新MCにプロDJが加入。おじさん3人の音声実験室
この回から、番組はプロMCありのフェーズに入りました。京都アルファステーションなどでDJを務める平野聡が、MCとしてナビゲートしていくことになったと紹介されています。
平野聡は、以前は802やFM愛知でもDJを務めてきたベテランのラジオDJだと説明されています。ブランディングの実験番組にプロの声が加わることは、今回のテーマにもぴったりだと保呂田直行は話します。
このブランディングの実験番組にプロの声が入るっていうのは、今日のテーマにもぴったりだと思うんですよね。
MCの平野を含めた3人は、いずれも40代半ばの同世代です。普段は違うフィールドで活動する面々が一堂に会して何かできることが刺激になっている、と平野は語ります。
同世代で、普段は違うフィールドでそれぞれやってるわけで、でもその面々と一堂に会して何かできるっていうのは、めっちゃ刺激になってるなと思います。
今回は収録形態も変わりました。これまではリモートで収録していましたが、今回は初めて大阪の同じスタジオに集まって収録しています。その意味でも、この回自体が新しい実験になっていると話されています。
リスナーからのコメントと、届けたい相手に届く手応え
テーマに入る前に、Threadsで届いたリスナーからのコメントが紹介されました。送り主は一級建築士で整理収納アドバイザーの大西恵さんで、「ブランドを人に例える」回への感想でした。
コメントでは、自分が届けたい相手を「なんで私ばっかりと文句を言いながらも、無理してまで全部こなそうと頑張る責任感の強いママ」と表現していました。労力少なめの片付けを一緒に作り上げ、自分の時間がある暮らしを叶えたい、という思いがつづられています。
自分で維持できつつ、一人の人間として過ごせる時間がある暮らしを叶えていけたらと思っていますが、これが伝わっているかは謎、というふうにいただいてますね。
このコメントに、3人は率直に喜びを見せます。1回の収録で4本撮り5本撮りをしているためタイムラグは出るものの、コメントは積極的に取り上げていきたいと話されました。
コメントの内容は、家庭でも起こりがちな話だと平野は受け止めます。パートナーと生活する中でも「自分ばっかりやっている」という思いが先行するとしんどくなる、とうなずきます。
家事の話では、保呂田が40歳を超えてから料理や片付け、洗濯をするようになったと明かします。自分の人生を自分でコントロールする感覚が楽しいと語り、整理収納のアドバイスを受けたいと話しました。
ジャパネットの原点はテレビではなくラジオだった
今回のテーマは「ジャパネットたかた」です。片山はこれを「音から始まるブランディング」として、音にフォーカスして掘り下げたいと切り出します。音のテーマだからこそ、プロのMCである平野を呼んだと明かされました。
意外に知られていないのが、ジャパネットの始まりはテレビではなくラジオだった、という事実です。深夜テレビのイメージが強い番組ですが、原点は音声メディアにありました。
今回のジャパネットの原点として語られたのは、1999年、長崎のローカル局での出来事です。たった5分、カメラを紹介したら50台売れたという伝説があると片山は紹介します。
実は1999年、長崎のローカル局で、たった5分、カメラを紹介したら50台売れたっていう伝説があって。
これはビジュアルなしのラジオでの出来事です。映像がなく、聞き手のイメージに委ねられる中で、声だけでこれだけ売った点に3人は驚きを示します。仮にカメラが10万円なら、5分で500万円を売り上げた計算になると平野は指摘します。
スペックではなく生活シーンを翻訳する話し方
片山は、高田明氏の声は「売るための声」ではなく、商品の良さを信じていると感じさせる声だと分析します。覚えてもらえることがブランディングの肝であり、あの特徴的な声はそこに直結していると話します。
売るための声じゃなくて、この商品の良さを信じてるって感じさせる声ですよね。
高田氏の口癖として紹介されたのが「伝わらなければ存在しないのと同じ」という言葉です。だからこそ、単なる商品説明ではなく「生活シーンの翻訳」をしていた、と片山は説明します。
具体例として挙がったのが、「これでお孫さんに写真を送れますからね」といった語り口です。カメラのスペックを細かく説明するのではなく、使う人の情景を描いて伝えていた、という点が特徴だとされます。
だからスペック説明しないんですよ。
スペックはある程度まとめて先に伝え、そこから情景の描写に入っていく、という流れが推測されています。スペックという情報を、生活の場面へと形を変えて届けた点に、高田氏のすごさがあると片山は話します。
声・スピードで信頼と購買を動かす研究
保呂田は、声と信頼・購買の関係についての研究を紹介します。コーネル大学のチームが、声によって人から信頼を得られるか、物が売れるかを研究しているといいます。
その研究では、約100人のグループに対し、高い音・低い音といった音のトーンの差や、スピードを変えることで、信用の演出や購買の促進に効果があるとされていると説明されました。コーネル大学は、アメリカ・ニューヨーク州にある名門私立大学で、社会科学から自然科学まで幅広い分野の研究で知られます。
この話に、平野は自身の実感を重ねます。ラジオだけでなく、お客さんを目の前にしたイベントで話す機会も多く、反応をダイレクトに感じながら、その場で声の使い方を試しているといいます。
今日いまいちやなって時は、声を張った方がいいのか、抑えてスピードを緩めた方がいいのか、逆にもうタンタンタンタンって言っちゃった方がいいのかとかは、多分その場その場でやってる気がする。
高田氏も同じように試行錯誤していたのではないか、と3人は受け止めます。狙って作ったわけではなく、どんな声でどんな喋り方をすれば買いたくなるかを、ひたすら実験し続けた結果だと片山は話します。
どんな声でどんな喋り方をすれば買いたくなるかっていうのを、ひたすら実験し続けた結果っていうことらしいんですよね。
声からブランドが生まれるまでの構造
片山は、高田氏の話し方を分析すると明確な構造が見えてくると言います。すべての起点は「声」であり、そこから順に段階を踏んでブランドへとつながっていく、という捉え方です。
その流れは、声から感情、感情から信頼、信頼から購買、そしてその積み重ねの最後にブランドが生まれる、というものです。ブランドは声の積み重ねの副産物だと位置づけられています。
ボイス(声)
すべての起点。特徴的な声が注意を引く
エモーション(感情)
声によって聞き手の感情が動く
トラスト(信頼)
感情が動くと信頼が生まれる
パーチェス(購買)
信頼が購買につながる
ブランド
購買の積み重ねの最後にできる副産物
信用して購入し、それを繰り返し続けるからこそブランド化していく、と保呂田はこの構造を言い換えます。単発ではなく、継続の中でブランドが形づくられていくという理解です。
1秒で信頼を判断させる声の3つの仕掛け
片山は別の研究も紹介します。プリンストン大学の研究では、人は声を聞いた瞬間、わずか1秒以内に、その人を信頼できるかを無意識に判断しているとされます。
人は声を聞いた瞬間、わずか1秒以内に、その人を信頼できるか無意識に判断していると。
そのうえで、高田氏の声に含まれる仕掛けが具体的に整理されました。「高い声」「上がる語尾」「早めのテンポ」の3つが、聞き手の判断に働きかけているという分析です。
保呂田は、これらのノウハウはアメリカのマーケティングやD2Cの業界では研究され尽くしたネタだと補足します。QVCなどのテレビショッピングで、どのタイミングで値段を言えば購買につながるかというデータまで取れているといいます。D2Cは、Direct to Consumerの略で、メーカーが小売店を介さず、自社サイトなどで消費者に直接商品を販売するビジネスモデルです。
一方で、高いトーンや上がる語尾はずっと続けると聞き手がしんどくなる、とも指摘されます。だからこそ、短い時間で端的に勝負するラジオという場だからこそ効いた、というメディアとの相性の話にもつながっていきます。
聞いた瞬間に飛び込む周波数と、それを支える技術
片山は、高田氏の声を脳科学の観点からも説明します。あの喋り方は決断を促す声であり、声帯の低帯域とされる1〜4キロヘルツの成分が特徴だといいます。
この1〜4キロヘルツは、人間の耳が最も敏感に反応する周波数域だと説明されます。映画の予告やスポーツ実況でも強調されることが多く、つまり「聞いた瞬間に耳に飛び込んでくる声」だとされました。
ただし、あの声を実際に出そうとすると喉が潰れそうだ、と片山は率直に語ります。そこにこそ技術がある、として、声を張っているようで呼吸圧を一定に保っている点が挙げられました。
この呼吸圧の話を、平野が自身の経験から補います。声を安定して出すための呼吸法を最初に叩き込まれ、腹式で声を出すことが基礎になっているといいます。
これを喉だけで出すと、確実にもう喉は持たないですよ。多分どんだけ喉が強い人でも持たないと思う。
腹式で声を出せるようになると、まず楽であり、声自体の質も高くなり安定すると平野は話します。さらに、マイクに自分の声がいい感じで乗れるかどうかもわかってくる、と続けます。
スタジオでヘッドホンをつけて聴くと、プロMCの声の質は明らかに違う、と2人も同意します。2人だけで収録していた時より番組の質が上がったと平野も感じており、その差が声の技術に表れていると整理されました。
違和感が記憶になる。素人っぽさというフック
片山は、高田氏がプロの喋り手ではない点にも注目します。むしろ素人っぽい熱量で語ることで、当時のラジオの中では異質・異物のように聞こえていたのではないか、と推測します。
抑揚の少ない番組の中に、当たり前ではない声が突然入ることで、聞き手にフックが効いた、というのがこの回の見立てです。90年代当時に「バズる」という言葉はなかったものの、現象としては同じだと語られます。
このフックの働きは、マーケティング用語では「コンテキストブレイク」と呼ばれます。文脈を壊す違和感が、注目・記憶・購買を生み、最終的にブランドになっていく流れとして整理されました。コンテキストブレイクとは、周囲の文脈から外れた違和感を意図的に作り、注目や記憶を引き起こす手法で、ここでは抑揚の少ない番組に異質な声が入ることを指します。
違和感が注目に変わって、記憶になって、記憶が購買につながって、最終的にブランドになるっていうね。
この「素人っぽさ」の活用は、アニメで素人を起用するのと同じだと片山はたとえます。宮崎駿監督作品での起用を例に、少しぎこちない人間の温度やリアル感が、逆に狙って使われることでタグになると話します。
高田さんはオンとオフを使い分けていた
保呂田は、高田氏の声が意図的なものだと指摘します。テレビの前ではあの高い声を出す一方、バラエティ番組などでは普通に低い声で喋っており、オンとオフを使い分けていたといいます。
(高田さんは)普段普通に低い声で喋るんですよ。テレビの前はあの高い声なんですよ。あれオンとオフちゃんと使い分けてるんですよ。
さらに重要なのは、世代交代して別の人が担当しても、あのメソッドが使われているという点です。声は個人の才能ではなく、設計・継承できるものだと片山は結論づけます。
片山は、これを「聞こえるものを設計できるビジネス技術」と表現します。声の高さ、素人感、揺れが、それぞれどう記憶に残るかを理論化して、声のブランディングとして扱っているといいます。
平野は、喋り手の理想として「声に名前がついている」状態を挙げます。声を聞いただけで「この人だ」とわかることは、声で仕事をする者にとっての憧れであり、桑田佳祐のように歌声に名前がついているミュージシャンと同じだと語ります。
声のDNAをどう継承し、ブランドにするか
実際に、ジャパネットでは高田明氏以外の担当者も話し方が似ていると平野は指摘します。それは技術が継承されている証拠であり、ある種意図的なものではないか、と3人は受け止めます。
ちゃんとその技術が継承されてるって証拠ですよね、あれはね。
今回の結論として片山が示したのは、音声アイデンティティは結果であって継承されていくという点です。声は技術であり、企業のDNAだと位置づけられました。
平野は、この構造の根底にあるのは「安心」と「信頼」だと話します。それを音でブランドとして成り立たせている点がすごく、ブランドは聞かれているうちにできていくものだ、と受け止めます。
自分の会社の「声」をどう設計するか
この回の締めくくりとして、聞き手自身への問いが投げかけられます。自分の会社の「声」を、どんな音質やトーンで残していくかは、普段あまり考えないテーマだと平野は言います。
片山は、電話に出るときの声の調子や使う言葉を設計することが、音としてのブランディングにつながると提案します。プレゼンの機会でも、会社としての声のトーンを設計できれば、それも一つのブランディングの形だと話します。
平野は、極端な例として、ナレーション制作会社に電話して滑舌の悪い応対をされたら発注をやめたくなる、と挙げます。営業や電話応対など、あらゆる場面で音をブランディングに使える、というのがこの回の実務的な着地点です。
普段の仕事、営業シーンの中でも、声っていうのは意識していった方が面白いのかなっていうふうに思いますね。
まとめ
ジャパネットの原点はテレビではなくラジオであり、声だけで短時間に商品を売った実例から見えてきたのは、「売れる声」が才能ではなく設計・継承できるビジネス技術だという事実でした。声から始まる信頼と購買の構造は、営業や電話応対など日常の仕事にも応用できます。
- ジャパネットの原点は1999年の長崎のラジオ。5分でカメラ50台を売った実例が語られた
- 高い声・上がる語尾・早めのテンポが、信頼と即決の心理に働きかける
- 声からブランドが生まれる流れは、ボイス→エモーション→トラスト→パーチェス→ブランド
- 違和感(コンテキストブレイク)が注目・記憶・購買を生み、素人っぽさもフックになる
- 声は個人の才能ではなく、オンオフの使い分けや世代交代でも継承できる企業のDNAとして設計できる





