DeepSeekは本当に一発屋だったのか?
今回のテーマは「DeepSeekをディープに知ろう」です。かねりんさんは、中国のAI企業DeepSeekについて「今更DeepSeekかよ」という感覚を持っていたと打ち明けます。
しぶちょーさんは、DeepSeekを「中国が適当に出してきて、一瞬話題になって消えたもの」と捉えるのは違うと強調します。
しぶちょーさんによれば、DeepSeekはいまも重要な役割を担っていて、同時に怪しげな部分もあります。そこで今回は技術の話よりも、DeepSeekがどういう団体で、どう運営され、何が強みなのかを語ると宣言しています。
話の入り口は、2025年1月の「DeepSeekショック」です。かねりんさんが「安いのがショックだったのか」と尋ねると、しぶちょーさんは、これは株価の話だと説明します。
DeepSeekが「DeepSeek R1」というモデルを発表したことで、NVIDIAの株価が17%ほど下がり、時価総額で約91兆円が失われたといいます。
かねりんさんが「安いGPUでもいけるようになったから、GPUいらないじゃんという話になったのか」と確認すると、しぶちょーさんはざっくり言えばそうだと答えます。性能の高いGPUでなくても、よいモデルが作れてしまったことが株価に響いたという整理です。
DeepSeekは結構そのGPUを(性能の高いものじゃなくても)、結構いいモデル作れちゃったよっていうことで。
「スケール則」が生んだ札束の殴り合い
DeepSeekショックの背景を理解するために、しぶちょーさんはAIのスケール則 ── データ量・パラメータ数・計算量を増やすほど、AIモデルの性能がどう伸びるかを示す経験則。英語ではScaling Lawsと呼ばれ、GPTなどの巨大モデル設計の土台になってきましたという経験則を紹介します。聞いたことがないかねりんさんは「メートル法ぐらい」と返しています。
しぶちょーさんの説明では、スケール則とはAIの性能がモデルのサイズ、学習データの量、計算量の3つで決まるという考え方です。単純に言えば、モデルを大きくし、データを増やし、計算量を増やせば性能が上がるというルールです。
でっかい脳みそ作って、バンバンデータ用意して、ガンガン学習させたら、それをやっただけ比例的に性能が上がっていくよって。
このルールが意味するのは、投資できる者が勝つ世界だとしぶちょーさんは言います。
札束での殴り合いが起こるのよ。
経済的に潤ったビッグテックがAIを育て、世界を独占していく構図が見えていたというわけです。計算量を担うのはGPUなので、GPUの性能がAIを司るといっても過言ではなく、NVIDIAが絶対的な地位を持っていたと説明されています。
アメ車からハイブリッド車へ?効率化という別ルート
スケール則に対して「違うアプローチもある」と示したのがDeepSeekだ、としぶちょーさんは言います。かねりんさんが「スケール則が変わったのか」と聞くと、スケール則そのものは今もあるという答えでした。
DeepSeekが示したのは、リソースを投下するだけでなく、アルゴリズムの効率化やモデルを小さくする方向でも性能を上げられるという点です。かねりんさんは「他にもやれることあるぜ」と言い換えています。
しぶちょーさんは、Claudeを開発するAnthropicのCEOもDeepSeekに言及していたと紹介します。アルゴリズムと効率化が計算資源の増強と同じくらい重要であることを示しており、自分たちへの警鐘だという趣旨の発言だったといいます。
この話を受けて、かねりんさんは古いエンジンでガソリンを垂れ流して走るところから、エンジンを効率化しろという話かと例えます。しぶちょーさんは「めちゃくちゃいい例え」と乗り、さらに具体化しました。
6000cc、7000ccみたいな。馬力こそ全てみたいな。ドラッグレーサーみたいな作ってたけど、なんかちょっとハイブリッドにしようぜみたいな。
モデルを大きくし、データと計算量を増やす。大排気量のドラッグレーサーのように、投資と馬力で性能を上げる
アルゴリズムの工夫とモデルの小型化で性能を上げる。ハイブリッド車のように「燃費」を重視する
自動車業界のエコ化のようなゲームチェンジを起こしたことが、DeepSeekの一番のインパクトだとしぶちょーさんはまとめています。
DeepSeekの親会社は投資ファンド
ここまでの「小さく効率的に作った」という話は、実は意外と知られているとしぶちょーさんは言います。そのうえで、DeepSeekは会社の形がかなり特殊だと話を進めます。
DeepSeekは、中国のシリコンバレーと呼ばれ、スタートアップが集まる深圳 ── 中国広東省の都市。香港に隣接し、1980年代に経済特区に指定されて急成長しました。電子機器メーカーやスタートアップが集まる拠点として知られますに研究機関を置いています。社長はリャン・ウェンウォン(梁文鋒)さんで、1985年生まれと若い人物です。
しぶちょーさんによると、この社長はもともとハイフライヤー(High-Flyer)という会社を運営していました。AIと数理モデルで株式などの売買を判断するクオンツトレード ── 数学や統計のモデルを使って売買判断を行う投資手法。人間の裁量ではなく、データ分析やアルゴリズムに基づいて取引しますの投資ファンドです。
かねりんさんが「ボロ儲けだね」と言うと、しぶちょーさんも「多分相当儲けてると思う」と応じます。
DeepSeekは、そのハイフライヤーのAI研究部隊だけを独立させた会社です。親会社である投資ファンドも今もしっかり残っていると説明されています。
ハイフライヤー
AIで投資判断を行う投資ファンドとして運営
AI研究部隊
ファンドの中でAIの研究を続けていた部署
DeepSeek
研究部隊を独立させた会社。親会社は投資ファンドのまま
脳内に小さな脳?DeepSeekの省エネ技術
今回は技術の詳細には踏み込まないとしたうえで、しぶちょーさんはDeepSeekの核となる技術を紹介します。計算効率やメモリの使用量を最適化する独自のアーキテクチャで、少ないリソースで性能のよいモデルを作る技術です。
かねりんさんの「電気代の味方だね」という言葉に、しぶちょーさんは電気代だけでなく、GPUの性能が低くても性能の高いものを出せる点を付け加えています。
1つ目の単語はマルチヘッドレイヤーアテンション ── 番組内でMLAと呼ばれた、DeepSeekによるアテンション機構の改良版。アテンションは文章中の語同士の関係を捉える仕組みで、Transformerの中核技術ですです。しぶちょーさんによれば、今の生成AIブームの火付け役となったトランスフォーマー ── 2017年に発表されたAIモデルの構造。アテンションで長い文章の関係性を捉えられ、ChatGPTなど現在の大規模言語モデルの基盤になっていますを独自に改良し、表現力を高めたものです。
2つ目は混合エキスパートアーキテクチャ ── 英語ではMixture of Experts(MoE)。複数の専門家ネットワークを用意し、入力に応じて一部だけを動かすことで、計算量を抑えつつ大規模モデル並みの性能を狙う構造ですです。しぶちょーさんは、これを「脳みその中に小さい脳みそがいっぱい入っている」と表現します。
(推論の時に)全部を使えてるわけじゃないのよね。休んでるとこある。
休んでいる部分がもったいないので、機能ごとに小さな脳へ振り分け、タスクに応じて使う脳を切り替えます。そうすることで推論コストを下げたというのが、しぶちょーさんの説明です。
なぜ効率化するしかなかったのか?アメリカのGPU規制
DeepSeekが小さく性能よく作ることにこだわったのには、そうせざるを得なかった背景がありました。かねりんさんは即座に「アメリカの中国への嫌がらせでしょ」と答えます。
しぶちょーさんによると、アメリカはGPUを中国に送ることを制限し、中国向けの劣化版を作らせていました。詳しい資料はあまり見つからなかったものの、性能はアメリカで使われているものの7割から半分ほどしか出なかったと言われているそうです。
NVIDIAはアメリカに命じられて、中国向けを劣化版にしていたとしぶちょーさんは説明します。かねりんさんはNVIDIAを台湾の会社だと思っていたと言い、調べてカリフォルニア州に本社があり、CEOのジェンスン・ファンさんが台湾系アメリカ人だと確かめていました。
GPUの輸出規制
中国は性能を落としたGPUしか手に入らなかった
小さいモデルへの集中
リソースがないため、小さなモデルでやるしかなかった
効率化の技術
少ないリソースで高性能を出す工夫が進んだ
ゲームチェンジ
小さくて性能のよいモデルが生まれた
かねりんさんは「制限される時に革新が起きるってやつだよね」とまとめ、しぶちょーさんもうなずいています。
データはすべて中国当局の手に?政府機関で禁止される理由
しぶちょーさんは、DeepSeekには問題も多く、日本で積極的に使いましょうとは言われていないと話を転じます。かねりんさんは「中国というだけでダメ」という空気を指摘しますが、しぶちょーさんはダメな理由は明確だと言います。
しぶちょーさんの説明では、DeepSeekのAPIなどで入力したデータは中国国内のサーバーに入り、中国の法律に基づいて中国当局がアクセスできます。重要な機密情報を入れれば、そのまま渡ってしまうという懸念です。
そのため、アメリカに続いてイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、EU圏、台湾、日本、韓国の政府機関でDeepSeekの使用が禁止されているといいます。ただし、個人で使う分には問題ないと付け加えています。
かねりんさんが「中国の外でやろうとは思わないのか」と尋ねると、しぶちょーさんはDeepSeekは中国にがっつり根ざしていると答えます。社長は2025年3月に習近平国家主席と会談し、中国の政府機関でDeepSeekを積極的に導入する方針が決まったと紹介されています。
爆弾の作り方まで答える?ジェイルブレイクへの弱さ
データの問題以外にも、DeepSeekにはセキュリティ面の指摘があります。しぶちょーさんは、アメリカのネガティブキャンペーンではないかと思う部分もあるとしつつ、2025年9月にアメリカの調査機関が出した報告を紹介します。
報告の内容は、米国のモデルと比べて12倍脆弱だというものです。差別的・暴力的な発言など危険なコンテンツを生成する可能性が、米国のモデルよりはるかに高いとされています。
ここで問題になるのがジェイルブレイク ── AIに設けられたルールや制限を回避させる攻撃の総称。禁止された内容を遠回しに聞くなど、抜け道を突いてAIに本来答えない内容を出させますです。しぶちょーさんは、以前話したプロンプトインジェクション ── 外部から仕込んだ指示をAIに紛れ込ませ、本来の動作を上書きする攻撃手法。チャットボットやRAGのセキュリティ上の大きな課題ですとは少し違うと説明します。
爆弾の作り方など、言ってはいけないと制限されていることを言わせる攻撃
AIの裏にあるデータなどを引き抜こうとして入力する攻撃
しぶちょーさんも、両者は混同して使われることが多いと認めています。普通に聞いても答えない内容を、調査機関はおばあちゃんプロンプトや物語の中で言わせるといったテンプレート的な手法で引き出したようだと話しています。
原因について、しぶちょーさんは「正直わからない」としつつ、脆弱性への対策が十分でない可能性や、モデルの作り込みの粗さ、リソースの小ささが影響している可能性を挙げます。OpenAIは人の評価を使った強化学習でこうした穴を塞いできたという対比も示されました。
答えが一瞬で消える?リアルタイム検閲の実態
もう1つ中国特有の問題として、しぶちょーさんは検閲を挙げます。中国が出したくない、国としての過去の事件などセンシティブなトピックを質問すると、回答が一瞬表示されてから消えるといいます。
最初生成しちゃうんだけど、そういうのが生成されたら消せっていう風に、こう、多分上から何かしらのプログラムが走って。
消えた回答は「それはわかりません」のようなそっけないメッセージに置き換えられます。しぶちょーさんによれば、このリアルタイム検閲はモデルが中国政府の統制下にあることを示すものとして報告されています。
DeepSeekはChatGPTのようにチャットで使え、アカウントを作れば利用できます。しぶちょーさんも、そうしたトピックを入れても確かに回答が出てこないと話しています。
儲けていないのに回る?親会社頼みのビジネスモデル
データ流出、脆弱性、検閲と問題が並ぶなか、かねりんさんは「そんな状態で誰が使うのか」と疑問を投げます。しぶちょーさんは、ここがDeepSeekのうまいところだと答えます。
しぶちょーさんによると、DeepSeekはほとんどお金を稼いでいません。運営資金は、親会社ハイフライヤーの株式投資で得た利益だけでまかなわれているといいます。
持続可能な運営ではないという指摘はあるものの、外部の投資家がいないため、長期的な視点で自由に開発できる点が強みだとしぶちょーさんは見ています。
対照的な例として話題になったのがOpenAIです。赤字が続き、買収の話も報じられていたことに触れつつ、しぶちょーさんはGPUや電力にかかる費用の大きさを推測します。
二人はユーザーがAIに「ありがとう」と打つたびに電力が使われる話で盛り上がり、かねりんさんは「ありがとう原発」と名付けて笑いを誘っていました。DeepSeekはモデルが小さく、GPUの性能も高くないため、大規模にやる企業よりコストを下げられているという整理です。
全部公開して1円にもならない?オープンソース戦略
しぶちょーさんは、DeepSeekの一番の強みはオープンソース戦略だと言います。モデルの重み、アーキテクチャ、学習方法、コードがすべて公開され、商用利用もできるといいます。
公開されたモデルはGitHubからダウンロードし、ローカルのPCで動かすこともできます。ローカルで動かせば、中国の検閲やデータの問題とは関係がなくなるとしぶちょーさんは説明します。
ただし、ローカルで動かすにはある程度のGPUが必要です。企業がサーバーを用意してサービスにするにはリソースがかかるため、APIで使えたほうが楽という事情もあります。そのAPIには検閲が入り、情報も取られてしまいます。
かねりんさんが「自分が勝手に使って商用利用できるのか」と聞くと、しぶちょーさんは「カネリンシーク」にしてもよいと冗談まじりに答えます。それでもDeepSeekには1円も入らないという点が、この戦略の不思議なところです。
しぶちょーさんは、OpenAIこそ本来この形を目指していたはずで、今では「DeepSeekこそOpenAIだ」という感じすらすると話しています。
200人の少数精鋭が進化を加速できる理由
収益にならないのになぜ公開するのか。しぶちょーさんの答えは、DeepSeekが大きなエコシステムを作ろうとしているからというものです。
オープンソースにすると、他の人がバグを取り、派生モデルを作り、どんどんブラッシュアップしてくれます。中国国内の技術者の多くがDeepSeekを使っているため、中国のエンジニアのリソースでDeepSeekを進化させられるという構図です。
かねりんさんは社員数を「5人ぐらい」と予想しますが、しぶちょーさんによれば2025年1月時点で200人ほどです。他社と比べると、その少なさがわかります。
| 企業 | 人数 | 補足 |
|---|---|---|
| DeepSeek | 約200人 | 2025年1月時点とされる数字 |
| OpenAI | 約7400人 | 参考として紹介 |
| Anthropic | 約2300人 | 参考として紹介 |
少ない人数でも、政府と連携しながら公開したモデルを中国国内のベンチャー企業などに使わせ、その成果をフィードバックとして取り込むことで、全体の進化を取り込める構造になっているとしぶちょーさんは説明します。
日本の工作機械がアメリカに勝った構造とは
かねりんさんが「その戦略は実際に当たっているのか」と尋ねると、しぶちょーさんは歴史を見ても正解だと答え、自身の専門である工作機械の業界を例に出します。
工作機械とは、ネジなど金属の部品を加工して作る機械です。もともと日本の工作機械は非常に弱く、アメリカこそが工作機械大国でした。今では逆に、日本やドイツが世界をけん引しているといいます。
転機は、職人がハンドルを回して削る時代から、モーターを自動で動かすNC ── 数値制御(Numerical Control)の略。数値データで工作機械のモーターを動かし、自動で金属を加工する仕組みですの時代への移行でした。技術が乏しかった日本では、1社が制御装置を作り、多くの工作機械メーカーに供給しました。
各メーカーからの不具合報告がその1社に集まり、日本全体でNCの機械が一気に良くなったといいます。その会社がファナックで、厳密には2〜3社あったものの、実質的に集中していたと補足されています。
技術がなく、1社が制御装置を作って各メーカーへ供給。フィードバックが集まり急速に進化した
技術が豊富で、各社が自前で制御装置を開発。みんなが競合でクローズなため洗練が遅れた
自分のとこで作るのが正義だと思ってたから。そこを他の人に任せられない。
技術がなさすぎて自前をあきらめたことが、かえって一気の飛躍につながった。しぶちょーさんはこれをリープフロッグ ── カエル跳びを意味する言葉で、途中の技術段階を飛ばして一気に発展する現象。新興国で固定電話を経ずに携帯電話が普及した例がよく挙げられますと呼ばれる現象だと説明します。
クレジットカードを飛ばして電子決済へ
リープフロッグのわかりやすい例として、しぶちょーさんは中国の電子マネーを挙げます。中国ではほぼ電子マネーで、現金を使わないほど日本より進んでいるといいます。
しぶちょーさんによれば、その理由は中国で銀行の仕組みが遅れていたことです。2000年代初頭でもクレジットカードがほとんど普及していなかったところに電子決済が来たため、一気に広まりました。
銀行の遅れ
銀行という仕組みの発展が遅れていた
クレカの不在
2000年代初頭でもクレジット決済がほぼなかった
電子決済の登場
比べる既存の仕組みがなく、一気に普及した
一方の日本はクレジットカードの文化ができあがっていたため、電子マネーへの移行に障壁が多かったと説明されています。しぶちょーさんは、日本の電子決済の利用率は半分に届いていないのではと推測しています。
かねりんさんは、暗号資産でも同じことを感じたと話します。エルサルバドルのように自国通貨が信用できない国のほうがビットコインを法定通貨にする動きを進め、日本では無理だろうと羨ましく見ていたそうです。
しぶちょーさんは、進んでいたはずの側が一気に追い抜かれることは日本でもよくあると言います。そして、工作機械で起きた「1か所に集中させて全体を高める」構造と同じことを、今DeepSeekがAIの分野で行っていると結びつけます。
DeepSeekは中国の国家戦略なのか?
しぶちょーさんは、DeepSeekのやり方を中国全体で1つのモデルを作っていくようなものだと表現します。かねりんさんが実際の進化の度合いを尋ねると、日本にいるとわからない、最近は静かなのも確かだと答えています。
それでも、しぶちょーさんは最近発表された「DeepSeek OCR」を例に挙げます。文字認識を使って言語処理のトークン数を減らす技術で、やはり効率化の方向を追求しています。
かねりんさんが「中国というだけで印象が悪いけど、エコでいいやつに見えてきた」と言うと、しぶちょーさんは国家戦略として札束で殴り合わないやり方をしているからこそ怖いと返します。
だから結構ね、あの眠れる、まあ眠ってないけど、全然動いてるけど、眠れる獅子みたいな感じ。
OpenAIやAnthropicが戦略をまねしないのかという問いに、しぶちょーさんは「まねしない」と答えます。各社CEOのコメントは「やるやん」という上から目線だったものの、焦りの裏返しではという解説もあると紹介しています。
リープフロッグは来る?中国を「安かろう悪かろう」と見る危うさ
かねりんさんに「リープフロッグは来るのか」と聞かれ、しぶちょーさんは来ると思うと答えます。製造業ではすでに同じことが次々に起きているからです。
ロボット、ドローン、ヒューマノイドロボットなど、中国の製品は最近性能が高いとしぶちょーさんは言います。深圳に企業を集結させてエコシステムを作り、国がお金を入れて一気に発展させる動きを多くの技術分野で進めていて、その1つがAIだという見方です。
しぶちょーさんは、中国が製造業で世界をとるためのロードマップ(中国製造2025)を引いてずっと取り組んでいると話します。かねりんさんは「中国が1つの会社みたいだ」とたとえています。
かねりんさん自身も、中国に対して古いイメージを持っていたと認めます。本屋で「中国人のイメージを変えないとやばい」という趣旨の本を見かけつつ、通販サイトの安物ばかりが頭に浮かんでしまうと話します。
しぶちょーさんは、中国は国が広いので一口には言えず、変な人も悪いものもあるが、3Dプリンターやドローンの性能はすごいと応じます。
日本はAI開発でどう戦うべきか?
かねりんさんは、AIについて日本はどうすればいいのか、そしてこの戦略は他の事業にも使えるのではないかと問いかけます。しぶちょーさんは、AIでどうすべきかはわからないとしたうえで、今日の主張をはっきり示します。
しぶちょーさんは「敵を知り己を知れば百戦危うからず」を引き、「どうせ変なものを作っているんでしょ」という認識では相手を知ることができないと話します。中国は明確な敵ではないとも断ったうえでの話です。
アメリカにはOpenAIやGoogleがある一方、日本は国産LLMの開発に取り組んではいるものの、中国ほど1つにフォーカスできていないとしぶちょーさんは見ています。
かねりんさんは高市政権への期待も口にしますが、共産党体制ではない日本で国家が号令をかけるのは難しいという点で二人の意見は一致しました。
技術で勝ってビジネスで負けるって言われ続けてるから、ずっと。
しぶちょーさんは、オープンソース化は囲い込み戦略の逆で、ボランティア的な性格が強いため国の支えなしには成り立ちにくいと指摘します。DeepSeekは親会社の資金と国の後押しがそろった、奇跡的に加速できる体制にあるという整理です。
「ただもんじゃない」DeepSeekの次の衝撃に備える
かねりんさんは、せめてこの番組では衝撃に備えるクッションを用意したいと話し、しぶちょーさんは新しいものが出てきたら解説すると応じます。
なんか来るよって。こいつら(DeepSeek)は結構もうただもんじゃないんだよと。
R1以降、目立った新モデルはまだ出ていないものの、しぶちょーさんは次の大きなものがすぐ来るかもしれないと見ています。二人は冗談まじりに、NVIDIAが下がるなら空売りの準備をするかと話しつつ、空売りは失敗すると怖いとも付け加えていました。
かねりんさんがDeepSeekの株を買えないのかと聞くと、しぶちょーさんは、DeepSeekはハイフライヤーの子会社で株式を発行しておらず、ハイフライヤーも上場していないのではと答えています。
しぶちょーさんが強調したのは、1月の話題として片づけて落ち着いてしまうことの危うさです。
OpenAIのデータを不正利用?「知識蒸留」疑惑
一方で、DeepSeekには「悪いこと」の疑いもあるとしぶちょーさんは言います。OpenAIのAPIから得た入力と応答を、自社モデルの学習に使っていたのではないかという疑惑です。
こうした手法は知識蒸留 ── 大きなモデル(教師)の出力を使って別のモデル(生徒)を学習させ、知識を移す手法。性能を保ちながら軽量化できるため、広く使われていますと呼ばれます。しぶちょーさんによれば、OpenAIの規約ではこうした使い方が明確に禁止されています。
ただし証拠はなく、中国から大量のAPIアクセスがあったとしても、それを学習に使った確証はないといいます。アクセスを制限しようとすると通常の利用まで止まってしまうため、防ぐのも難しいと説明されています。
かねりんさんは「使用料を払っているならいいじゃん」と言いますが、しぶちょーさんはルール上ダメだと返しています。
札束の殴り合いに「創意工夫」で挑む姿
かねりんさんは、中国かアメリカかに関係なく、全体が進むなら楽しみだと話します。しぶちょーさんも、札束で殴り合う戦いとは違う姿勢を評価します。
やっぱその創意工夫でそこ(札束の殴り合い)に切り込んでいく姿はやっぱすごいなと思うよね。
DeepSeekが違うフィールドで強くなるほどゲームチェンジが進むので、そこに注目していきたいとしぶちょーさんは語ります。
日本の国産LLMについては、開発がたくさん分散しているのは良くなく、1つに集中したほうがよいのではという見方が示されました。しぶちょーさんは、国産LLMの状況をまとめた論文をもとに、今後解説したいと話しています。
振り返りでかねりんさんは、中国への見方が変わったうえに、大地震の予知のように確度の高い「次のショックの予告」をもらった気分だと表現しました。
初の公開収録イベントを原宿で開催
番組の最後に、かねりんさんが初の公開収録イベントを告知しました。2025年11月29日土曜日の18時から20時までの2時間、原宿のハラカド3階にあるJ-WAVEの公開収録スタジオで行われます。
ポッドキャストイベント「ジャケギキ」の中の企画で、座席は10席ほどです。通常価格は3000円で、大学生までは半額、小学生以下は無料と案内されています。
スタジオはガラス張りで外を見下ろせるとのことです。参加者が1人だけだと気まずいので10人くらいは来てほしい、と二人は呼びかけていました。
まとめ
DeepSeekは、1月に株価を揺らしただけの一発屋ではなく、GPU規制という制約から効率化の技術を磨き、親会社の資金と国の後押しを背景にオープンソースでエコシステムを広げる存在として語られました。一方で、データの扱い、脆弱性、検閲、知識蒸留の疑惑といったリスクも抱えており、しぶちょーさんは両面を知ったうえで次の衝撃に備えるよう呼びかけています。
- DeepSeekショックは、R1の発表でNVIDIA株が約17%下がり、約91兆円の時価総額が失われた出来事
- スケール則による「札束の殴り合い」に対し、DeepSeekは効率化とモデルの小型化という別ルートを示した
- 中国当局へのデータアクセス、ジェイルブレイクへの弱さ、リアルタイム検閲といったリスクがあり、各国の政府機関で使用が禁止されている
- オープンソース戦略は、日本の工作機械業界のように利用者のフィードバックを1か所に集めて一気に進化する構造だと説明された
- 中国をステレオタイプで軽視せず、「ただもんじゃない」DeepSeekの次の動きに備えることが大切だとされた





