インサイドセールス白書はなぜ毎年出しているのか
この回は、immedioが恒例で発行している「インサイドセールス白書」の解説回です。白書はほぼ毎年恒例行事化しており、インサイドセールスの市場やトレンドをまとめたレポートを毎年出しています。今回のリリースにあわせ、内容を前半と後半に分けて読み解きます。
白書を最初に出したのは2023年4月で、今回で4回目になります。参考にしているのは海外のSDRレポート ── 海外で発行されているインサイドセールス(SDR=新規開拓を担う内勤営業)に関する業界調査レポート。架電回数や給与など、定量的で具体的な数字が載っているのが特徴ですだと浜田さんは話します。
浜田さんは、日本の既存調査と海外のSDRレポートの差分を「定量的な部分をどこまで掘り下げているか」だと説明します。1つのリードに何回かけるか、給料は実際いくらか、といったリアルな数字が海外のレポートには書かれていたといいます。
どのくらい架電してますか、とか、一つのリードに何回かけますか、とか。もっと言うと、給料実際いくらですか、とか。すごくリアルなことが書いてあったんですよね。
浜田さんは、インサイドセールスという言葉は10年ほど前から広がっているものの、本格的に着手している会社はまだ多くないと指摘します。活動量をどれくらいにすべきか、採用時にどの給与レンジなら人が来るのか、そうしたことがわからない企業も多いといいます。
その辺がまだ全然わからないって企業さんもすごい多いかなと思っていて。そこで何かベンチマークになるものがあればと思って作ってみたレポートという感じですね。
清沢さんは2023年5月の入社で、最初にやった業務が白書のダウンロードをしてくれた顧客への電話だったと振り返ります。3年間で白書の様相もかなり変わってきたのではないか、と話します。
定点観測とテーマ設定という白書の二層構造
白書全体の構成について、浜田さんは大きく2つの層があると説明します。1つは、過去4年間あえて同じことを聞き続けている定点観測の領域です。活動量や通電密度などがこれにあたり、その変化を追っていきます。
もう1つが、毎年テーマを決めて調査する領域です。1回目はリードへの反応や振り分け、2回目は展示会、前回はナーチャリング、そして今回がAI活用というテーマになっています。
今日々のインサイドセールスのリーダーの人たちが、今年どうしよう、今年度どうしようって気になってそうなテーマを、ちょっとだけ早く統計していく。
白書全体は41ページで、章立てはIS業務のKPI、IS組織設計、ISキャリア設計、AI活用の実態・影響の4つです。この回では、このうちIS業務のKPIを中心に読み解きます。
調査概要について、清沢さんは今回の2026年版の調査期間が2025年12月5日から15日までの10日間で、サンプル数は245件だと紹介します。
浜田さんによると、2023年版はネット調査だけでしたが、2024年から2026年版はネット調査が半分で、残りは自社のハウスリストやXで拡散して協力を得たものが混ざっています。ネット調査でも、主たる業務として営業ではなくインサイドセールスを選んだ人だけに質問しており、母数は多くないもののIS業務に関わる人へ調査していると強調します。
なぜヒアリングが商談獲得を追い抜いたのか
ここからKPI編に入ります。まず担当している業務の範囲について、インサイドセールスの業務範囲はヒアリングからアポ取り、受注前などさまざまだと浜田さんは前置きします。実際にみんながどうやっているかを調査した結果です。
今回の調査では、ヒアリングの実施率が58.4%で最も高く、商談獲得が55.9%でした。去年は商談獲得が最も多かったため、順位が逆転したことが特徴だといいます。
浜田さんは、商談の合意取得と商談日程調整を分けて聞いている点にも触れます。合意取得だけをインサイドセールスが行い、日程調整は営業がやるという組織も一定数あり、そこが差分になると説明します。
内勤という点だけを共通項とするインサイドセールスの中には、商談や受注まで担う人もいます。商談をしている人は約3分の1、受注まで持っていく人は17%で6分の1ほどでした。
そのうえで浜田さんは、ヒアリングが商談の合意取得を超えたことを面白い事象だと評価します。まずお客様の情報をしっかり取得するBDR ── Business Development Representativeの略。既存の反響ではなく、ターゲット企業を絞って自ら新規開拓するインサイドセールスの手法。エンタープライズ向けで用いられることが多いです的な動きや、エンタープライズ向けのナーチャリング業務が増えた可能性を挙げます。
清沢さんは、AIの普及や商材のコモディティ化が進む中で、ニーズを聞いていく動きが強まっている可能性を指摘します。
個人KPIの3位が「行動数」から「接続数」へ
12ページの個人で追っているKPIでは、1位が商談獲得数、2位が有効商談獲得数で順位に変化はありませんでした。一方で3位が行動数から接続数へ移行中だといいます。
浜田さんによると、インサイドセールスは代表的にはTOS ── 商談化した数を評価する指標。ここでは商談獲得数を評価する考え方を指していますアップのような商談獲得数で評価されがちでしたが、実際に案件につながった有効商談を見る流れもトレンドとしてありました。
今回は商談獲得数と有効商談獲得数で約10ポイントの開きが出たといいます。商談獲得数が50%、有効商談数が10%でした。一方でパイプライン創出額という奥の目標は25%まで伸びていたと説明します。
浜田さんは、会社ごとに半期や四半期で目標を調整していると見ています。以前いたSansanでも、商談か有効商談かパイプラインか、その比率をどういじるか工夫していたと振り返り、各社が同様に工夫しているのだろうと話します。
接続数は前年比で約6ポイント上がっており、清沢さんはつながりにくくなっていることが背景かと尋ねます。浜田さんは、行動量だけでは繋がりづらい時間帯にかけてしまうことがあり、事前のメールなどの工夫まで含めた接続が評価されているのかもしれないと答えます。
さらにパイプラインも20.3%から23.7%へ上がっており、清沢さんはヒアリングをしつつ接続も多く、パイプライン総数も高まる形でインサイドセールスの責務が増えているのではないかと述べます。
より受注貢献が直接的に求められてるっていう感覚はありますよね。
架電件数はなぜ減り、メール送信は増えたのか
13ページの一日の架電件数では、2026年版は1〜10件が過去最多となり、平均値も昨年に比べて架電件数は減少していました。
浜田さんは要因を複数挙げます。まず接続率が下がっているため、闇雲に電話しても仕方がなく、メールや手紙など他の手段の比率が上がってきている可能性です。
もう1つの要因として、大企業でのインサイドセールス導入が増えていることを挙げます。大きなアカウントを相手にするため、闇雲にかけるより一日10件ほど、という話も聞くといいます。
昔だと、一日五十行動でうち架電は三十とか。結構そのくらいやるよね感ってあったと思うんですけど、徐々にそういうものばかりじゃなくなってきてる。
平均値では2026年版は26.2件ですが、1〜10件が占める割合は約24%でした。次に多いのが21〜40件で20%となっており、浜田さんはSDR的にアプローチする企業では30件前後が標準的だと見ています。
14ページの一日のメール送信件数では、20件未満の割合が減少する一方、81件以上が10.3%と過去最大になりました。平均値も26件で過去最多を記録しています。
浜田さんは、昔は電話とメールが2対1のような印象で、アポ取りは電話という感覚があったのに対し、今はほぼ半々のイメージになったと説明します。メールに日程調整リンクを入れればそれで取れるかもしれないという変化もあります。
送信件数は1〜10件が32%で最も多いものの、81件以上が10%を占める点に浜田さんは注目します。昔は電話で一日80件以上というBtoCのような働き方はあっても、メールで81件以上はあまりなかったといいます。
この背景として、浜田さんはセールスエンゲージメント ── メール送信や架電などの営業アプローチを半自動化・効率化するツールや手法。定型メールの一斉送信やフォローの自動化などに使われますツールやAI、MAのテンプレート普及を挙げ、メールヘビーなインサイドセールスが広がってきた印象だと話します。
商談とか架電を録音して、この内容に基づいてネクストのメールドラフトしてって言ったら、AIがやってくれますからね。
一日の商談数はなぜダウントレンドなのか
15ページの一日に獲得する商談数では、2件が最も多く、平均値も2.0件で、昨年に比べて低下していました。清沢さんはダウントレンドかと尋ね、浜田さんも同意します。
浜田さんによると、最初は2.5件あったところから少しずつ減っています。SDR的にどんどんアクションする形から、ターゲットを絞るBDRやエンタープライズ的な企業が増えたことが背景だと見ています。
昔はインサイドセールスってなんか月五十件くらいアポ取れるイメージではありましたけど、その水準にある企業の割合は減ってる。
16ページの追客回数では、1つの電話番号にかける最大数として3〜4回が43.8%で最も高い結果でした。平均値は4.4回で、2024年版と同水準に戻っています。
浜田さんは、追客回数はほぼ動かない指標だと話します。Salesforceのインサイドセールスに関する記事でも追客は5回と書かれており、ベストプラクティスとしては確立しているといいます。
一つもうベストプラクティスとしては確立している。あとはもうそれやりきるかどうか、でしかない。
接続率が20%を割る時代の工夫
17ページの架電の接続率、つまり本人と話せる率では、調査開始以降初めて20%以下がほぼ半数を占めました。11〜20%が最も多く、平均値は26.6%でした。
浜田さんは、平均値だけ見ると盛り返しているように見えるものの、0〜5%が9%、6〜10%が15%、11〜20%が25%で、これを足すと半分になると説明します。通電率20%に届かない人がかなり多い状況です。
浜田さんは、20%が一つの目安になっていると指摘します。代表番号のサービスや、最近のiOSの電話スクリーニングがブロッカーとなり、20%を超えていくことはあまりないのが現行のトレンドかもしれないと話します。
接続率を上げる工夫としては、朝や夕方などつながりやすい時間帯にかける、事前にメールを送って会話したい旨を伝える、がいずれも4割を超えていました。ここは大きな変化がなかったといいます。
浜田さんは、最近言われる九十秒架電 ── 架電時に長く話さず、90秒程度の短時間で用件を伝えて商談化を狙う手法。効率的に多くの相手にアプローチする狙いがありますのような最短架電が増えているかと思ったものの、実際にはそうなっておらず、人員やオペレーション体制の問題もあるのではないかと見ています。
浜田さんが悩ましいと感じているのが留守電です。immedioが実施したiOS電話スクリーニングの影響に関する調査で、受ける側に折り返し理由を聞いたところ、留守電の内容を聞いて意味がありそうなら折り返すという回答が最も多かったといいます。
留守電の内容を聞いて意味ありそうだったら折り返すっていうのが、実は一番多かったんですよ。
浜田さんは、iOSの電話スクリーニングが広がると、最初に話した内容をもとにAIが「こんなことを言っている人ですが出ますか」と画面に表示すると説明します。そのため、最初の一言や留守電、AIへ伝える用件を最適化するテクニックが今後トレンドになるかもしれないと展望します。
清沢さんは、留守電をAIが一次受けする形になるため、そこに合わせてうまく突破できる道筋が見えるのではないかとまとめます。前半はここまでで、後半は組織設計やキャリアについて触れる予定です。
まとめ
インサイドセールス白書2026のKPI編からは、量をこなすだけの活動から、質や受注貢献を重視する方向へと静かに変化している様子が読み取れます。ヒアリングの上昇、架電件数の減少、メール送信の増加が、その変化を裏づけています。
- 担当業務ではヒアリングが58.4%で最も高く、商談獲得を初めて逆転した
- 個人KPIは3位が行動数から接続数へ移行し、パイプラインも伸びている
- 一日の架電件数は1〜10件が過去最多で、平均値も減少傾向にある
- メール送信は平均26件で過去最多となり、81件以上も過去最大の10.3%に増えた
- 架電の接続率は20%以下がほぼ半数を占め、留守電やAIの活用が新たな論点になっている




