筋トレが続くようになった理由は「どこでも仕事できる」安心感?
番組の冒頭で、岡島さんはこの2ヶ月ほど、週6〜7日のペースでジムに通い続けていると話します。玉置さんから習慣化のアドバイスを受けたことがきっかけだそうです。
筋肉は裏切らないですから。
岡島さんは、筋トレが続いている理由としてAIの進化も挙げます。スマホから指示を出せるAIツールを使えば、ジムへの移動中に音声入力をしたり、トレーニングの休憩中に結果を確認したりできるといいます。
ちょっと前の僕だったら、ずっと仕事の何かをしてないとみたいな、漠然とした強迫観念みたいなのがあって、いけなかったんですけど。
一方で岡島さんは、「仕事ができるのにしていないと損をしている」という新しい焦りも感じ始めていると明かします。そのうえで、AIに仕事が置き換わっていく中で、人間に残る仕事には体を鍛えて健康を保つことも含まれるのではないかと考えて、筋トレを続けているそうです。
つらさの原因は出来事ではなく「受け止め方」?
本題は「認知の歪み」です。玉置さんは、この言葉を知っている人は多いものの、自分に当てはめて考え、受け止め方を修正するところまで実践している人は少ないと指摘します。
土台にあるのは認知療法 ── 物事の受け取り方や考え方(認知)に働きかけて、気分や行動を変えていく心理療法。うつ病や不安障害の治療に広く使われていますの考え方です。人はネガティブな感情を抱くとき、つらさの原因は出来事や状況そのものだと思いがちです。しかし実際には、出来事と感情の間に「認知」という受け止め方が挟まっていると玉置さんは説明します。
出来事、感情じゃなくて、出来事、認知、感情なんですよ。
出来事
上司から返信がない、ミスをした、などの状況
認知
出来事をどう受け止めるか。ここに歪みが入りやすい
感情
つらい、不安、落ち込むといった気持ち
玉置さんによれば、状況が変わらなくても、認知が変われば感情は変わります。他人を変えたり会社の状況を変えたりするのは非常に難しいものです。それに比べて自分の受け止め方を変えるほうが、手っ取り早く幸せに近づく方法だと玉置さんは考えています。
機内で読んだ『禁煙セラピー』で、意志の力ゼロの禁煙に至った体験とは?
玉置さんが認知療法の効果を知ったきっかけは、喫煙者だった頃に乗ったロンドン行きの長時間フライトでした。10時間以上タバコが吸えないのがつらく、空港の売店で「読めばタバコがやめられる」という帯の付いた『禁煙セラピー』を買ったそうです。
機内で本を読み終えた玉置さんは、到着後にいつものように喫煙所へ直行しました。ところが、10時間以上ぶりに吸ったタバコがおいしくなかったといいます。寝不足のせいかと考えて翌朝に吸い直しても、やはりまずく感じられ、そのままタバコを吸えなくなったそうです。
うっかり禁煙しちゃったんです、私。不本意に。
玉置さんはあとから、『禁煙セラピー』が認知療法に基づいた本だったと知ります。本の中身は、「タバコはストレスを和らげる」「タバコはおいしい」「禁煙はつらい」といった一般的に信じられている認知を、科学的な根拠を示して覆していくものでした。
私は事実を読んだだけなんですけれども、それでうっかり認知が変わっちゃったんですよね。
周りの友人が意志の力で禁煙しようとして挫折する中で、玉置さんは意志の力をまったく使わずに禁煙できました。この体験は強烈だったと振り返っています。
セロリと納豆が大好物に。借金2億円も支えた「認知の修正」
禁煙をきっかけに認知療法にのめり込んだ玉置さんが、次に試したのは食べ物の好き嫌いでした。好き嫌いは幼少期にできることが多いものの、子どもの舌でまずいと感じた食べ物も、大人の舌で食べればまずくないかもしれません。玉置さんは、まずいという思い込みが残っているだけだと考えました。
そこで玉置さんは、嫌いな食べ物を「初めて食べる食べ物」だと捉え直して口にしてみました。すると、30年ほど避けてきたセロリと納豆が、どちらも大好物になったそうです。ただし、しいたけの煮付けだけは、思い込みをリセットしてもおいしいとは思えなかったと付け加えています。
玉置さんは、借金2億円を抱えた時期を耐え、返済までやり遂げられたのも、自分の認知を修正してきた結果だと考えています。借金があるという状況そのものは変わらず、つらいことに変わりはありません。それでも、どう受け止めるかが気持ちを保つうえで大事だったといいます。
捉え方が変われば感情とかが変わるっていうのをバカにしないでくださいって話なんですよ。子供騙しじゃないです。
侮ってるんですよ。気の持ち方で何ともなるかいと思ってるんですよ。
『フィーリング・グッド』の第1の歪み「オールオアナッシング」とは?
ここから、10パターンの解説が始まります。紹介されるのは、スタンフォード大学の名誉教授デビッド・バーンズが1980年代ごろに出版し、世界的なベストセラーになった『フィーリング・グッド』に基づく整理です。玉置さんは自分は専門家ではないとしたうえで、この本の内容と一般的に言われていることを総合して話すと前置きしています。
玉置さんによると、この本は「読む認知療法」と呼ばれており、読むだけでうつ症状が改善したという論文があるほどだそうです。
1つ目の歪みは「オールオアナッシング(全か無か)」です。ちょっとしたミスで「もう全部ダメだ」と思う、ダイエット中に1回チートしただけで「台無しだ」と感じる、100点でなければ「自分は無能だ」と考える、といったように、0か100かで物事を捉える思考を指します。
玉置さんは、10パターンは誰にでも思い当たるものであり、特に疲れているときやコンディションが悪いときに陥りやすい罠だと話します。オールオアナッシングは、頑張り屋や完璧主義の人に多いそうです。
オールオアナッシングの立て直し方は、「全部」「台無し」という言葉が頭に浮かんだ瞬間にブレーキをかけることです。そのミスが全体の何割なのか、何点分なのかを見てみると、実際には1〜2%の話であることも多いといいます。
自分に、いや、ちょっとここからのリカバリーショットってどうすればいいんだっけ?っていうことを考えてほしいんですね。
「いつも本番に弱い」と括る過度の一般化と、悪い点ばかり見るネガティブフィルター
2つ目の歪みは「過度の一般化」です。プレゼンで一度失敗しただけで「私はいつも本番に弱い」と思い込んだり、一人の上司とうまくいかないだけで「私は上の人とうまくやれない」と決めつけたりする思考です。「いつも」や「全部」で丸ごと括ってしまうのが特徴だといいます。
過度の一般化への対処は「解像度を上げること」です。「全部嫌だ」と感じたら本当に全部なのかを疑い、「このタイミングが嫌」「この作業がうまくいかない」と分解していくと、問題は一部分にすぎないとわかってきます。
営業が向いてないじゃなくて、営業の中のこの部分は苦手。ここは結構案外できるって数えていくと、できることの方が案外多いかも。
3つ目の歪みは「ネガティブフィルター」です。5回褒められて1回指摘されても指摘だけを覚えている、統計を取ればそうでもないのに「出かける日はいつも雨」と感じる、SNSでいいねがたくさん付いても1件の嫌なコメントばかり気になる、といった傾向を指します。
ネガティブフィルターへの対処は「視野を広げること」です。嫌なコメントが1件あっても、いいねは50件あるかもしれません。玉置さんは、気分が嫌なことに引っ張られているときは、「逆に良かったことはなかったっけ?」と自分に問いかけてほしいと話します。
一度の失敗を「いつも」「全部」と括ってしまう。対処は、本当に全部かを疑って解像度を上げること
悪い点だけが記憶に残る。対処は、「逆に良かったことは?」と問いかけて視野を広げること
成果を「運が良かっただけ」と下げるマイナス化思考
4つ目の歪みは「マイナス化思考」です。ネガティブフィルターが悪いことだけに目を向けるのに対して、マイナス化思考は良い出来事まで自分から下げてしまいます。成果が出ても「たまたま運が良かっただけ」と考え、褒められても「どうせお世辞だろう」と受け取るのが典型だそうです。
玉置さんは、真面目な人ほど自分への期待値が根拠なく高く、「自分を褒めてあげられない病」にかかっていると指摘します。
マイナス化思考への対処として玉置さんが勧めるのは、同じことを友達や後輩が言ったらどう返すかを考えることです。友達が成果を出したときに「運が良かっただけだろう」とは言わず、「よく頑張ったね」と声をかけるはずです。自分にだけ違う基準を当てていると気づけば、おかしなマイナス化に気づきやすくなるといいます。
玉置さんによれば、認知の歪みは幼少期やこれまでの経験から生まれた「癖」です。癖なので、注意しているときは出ず、疲れているときや状況が悪いときに出やすいといいます。
私は自分に対しては認知の歪みが出てきたら、あれ、私疲れてるかもなっていうサインとして受け止めるんですよ。
玉置さんは、歪みが出てきたら自分を休ませるコーピングリスト ── ストレスを感じたときに気分を回復させる行動をあらかじめ書き出しておくリスト。つらいときに迷わず対処を選べるようにするための工夫ですを発動し、心身の充電を優先しているそうです。岡島さんも、仕事を無理やり切り上げて寝た経験を振り返り、その判断は合っていたと感じたと話しています。
返信がないだけで「怒ってる」と考える結論の飛躍
5つ目の歪みは「結論の飛躍」です。上司にSlackを送って返事が来ないだけで「怒っている」と思い込む、会議で提案する前から「どうせ通らない」と考える、クライアントから「お話があります」と言われただけで「契約を切られる」と身構える、といった思考です。
玉置さんは、ホモ・サピエンスは危険を察知するために、過去の経験から予測を積み上げて構える性質を持っていると説明します。それ自体は生存に役立つ正しい本能です。ただし、その予測が「数ある仮説の1つにすぎない」という感覚を持っていないと危険だといいます。岡島さんも、『サピエンス全史』で語られているような、人間の性質がDNAに刻まれているという話を思い出しています。
結論の飛躍への対処は、事実と推測を分けることです。上司の件でいえば、事実は「返信が来ていない」ことだけで、それ以外はすべて推測にすぎません。
推測で感情を持つのが一番馬鹿らしいんですよ。
玉置さんは、多くの不安や不満は、すでに起きた過去か、まだ起きていない未来に向けられていると話します。「これは事実ではなく、『かもしれない』の1つだ」と思えれば、心のざわつきを抑えられるといいます。
遅刻1回で「信用を失った」と思う拡大解釈と過小評価
6つ目の歪みは「拡大解釈と過小評価」です。同僚の成果は大きく見える一方で、自分のしたことは大したことがないと感じます。また、1回遅刻しただけで信用を失ったと考えるなど、小さな出来事を大きく捉えてしまうのも特徴で、玉置さんはバランスがとても悪い状態だと表現します。
拡大解釈をしやすい人は、失言や小さな失敗をいつまでも引きずる傾向があります。玉置さんは、反省は未来の失敗を防ぐ材料になるので必要だとしたうえで、反省のあとに後悔を繰り返すのは意味がないと話します。
ダメージを再生産するんですよ、自分で。
拡大解釈への対処は、時間軸を伸ばすことです。「このことを1年後も気にしているか」「1年後も気にしているなら、10年後はどうか」と考えていくと、出来事は些細なものに見えてきます。逆に、相手の些細な一言を自分が10年後まで覚えているかを考えるのも有効だといいます。
玉置さんは、「理屈ではわかるけど感情がついてこない」という言葉は、実は理屈として理解できていないときに出るものだと指摘します。事実や理論として本当に納得できれば、認知が変わり、感情も動くといいます。岡島さんは、禁煙の例で「タバコがまずくなった」のがまさにそれだと応じています。
「感情は天気ぐらい」と考える、感情的な決めつけへの向き合い方
7つ目の歪みは「感情的な決めつけ」です。「〜と感じているから〜である」という構文で、「自信がないから向いていないと思う」「気が進まないからうまくいかないと思う」と判断してしまう思考を指します。
玉置さんは、感情と「〜である」という事実の間には、実は相関関係がないと指摘します。もっともらしく聞こえるため、自分も他人も騙されてしまうのだといいます。
感情は、体調や天気によっても変わるほど気まぐれなものです。寒い冬の日には「行っても楽しくない」と感じる場所も、秋晴れの日には楽しそうに思えます。
私自身は感情って天気ぐらいだと思ってるんですよ。
だから自分がこれが絶対嫌だと思っているからやりませんみたいなことは思わなくて、気が変わるかもしれないと思ってます、全部。
玉置さんは、感情を判断材料にすることはなるべく避けているそうです。岡島さんは番組の最後でも、この話が今いちばん効いていると振り返っています。
「〜すべき」はプロ意識ではなく歪み?
8つ目の歪みは、仕事で疲れている真面目な人が陥りやすい「すべき思考」です。「完璧に仕上げるべきだ」「上司より先に帰るべきではない」「親は子どもの前でいつも笑顔でいるべきだ」といった考え方が自分を追い込むと、玉置さんは指摘します。
私たちはやりたいことをやる時にべきだって絶対言わないんですよ。
「映画を見るべきだ」「おいしいものを食べるべきだ」とは言いません。玉置さんは、「べきだ」と言うのはやるのがしんどいことに自分を駆り立てるときであり、その分だけ消耗すると説明します。
すべき思考への対処は、「〜すべきだ」を即座に「〜できたらいい」へ言い換えることです。言葉には頭を引っ張る力があり、言い換えるだけで追い込まれる感覚が減るといいます。
完璧に仕上げるべきだ/親は子どもの前で笑顔でいるべきだ
完璧に仕上がったらいい/子どもの前で笑顔でいられたらいい
あのプロフェッショナリズムでもなくて歪んでるんです。
岡島さんは、「すべき思考は責任感ではなく歪みだ」と言われると、やめたほうがいいと素直に思えると話しています。
「自分は無能」「あの人は素晴らしい」——レッテル貼りの落とし穴
9つ目の歪みは「レッテル貼り」です。「私はダメな人間だ」「私は意志が弱い」のように、人を丸ごと評価してしまう思考を指します。玉置さんは、人を丸ごと評価してもいいことは何もないと話します。「意志が弱い人間だ」と決めつけても、それ以上は何も変わらないからです。
レッテル貼りへの対処は、評価するなら行動を対象にすることです。「今、自分はこれをした。これはやめたほうがいい」と考えれば、改善につながります。他人に対しても、「無責任な人だ」ではなく「この行為は無責任だからやめてください」と伝えれば、会話が成り立つといいます。
レッテル貼りは、ネガティブな評価に限りません。玉置さんは、「あの人は素晴らしい人だ」と丸ごと評価するのも思考停止につながる歪みだと指摘し、岡島さんも怖いことだと同意しています。
会議の空気が悪いのは自分のせい? 個人化と影響範囲の見極め
10個目の歪みは「個人化」です。会議の雰囲気が悪くなったのは自分の発言のせいだと考えるなど、何でも自分に原因があると思い込む思考です。自責と呼ばれることもありますが、玉置さんはきちんと原因を考えていないという意味で思考停止だと指摘します。話の中では、松下幸之助の言葉として知られる「雨が降るのも槍が降るのも自分のせい」という考え方も話題に上がりました。
玉置さんは、自分が影響を及ぼせる範囲を見極めることが大事だと話します。他人を変えることはほぼ無理で、アドバイスを受け取って言動を変えるかどうかは相手の選択だからです。
個人化への対処は、自分以外の原因を考えることです。例えば妻の機嫌が悪いときも、寝不足だったのかもしれないし、子どもが言うことを聞かなかったのかもしれません。たまたま無神経な一言がきっかけになったとしても、すべてが自分のせいではないといいます。
やっぱり。でもトリガーって最後の0.1%だったりするんですよね。
岡島さんはこれを、コップから水があふれるときの最後の一滴にたとえます。それまでに溜まっていた水があるはずだ、という見方です。
| パターン | 典型的な思い込み | 立て直し方 |
|---|---|---|
| オールオアナッシング | ミス1つで全部ダメ | 全体の何割かを見て、リカバリーを考える |
| 過度の一般化 | いつも本番に弱い | 本当に全部かを疑い、解像度を上げる |
| ネガティブフィルター | 指摘だけを覚えている | 「逆に良かったことは?」と問いかける |
| マイナス化思考 | 運が良かっただけ | 友達や後輩ならどう言うかを考える |
| 結論の飛躍 | 返信がない=怒っている | 事実と推測を分ける |
| 拡大解釈と過小評価 | 遅刻1回で信用を失った | 1年後、10年後も気にしているかを考える |
| 感情的な決めつけ | 自信がないから向いていない | 感情は天気ぐらいのものと扱う |
| すべき思考 | 完璧に仕上げるべき | 「できたらいい」に言い換える |
| レッテル貼り | 自分は無能だ | 人ではなく行動を評価する |
| 個人化 | 空気が悪いのは自分のせい | 自分以外の原因を探す |
大事なのは歪みが「出ている」と気づくこと
玉置さんは、10パターンには誰でも思い当たる場面があるとしたうえで、いつも出るわけではないと話します。だからこそ大事なのは、歪みが出たときに「出ているな」と気づくことだといいます。
玉置さんがこの話をまとめて伝えたかったのは、仕事の悩みを聞いていると、会社の状況をすぐに変えるのは難しいと感じるからだそうです。100%幸せに働ける環境がずっと続くことはないため、どんな状況でも自分の感情を守り、幸せに働くことを技術として身につけてほしいと話しています。
岡島さんは、本人がプロ意識のつもりで抱えている「すべき思考」も、歪みだと指摘されればやめようと思えるので、効果が大きそうだと感じたと語ります。番組の最後には、ひと旗の受講枠が埋まりつつあることや、伴走サポーターを募集していることも告知されました。
まとめ
この回では、出来事と感情の間にある「認知」に注目し、デビッド・バーンズが整理した10の認知の歪みと、それぞれの立て直し方が紹介されました。禁煙や借金返済を経験した玉置さんは、受け止め方が変われば感情は確かに変わるとして、その効果を侮らないでほしいと繰り返し伝えています。
- つらさは出来事から直接生まれるのではなく、「出来事→認知→感情」の順で生まれる
- 玉置さんは『禁煙セラピー』を読んで認知が変わり、意志の力を使わずに禁煙できた
- 歪みにはそれぞれ対処法がある。事実と推測を分ける、「すべき」を「できたらいい」に言い換える、人ではなく行動を評価する、などが挙げられた
- 歪みは疲れているときに出やすい癖なので、出てきたら休むサインとして受け止める
- 感情は天気ぐらいのものと考え、判断材料にしすぎない




