものです。
こうして全体の業務フローを組むと、転記回数が減り、正確にデータを流していけるためミスが少なくなると説明しています。
SmartHR
社員マスターとして個人情報を集約する
マネーフォワードクラウド給与
API連携でデータを流し込む
OfficeStation
さらにデータを取り込む
生年月日の誤りが介護保険料のミスを招く
転記ミスがどんな実害につながるのか、吉田さんは介護保険料を例に挙げています。
介護保険料は40歳から徴収が始まります。生年月日を間違えると、徴収を忘れる、あるいは徴収してはいけないのに徴収してしまうといったミスが起こります。
チェックリストやダブルチェックについては、やった方がよいとしつつも、吉田さんは限界があると考えています。前編でも触れたとおり、ダブルチェック頼みには限界があるという立場です。
どちらかというと業務フローを洗練させてった方がいいんじゃないかなと思うんですけれども、それでもやっぱりチェックリストとダブルチェックっていうのは必要だと思います。
見落としがちな「他部署の協力」という壁
5つ目は、他部署の協力です。社内なら他部署、社労士ならお客さんの協力を指します。吉田さんはこれを意外と落としがちなポイントだといいます。
理由はシンプルで、データが揃わないと給与計算はできないからです。そのデータはスタッフから回収するため、情報が出てこないと給与計算そのものが進みません。
だからこそ、情報を出すよう号令をかける必要があります。事業会社であれば、他部署の人が期日までに勤怠を締めないと労務部門が困る、という理解が欠かせません。
IPO準備中の会社であれば、正確な給与計算ができていないと上場審査で問題になる、といった話にもつながります。こうした問題意識を他部署に持ってもらうことが重要だと話しています。
協力が得られるかどうかは会社によって大きく差が出ます。統率の取れた会社では、勤怠の締めを呼びかけるとすぐに締まるといいます。
統率の取れてる会社だとバシッと「じゃあ皆さん勤怠締めてください」みたいな。「確認大丈夫ですか?」みたいなことを言うと、もう一瞬で締まる。
吉田さんは、しっかりした内部体制を敷いて、給与計算担当者にいろんな人が協力できる状態を作ることでミスが減ると結論づけています。
使いにくいソフトが、点検の精神力を奪う
6つ目は、ツールです。吉田さんはプロダクトにはこだわった方がいいと話しています。
同じ会社の給与計算でも、弥生給与で計算するのか、マネーフォワードクラウド給与で計算するのか、シャロームの給与で計算するのかで、給与計算の内容や進め方が変わってくるといいます。
マネーフォワードや弥生は比較的簡単な一方で、世の中には手順が非常に難しい給与計算ソフトもあると指摘します。計算はできても操作が複雑なソフトです。
そうしたソフトは使い方を覚えるだけでパワーを使ってしまい、点検の段階で精神力が残らず、間違いに気づけなくなると吉田さんは話しています。
その給与計算ソフトの使い方を覚えるだけでも結構パワーを使っちゃうんで、点検する時にも精神力が残ってなくて、間違いに気づけないなんてことになります。
だからこそ、自動で計算が回る、あるいは直感的に操作できる給与計算ソフトを選んだ方がいいというのが吉田さんの考えです。
マネーフォワードの自動徴収機能が防ぐミス
吉田さんは、当社がマネーフォワード推しだとしたうえで、マネーフォワードクラウド給与のプロダクト完成度の高さを挙げています。
たとえばSmartHRから直接情報を流せる点、そして介護保険料の自動徴収機能です。生年月日を登録しておけば、40歳になったタイミングで自動的に徴収が始まります。
この自動徴収機能がない会社では、毎月毎月40歳になった人が誰なのかを点検しなければならず、大きな負担になります。1人でも漏れれば、介護保険料をずっと取り忘れることにもなりかねません。
そういう自動徴収機能がない会社だと、毎月毎月40歳になった人が誰なのかっていうのは点検しなきゃいけないので、それすごい大変なんです。
正しい給与計算には、労基法や社会保険法といった理論的な知識だけでなく、システムの動き方やボタン操作といった形式的な知識も必要だと吉田さんは説明します。
担当者の退職リスクとツール選びの関係
吉田さんは、良いツールを選ぶメリットを事業継続の観点からも説明しています。会社経営者の立場からは、教育の時間やコストが短く済み、スタッフが早く一人前になれる点を利点として挙げています。
事業会社がピンチになりやすいのは、給与計算をしている人が退職するケースだと吉田さんはいいます。給与計算はスタッフ全員の給与を見る仕事のため、一部の人にしか触らせない会社が多いからです。
給与計算をしている人が退職するってなると結構一大事なんですよ。
そうなると、給与計算の手順も一部の人しか知らない状態になり、その人が辞めるとノウハウが一気に失われかねません。会社の給与計算の継続がピンチになるわけです。
ツールが簡単であれば、次の給与計算担当者が正しく計算できるようになるまでの時間が短くなります。この意味でも、いいツールを選んだ方がいいと吉田さんは締めくくっています。
まとめ
後編で扱ったのは、給与計算ミスを防ぐ後半3つの方法です。転記回数を減らす業務フロー、他部署からの協力、そして扱いやすいツール選びという、いずれも仕組みで対処する視点が共通しています。
- 目的別のソフトが連動していないと転記が増え、伝言ゲームでミスが起こりやすくなる
- SmartHRやマネーフォワードなどをAPI連携で結び、転記回数を減らすとミスが減る
- 給与計算はデータが揃わないと進まないため、他部署に問題意識を持ってもらう体制づくりが要る
- 操作が難しいソフトは点検の精神力を奪う。自動計算や直感的な操作ができるツールを選ぶ
- 扱いやすいツールは、担当者の退職時にも引き継ぎが早く、事業継続の面でも有利になる






