手持ち資金を1万倍にする挑戦とは
この回のテーマは「知らない土地に行って手持ち資金を1万倍にする話」です。怪しい儲け話ではなく、ディスカバリーチャンネルのドキュメンタリー『覆面ビリオネア』の紹介だと伊東さんは切り出します。
この番組は、巨万の富を築いた起業家が主人公です。自分の素性を隠し、見知らぬ土地で100ドルとスマホ、トラック1台を元手に、90日間で100万ドルにできるかという挑戦を追った企画だと説明されます。
日本に置き換えると、1万5000円だけを渡された東京の起業家が、縁のない北海道や沖縄に行って、90日後に1.5億円にできるかという話に近いといいます。
一年半ほど前に全話が完結し、2023年には続編も公開されました。ちょうど良い機会として、この回で取り上げることにしたと話されています。
主人公グレンさんの背景
主人公は富豪であり起業家のグレンさんです。「アメリカンドリームは今でも実現できる」ことを証明したいという強い欲求を持つ、かなり熱い人だといいます。
グレンさんは50代の白人男性で、アメリカの不動産金融系の業界で成功を収めています。ただし顔は一般に知られていないため、素性を隠して企画に出られるという事情もあります。
子供時代は恵まれていたわけではなく、家庭環境や経済状況も悪かったといいます。識字障害もあったなかで、裸一貫で勝ち上がってきた、ガッツのある人物だと紹介されます。
そんなグレンさんが、知り合いが誰もいないペンシルバニア州のエリーという町へ向かい、トラックとスマホとドルだけを握りしめてプロジェクトを始めます。時期も悪く寒そうで、50代には堪える車中泊から始まったと語られます。
商売の鉄則と最初のつまずき
食料などを買う必要があり、手持ち資金はあっという間に減っていきます。それでもグレンさんはくじけず、街を観察して古タイヤやガラクタの転売を始めようとします。
しかし、いかに優秀な起業家でも最初は全然うまくいきません。ここで最初の名言が飛び出します。
買い手を先に見つけるのが商売の鉄則だと。先に思い込みでこういったものがいいんだと作っちゃって、そこから商売を始めるからダメで、「需要がわからないのにみんな逆にやるから失敗するんだ」とグレンさんは言うんですね。
iPhoneのようなイノベーションは別格として、ほとんどの商売はそうだと伊東さんは受け止めます。自分の作ったものを信じたくなるけれど、先に需要がなければ始まらないという基本を、グレンさんは序盤で説いてくれるといいます。
その後グレンさんはたまたまTシャツ屋のバイトに受かり、地元の祭りで酔っ払いを相手にTシャツを売りまくるアイデアを出した辺りから、少しずつビジネスが回り出していきます。
人材の集め方と使い方
グレンさんの特徴は、パートナー人材を集めたり人を使うのがうまい点です。まず人柄重視で採用するというルールをはっきり決めているといいます。
その上で熱く自分の夢を語り、ある意味で洗脳しながら、相手のプライドを刺激してモチベーションを上げます。受動的な人にはストレートに接する場面もあると語られます。
受動的な人には結構ストレートに、「君の仕事はこれなんだから、指示を待っててどうする」みたいなことをグレンさんは言い放ちます。
さらに「君に期待してるから言うんだよ」という、王道のアメとムチのコントロール術も使っていたといいます。自分のできないことを人にやってもらう、外注や発注の能力につながる参考になるシーンが多いと述べられます。
一方で、つながりを作りながらも切るときはバスッと切る合理主義的な姿もあります。日本の文化に染まっている自分には戸惑いもあり、そこも新鮮に感じたと話されています。
ライバルとの付き合いとピボット
ライバル企業との付き合い方も印象的です。紆余曲折を経て、グレンさんは地域貢献も兼ねて地ビールでの起業を目指しますが、地元にはすでに競合企業がありました。
そこでグレンさんは、win-winになるよう簡単に方向転換します。自分で地ビールを作るのをやめ、競合企業に製造を委託して自分のブランドのビールを作ってもらう形にしたのです。
さらに、そのビールを扱うバーベキューレストランを出店する方向へピボットします。この軽さがすごく起業家らしいと伊東さんは見ています。
当初の計画
地域貢献も兼ねて自分で地ビールを作って起業しようとする
直面した壁
地元にすでに競合する地ビール企業があった
方向転換
製造を競合企業に委託し、自分のブランドのビールを作ってもらう
最終形
そのビールを扱うバーベキューレストランを出店する
「誰よりも痛みに耐えろ」というマインドセット
いかに優秀でも前提条件が無茶なため、全編を通してトラブルばかりで、綱渡り的に話が進みます。物語の終盤で飛び出すのが、グレンさんの次の名言です。
これは精神論なので捉え方が難しいものの、何がしかのビジネスのオーナーなら大なり小なり必要なマインドセットかもしれないと伊東さんは受け止めます。
起業したバーベキューレストランが野外フェスに出店した際、嵐が来てしまいます。他の店が撤退していくなかで、グレンさんの店だけは最後までやり続けて売上を追い求めた姿が描かれ、諦めない姿勢の大切さが語られます。
さらに後日談として、グレンさんはがんの既往歴があり、撮影開始早々に再発していたことが明かされます。序盤でどこか具合が悪そうだった理由がここにありました。
それでも番組中は一切そのことに触れず、仕事仲間にもプロジェクト進行中は話しませんでした。プロジェクト終了後のインタビューで初めて語られます。
自分の病気のことを公表しちゃうと、プロジェクトの狙いもぼやけるから黙ってたんだよ、みたいなことを言ってて、腹の決まり方がやっぱりこういう人はすごいなと思いました。
達成できなかった結末と、それでも得たもの
ここからは結末に迫る内容です。結果として、グレンさんは100万ドルを達成できませんでした。最終的に事業を査定した評価額が100万ドルを超えればいいという話になりましたが、それでも届かなかったといいます。
ただし、90日で立ち上げたビジネスとしてはありえないほどの評価額がつきました。さらに、正体を知らずに献身的に支えてくれた仲間たちにも、ある出来事が発生します。その展開が感動的で、ドキュメンタリーとして見る価値があると述べられます。
もう一つ興味深いのは、成功者ゆえのグレンさんの本音です。普段は富豪として社会生活を送るなかで、「みんな俺が金持ちだから一緒にいるのか」という疑問が拭えないといいます。
この番組ではただのおっさんとして、下心のない仲間ができました。それが素晴らしい体験だったと本人が語る点に、社会的に成功した人ならではの感想を感じたと伊東さんは話します。
相手に「金持ちだから僕と友達なの?」なんて聞くわけにもいかない。でもこの番組の中では、ただのおっさんとして下心がない仲間ができてくる。それが素晴らしい体験だったって本人が言うんですよね。
吹き替えも秀逸で、笑ってしまうほどグレンさんの声がぴったりだといいます。義務感でビジネス書を読むよりは、これを楽しみながら全8話を見る方がいいと締めくくられます。
まとめ
『覆面ビリオネア』は、富豪が正体を隠して無一文から起業する過程を追ったドキュメンタリーです。商売の鉄則や人の使い方、諦めない姿勢といったビジネスの原則が、具体的な場面とともに語られる回でした。
- 主人公グレンさんは、100ドルとスマホ、トラック1台を元手に90日で100万ドルを目指した
- 「買い手を先に見つける」「誰よりも痛みに耐えろ」など、実践に基づく名言が随所に出てくる
- 人柄重視の採用やアメとムチのコントロール術など、人の使い方が参考になる
- 競合には製造委託とレストラン出店で対応するなど、身軽なピボットが起業家らしい
- 結果は100万ドル未達だったが、評価額や仲間との関係など、ドキュメンタリーとして見る価値がある





