満員の1周年祭は、G検定の予想投票から始まった
おちつきAIラジオの1周年祭は、株式会社ORSOが提供した東京・神田の会場で開かれました。しぶちょーさんは冒頭でORSOへの感謝を伝え、「あんまり広すぎても」と冗談を言うかねりんさんにツッコミを入れながら、会場の雰囲気をほぐしていきます。
この日のテーマは「1年後のAI予想」です。リスナーからのお便りは20個ほど届いており、前半30分を公開収録にあてる進行のため、しぶちょーさんは「単純計算で1つ3分」と時間配分を気にしていました。
あのテーマがありまして、1年後のAI予想というところで、お便りをいただいてるんですけど、結構もらってるんだよね。
後半はオフレコで、かねりんさんがG検定 ── 日本ディープラーニング協会が実施する、AIやディープラーニングの基礎知識を問う検定試験。ビジネスでAIを活用する人向けの内容ですに合格したかどうかも現地で発表される予定でした。そこでしぶちょーさんは、会場に挙手で合否を予想してもらいます。
かねりんさんの合格を予想した人は少なく、過半数が「落ちている」に手を挙げました。合格すれば「AI素人」を卒業することになり番組の趣旨が変わるため、かねりんさん自身も複雑な心境を明かしています。
(ITの知識が)雰囲気なのに嫌になって、僕は発信をやめたんですよ。で、しぶちょーと一緒だったらAIの発信いいかなと思ってやってるんで、本当に自覚素人なんです。
しぶちょーさんの予想も「受かっていない」でした。理由は、自信がない人ほど受かる試験だからだといいます。自信があるかねりんさんは、ダニング・クルーガー効果 ── 能力が低い段階ほど自分を過大評価しやすく、学ぶほど自信が一度下がるという心理現象。自信の推移が山と谷のグラフで説明されることが多いですでいう「山を登りかけている段階」だと冗談めかして話していました。
入場時に流すはずだったBGMが拍手でかき消されていたことも判明し、2人は改めて音を鳴らして「本当はこう登場したかった」と再現します。リアルイベントへの不安を口にしていたかねりんさんも、集まった観客やおそろいのTシャツを着た子どもの姿に喜んでいました。
ローカルAIはどこまで軽くなるのか
1通目は、たまっころさんからのお便りです。1年後のAIについて、ローカルAIの軽量化が大きく進むという、技術的にかなり具体的な予想が寄せられました。
個人的にもローカルAIに期待している部分があるので、今後はモデル自体の性能向上に加えて、量子化や推論技術の進歩による軽量化が大きく進むと思います。例えば、現在は24GB級のVRAMが欲しくなる27B前後のモデルが、8〜12GBのGPUで実用的な速さで動くようになれば当たりとしたいです。
たまっころ さんから
その結果、ローカルAIがより実用的になり、クラウドAIは単純な性能競争から、価格、速度、利用量、エージェント機能などを重視した競争に移っていくと予想します。
たまっころ さんから
お便りに出てくる量子化 ── AIモデルが扱う数値の精度を下げて、必要なメモリや計算量を減らす工夫。性能を大きく落とさずにモデルを軽くする手段として使われますやVRAM ── GPUに載っているメモリのこと。AIモデルを動かすときは、モデルの大きさに見合う容量が必要になりますといった言葉に、かねりんさんは「難しくて何言ってるかよくわかんない」と反応しました。しぶちょーさんは、予想の中身を次のように言い換えます。
結構スペックの低いパソコンでも、それなりにバシバシ推論できるようになってくるよねと。
しぶちょーさんによれば、そうなるとAI企業の競争の軸も変わります。最上位モデルの番号を競い合うのではなく、下位のモデルの性能を上げて軽く、安くする競争になるのではないか、という読みです。
最上位モデルの性能を競い合う単純な性能競争
下位モデルを軽く安くし、価格・速度・利用量・エージェント機能で競う
かねりんさんも「最近そっちの流行り」と同意します。しぶちょーさんは、Fableの新版を出すかどうかの話や、Gemini 4が一般公開されないらしいという話題にも触れ、「来週の速報回のネタを言ってしまっている」と苦笑していました。
上位モデルの行方は読みにくいものの、ローカルAIが広がっていくという見立てにはしぶちょーさんも賛成です。かねりんさんの「そっちの方が落ち着く」という言葉に、しぶちょーさんは頭の良さが人間を超えて測れなくなってきたことを挙げて応じました。
もう人間の性能を超えてるから。頭の良さが測れないよね、もうね。
会場の壁には、1年分のエピソードとアートワークの一覧が貼られていました。しぶちょーさんは、これをたどるとAIの進化がおおよそわかる年表にもなっていると紹介し、1年前に話題だったナノバナナを指して「バナナがもう腐ってる」と振り返ります。
おちつきAIラジオがフランチャイズ化する未来?
たまっころさんのお便りには、番組そのものの1年後の予想も書かれていました。2人が使うツールが洗練され、裏方のスタッフが加わり、週5配信になっているという予想です。
お2人が使用するツールが洗練化、裏方さんが参加され、週5配信になっている。
たまっころ さんから
かねりんさんは「俺の代わりに裏方が入る」と受け取りましたが、しぶちょーさんの解釈は違いました。しぶちょーさんは言葉がなかなか出てこず、かねりんさんが「フランチャイズ」と言い当てるまで少し時間がかかります。
おちつきAIの流れを踏襲した、同じフォーマットでAIを語ってる違う番組みたいな。違うパーソナリティがいてみたいなやつだったら、どんどん増えていって。
しぶちょーさんは、コンビニの前に別のコンビニがあるように、同じ時間に2本上がる状態も夢ではないと話します。一方で、しぶちょーさん本人はすでに週13本を配信しており、最近は3Dプリンターのポッドキャストも始まったといいます。
その調子でやられると、来年にはもう、うちが週1になってとかじゃない?
しぶちょーさんは「尖らせていく」可能性に触れつつ、短くして密度を高める方向はありうると話しました。番組の今後については、グッズの全部入りパックに入れたシークレットポッドキャストでも語られています。10分ほどのお礼の音源のつもりが2時間になり、2年目の打ち合わせのような内容になったそうです。
驚き屋に自動でツッコむAIは「絶対に起きない」のか
たまっころさんのお便りの最後は、「絶対に起きないこと」の予想でした。Xで話題をあおるような投稿に、AIが自動でツッコミを入れる世界は来ないだろう、という内容です。
GrokがXの投稿に自動ツッコミを入れる世界。驚き屋さん系の投稿は全て自動返信で「いいえ、そんなことありません。正しくは」というツッコミが入る世界。
たまっころ さんから
しぶちょーさんは、これはもう実現に近いと話します。最近出たJebという投稿を仕分ける仕組みを使い、スクロールすると投稿ごとに「驚き屋」「驚き屋じゃない」と判定が付くものを作っている人がいたそうです。
バーってスクロールしてさ、「驚き屋」、「驚き屋じゃない」、「驚き屋」みたいな。そういうのを作ってる人がいてさ。なんかもうできるんだと思って。
かねりんさんは「俺たちいらないね」と返し、番組で以前、驚き屋かどうかをお茶マークとコーヒーマークで手動で付けていた企画を思い出します。参加者が少なくすぐにやめた企画でしたが、かねりんさんだけは有名経営者の投稿にしぶちょーさんの名前を入れて解説を求め、しぶちょーさんを困らせていたそうです。
炎上を避けたいしぶちょーさんに、かねりんさんは「サングラス姿の絵面がすでに問題」と指摘します。フラッシュを使うとサングラスが反射して透けないため、2人で撮ったチェキが怖く写るという話から、会場で販売しているチェキ撮影券の告知につながりました。
GPT-10とAGIの時代に、人間2人で話す意味は?
時間が押してきたため、ここからはお便り1人につき1つの予想を読む進行に切り替わります。ウランさんから届いたのは、GPT-10の登場でAGIが来たと話題になる未来です。
ついに待望のGPT-10登場。AGIが来たとXで話題沸騰。サム・アルトマンは「我々はシンギュラリティのコアに触れつつある」と発言。
ウラン さんから
AGI ── 特定の作業に限らず、人間のように幅広い仕事をこなせる汎用人工知能のこと。実現の定義や時期については議論が分かれていますが来たと言いながら「まだ触れつつある」という言い回しに、2人は「今と何も変わってない」と笑います。しぶちょーさんは、モデル名にギリシャ神話や星座のような名前が付いていく未来も想像していました。
話はそこから、番組の未来へ移ります。かねりんさんが「俺たち喋ってるかな」と疑問を口にすると、しぶちょーさんはAIのクローン同士を対談させる回はありうると答えました。
お互いのAIエージェントみたいなやつで、クローンを作って喋らせようっていうのは、まあ今もやろうと思えばできるでしょ。
かねりんさんは、AIで話せるならポッドキャストをやらなくなると言い、そうした時代は数十年来ないという予想でポッドキャストを続けていると明かします。しぶちょーさんは、技術的に可能かどうかと、面白いかどうかは別の話だと答えました。
しぶちょーさんがそう考える理由は、対談の聴かれ方にあります。自分でも一人喋りと対談の両方をしているしぶちょーさんは、対談はリスナーではなく相手に向けて話していて、リスナーはそれを横で聞いているのだと説明しました。
お互いの感情の動きみたいなものに共感したりとか、心が動くのを見たいみたいな需要が、やっぱあるんだって。
リスナーに向けて話す形式で、AIが担うことも十分ありうる
相手に向けて話し、リスナーは横で聞く。感情の動きや関係値への共感が求められる
かねりんさんは「それは聞いた話でしょ」とツッコミを入れ、しぶちょーさんは泣かないし緊張もしないと突きます。しぶちょーさんは、緊張していないのに「緊張するね」と言えば嘘になるから言わないだけで、かねりんさんへのリスペクトはあると返しました。
かねりんさんは、AIに勝てる要素として恋愛のような関係性を挙げます。しぶちょーさんはそれを「つまりは関係値でしょ」と受け止め、自分の話も抽象的に言えば関係値や心の動きのことだと整理しました。
しぶちょーさん自身の心については、動いていないのではなく、武道でいう不動心 ── どんな状況でも動揺しない、落ち着いた心のあり方を指す言葉。武道や禅の文脈で理想の心の状態として語られますのように動かされないだけだと説明します。そのうえで、熱意はあり、ネガティブな感情はあまりないと話していました。
フィジカルAIをコミュニティで組み立てる構想
残り時間がわずかになり、最後に読まれたのは飯村さんのお便りです。番組の1年後として、ロボットのパーツを少しずつ届ける新コーナーの予想が寄せられました。
新コーナー「おちつきフィジカルAI」が始まる。コミュニティメンバーには特典として、しぶちょー特製の3Dデータが毎週届き、3Dプリントするとロボットパーツに。ディアゴスティーニばりに1年かけてコツコツ組み立て、3周年ではみんなでロボットを持ち寄ってバトル、なんて展開になったら最高です。
飯村 さんから
フィジカルAI ── ロボットのように、現実の世界で体を動かして作業するAIのこと。センサーで周囲を認識し、物理的に動くことが特徴ですと3Dプリンターを組み合わせた案に、かねりんさんは「しぶちょーっぽい」と反応します。しぶちょーさんも、あまり動かせていないコミュニティの使い方としてありだと評価しました。
コミュニティをうまく活用できていないことに、かねりんさんは申し訳なさを感じ、閉じることも考えていたといいます。しぶちょーさんは、物理的なロボットに限らず、ローカルLLMの活用やスマホのアプリ開発でも、みんなで作るやり方はできると提案しました。
そのタスクを分散して、コミュニティで「あなたここ構築してください」みたいな感じで開発できれば、結構一番win-winじゃない?って思った。
かねりんさんはこれを、レゴのように部品をつなげるcomposability ── 部品や機能を組み合わせて、より大きな仕組みを作れる性質のこと。ソフトウェアやWeb3の分野でよく使われる言葉ですのことだと言い換えます。しぶちょーさんも、モジュールごとに組み合わせていく形がうまくできれば、コミュニティも使っていけると応じました。
分ける
作りたいものをモジュールごとのタスクに分ける
任せる
コミュニティのメンバーに「ここを構築してください」と割り振る
組み立てる
できた部品をつなげ、みんなで1つのものに仕上げる
この話を受けて、かねりんさんは「じゃあもうちょっと(コミュニティを)残すか」と決めます。しぶちょーさんは会場に集まったメンバーとのつながりにも触れ、30分ちょうどで公開収録の前編を締めくくりました。
まとめ
1周年祭の前編では、リスナーのまじめな技術予想と冗談まじりの未来予想をきっかけに、AIの進化だけでなく、人間が話す意味や番組とコミュニティのこれからまで話が広がりました。
- たまっころさんは、量子化などでローカルAIが軽くなり、クラウドAIの競争が価格や速度などに移ると予想した
- 驚き屋の投稿をAIで判定する仕組みは、すでに作っている人がいるとしぶちょーさんは紹介した
- しぶちょーさんは、AI同士の対談は技術的に可能でも、相手に向けて話し心が動く対談の面白さは別物だと考えている
- 飯村さんのフィジカルAI案をきっかけに、コミュニティでモジュールを分担して開発する構想が生まれた






