お香とお線香、どこが違うのか
阪本琢磨さんは、お香ブランドを手がける立場から、お香の話やそれ以外のさまざまな話をしていくポッドキャストとしてこの番組を始めました。第1回のテーマは、お香とお線香の違いです。
一般的なイメージでは、お香は雑貨屋さんなどで売られているいい香りのするもので、お線香は仏壇で使うものです。阪本さんは、この2つがどう違うのかは意外に知られていないと話します。
あれ(お香とお線香)ってね、どう違うのか、って意外に知られてないなと思うんですよ。
ビートルズはロック?それともポップス?
阪本さんは、お香とお線香の違いを説明する前に、音楽のジャンルを例に出します。ビートルズはロックとも、ポップスとも、ブリティッシュロックとも言えますし、一部のアルバムはサイケデリックに分類することもできそうです。
それでも阪本さんは、ビートルズはたいていの場合ポップスに入っているのではないかと考えています。Mr.Childrenについても、一部のアルバムはロックに入るかもしれないものの、おそらくポップスやJポップに入るだろうと話します。
ビートルズもMr.Childrenも、ボーカル、ギター、ベース、キーボードやピアノといった編成の、基本的にはバンドサウンドです。同じ楽器を使い、同じような編成でも、ロック、ポップス、ハードロック、メタルと、違うジャンルに分けられることがあります。
同じ楽器を使っていて、同じような編成でやってもですね、ロック、ポップス、みたいなジャンル分けをすると思うんですよ。
ジャンルを決めているのは誰なのか
阪本さんによると、歌っている本人が「私たちはロックンロールだ」と言えばロックンロールなのかもしれません。ただ、聴き手が音楽を手に取るときに目にするのは、CDコーナーの棚のジャンル名や、Spotify ── スウェーデン発の音楽ストリーミングサービス。定額で膨大な楽曲を聴くことができ、ジャンルやプレイリストから曲を探せますのジャンル表示です。
阪本さんは、音楽のジャンル分けを「こういう人に聴いてほしい」という送り手側の目配せだと捉えています。
たとえばミスチルにはハードなサウンドの曲もありますが、ハードロックとしてではなく、ポップスコーナーに置いたほうが多くの人に聴いてもらえるという判断があり得ます。ビートルズも、サイケデリックに置くのが正しいアルバムがあっても、ポップスに置いたほうが届けたい層に届きやすいという選択があるのではないか、と阪本さんは話します。
その判断は、アーティストと事務所の打ち合わせで決まることもあれば、事務所の独断や、アーティストの強い主張で決まることもあると考えられます。いずれにしても、売り場を決めるのは届けたい側の意図だというのが阪本さんの見立てです。
どんな楽器を使ってどんな音楽をやってるかっていうことと、どこの売り場に置いてあるのかっていうことっていうのはね、あんまり実は関係なくてですね。
楽器の編成やサウンド。ビートルズもMr.Childrenも基本的にはバンドサウンド
聴いてほしい層に届くように、事務所やアーティストが意図して決めるもの
お香もお線香も、作り方はほとんど同じ
前置きを経て、阪本さんは本題に入ります。お香とお線香は、作り方がほとんど同じだというのです。
阪本さんの説明では、お香もお線香も、まずパンでいう小麦粉のようなベースの材料があります。そこに香りを出す材料と、粉を固めるための糊になる材料を加えて作ります。
香りの材料には、漢方薬やハーブ、自然から取ったオイル、石油などから取る合成香料があります。場合によっては、香りを閉じ込める材料や、カビが生えないようにする材料を入れることもあるそうです。
お香も、お線香も、作り方は一緒です。
呼び名を分けるのは「届けたい相手」
阪本さんによると、お香とお線香では細かなレシピに違いはあるものの、呼び名を分けているのは作り方ではありません。お部屋で焚く人に届けたい場合はお香と呼び、お仏壇の前で使う人に届けたい場合はお線香と呼ぶ、という違いです。
つまり、お香とお線香の関係は、音楽のポップスとロックの関係とよく似ています。中身の作り方が近くても、誰に届けたいかで呼び名と売り場が変わるというわけです。
お部屋で焚く人に届けたい場合の呼び方
お仏壇の前で使う人に届けたい場合の呼び方
お線香を部屋で焚いてもいいのか?
作り方が同じなので、阪本さんは、部屋用のお香を仏壇で使うことも、仏壇用のお線香を部屋で焚くことも、まったく問題ないと話します。作り手が想定した使い方とは違うかもしれませんが、それでかまわないという立場です。
お仏壇用のお線香をお部屋で焚く。これね、全然OKです。
阪本さんはお香の店を営むほか、祖業である仏壇店の4代目でもあります。店にはお線香とお香をおそらく100種類以上置いていて、実際にさまざまな使い方をするお客さんがいるそうです。
阪本さんの店には、お香をとてもいい香りだからと仏壇で使っている人がいます。反対に、仏壇用のお線香を、量が多くてコスパがよく、いい香りだからと部屋で焚いている人もいます。
(お線香は)お部屋で焚くと量もいっぱい入ってるし、コスパもいいし、お部屋で焚いていい香りなんで。
ジャンルにとらわれず、好きなように使う
阪本さんは最後に、再び音楽の例えに戻ります。ポップスコーナーに置かれたMr.Childrenを、メッセージ的には超ハードロックだと思って聴くのも、ビートルズをサイケデリックロックの名作として聴くのも、聴き手の自由です。
ビートルズの曲名がすぐに出てこなかった阪本さんは、元ミュージシャンとしては恥ずかしいと笑いながらも、お香とお線香もジャンルにとらわれずに使ってほしいと呼びかけます。
まとめ
阪本琢磨さんは、お香とお線香の違いを、ビートルズやMr.Childrenのジャンル分けに例えて説明しました。作り方はほとんど同じで、違いは誰に届けたいかという送り手側の意図にある、というのがこの回の結論です。
- 音楽のジャンルは、楽器や編成よりも、聴いてほしい層に届けたい送り手側の意図で決まると阪本さんは考えている
- お香もお線香も、ベースの材料、香りの材料、糊になる材料で作られ、作り方はほとんど同じ
- 部屋で焚く人向けならお香、仏壇の前で使う人向けならお線香と呼び分けられている
- お香を仏壇で使うのも、お線香を部屋で焚くのも問題なく、好きなように使ってよい

