孫子の兵法「勝兵はまず勝ちて」
今年の春から、チムニータウンが『河口湖 音楽と森の美術館』の運営を預かっていて、いまその事業再生に取り組んでいます。
僕は基本的に運に恵まれているだけの人間で、経営者としては二流です。それでも「この約束を守っておくと、まあまあうまくいくよね」という勝ちのルールがあるんです。
それが、孫子の兵法に出てくる言葉です。
「勝兵はまず勝ちて、しかる後に戦いを求め、敗兵はまず戦いて、しかる後に勝ちを求む」。
勝兵は勝つ兵、敗兵は負ける兵のこと。要するに、勝つやつは勝ちを確定してから勝負に臨むけど、負けるやつは毎回、勝負を始めてからその中で勝ちを取りに行こうとする、という意味です。
勝負の全てはこれだなと思っています。美術館の事業再生も、この考えが基本にあるんです。
美術館にとっての「まず勝ちて」とは何か
では、美術館でいう「まず勝ちて」、つまり勝ちを確定させるとは、一体何を指すのか。
話題のコンテンツを追加することなのか。それとも、SNSでバズらせることなのか。
多分、そのどれでもないんです。
美術館でいうところの「まず勝ちて」は、資金面で死なない体制を作ることだと思います。どれだけ苦戦したとしても、資金面で死ななければ挑戦を続けることはできるので。
なので、チムニータウンが運営に入ってから最初の3ヶ月でやったのは、とにかく資金面の見直しと、美術館の軍資金を逼迫させているオペレーションの見直しでした。
この3ヶ月間で、毎年計上していた数千万円の赤字は全て潰しました。
なので、『河口湖 音楽と森の美術館』が来年潰れる、倒産するということはありえません。ここはもう回避できた訳です。これが「まず勝ちて」ですね。
この間、展示作品のような上物のコンテンツを増やすために美術館のお金を使ったことは、一度もありません。
この3〜4ヶ月、ただの1円も使っていない。何か必要だったら、チムニータウンの持ち出しでやりました。とにかくお金を使わないと決めたんです。
犠牲にしたのは「話題性」
そこで何を犠牲にしなきゃいけなかったかというと、話題性なんです。
僕らのような後乗りの会社、コンサルというより本当に中の人間として入っている立場が犠牲にしなきゃいけないのは、コンサルタントが一番欲しがる話題性ってやつです。
「チムニータウンが運営メンバーに入りました、そしてこんな驚きのコンテンツを作りました」と打ち出したら、それは話題になるし、最初の1ヶ月ぐらいはお客さんも来てくれるんです。
でも、そもそもその話題を作るためのお金は、どこから出ているのか。
それは「経営が傾いています、助けてください」とSOSを出した企業さんが払っているんです。
これで得をするのは、人のお金で刹那的な話題だけを作って、あとは知りませんとその場を立ち去るコンサルタントだけです。彼らは話題になったから、次の仕事につながる。
しかし残された企業からすると、流行りが過ぎてメディアに扱われなくなった後のコンテンツなんて、もう負債でしかない。余計に負債を抱えることになる訳です。
相手を負けさせる人は、3連敗で終わる
他人のお金でアイデアだけ出して、得意げにプレゼンしておけば自分たちのお金は確実に作れる。そういう意味では、そのコンサルタントは「まず勝ちて」ができているのかもしれません。
ただ、ここが大事なところで、組む相手を負けさせる人間は、3連敗したら終わりなんです。「あいつと組んでも勝てないな」と判断されちゃうので。
うまいコンサルタントは、負けていることを隠します。派手にしすぎないんです。
一方で「僕らはこんなことをやりました」と大々的に宣伝する人もいます。刹那的な成果にはつながるから。でも、派手に宣伝すればするほど連敗を隠せなくなるので、どの道、終わりは来るんです。
「期待外れでした」は、ネガティブではない
以前、「チムニータウンが運営に入るという噂を聞いて、去年のミュージカルのようなものを期待して美術館に行ったけど、期待外れでした」という声をいただいたことがあります。
ありがたいお言葉です。そして強がりでも何でもなく、僕らとしては全然ネガティブな話ではないんです。
その間チムニータウンが主に手をつけていたのは財務やオペレーション周りで、展示作品のような、パッと見てわかるビジュアルのところにはまだ着手していなかったので。
チムニータウンが美術館をやります、と大々的にプレスリリースを出していない理由も、美術館の名前を「チムニータウンミュージアム」に改名していない理由も、そこにあります。
僕らが普段手がけているミュージカルや、『マカリメ祭』マカリメ祭のようなイベントを期待して来られると、まだその期待は超えられないんです。
超えられますけどね、そのうち。ものがいいから確実に。2、3年くれたら超えられるけれど、今はそれをやっている時間帯じゃないんです。
いま、チムニータウンのもとには、この美術館のような事業再生の相談がたくさん来ています。そこでは話題になりそうな派手なコンテンツを求められるんですけど、事業再生まで追い込まれているチームにまず必要なのは、話題なんかじゃなくて、収支の見直しとオペレーションの見直しです。
そこから入らせてもらえない限り、僕らは事業を救うことはできません。今日は「勝ってから戦いに臨め」ということについて書いてみました。
9月5日には、経営者様限定で、僕と筋トレをしながら事業の壁打ちをする会を銀座のジムで開催します。15名限定で、詳細は概要欄のリンクにあります。
それでは素敵な一日をお過ごしください。じゃあまたね。
まとめ
勝つやつは勝ちを確定させてから勝負に臨みます。事業再生でいう「まず勝ちて」は、話題づくりではなく、資金面で死なない体制を作ることだと僕は考えています。
- 孫子の兵法「勝兵はまず勝ちて、しかる後に戦いを求む」が勝負の全て
- 美術館では最初の3ヶ月で収支とオペレーションを見直し、毎年の数千万円の赤字を全て潰した
- SOSを出した企業のお金で作る刹那的な話題は、流行りが過ぎれば負債になる
- 相手を負けさせる人は3連敗で「組んでも勝てない」と判断されて終わる





