若手を縛った「呪いの言葉」
冒頭で東横名人さんは、Twitterで見かけた「県内トップ営業」の記事を紹介しながら、自身が若手時代に言われ続けた言葉を切り出します。
どうも皆さんこんばんは。東横名人です。本日も東京都港区某所よりお届けしております。お相手は今日も港区男子のこの方に来ていただいております。
はい。どうも皆さんこんばんは。ポリンスキーです。
働くおじさんのラジオなんで、営業さんのことをいろいろ語ることも多いかなと思うんですけど、ツイッターでこんな記事が上がっておりました。「日産の埼玉県トップ営業に会ったらモサッとして話もうまくない男で、こいつ大丈夫かと思ったら、名刺の裏に、車でお困りのことがあれば電話でいただければすぐに駆けつけます、他社の車でも大丈夫ですと書いてあり、実際に電話するとすぐ来て修理をしてくれた」と。
修理が終わったら「あと何年ぐらいでガタが来ますんで、その時買い替えですね」と言っておき、買い替え時期になるとお客は貸しがある引け目からその営業に注文するそうです。この営業は、営業に配属されると学校に通って整備士資格を取ったらしい。
いい話じゃないですか。
今時にはないすごいいい話なんです。で、僕がよくいろんな場で言われたのは、おい、東横。お前は車のことが全然わかってない車のセールスマンから、車を買いたいと思うか、って言われたことってない?
すごい、そんな今時いるんですか?そんな先輩風吹かす人が。
いやいやいや。でもいろんな場で言われるわけですよ、若手の頃に。おせっかいな上司、おせっかいな先輩に、だからもっと知っておくべきだぞ、仕事のことはって言われて。何でも自分で抱えすぎるようになっちゃったっていうのもね。人に触れない体に、15年ぐらい仕込まれちゃいました。
何を自分でやった方が、自分で把握していかなきゃ、これは僕しかわからないんだ、これは僕しかわからないんだっていう呪いの言葉でもあるんです。
おー、すごいじゃないですか。依存してますね。
嘘はつきたくない、という営業スタイル
話は、東横名人さん自身の営業スタイルへ移ります。呪いの言葉のせいか、正直に伝えすぎて身内を怒らせることもあるといいます。
別に欲しい車なら買いますよって言えばいいんじゃない?
今の俺にその胆力があればな。当時の俺にその胆力があれば、買いたい車買うっすよ、先輩って言えたんだけど。
むかつくやつやったら、そいつからは買わないよね。
僕は基本的にはこういうセールス、嘘つきたくないから。本音で話して、「いや、うちのサービス多分合わないと思いますよ」って結構平気で言っちゃって、身内を怒らせること結構あるんですよ。
いい感じで言っといて途中で話がポシャるってこともあるじゃないですか。最初に初期消火してたらぼやで済んだのに、営業の会議で「受注目前です」みたいなことを言われて。それをやめたいから正直に言う。早めにダメならダメって言って、次行こうぜって言った方が健全じゃないですか。
おー、すごいじゃないですか。
仕事のための仕事するのに意味がないなって思ってるっていうのもあって。まあ大人だからやるんだけど、自分の目の届く範囲では、あんまりそういうことやりたくないなと思うんだけど。
あー立派な心がけですね。いい人に見せようとして。
いやいや、本当に。この50歳になろうとしてるのに、嘘はつきたくないんですよねって言うと、いまだに「別に嘘つけって言ってるんじゃない。言い方ってあるだろ」って言われますよ。いまだにチクリって言われてへこむことがあります。
よかったじゃない。言ってくれる先輩とかいて。もういなくなりますからね、言ってる間に。
SaaSのお兄ちゃんは、車を知っていたのか
続いて二人は、キラキラした若手の営業と、長く同じ会社にいる営業とを対比します。すぐいなくなるSaaSの営業を例に、「知っていること」と「居続けること」の価値を考えます。
たまにベンチャーっぽい会社の人と会うじゃないですか。ちょっとイケてる風のキラキラした若手のお兄ちゃんが来るわけですよ。ジャケパンで、くるぶし見せて、白いスニーカーで。
白か黒か紺のセットアップに白のスニーカーで来ます。
ポリンスキーさんもあと30歳若かったらああいう格好してたと思うけどね。
いや、もう楽ですからね、あれ決めるとね。三十歳若かったら「服選ぶなんて無駄ですよ」って言いそうです、私。
で、そういう時のITのスタートアップの営業ってめっちゃいい風に言うし、「めっちゃカスタマーサクセス頑張ります」みたいな。なんだけど、やるたびに「いや、すいません、私もうこの会社辞めるんですよね」。
お前あれだけイキってたのにもう辞めんの?挙句の果てに次行くところの名刺を出されたりすることもあるじゃん。誰が相談するかっていう。この10年ぐらいで何人ぐらい見た?
もういっぱいいますよ。
その(SaaSの)お兄ちゃんは車のことをよくわかってたのかな、どうなのかな。カスタマーサクセスって言ってるけど、どこまでわかってたのか、よくわかんなくて。長いこと同じ会社に居続けて、ずっと固定の営業さんが来てくれる安心感って、実はこれってめちゃめちゃ何物にも代えがたい価値のはずなんですよ。
でもそれってないがしろにしてませんか、今。
今その形が成立してるのは、中小企業の社長が営業やってるパターンとか、番頭さんとか。それ以外はあんまりないですよね。
「ご用聞き」でいい、を極める
話題は営業の本質へ。「物売りから事売りへ」「ご用聞きから脱しろ」という言葉に、東横名人さんは強く反発します。
営業はいらないっていう人もいるけど、絶対営業はいりますからね。
その先にいるベテランエンジニアを連れてこれたりする能力がやっぱり営業の力ですよね。
お客さんとバンファーストして、ご用聞きなんですよ、やっぱり。でも「お前まだご用聞き営業みたいなことしてんじゃないぞ」みたいな。いや、ご用聞きでいいんですよ。ご用聞きを極めればいいんですよ。
なんですぐ呪いの言葉のように、「これからは物売りじゃなくて事売りで、ご用聞きからは脱しなければいけないんだ」って。みんな言うんですよ、ことだ、ことだって。自分からなんか仕掛けないといけないんだって。もうなんか気持ち悪いなと思って。
あなたは今日気持ち悪い話ばっかりしてますよ。
でもそうやって経済が回ってんだなって思いますね。本当にわかって何かを売ったり買ったりっていう行動ってどれぐらいあるんだろうと思うと、だいぶないんだろうなと思います。
ご用聞きも極めればコンシェルジュみたいになるわけですからね。なんでそんなにかっこいいことばっかり言うのかなと思って。
いや、まあマウント取りたいでしょ。おせっかいな先輩が。
結局、商品が良ければ買う
「車を知らない営業から買いたいか」という問いに、ポリンスキーさんが身も蓋もない答えを返します。
それは答えはないんじゃないですかね。車が良かったら買うが答えですよ。セールスマンから買うっていう意識なんかお客さんには一つもないですから。口では「あなただから買いました」って言いますよ。そんなわけないんですよ、商品がいいからです。
残酷やな。
めちゃめちゃ可愛い営業マンで、その人に気に入られたくて買ったって人はいるかもしれないけど、そうじゃないパターンの場合はもうものがいいから買ったんです。
まあ同じぐらいのグレードでほとんど同国の競い比べだったら、こっちの対応が良かったから、最初に連絡くれたし、みたいな心情で決めたんで。
そういう自分に酔った人はあると思います。「俺は人情、これで動くタイプなんだよ」ってアピールしたい人はそうでしょう。その人はもう考えるのをやめてますよ、商品をちゃんと選ぶということを。
転職しない理由は「自己紹介が嫌だから」
一度も転職したことがない二人。ポリンスキーさんが挙げた「転職できない理由」が、意外なところに着地します。
転職してないじゃん、我々。すごく引け目感じる時もたまにあるの。一社しか知らないって本当にいいのかなみたいな。
いいでしょ。自分がもう転職しない理由はもう決定的なのが一個あって、新しい会社に転職するじゃないですか。その会社で自己紹介しないといけないでしょ。もうそれがすごい嫌ですね。
自己紹介なんか全然(平気だけど)。でも自己紹介っていろんな場で年に数回はやるわけじゃないですか。
それは周りに知ってる人いるじゃない。全員知らんとこで自己紹介して、その場限りでもないっていう場所ってそんななくない?
これから少なくとも半年、1年スパンでお付き合いしていかないといけない仕事上の人に対する自己紹介は、めっちゃ考えるよね。
めっちゃ考えるし、そんなんしたくないんで。だからそれがもう転職できない理由ですね、自分の。あいつ何言うんだろうみたいな目で見られるんですよ。
新しく入ったポリンスキーっていう人を「どう?」って言われてると思ったら耐えれない。
耐えれないですね。
転職何回もする人っていうのは、それもあるんじゃないかなと。初手でそのベクトルがちょっと狂っちゃったなみたいな。
引き継ぎは、本当に世の中にあるのか
終盤は「引き継ぎ」の話へ。会社を辞める人がまともに引き継ぐわけがない、という前提から、二人なりの結論にたどり着きます。
引き継ぎの話もしたいんですけど、世の中で引き継ぎってあるんですか?
ないです。引き継ぎなんかないんです。もう一回再構築でいいんです、基本は。命とか品質に関わらないことであれば、もう一回スクラップアンドビルドで再構築すればいいんです。
会社辞める人は会社辞めたくて辞めるじゃないですか。引き継ぐわけないですよね。こんな会社、俺が辞めた後不幸になれよって思ってる人いっぱいいるわけじゃないですか。
(引き継ぎは)あるよ。一定レベルではあるけど、ない場合もそりゃあるよなっていうところと、炎上してる案件とかってそうじゃないですか。引き継ぎって言っても引き継ぎできる内容がもうそもそも破綻してるとか。
引き継ぎは無理だから、何かあった時に連絡が取れるっていう状態にしておくのが、なんか責任感な気がしますね。
その周囲の人に聞くとかっていうのも結構多いじゃないですか。そこからだんだん輪郭が分かって、再構築できて、もう一回最適化できるっていう。体のどっかの肉が削ぎ落ちても再生するじゃないですか。そんな感じかなと思ったりもしてますけどね。
割り切ってはいるけど、自分が引き継ぐ時はちゃんと引き継ぎますよ。
お、また自分だけいいように見せて。大事なとこは抜かしてんじゃないですか。
すべてはマウンティングで回っている
最後は「なんで俺ばっかり」という口癖から結婚の話にまで及び、二人は呪いの言葉との付き合い方に着地します。
あなたはもう学生の頃からずっと「なんで俺ばっかり」って言ってますから。それを自分で全部たぐり寄せてるから、社会人になっても。
東京に来た前後ぐらいからだいぶマシになったよ。無理って、体持たない。
それを突き詰めていくと、もうだから結婚とかできないですからね。
確かにそれ突き詰めていくと、「なんで俺ばっかり」って言ったら多分結婚できなかったかもしれないね。
長いこと働いてる方がいいなって、もう一回評価してほしいのもありますね。自己紹介のリスクって言われると、そこは目からうろこなところはあったかもしれない。それが嫌だっていうのは、確かに最初のマウントを取りに行くポイントですからね。
マウント社会だ、マウント消費社会だ、マウンティングエクスペリエンスだって、1年ぐらい前にここで話した。確かに世の中マウンティングで回ってるんですよ。だから変に言われたことを気にしちゃダメだってことですよ。
そのメカニズムを理解しておくことがなんかいいんじゃないですかね。
心のセーフティーネットみたいに、「あーこれマウンティングしてるだけだ」って。気にせんでいい。君は車のことをよく知らない。今日から車を買いたいかね?
物が良ければ買いますよ。言ってみたかった。言ってみたかった。それでは皆さんおやすみなさい。さようなら。
おやすみ。
まとめ
今回は「車を知らない営業から買いたいか」という若手時代の呪いの言葉を入り口に、営業のあり方や転職、引き継ぎまでを行ったり来たり語り合いました。正直に話すこと、ご用聞きを極めること、長く居続けることの価値など、答えの出ない話題を二人らしく掘り下げています。最後は、いろんな言葉も結局はマウンティングの一部かもしれない、という心のセーフティーネットに着地しました。
- 「もっと自分で知っておくべきだ」という言葉が、何でも一人で抱え込む呪いになることもある
- お客さんは結局「商品が良ければ買う」。それでも固定の営業が居続ける安心感には代えがたい価値がある
- 「ご用聞きから脱しろ」ではなく、ご用聞きを極めてコンシェルジュになる道もある
- 転職しない理由が「自己紹介が嫌だから」というのも、居場所を築く一つの形
- いろんな言葉はマウンティングの一部かもしれないと理解しておくと、心のセーフティーネットになる


