飯田橋の歩道橋で漏れた悩みが、公開会議の題材に
この回は、番組MCの中島静香さん本人のブランディングを題材にした「公開ブランド会議」です。発端は、東京での収録後、焼肉屋へ向かう途中の飯田橋の歩道橋で、中島さんがこぼした一言でした。
中島さんは、一度仕事をするとリピートしてもらえる率は高いものの、知ってもらうまでが難しいと話していたといいます。保呂田さんはこの話が引っかかり、掘り下げたいと考えて今回のテーマにしました。
公開すぎません?歩道橋での内々の話を。
突然題材にされた中島さんは「犠牲者」と戸惑いますが、出演者の受け止めは前向きです。リピート率が高いことは、どんなビジネスでも継続の肝だからです。
めちゃくちゃ贅沢な悩みだよ、実は。って俺は思っていますと。
これって一番ゴールに近いところからスタートできる好事例だと思ってますよ。
この構造は中小企業にもそのまま当てはまると語られます。特定の取引先からの受託で「おかわり」が続き生きていける一方、本当はもっと新規を取りたい。今回の題材は中島静香さんですが、会社にもタレントにも通じる話として聞いてほしい、という位置づけです。
「何でもできます」が、かえって顔を浮かばせない理由
中島さんの普段の仕事は、ラジオDJを中心に、式典やトークショーでのイベントMC、ナレーションなど多岐にわたります。本人も「全部できます」と笑いながら認めます。
ただ、ブランドの理論で見ると、何でもできる状態は難しいと指摘されます。仕事の間口が広くチャンスが多いのは確かですが、「何でもできる人」と聞かれて特定の誰かの顔を思い浮かべるのは難しいからです。
保呂田さん自身も「何でもできそう」とよく言われるため、場面ごとに名乗りを切り替えています。イベントの仕事では「イベント屋さんのホロタです」、ブランディングの場では「ブランディングを生業にしています」、ウェブの打ち合わせでは「ウェブデザイナー歴{placeholder}年以上」と名乗るそうです。
だから(私が)MCのお仕事してる時に、「私ナレーターやってて」って言われても信頼度は上がらないってことですね。
これに対し保呂田さんは、上がるかどうかはわからないが、お客さんが期待している返事ではない、と答えます。逆に「中東で一番有名な日本人サラリーマン」と聞けば、番組にも出演した鷹鳥屋明さんの顔がすぐ浮かびます。棚をはっきり特定することは、理論上の正攻法だと語られます。
ここで出てくるのが、ブランディングでよく言われる全部書くと全部消えるという言葉です。中島さんも、肩書きが多すぎて「結局何の人だっけ?」となってしまう人は意外といる、と実感を込めて頷きます。
バラバラな事業をどう束ねるか?ブランド構造の3つの型
「何屋かわからない」悩みは、出演者の会社にも当てはまると語られます。シードアシストは映像、ウェブ、音声コンテンツを手がけ、セイはタレントのマネジメントやアカデミーを運営しています。バラバラだった事業をまとめた結果が、今の「ハウス・オブ・ブランズ」の形だといいます。
ここで中島さんの求めに応じて、ブランドの作り方のおさらいが入ります。
| 型 | 考え方 | 番組で出た例・話 |
|---|---|---|
| ハウス・オブ・ブランズ | 多くのブランドを1つの家で束ねる | トヨタの中のプリウス、カローラ、クラウン、アルファード |
| ブランデッド・ハウス | 1つのブランドに全部を束ねる | ― |
| エンドースド・ブランディング | 両方のいいとこ取りで、親も子も立てる | 過去回のモーニング娘。の話 |
出演者はエンドースド・ブランディングを目指して組み立て中です。ただ、SEO ── 検索エンジン最適化。Googleなどの検索結果で自社サイトが上位に表示されるよう工夫する取り組みのことですの観点では子ブランドが消えてしまいやすく、難しさも感じていると率直に語られます。
Appleもユニクロも全部売る。では何を約束しているのか?
では何でもできる人は、どれか1つに絞るしかないのでしょうか。出演者はここで「ただ」と切り返し、Appleの例を挙げます。Appleもパソコンだけでなく、iPhoneなどさまざまな商品を売っています。
番組が初回から言い続けてきたのは、お客さんとの約束の積み重ねがブランドの強さになる、という考え方です。全部できる人は、何か1つを選ぶのではなく、顧客に対する約束を前面に出すことがブランディングになるのではないか、と提案されます。
できることを細分化し、どれか1つの強みに絞らなければと思いがち
全部できるまま、顧客に守り続ける約束を1つ前面に出す
例として、Appleは「難しい技術を気持ちよく使える形にして届ける」約束を、ユニクロは服を全種類扱いながら「ええもんを普段の値段で届ける」約束を続けていると語られます。何の約束を守るかを内省することが、自分のブランディングの突破口になるかもしれない、という話です。
中島静香が現場で守ってきた約束は、なぜ名刺にしにくい?
概念的な話を具体化するため、片山さんは中島さんに、顧客とどんな約束を結べそうかを尋ねます。中島さんはその場で自分の言葉にまとめました。
その場の空気をしっかりと捉えて、話をまとめに行くことができるっていうのが、どのジャンルにおいても私のできる約束かな。
出演者は、Appleの例からよくまとめたと感心します。中島さん自身も、これは以前から考えてきたことだといいます。
中島さんは、家電芸人やバスケットボール芸人のようなわかりやすい肩書きが自分にはないと語ります。一方で、現場の空気をつかんでまとめ、時間内に収めることは、積み重ねてきた経験であり守ってきた約束だと考えています。
でもこれって、ロゴにしにくいというか、肩書にしにくい、名刺にしにくいというか。
保呂田さんは、アイドルやタレントも同じ悩みを抱えていると応じ、なぜかみんな資格を取り出す「謎ムーブ」が多いと指摘します。中島さんも、サッカーといえばこの子、のような売り出し方はマネージャーにとっても楽だと認め、自分の強みを言語化・共有できていなかったのではと振り返ります。
約束は「頑張って守る」ものではなく、そこにいるだけで成り立つもの
片山さんは、強みを言う場がないなら、noteなどで一貫したメッセージを発信し続ける方法もあると提案します。XやInstagramでも匂わせる投稿を続ければ、文脈を語らなくても筋が通ってくるという考えです。
え、でも私って現場で今日も約束守ってきましたっていう投稿、ちょっと嫌じゃないですか。
その約束って守るから約束じゃないと思うんですよ。そこに存在するだけで守れてるから約束だと思うんです。
一生懸命やることが約束なのではなく、中島静香という人がそこにいるだけで成り立つものでいい、と語られます。中島さんは、リピートしてもらえるのはそういう理由なのかと受け止めます。
クライアントに「なぜ私を選ぶのか」を聞くという宿題
実は収録前夜、出演者は深夜12時半まで中島さんのブランディングについて話し合っていたといいます。そこで出たのが、言語化できていない魅力としての「人間力」でした。スタイルやファッション性、ママという属性はすでにプロフィールで言語化されています。
片山さんは、クライアントがまた会いたいと思う理由を、中島さんはおそらくヒアリングしていないのではと指摘します。マネージャーが答えるのではなく、本人がクライアントに直接聞くことを勧めます。
社内だったらみんなわかってると思うんですよ。その魅力は。
おそらくお客さんからはちょっと違う言い方されると思いますよ。
中島さんは「今すぐ走り回って聞きに行きたい」と乗り気で、この聞き取りは結果を番組で話す宿題になりました。
検索で1位に出る愛称「おしず」はブランドになるか
片山さんは、ネーミングやカラー、サウンドなど、中小企業でも明日から使えるブランディングの「種」を中島さん本人が実践したらどうなるかを話したいと切り出します。その1つが、愛称「おしず」を芸名のように使うアイデアです。
出演者がGoogleのAIモードで「おしず」とだけ入力したところ、ラジオパーソナリティの中島静香さんが一番初めに出てきたといいます。中島さんは知らなかったと驚きます。
ということは、ブランディングとして(おしずは)ちょっと広まりつつある。
実はこの愛称は、中島さんが意図して広めたものでした。
「ナカジマ」という苗字のあるあるで、アルバイト先のたびに「ナカジ」と呼ばれていた
どう呼べばいいかと聞かれるたびに「おしずでお願いします」と言い続け、検索でも本人が出る愛称に
中島さんは、「おしず」のほうが呼びやすく、和のテイストや丸みがあると感じていたそうです。片山さんは、パーソナリティの「ナカジマさん」は他にも大勢いるが、「おしず」はユニークで、マネージャーが「うちのおしずを」と売り込みやすくなると話します。
ひらがなかカタカナかローマ字か、どんなフォントや色で表すかなど、考えることは多いといいます。ターゲットとなるクライアントに心理的にどれだけ近づけるかで、印象は大きく変わると語られます。
プロフィール写真を自分で選んではいけない理由
片山さんは、中島さんがプロフィール写真を自分で選んでいると聞き、それは間違いだと指摘します。自分が思う自分と、他人が思う自分は違う人だからです。
片山さんがタレントに勧めるのは、マネージャーに写真を選んでもらうことです。さらに、採用してくれたクライアントの担当者に「どれが一番私っぽいですか」と選んでもらえば、他社の担当者も会いたいと思う写真になるはずだといいます。
保呂田さんは、これをジョハリの窓 ── 自分が知る自分と他人が知る自分のずれを4つの領域で整理する心理学のモデル。自己理解やコミュニケーションの研修でよく使われますの話だと整理します。初めて録音した自分の声が変に聞こえることや、鏡の中の自分が反転していることも同じだと語られます。
意外とだから写真選びなんかでも、すっごい自分がコンプレックスに感じてるところとか、気になってるところが隠れてるものを選んでたりって。
片山さんは、コンプレックスは逆に売りになることも多いと応じます。中島さんは、SNSの自己紹介で自分がまさに「全部書いている」と気づき、一言の自己紹介など実践できることがあると振り返りました。
保呂田さんは、どの企業も同じ課題に直面していると締めくくります。最後に中島さんは、職業に「私はこういうことがお約束できます」というタグラインを添えるアイデアを口にしました。
まとめ
この回は、何でもできる中島静香さんを題材に、できることを並べるほど「何の人か」が伝わらなくなる落とし穴と、その突破口としての「顧客との約束」を探りました。約束の言語化に加え、クライアントへのヒアリング、愛称「おしず」の活用、写真を他人に選んでもらうことなど、企業にも通じる具体的な実践が挙がっています。
- 「全部書くと全部消える」ため、何でもできる人ほど何の人かが伝わりにくい
- 1つに絞るのではなく、Appleやユニクロのように顧客への約束を前面に出すという考え方がある
- 中島さんの約束は、現場の空気をつかんで話をまとめ、時間内に収めること
- 自分の魅力はクライアントに直接聞き、写真も他人に選んでもらうほうがよいと語られた
- 検索で本人が1位に出る愛称「おしず」は、ネーミングの種として活用が提案された






