IS部門は今、どんな人が支えているのか
白書後編は、インサイドセールス(IS)の組織設計から始まります。まず注目したのは、IS部門のメンバー数です。
白書によると、3から4名のチームが最も多く、前年よりやや増加する傾向が見られました。
一方で、11から20名規模の大きなチームも一定数あり、平均すると7.7名になります。浜田さんは、この数値に大きなトレンドの変化はなく、比較的安定していると話します。
次に社会人経験を見ると、7から10年目が最も高い割合を占めました。平均値は11.4年で、直近3年ほどで10年前後から伸びています。
浜田さんは、この長期化の背景として、長く続けている人が多いことに加え、大企業の参入で営業経験のある人がISを担うようになった点を挙げます。
昔みたいな、若手がとりあえずテレアポやるっていう世界観とは、もう本当にだいぶ変わってるなっていう感じですね。
IS歴の平均は2025年が9.5年だったため、約2年ほど長期化していることになります。
営業出身者が4割。ISはどこから来ているのか
前職についても、傾向が明確に出ています。営業・フィールドセールス出身者の割合が約4割で最も高く、増加傾向が続いていました。
浜田さんによれば、他社の営業・フィールドセールス出身者18%を足すと57%にのぼります。つまり、社内の営業からの異動が最も多く、その比率が上がり続けているといいます。
その理由として、浜田さんは2つの要素を挙げます。1つは、営業がわかっている人が一人目のISやIS立ち上げ責任者になるパターンです。
もう1つは、ISと営業の人数比が近づいてきている点です。かつてはIS1人で営業2人前後を支えられましたが、最近はISと営業が1対1に近い組織も増えています。
(BDRになると)当然取れるアポ数が減ってくるので、その中で営業だった人がISやBDRに移るっていう例は、結構増えているのかもなと思ってます。[[BDR::Business Development Representativeの略。まだ接点のない企業へこちらから働きかけて商談機会を作る、いわゆる新規開拓型のインサイドセールスを指します]]
ISの年収は上がっている。9百万円以上も11%
多くの人が気になるのが、現職での年収です。白書では500から599万円が最も高い割合を占めました。
平均年収は昨年から30万円弱上がっており、9百万円以上の人も11%を占めています。
浜田さんは、年収データの推移をふり返ります。2023年は4百万円台で「まだこのくらいか」と感じたものの、翌年から一気に5百万円台になったといいます。
あ、やっぱりこうISの最前線の方々って、結構ちゃんともらってるんだなって思ったんですけど、これがじわじわ上がってきているという感じで。
浜田さんが特筆すべきと語るのは、9百万円以上が11%いる点です。BDRや外資の可能性もあるとしつつ、こう結論づけます。
生成AIがWeb会議を抜いて利用ツール1位に
IS部門で利用しているツールにも、大きな変化が現れました。今回追加した生成AIツールが、Web会議ツールとほぼ同等の利用水準に達したのです。
浜田さんによると、生成AIの利用率は62%で、ZoomやMeetの61%を上回りました。さらにSFA・CRMの44%も超えています。
清沢さんは、生成AIが1年でインフラとして欠かせないツールになった点を、今年わかったこととして挙げます。逆に使えていない人は、セキュリティ上の制約があるのではないかと推測します。
やっぱり大企業で(生成AIは)Copilotしか使えないとか、Copilotもみたいなところとか、たまに聞きますもんね。
一方で、IS部門として「利用したいツール」の1位は、去年に続きセールスイネーブルメントでした。続いて日程調整ツール、企業データベースとなっています。
浜田さんは、生成AIについては62%が既に使い、18%が使いたい、残りは特に必要としていない状況だと整理します。イネーブルメントへの関心の高さは、ISの生産性向上への強い興味の表れだと語りました。
3年以上続ける人も4分の1。IS歴の長期化
続く第4章はキャリア設計です。現職でのIS歴を見ると、37ヶ月以上、つまり3年以上続けている人が最も高い割合を占めました。
平均値は20.8ヶ月で、過去の調査で初めて20ヶ月を超えています。
浜田さんは、この数値を日米で比較します。アメリカではISを1.5年ほどやると辞めるか営業に移るのが一般的で、日本の在職期間は相対的に長いといいます。
結構インサイドセールスにみんな長く取り込まれるってところですね。実際3年以上やってらっしゃる方も、この調査対象の中だと4分の1いるということがわかってます。
一方で、ISを続けたい期間は10から12ヶ月が最も多く、平均値は去年とほぼ横ばいでした。
みんなインサイドセールス2年くらいやってんだけど、あとどのくらいやりたいって、みんな「あと1年」っていうところがあって。
浜田さんは、BDRやマーケ業務が増えて高度化してはいるものの、ずっとISをやりたいと思っている人が多いわけではない、と実態を語ります。
希望する次のキャリアに現れた変化
ISの次に希望する職種を見ると、営業・フィールドセールス、マーケティング、IS部門内のマネジメントが拮抗していました。ただし過去と比べ、マーケ希望は減少傾向にあります。
清沢さんによると、減ったのはマーケへの異動、他社ISへの転職、そしてカスタマーサクセスでした。CSは14.4%から8.1%へと大きく減っています。
一方で、営業やマネージャーを希望する声は安定しています。浜田さんは、従来のメジャーなキャリアパスは残りつつ、この1年強かった社内異動志向が弱まった点を印象的だと語ります。
清沢さんは、割合は多くないもののIS部門内の他業務やエンタープライズ担当は減っておらず、SDRからBDRへ、あるいはABM的な動きへ広がる流れがあるのではないかと見ています。
AIを使っても忙しい。ISが抱え続ける課題
IS業務のやりがいは、商談獲得や受注を通した達成感、マーケや営業といった周辺業務の理解が深まる点が上位で、前年と同様の傾向でした。
課題では、架電やメールで忙しく新しいことに取り組む時間がない、が1位で37.1%を占めます。成果が正当に評価されない、商談を断られるのがつらい、といった項目が続きました。
浜田さんは、AIを使って効率化した分だけ、やることが増えているのが実態ではないかと指摘します。メール送信数はむしろ増えているといいます。
一方でグッドニュースもあります。かつて4位ほどだった「報酬が低い」という課題が、7位くらいまで下がってきているのです。
ちゃんとインサイドセールスを専門職として認めて、フェアな報酬を払っている企業が増えている。実際平均年収も上がっているし、そこはグッドニュースなのかなっていうところですね。
AI活用、最多は「資料や文面の作成」だった
最終章は、生成AIのIS業務での活用実態です。活用状況を見ると、提案資料や営業資料などのコンテンツ作成、顧客へのメールやチャットの返信文面作成支援が4割を超えました。
他には商談内容の要約や議事録の自動生成、顧客情報の整理やリサーチ、架電・商談トークの改善も3割を超えています。
浜田さんは、要約やリサーチが上位だと予想していたため、資料作成やメール文面作成が上に来たことを意外だったと語ります。
(要約やリサーチが1位かと思ったら)提案資料作成とかメール文面作成とか、結構そっち側に使ってるんだなっていうのは、「あ、そっちなんだ」って思いましたけどね。
清沢さんは、接続率を高めるためのコンテンツや読まれる文面を、AIでブラッシュアップしているのではないかと解釈します。
今後活用したい機能として差分が大きいのは、現状では下位だった高度な機能です。浜田さんは、ウェブサイト上のAIチャットやデモ、見込み顧客のスコアリングを挙げます。
(高度な機能は)ChatGPTにプロンプト投げたらパッとやってくれるわけではなくて、ウェブサイトに組み込むとかワークフローを組まなきゃいけない系なので。今使ってはないけれど、今後やってみたいって人が多い傾向は見て取れます。
LLM時代、サイト流入は本当に減っているのか
浜田さんが興味深いと語るのが、直近1年のオーガニック検索によるサイト流入の変化です。ここで確かめたかったのは、LLMの普及による影響でした。
現場では、ChatGPTでの検索が増えてGoogle経由の流入が減っている、という声を浜田さんもよく聞くといいます。しかし白書の結果は意外なものでした。
これって実際皆さんどのくらい影響してますか?って聞いてみたら、実は「影響ないです」が一番大きい答えでした。
白書では「やや増加」が4割で最も高く、業界別に見ても大きな差はありませんでした。浜田さんは、この背景にいくつかの仮説があると語ります。
1つは、支援先にグロース企業が多く、会社自体が伸びて広告も増えているため、流入も増えるという見方です。
もう1つは「流入」の定義です。トラフィック自体はSEO分が減って2〜3割減っても、そこから取れる商談数は変わらないという声を、浜田さんはよく聞くといいます。
その理由として、ChatGPTで済むのにわざわざサイトに来る人は、それだけ興味が高いという解釈を示します。ChatGPTから勧められて訪れる人もいるといいます。
清沢さんは、検索流入は減っているかもしれないが、その質は上がっているかもしれない、と大きなトレンドをまとめます。
流入からコンバージョンへ。現場が動画に注目する理由
流入を維持・拡大するための施策では、ウェブサイトの構造改善やコンテンツの質向上が4割近くを占めました。地道な取り組みに、多くの人が課題感を持って向き合っている様子がうかがえます。
浜田さんは、次のテーマをCROへと切り替えます。入ってきたトラフィックをどれだけ取っていくか、という視点です。
すでに実施している施策では、動画コンテンツの追加・強化と、フォームの最適化がいずれも3割を超えました。清沢さんは、お客さんとの会話ともズレがないと話します。
浜田さんによると、フォームの最適化はBtoBではこれまで例が少なかったものの、トラフィック減少やBtoCマーケターとの交流を背景に、取り組む人が増えているといいます。
一方で、離脱しようとした訪問者を引き止めるようなBtoC的な施策は、BtoB中心のIS界隈ではまだ9%ほどにとどまり、あまり使われていません。
変化の激しい時代に、コンバージョンをどう守るか
白書は最終ページへ進みます。今後検討している施策も動画コンテンツの追加・強化が中心で、大きな変化はありませんでした。ただし「特に検討していない」も28%ほどを占めています。
浜田さんは、今回の調査がISを中心にしているため、マーケ担当ではない回答者がいる可能性を挙げます。加えて、セルフデモやチャットボットなどできることは増えているものの、その認知がまだ広がっていない点も指摘します。
全体としては流入自体が減ってくると思うので、減ってきた流入からのコンバージョン率をどれだけ上げていくか。こういった領域の施策やツールは、多分増えてくるんじゃないかなと思ってます。
清沢さんも、現場では一つに絞るより、いろいろな施策を同時に試そうという動きがあると語ります。
今変化が激しすぎるんで、コンバージョンをどう維持するか、もっと増やしていくか、非常にマーケターの方にもぜひ聞きたいなというところの観点かなと思いました。
白書の活かし方と、過去データの読みどころ
全40ページの解説を終え、浜田さんは白書の活用方法を紹介します。細かいデータまで載っているため、immedioのウェブサイトから探してほしいといいます。
白書は2023年の過去分からすべて公開されています。今回の2026年調査にも過去との比較が載っていますが、各年ごとにテーマがある点も読みどころだといいます。
去年取り上げたナーチャリングとか、最近ちょっとむしろ話題になってたりすると思うんですよね。なんで、ぜひ見てみてもらえればなと思ってます。
浜田さんは、この2年ほどスマートキャンプと共催しているISのレポート系イベントについても触れ、今年も開催できそうだと語りました。情報収集の機会に使ってほしいと締めくくっています。
まとめ
白書2026からは、ISが専門職として成熟し、年収もキャリアも安定してきた姿が見えてきました。同時に、生成AIやLLMの普及が、ツール利用やサイト流入のあり方を静かに変えつつあります。
- ISは営業出身者が4割を占め、社会人経験・在職期間ともに長期化。年収も上昇し、9百万円以上が11%を占める
- 生成AIの利用率は62%でWeb会議ツールを抜いて1位に。用途は要約より資料・文面の作成が最多だった
- AIで効率化しても「忙しい」は変わらず、やることが増えているのが実態。一方で「報酬が低い」課題は後退した
- LLM普及でも流入への影響は「ない」が最多。トラフィックは減っても質の高いホットリードは流れ込んでいる可能性
- 今後はCROが焦点。動画やフォーム最適化など、減る流入からコンバージョンを高める施策への関心が高まっている




