そもそも裁量労働制とは何なのか
働き方シリーズの第3回は、裁量労働制がテーマです。アシスタントの安田祥子さんは、最近この制度が導入されてきているのではと問いかけます。
しかし吉田さんの答えは意外なものでした。実際に手伝うケースはほとんどないというのです。
裁量労働制は使わずに済むんだったら使わない方がいいし、他の案もあるので、そちらでやっていった方がいいんじゃないですかというのが私の考えです。
では、そもそも裁量労働制とは何なのか。安田さんは、その人ごとの処理能力に合わせた働き方ではないかと理解を示します。
吉田さんによれば、ここで大切なのは「誰にとっての裁量か」という点です。それは経営者ではなく、従業員から見たときの裁量性だといいます。
原則として、経営者が細かく指示し、従業員がそれに従って働くのが労働基準法の前提です。裁量労働制ではその原則は残りつつも、従業員が自分で決められる範囲が広がるのが特徴だと説明されます。
専門業務型と企画業務型、2つの種類
吉田さんが勧めない理由の一つは、そもそも適用できるケースが少ないことにあります。裁量労働制には2つの種類があります。
弁護士や公認会計士など、一定の専門業務に適用できるタイプ
資格の有無は問わず、会社の中心的な組織で企画や分析などの難しい業務を行う場合に適用できるタイプ
専門業務型については、まだ適用しやすい方だと吉田さんは話します。ただし、それだけ専門性が高いのであれば、別の道もあるといいます。
弁護士の先生だったら非常に自立心が強いと思うので、でしたら個人開業していただいて、業務委託契約した方がお互いにとっていいんじゃないですか。
一方の企画業務型は、適用できる要件が厚生労働省のリーフレットなどに細かく載っているものの、線引きに難しさがあると指摘されます。
どこまでが適用できるケースで、どこからが適用できないのかというのが、正直不明確な部分があるんですね。
なぜ労基署に厳しくチェックされるのか
裁量労働制を導入している企業が、規定に則って運用できているかはチェックされるのか。安田さんの問いに、吉田さんはされると答えます。
その背景を、吉田さんは髪の色のたとえで説明します。黒髪の人と茶髪の人がいたら、多くの人が茶髪の人を疑ってしまう、という人間の思考の癖です。
たまたまですけれども、警察のお世話になってる人が茶髪の人が多いというだけの話なんですよね。
同じことが裁量労働制にも言えるといいます。この制度を悪用する人が多いことが、厳しいチェックにつながっているのです。
裁量労働制って悪用する人が多いので、いくら働かせても残業代払わなくていいという勘違いのもとに、不適切な適用をしているケースが結構多いんですよ。
そのため、労働基準監督署の調査では、本当に適用要件が合っているのか、手順がしっかりしているのかが細かく見られます。導入した企業は、常に神経を張り巡らせる必要があるということです。
業務委託や社内ベンチャーという代替案
運用の手間だけでなく、そもそも業務が適用要件に該当していなかった、というケースもあり得ます。そこで吉田さんは、裁量性のある人に向けた別の選択肢を挙げます。
一つは、個人事業主として開業してもらい、適切に業務委託する形です。ただし細かく指示を出すと労基法逃れになるため、注意が必要だと念を押します。
もう一つは、会社が一定額を出資し、社内ベンチャーのような子会社を立ち上げて、その法人の代表を担ってもらう方法です。
本当に前向きに働きたい人は世の中一定数いて、たくさん働ける、自由に働ける、自分で工夫して働けるというのが働きがいに繋がりますから。
これらは労基法逃れではなく、前向きに働きたい人の働きがいを生む工夫だと位置づけられています。
結局、裁量労働制は勧められるのか
話のまとめとして、安田さんは労働者にも経営者にもメリットの多い働き方を選ぶべき、と受け止めます。
吉田さんも同意し、無理に続けてもお互いのためにならないと語ります。まずは業務委託でできないか、大きな会社なら共同出資で子会社を立ち上げられないか、という方向に持っていくといいます。
裁量労働制そのものが悪いわけではありません。それでも、専門家から見た評価ははっきりしています。
まとめ
裁量労働制は、従業員から見た裁量性を広げる制度ですが、適用できるケースが限られ、運用にも神経を使います。吉田さんは、業務委託や社内ベンチャーといった代替案の方が、双方にとって良い場合が多いと語ります。
- 裁量労働制の「裁量」は経営者ではなく従業員から見た裁量性を指す
- 専門業務型と企画業務型があり、いずれも適用範囲の判断が難しい
- 悪用例が多いため、労基署の調査では要件や手順が細かくチェックされる
- 裁量性のある人には、業務委託や社内ベンチャーの代表という選択肢もある
- 制度自体が悪いわけではないが、専門家としては勧めにくい制度である




