就業規則で最初に見るべき条文はどこか
今回のテーマは、就業規則を読むにあたって最初に確認したほうがいいポイントです。確認すべき点はたくさんある中で、吉田さんが挙げるのは1つだけです。
それが、労働時間と休日の記載がある条文です。何時まで働くのか、いつ休みなのかが書かれた部分を、まず最初に確認するといいと話されています。
それはですね、労働時間と休日の記載がある条文、そこをまず最初に確認します。
吉田さん自身もかつてサラリーマンとして働いていた経験から、スタッフ目線で見てもここは気になる条文だと言います。年末年始がいつからいつまで休みなのかがわかるため、よく言えばワクワクしながら読める条文だと表現しています。
労働時間と休日が「残業代の金額」を左右する
ただし、労働時間と休日の条文は、単に休みや勤務時間を示すだけではありません。この条文の書き方によって、残業代の金額そのものが変わると吉田さんは指摘します。
もらう側のスタッフにとっては、実態に合った労働時間と休日が書かれているかの確認になります。労務担当者や社労士の目線では、残業代の未払いに直結していないかを確かめる意味で、この条文を必ず確認しなければならないと話されています。
そもそも残業代はどう計算するのか
なぜ労働時間と休日の条文が残業代の計算に関係するのか。その前提として、吉田さんはまず残業代の計算方法から説明します。
時給の場合は単純です。時給1000円なら、残業したときはその1.25倍の1250円が支払われます。
一方で、世の中の大多数は月給の人が多いため、月給の場合が問題になります。たとえば月給30万円の人が1時間残業したらいくら払うのが妥当か、これは難しいところがあります。
この計算方法は決まっています。最も一般的なのは、月平均所定労働時間を使う方法です。月平均所定労働時間 ── 雇用契約で決まる年間の労働時間を12で割った、1か月あたりの平均的な所定労働時間。残業代の1時間あたり単価を出すための基礎になる。
月平均所定労働時間は、雇用契約で決まる年間の労働時間を12で割った数字です。12で割れば1か月の平均時間が出るため、これを使います。
具体的には、労働日が年間240日で1日8時間労働の会社なら、年間1920時間働くことになります。これを12で割ると160時間という数字が出ます。
月給30万円の人なら、30万円を160で割った1875円がその人の1時間あたりの単価です。ここに1.25倍をかけ、月60時間を超える残業なら1.5倍をかけて残業代を計算していきます。
つまり、1日の労働時間と年間の労働日数から月平均所定労働時間を出し、それを基礎に残業代を計算していく、という流れになります。
割る数を間違えると未払いが生まれる
ここで話は就業規則に戻ります。労働時間と休日の条文が重要なのは、ここで書かれた数字と違う数字を残業代の計算に使っていると、未払い賃金が発生するからだと吉田さんは説明します。
本来160で割るべき会社の例では、よくある間違いとして168で割ってしまっているケースがあります。もっと攻めている会社だと173時間45分で割っていることもあります。
吉田さんによれば、法律を使い倒せば173時間45分ぐらいまでは適法な範囲で割り戻しできるものの、あまりおすすめはしていないとのことです。さらにひどい会社では200で割っている、明らかに違法なケースもあると言います。
問題は、168でも173時間45分でも200でも、本来割るべき160より大きい数値で割っている点です。割る数が大きいほど1時間あたりの給料は低く計算され、そのまま残業代の未払いにつながります。
だからこそ、労働時間と休日の条文はすごく重要だと吉田さんは強調します。重要なのは、実態に合わせて残業代を計算し、それに合った就業規則の条文を作ることだと話されています。
労働基準監督署も「ここ」を見ている
この話を聞いて「自分には関係ない」と思う人もいるかもしれませんが、そうではないと吉田さんは続けます。会社は時々、労働基準監督署から調査を受けることがあるためです。労働基準監督署 ── 労働基準法などが守られているかを監督する国の機関。企業に対して資料の提出やヒアリングを求める調査を行うことがある。
調査では、指定された資料の提出に加えて、ヒアリングシートのようなものを渡されます。そこには、何時から何時まで働いているか、1日何時間か、休日は何日か、労働日は何日か、といった項目がほぼ含まれています。
これらを通じて労働基準監督署が知りたいのは、残業代の計算が適正になされているかどうかです。労働時間と休日は、調査で必ず聞かれる項目に入っているというわけです。
(労働基準監督署は)先ほど言った残業代の計算が適正になされているかっていうのを確認したいんです。そのためのヒアリングなんですね。
調査対応の観点でも、従業員から「給料が足りていないのではないか」と指摘されないためにも、ここは必ず確認して運用するのがよいと話されています。
乗り換えや上場審査にも影響する見落とし
最後に、吉田さんは未払い賃金について補足します。月平均所定労働時間を間違えている会社は結構多く、この論点を落としているところが多いと言います。
顧客の中には、前の社労士がこの月平均所定労働時間を間違えていたために契約を解約し、吉田さんの会社に乗り換えたケースもあるそうです。
さらに上場準備中の会社では、支払う賃金に不足があると未払い賃金があることになり、場合によっては上場の審査に影響が出ると注意を促しています。
スタッフとの関係、労基署の調査対応、上場やM&Aも含めて、ここは必ず見られるポイントです。自社の就業規則で労働時間と休日の記載がしっかりできているかを確認して進めてほしいと締めくくっています。
まとめ
就業規則を読むなら、まず労働時間と休日の条文を確認する、というのが今回の要点です。この条文は残業代の1時間あたり単価を決める基礎になり、割る数を間違えるとそのまま未払い賃金につながります。
- 就業規則で最初に確認すべきは、労働時間と休日の条文
- 残業代の単価は「月給 ÷ 月平均所定労働時間」で計算する
- 月平均所定労働時間 = 年間労働時間 ÷ 12。本来より大きい数で割ると未払いが発生する
- 労働基準監督署の調査でも労働時間と休日は必ず確認される項目
- 未払いは従業員との関係だけでなく、上場審査やM&Aにも影響しうる






