「フィジカルを舐めるな」とは何への警鐘か
この回のテーマは「フィジカルAI」です。しぶちょーさんは、2025年に流行したAIエージェントに続き、2026年はフィジカルAIがいろいろなところで語られると予想し、年の初めに先回りして解説する回として用意しました。
しぶちょーさんが掲げたメッセージは、フィジカルを舐めるなというものです。フィジカルAIは製造業にAIを取り込む文脈で語られることが多く、しぶちょーさんの専門分野に近いため、実態がよく見えるといいます。
今日のメッセージはね、フィジカルを舐めるなっていうことなんですよ。
だいぶね、危険なワードだと思う。俺はこの言葉(フィジカルAI)。
しぶちょーさんは、製造業側の人が「それを言ってほしかった」と思う言葉を含めて話すと予告し、原稿を書きながら「ちょっとムカつくな」と思っていたとも明かしています。
フィジカルAIの一般的な説明と「ものづくり大国」への期待
しぶちょーさんはまず、一般に言われているフィジカルAIの意味を紹介します。自分の判断で動く自律マシンのことで、これまで画像や言葉、音といった無形のアウトプットを出してきたAIが、現実世界で物理的な動きを出力できるようになる、という捉え方です。
ポイントは「自律的に動くこと」と「現実世界へのアウトプット」の2つだと、しぶちょーさんは整理しています。かねりんさんがアンドロイドのようなものかと聞くと、しぶちょーさんは同意し、機械のアームのような手だけのものでもよいと答えています。
続いてしぶちょーさんは、SNSで見かけたという文章を読み上げます。AIはこれまで仮想空間で進化してきたが、フィジカルAIは製造・医療・インフラの現場で身体を持って動くもので、日本は伝統的なものづくりの強みとAIを融合させれば世界トップを狙える、という内容でした。
実はこの文章は、かねりんさんがSNSに投稿したものでした。しぶちょーさんが素人質問の体で「具体的にどういうことか」と尋ねると、かねりんさんは次のように返しています。
知らないよ。これ(投稿文)AIに書かせたんだから。
しぶちょーさんは、この文章が日本のフィジカルAIへの期待感をよく表していると話します。ものづくりに強い日本が、一歩引いていたAIと掛け合わせれば世界を取れる、という筋書きはきれいでわかりやすく、だからこそ多くの人がはしゃいでいる、という見立てです。
フィジカルAI驚き屋とDXの二の舞はなぜ起こるのか
しぶちょーさんは、2026年はフィジカルAIの話題が過熱し、「フィジカルAI驚き屋さん」がたくさん現れると予想します。かねりんさんも、わかりにくい分野なのでイメージで語りやすく、周りが反論しにくいと応じています。
しぶちょーさんによれば、今はいろいろな技術がごちゃごちゃになって全部AIに見えてしまう状態です。そこでこの回では、技術的な文脈でいうフィジカルAIが何なのかを切り分けることを目指します。
しぶちょーさんが特に懸念しているのは、フィジカルAIが「製造業乗っかりワード」になっていることです。AI界隈の人が製造業に流れ込み、フィジカルAIを掲げてお金を巻き上げていく構図が生まれると見ています。
しぶちょーさんは、同じことがDX(デジタルトランスフォーメーション)でも起きたと振り返ります。
バズワードの登場
DX、そしてフィジカルAIのような言葉が広まる
謎の職業の誕生
DXコンサル、フィジカルAIアドバイザーなどが生まれ、各地で講演する
製造業からの吸い上げ
AIをよく知らない製造業からお金や補助金が吸い取られていく
製造業ってさ、AIあんま理解してないから。あ、そうなんだ。これでうちの技術もAIと掛け合わせてなんかすごいお金儲けれるんですねみたいな。
対策として、かねりんさんは驚いている人にこの回のリンクを送りつける案や、「フィジカルAI」という言葉に反応してリンクを返すボットを出して笑いを誘います。しぶちょーさんは「もうスパムだよな」と返しつつ、言葉を拡大解釈しすぎないよう年初に杭を打っておきたいと話しています。
政府の1兆円投資で何が起きるのか
しぶちょーさんがこの時期にフィジカルAIを取り上げた理由は、国の動きにあります。2025年12月、高市首相がAI戦略本部の会議に出席し、政府がAIに1兆円規模の投資をする方針を打ち出しました。
しぶちょーさんの説明では、投資の柱は2つです。1つは国産LLMなど基盤モデルの国産化、もう1つはロボットとAIを組み合わせたフィジカルAIと呼ばれる新技術の開発です。
収録は2025年に行われていましたが、配信日の2026年1月9日を基準に話していたため、しぶちょーさんが「去年」と言ったことで、かねりんさんが前首相の石破さんの頃の話と勘違いする一幕もありました。
しぶちょーさんは、この投資そのものを否定するつもりはないと明言します。問題は、投資されたお金が補助金や予算として配られる点にあるといいます。
そう、補助金チューチュービジネスが始まるというのが、もう今まで散々行われてきたから。俺はここでちょっと釘を打っとくって感じ。
しぶちょーさんは、自身はフィジカルAIのプロフェッショナルではなく、製造業の機械設計や機械について知っている立場から話していると断っています。そのうえで、政府の発表で関心が集まったことから、2026年はフィジカルAIの話が確実に広がるだろうと見ています。
フィジカルAIの火付け役はNVIDIAだった?
しぶちょーさんによれば、フィジカルAIという言葉自体はもっと前からあったものの、盛んに言われ始めたのは2024年10月頃です。きっかけはNVIDIA ── アメリカの半導体企業。GPU(画像処理半導体)で知られ、AIの学習や計算に使われるGPUの需要拡大で急成長しましたのブログと、CEOの発言でした。
NVIDIAが未来の工場を紹介する動画や発言の中で「フィジカルAI」という言葉を連呼し、その言葉だけが一人歩きして、AIとロボットを掛け合わせる文脈で広く使われるようになった、という経緯です。
しぶちょーさんは、NVIDIAが言っていたフィジカルAIと、今使われているフィジカルAIには意味のずれがあると指摘します。今は「AIのアウトプットを現実に出す」くらいの広い意味で使われており、具体的な定義はないといいます。
NVIDIAの文脈を理解する鍵は、同社のソリューション「オムニバース」です。しぶちょーさんは、現実の空間と同じ仮想空間をサイバー上に作り、機器の情報まで全部リンクさせて、現実で起きていることを仮想空間でも確認できる状態をデジタルツイン ── 現実の設備や環境を仮想空間上に再現したモデル。シミュレーションや最適化、検証などに使われますと説明します。
オムニバースは、BMWやシーメンスといった大企業の工場でも使われているそうです。NVIDIAはこの仮想空間にヒューマノイドやロボットを入れて学習させ、同じ動きをするロボットを現実に生み出す、という意味でフィジカルAIを語っていました。
デジタルツインの仮想空間でロボットの動きを学習・シミュレーションさせ、現実に反映する
AIを使って自律的に動くロボットは全部フィジカルAI、という広い解釈
かねりんさんが「それってマトリックスじゃん」と言うと、しぶちょーさんも「まさにマトリックスだよね」と同意しつつ、あくまで理想的な形だと付け加えています。オムニバースはGPUを大量に使うソリューションでもあり、NVIDIAが大企業の工場をデモとして派手にアピールする中でこの言葉が使われ始めた、とまとめています。
人間そっくりに動くヒューマノイドは生成AIのおかげか
しぶちょーさんが「良くない」と話すのが、ヒューマノイド(人型ロボット)の存在です。中国製のヒューマノイドが人間のように動き、街を練り歩く動画がSNSで広まっています。
かねりんさんは、そうした動画は生成AIで作ったフェイクだと思うことにしていたと言います。しぶちょーさんは、あれは結構現実のもので、実際に人間のように歩いたりするデモが各地で行われていると答えています。
問題は、多くの人がその進化を無意識に生成AIのおかげだと結びつけている点です。
で、これ(リアルに動くヒューマノイド)と生成AIの進化は技術的には全く関係のない文脈のものなんだよ。
人間のように対話できるAIができて、人間のように動くロボットができたと。じゃあChatGPTがきっとこの頭の中に入っていて、ロボットを動かしているに違いないぐらいに思っちゃうわけ。
しぶちょーさんによれば、ヒューマノイドはヒューマノイドとして技術的な進化を積み重ねてきた結果、今の状態になっています。中にAIは入っているものの、私たちが使う生成AIサービスが中でバチバチに動いているわけではない、という説明です。
しぶちょーさんは、今のヒューマノイドにできるのは「特定のタスクを人間っぽくこなすこと」だとも強調します。ASIMO ── ホンダが開発した二足歩行のヒューマノイドロボット。2000年に発表され、人型ロボットの代表的な存在として知られましたのようなロボット歩きを超えて人間らしく歩けるようになったのは制御の進歩であって、人間のように生活し、あらゆるタスクをこなせるようになったわけではないといいます。
ASIMOのように、重心を移動させないロボット歩き
人間っぽく歩ける制御ができるようになった。ただし、生活に馴染んで何でもこなす汎用性はまだ先の話
驚き屋にとっては、「ロボットがこんなタスクまでこなせるようになった」と言えばエンゲージメントを稼げます。しぶちょーさんは、落ち着きAIラジオは違う方向でキャッチーにしなければいけないと話し、この回のタイトル案として「フィジカルAI騙されるな」を挙げていました。
フィジカルなものを動かすリスクとは
しぶちょーさんは改めて、「日本のものづくり×AIで価値が出せる」と単純に考えてはならないと話します。そのうえで、AIを使えばロボットを簡単に動かせると誤解している人が多いと指摘します。
それこそだいぶね、バイブコーディングにみんな頭を焼かれてしまっていて、自分の知らない専門の分野でもAIにちょこちょこって聞けばすぐできるようになるだろうと。
しぶちょーさんによれば、物理的なものを動かすことには大きなリスクがあります。物理的に動くということは、誰かを攻撃することもできてしまうからです。
しぶちょーさんは、趣味でやる分にはよいものの、ロボットはウェブアプリのような開発スピードでプロダクトを生み出せるものではないと話します。AI界隈からロボットに興味を持った人との間には、その認識に大きなギャップがあるといいます。
しぶちょーさんは、この倫理面が低く見積もられていることにも、専門分野の人間として警鐘を鳴らしていると述べています。
フィジカルAI洗濯機は本当にフィジカルAIか
ここからしぶちょーさんは、技術的に「どうなったらフィジカルAIと言えるのか」を掘り下げていきます。最初の問題提起は、フィジカルAIと従来のAI制御がすでに混同されていることです。
AIでロボットを動かす技術は昔からあり、それを新しくフィジカルAIと呼び直すリブランディングがすでに起きていると、しぶちょーさんは話します。今後は従来の製品に名前を付けただけのものも増えるので、冷めた目で見てほしいといいます。
例えばフィジカルAIエアコンとかさ、フィジカルAI加湿器とかフィジカルAI洗濯機全然出てくると思うよ。
しぶちょーさんは、定義がないためAIで動いていればフィジカルAIと名乗っても間違いではなく、20数年前に出たSONYのアイボでさえ、今そのまま出せば通用してしまうと指摘します。かねりんさんは「なんとでも言えちゃう言葉だね」と応じています。
真のフィジカルAIの条件は「自律性」
しぶちょーさんが重要な条件として挙げるのが「自律性」です。人間が遠隔操作しなくても、ロボットがセンサーで周囲を認識し、自ら判断して行動できることを指します。
ただし、スイッチを押せば洗濯から脱水、乾燥までこなす洗濯機は、明らかにフィジカルAIではありません。あらかじめ決められた順番どおりに動くシーケンス制御 ── あらかじめ決めた順序や条件に従って、機械の動作を段階的に進める制御方式。家電や工場の設備などで広く使われていますにすぎないからです。
かねりんさんが、最近の「AIで汚れをセンサー検知」する洗濯機はどうかと尋ねると、しぶちょーさんはまさに次に話そうとしていたと答えます。画像認識にAIのモデルは使われているものの、それもフィジカルAIとは言えないという立場です。
AIが仕組みに組み込まれてるからといってフィジカルAIではないと。
しぶちょーさんによれば、フィジカルAIに期待される自律性とは「未知のタスクへの対応」です。教えていないことができる、という意味です。
しぶちょーさんは例として、猫が洗濯機でうんちをしようとしたときに、教えていないのにどかしたり回収したりしてくれる、といった振る舞いを挙げます。究極の姿はドラえもんだといいます。
一方、従来の制御は「考える」よりも「反応」に近いとしぶちょーさんは言います。突くとビクッと動く虫のように、インプットに対して決まった反応を返すのが従来の制御だというたとえです。
| 例 | 仕組み | フィジカルAIか |
|---|---|---|
| 普通の洗濯機 | 決められた順に動くシーケンス制御 | いいえ |
| 汚れ検知の洗濯機 | 人が決めたルールに画像認識AIを組み込んだもの | いいえ |
| 未知の状況に自ら対応するロボット | 基盤モデルで認識し、行動を計画する | 期待される姿 |
しぶちょーさんは、ロボットのタスクを大きく「認識」と「行動」の2つに分けます。認識は自分の位置や姿勢、周囲の状況を把握すること、行動は腕を動かすといった物理的なアウトプットと、その後の行動計画を立てることです。
核心技術「ロボット基盤モデル」とは何か
しぶちょーさんによれば、フィジカルAIの最大の特徴は、認識と行動のタスクに基盤モデル ── 大量のデータで事前学習され、さまざまなタスクに転用できる大規模なAIモデル。ファウンデーションモデルとも呼ばれますを使うことです。ChatGPTの土台になっているGPT-5.2のような、何でもこなすマルチモーダルなモデルのロボット版だと説明しています。
ロボット基盤モデルは、GPTをそのまま使うわけではありません。しぶちょーさんは、LLMと似た仕組みを持ちながら、意味の空間の中に「動き」というロボット独自のアウトプットが入ってくる点が違うと説明します。
ロボットのその基盤モデルを使って、現実の世界を認識させて行動まで落とし込むと。
しぶちょーさんは、ここがフィジカルAIの目指すところだとしつつ、現実はまだそこまでいけていないと話します。認識から出力までを1つのモデルでこなすエンドツーエンド ── 入力から出力までを1つのモデルで直接学習・処理する方式。設計を単純にできる一方、制御や安全面の課題も多いとされますは難しいものの、認識の一部や出力の一部に基盤モデルを使うことは研究ベースで少しずつできているといいます。
しぶちょーさんは、基盤モデルが関わらない強化学習や模倣学習は昔からある手法で、フィジカルAIと呼んでもよいものの、期待されている文脈とは少し逸れると整理しています。
基盤モデルを使うと洗濯の何が変わるのか
しぶちょーさんは再び洗濯の例に戻ります。汚れを見つけて集中的に洗う従来の仕組みは、人間が決めたルールに従って場合分けをたどっているだけです。
従来のロボット制御では、カメラや音、力覚センサーの入力に応じた数理モデルを人間があらかじめ定義する必要があります。新しいことをさせるたびに、一からトレーニングやモデリングをやり直さなければなりません。
一方、ロボット基盤モデルは意味を理解できます。汚れたタオルを見て「ここが汚れている」と捉え、汚れがひどければよけておき、落ちそうなら洗濯に回す、といった判断を自律的に行える可能性があるといいます。
人間が決めたルールで汚れた箇所を集中して洗う。新しいことをさせるたびに一から作り直しが必要
汚れの意味を理解し、よけるか洗うかを判断。猫がうんちをした形跡から「猫が乗らないようにする」ことまで行動計画に入れうる
ロボット基盤モデルには、言語だけでなく、動画やモーターの信号といった数値的なセンサー情報も入ってきます。ただし、ヒューマノイド、腕だけの産業用ロボット、パラレルリンクロボットなど、ロボットは構造がまったく違うため、1つのモデルですべてに対応するのは難しいとしぶちょーさんは話します。
それでも、体の形が違っても対応できる基盤モデルを作る研究も進んでいて、構造がかなり離れていてもいけるらしい、としぶちょーさんは紹介しています。
洗濯物を畳む「Pi0」の人間臭い動き
しぶちょーさんは、2025年に参加したフィジカルAI勉強会で見た動画の中から、Pi0 ── 米スタートアップPhysical Intelligenceが公開したロボット基盤モデル。多様なロボットの動作データで学習し、家事のような作業をこなすデモで注目されましたというロボット基盤モデルを紹介します。コーヒーを入れる、洗濯物を畳む、ドアを開けるといった家事全般のデータが学習されているそうです。
Pi0は、未知のタスクでも少し追加でトレーニングさせるだけで、かなり自動で動くようになるといいます。2本のアームで洗濯物を畳ませたいと追加で学習させたところ、あらゆるものが畳めるようになったという動画があるそうです。
なんか洗濯を畳もうとしてる誰かが頑張って不器用ながら畳んでる感じの荒々しいね、畳み方をするんだけど。
なんかこう、ぐちゃぐちゃってなっちゃったら、もう一回パッって開いてパッパッパッパッってやって。
しぶちょーさんはこの3分ほどの動画を「ドジなロボット」のようで可愛いと評し、明らかに考えながらやっている感じがするので、自律的にロボットが動くとはどういうことかがよくわかると勧めています。
一方で、強化学習を「これがフィジカルAIです」と取り上げる紹介には、昔からあるのにリブランディングされていると少しモヤっとするといいます。ただ、実際のフィジカルAIの技術でもロボットを動かす部分には強化学習が使われており、学ぶ姿勢自体は前向きなのでギリギリセーフだ、というのがしぶちょーさんの個人的な見解です。
しぶちょーさんは、肝は基盤モデルにあると認識したうえで教材に触れるのがよいと勧め、強化学習こそがフィジカルAIだと勘違いすると、またギャップが生まれると注意しています。
技術的収斂というポジティブな巻き込み事故
ここまで批判的な話が続きましたが、しぶちょーさんは、製造業とAIを掛け合わせることへの期待自体は正しいと話します。その理由として挙げるのが技術的収斂 ── もともと無関係だった複数の技術分野が互いに影響し合い、統合や融合が進んでいく現象です。
しぶちょーさんによれば、機械の中に基盤モデルを入れておくと、LLMの分野で見つかった新しい学習方法、たとえば低スペックのPCで動かせるモデルの作り方などを、そのままロボットにも転用できます。
基盤モデルを機械に組み込む
フィジカルAI的に少しでも動くようにする
LLM分野で技術が進化する
低コスト・低スペックで動くモデルの作り方などが見つかる
ロボットにも反映される
一見関係ない分野の進化を、そのまま機械の中に取り込める
かねりんさんがこれを「巻き込み事故だね」と表現すると、しぶちょーさんは「ポジティブな巻き込み事故」と言いかけて言い直しを求めます。しぶちょーさんが出した別のたとえは、特典でもらったしょぼいアイテムの値段が急に上がったり、1株だけ持っていた会社の株が高騰したりするようなイメージでした。
もう機械ってさ、もういにしえから全然進化してないから、技術的にはほとんどね。歯車なんて別に昔から歯車じゃん。
しぶちょーさんは、今まさに発展している技術を取り込むという意味でも、フィジカルAIを機械の中に組み込んでいくことはポジティブな意味で重要だとまとめています。
社会実装は5〜6年先、フィジカルAIはマーケティング用語
一方でしぶちょーさんは、実際の技術レベルと現実にはギャップがあり、社会実装はまだ先の話だと話します。ヒューマノイドが実際に社会に出てくるのは5〜6年後くらいになるだろう、というのが感覚的な見立てです。
しぶちょーさんは、期待感だけが高まると一気に落ちると警告します。かねりんさんはこれをハイプサイクル ── 新技術への期待が過熱して頂点に達し、その後に幻滅期を経て、実用化へ向かうという流れを示した考え方だと応じています。
しぶちょーさんによれば、「LLMがこれだけ進化したから、ロボットを制御して人間みたいに動く」というストーリーはわかりやすすぎますが、まったく間違ったストーリーです。
しぶちょーさんは、しばらくは言葉としてのフィジカルAIが一人歩きすると予想しています。バブルがはじけても見えにくく、番組の規模が大きくならないと「ほら見たことか」とも言いにくい、と冗談交じりに話しています。
驚き屋ではなく「驚き屋という現象」を憎む
番組としての呼びかけとして、しぶちょーさんとかねりんさんは、フィジカルAIで世界が変わる、人間の仕事がなくなると騒ぐ投稿を見かけたら、番組のリンクを貼ったり、ハッシュタグ「#おちつきAI」やかねりんさんのメンションを付けてほしいと話します。
しぶちょーさんは、フィジカルAIは製造業にとって薬にも毒にもなり得ると危機感を持っていると述べます。そのうえで、かねりんさんは個人攻撃をしてはいけないと釘を刺します。
皆さんね、人を攻撃してはいけません。罪を憎んで人を憎まずです。
驚き屋という現象を憎みます、僕たちは。
しぶちょーさんもこれに賛同し、驚くべきところは驚いてよく、正しく驚けることが大事だと締めくくっています。
参考文献と、ロボットがドアを開ける難しさ
しぶちょーさんは、技術的な話の元になった本として『基盤モデルとロボットの融合 マルチモーダルAIでロボットはどう変わるのか』を紹介します。数式はあまり出てこないものの、AIの理解がないと難しい部分があり、わかるところだけ読んで大枠をつかむ使い方を勧めています。
もう1冊は、2016年頃の本だという『柔らかヒューマノイド―ロボットが知能の謎を解き明かす』です。ロボットを人間らしく動かすにはどうすればよいかが解説されており、一般の人でもギリギリ読めるといいます。
しぶちょーさんが面白かったと挙げたのは、ロボットがドアを開けることの難しさについての記述でした。人間には簡単でも、ロボットがドアを開けるのはとても難しく、その理由が書かれているそうです。
最後にしぶちょーさんは、冒頭で紹介したようなはしゃいだ投稿はしないようにとかねりんさんに釘を刺し、かねりんさんは投稿したことも忘れていたと笑って応じています。
まとめ
この回では、2026年のトレンドワードになりそうなフィジカルAIについて、しぶちょーさんが製造業と機械の専門家の立場から切り分けを示しました。フィジカルAIは今はマーケティング用語に近い言葉であり、技術的な核は、未知のタスクに対応できる自律性と、それを支えるロボット基盤モデルにあると整理されています。
- フィジカルAIには明確な定義がなく、従来の製品や技術のリブランディングにも使われやすい
- 人間のように動くヒューマノイドの進化と生成AIの進化は、技術的には別の文脈の話
- 本来のフィジカルAIは、ロボット基盤モデルで認識と行動をこなし、教えていないタスクにも対応することを目指す
- 物理的なものを動かすことにはリスクと倫理的な配慮が伴い、ウェブアプリのような速さでは作れない
- 基盤モデルを機械に組み込めば技術的収斂の恩恵を受けられるが、社会実装は5〜6年先と見られている





