11月なのに極暖ヒートテックとももひき?
あずまさんはこの回を、寒さの話から始めます。前週の収録では秋っぽくなってきたと話していたのに、すっかり冬になったといいます。
寒がりのあずまさんは、ヒートテックのいちばん暖かい「極暖」をもう出してしまいました。下はズボンの中にゆったりしたインナーを重ねる、本人いわく「ももひきスタイル」です。
ももひきって自分で言ってダサいなと思ってるんですけど、今適切な言葉がわからないからその言葉で言ってるんですけど。
ももひきのお腹に貼るカイロを貼り、ゆったりしたズボンを履くのが、あずまさんの冬の定番です。その装備を11月の頭から始めてしまったため、本格的に寒くなったら耐えられるのかという不安があると話しています。
文学フリマ東京とはどんな場所か
収録は11月の頭で、その週末の11月8日(日)には、東京ビッグサイトで文学フリマ東京 ── 全国各地で開かれている文学フリマの東京開催。作り手が自ら本を持ち込み、来場者に直接販売する形式のイベントですが開かれます。あずまさんはこのイベントに出展します。
あずまさんによると、文学フリマは公式には「文学作品の展示即売会」と説明されています。小説や詩、短歌、評論のほか、エッセイや日記本なども並び、自分で刷った本を自分の手で売る場所です。
あずまさんが調べたところ、文学フリマの始まりは2002年ごろだそうです。もともとは小さな会場で開かれていたのが、今は東京ビッグサイトで開催され、参加サークル数もとても多いといいます。
あずまさん自身の文学フリマへの参加は、今回で2回目です。申し込みは3回目ですが、1回は忙しくて本を出せずに欠席しました。初出展は去年の5月でした。
同人誌育ちが見た「文フリバブル」
あずまさんは、もともと「同人誌育ち」だといいます。コミケのような同人誌即売会は、オリジナル漫画や既存作品の二次創作を自分たちで作って売る場です。
あずまさんが初めて同人誌即売会に参加したのは、中学2年か3年のときでした。数えてみると約20年前になると気づき、驚いています。
コミケやコミティア ── オリジナル作品だけを扱う同人誌即売会。二次創作が中心のコミケとは方向性が異なりますと比べると、あずまさんは文学フリマを「めちゃめちゃバブル」だと感じています。来場者は年齢も性別もさまざまで、出展側にも子ども連れの人がいたそうです。
本当にイメージする即売会よりも、本当にフリマが近い感じがしましたね。
あずまさんが特に驚いたのは、文学フリマでは閉館まで人がいて賑わっていたことです。同人誌即売会では目当ての本を開場直後に買って帰る人が多く、終盤は人が少なくなるため、あずまさんも1〜2時間早く撤収することが多かったといいます。
あずまさんの体験から見た、2つのイベントの違いは次のように整理できます。
目当てのある人が開場直後に買って帰り、閉館近くは人が少ない。早めに撤収することが多い
年齢・性別を問わずいろいろな人が来場し、閉館まで賑わう。いろいろな人が本を手に取ってくれる
中学生で80部、1冊も売れなかった
あずまさんが初めて何十ページもの漫画を描いて同人誌を出したとき、刷った部数は80部でした。以前エッセイにも書いた話だそうです。
同人誌80刷ってるんですよ。80部ですよ。やばいですよね。何をもってしてそんなに売れるのと思ったのかね。
あずまさんは、当時は自信があったのだろうと振り返ります。しかし80部の同人誌は1冊も売れず、すべて持ち帰ることになりました。そのときのことは今も鮮明に覚えているといいます。
当時の漫画はアナログで、原稿用紙にサインペンで描き、トーン ── スクリーントーンのこと。網点などの模様が印刷された貼り付け用のシートで、アナログ漫画の陰影や質感表現に使われますを貼って仕上げていました。大手の同人誌印刷所の存在を知らず、地方の小さな印刷所にお小遣いで印刷を頼んだそうです。
その印刷所の名前についてあずまさんは「新潟印刷」と記憶していますが、収録中に検索しても見つからず、今もあるかはわからないままでした。
初参加は札幌のイベントでした。北海道出身のあずまさんは、その後東京に来て、客層もお客さんの数も会場の規模も違うことを知っていきます。
SNSで告知すれば手に取ってもらえる可能性があること、デザイナーに表紙を発注すれば目に留まりやすくなることなど、あずまさんは少しずつ「レベルアップ」していきました。大学生のころには、東京のイベントでデザイナーにフライヤーを作ってもらったといいます。
部数に「手触り」が出てきた今
あずまさんはイベントのたびに、初めての同人誌のことを思い出すといいます。印刷所に入稿するときに部数を入力する場面が、そのきっかけです。
今回の本は、文学フリマ以降のイベントでも売りたいと考え、たっぷりめに刷りました。それでもその部数は非現実的なものではなく、きちんと出せば手に取ってくれる人がいるとわかる、手触り感のある数字になったと話しています。
中学生のときは、誰が手に取るかもわからないのに80部を刷りました。印刷した本が家に届いたとき、あずまさんは母親にしこたま怒られたそうです。
何を頼んだんだと。で、漫画を刷ったつったら、「えー!」みたいな。「なんですかそれは」と。
中学生。お小遣いで、読み手もわからないまま80部を刷り、1冊も売れず母に怒られる
大人になり自分で稼いだお金で印刷。たっぷり刷っても売れる見込みが感じられる部数になった
あずまさんの今回の新刊は、初めて妹と一緒に作った『姉と妹の交換日記』です。あずまさんには2つ下の弟と5歳下の妹がいて、3人きょうだいは仲が良かったといいます。
特に妹のことは今でも可愛くて仕方がないそうです。妹は文章が上手く、面白いことを書くため、誰かに読んでほしいという思いと、何より自分が読みたいという思いから交換日記を始めました。
『姉と妹の交換日記』は、1年間のやりとりをまとめた約100ページの本です。本当はもっと早く出す予定でしたが、1年越しで11月の文学フリマの新刊になりました。
母からPayPayで届いた1万円
新刊をめぐって、あずまさんにとってとても嬉しい出来事がありました。初めての同人誌のときに怒っていた母親から、収録前日に突然PayPayで1万円が送られてきたのです。
あずまさんの母親は、あずまさんのSNSは見ていないものの、妹のInstagramはよく見ているようです。妹は本の制作が進むたびに進捗を投稿し、印刷された本が届いたことも写真で報告していました。
それを見た母親は、本が出ることを祝い、買いたいから実家に送ってほしいと言いました。妹が「お姉ちゃんに送金してもらえれば1冊1000円」と伝えたところ、届いたのは1桁多い金額でした。
あずまさんが間違いではないかと思っていると、母親からは「二人で美味しいものを食べておいで」という言葉が届いたそうです。
なんか私すごいなんか今喋って泣きそうになっちゃった。うわぁなんかマジかと思って。
中学生のとき、あずまさんはなけなしのお年玉で何を作っているのかと母親に言われました。当時は同人誌やコミケ文化がテレビで取り上げられ始めていたものの、まだマイナーで、人には言えないアングラなものという雰囲気もあったといいます。
その後、母親もあずまさんが漫画を描いていることを少しずつ知り、本を出すたびに「また本出したの?」と言うようになりました。今回は文学フリマという、親にも見せられる場での本です。
自分の作ったものを親に見られる恥ずかしさもありつつ、あずまさんにとってこの出来事は大きな意味を持っていました。実はここまでの話は台本になく、本来は「文フリバブル」について話す予定だったと明かしています。
(母の祝い金の話は)これを文章のエッセイで書くのとはまたちょっと違うなと思ったんですけど、思わずポッドキャストだから喋れるなと思って出したエピソードでございますと。
新刊『姉と妹の交換日記』と既刊の中身
母親も買った新刊『姉と妹の交換日記』は、文学フリマで発売されます。イベント終了後は、あずまさんのBASEでの通販も予定されています。
『姉と妹の交換日記』は、東京で働く34歳の姉であるあずまさんと、会社を辞めてニュージーランドに移住した28歳の妹が、1年間交換した日記をまとめた本です。
内容には、あずまさんが原稿を5か月滞納するのを2回繰り返したことや、ニュージーランドに行ったはずの妹がなぜか婚約して帰ってくる話が含まれます。クリエイターとして生きるとはどういうことかを、2人で開示し合うやりとりもあるそうです。
当日のブースは「つ-40」、サークル名は「ねむけ」です。新刊のほか、あずまさんが先延ばし癖や堕落した生活を綴った、5月刊行の既刊の日記本『ダサくてかっこ悪くてどうにかなる日々』も持っていきます。
グラフィックなどのイラストを手がけている妹のステッカーやポスターも、販売される予定です。あずまさんは、会場に来られる人とは会えたら嬉しいとし、遠方の人には通販での購入を呼びかけて番組を締めくくっています。
まとめ
中学生のときに80部刷って1冊も売れず、母親に怒られたあずまさん。それから約20年、少しずつ本づくりの経験を重ね、妹との共著を出す今回は、その母親が祝い金とともに新刊を買ってくれました。創作の歩みと家族の変化が重なったエピソードです。
- 文学フリマは、閉館まで幅広い人が訪れる、同人誌即売会よりも「フリマ」に近い場だとあずまさんは感じている
- 初めての同人誌は80部刷って1冊も売れなかったが、今は部数に手触り感が持てるようになった
- SNSでの告知やデザイナーへの依頼など、少しずつ届け方を学んできた
- かつて同人誌づくりを怒った母が、妹との新刊『姉と妹の交換日記』をPayPayの1万円で祝ってくれた
- 新刊は文学フリマ東京のブース「つ-40」(サークル「ねむけ」)で販売され、その後は通販も予定されている



