努力を認めてほしい、でもアピールは恥ずかしい
今回の相談は、ラジオネーム「イノチ」さんから。努力や頑張りを認められたいけれど、自分からアピールした瞬間ダサくなる気がして、スンと待ってしまう、というものです。
一方で、アピールしないと認められないのではという不安もある。この矛盾がイノチさんの悩みの中心でした。
努力や頑張りを認められたいと思ってしまいます。頑張ってる自分を自分から見せた瞬間ダサくなるので、スンとしながら周りから言われるまで待っています。
これに対するAIの結論は、スンと待つのは今日で終わりにして、頑張りではなく出来上がったものだけを自分から見せに行きなさい、というものでした。
この結論を受けて、箕輪さんはまず「周りは意外とわかっている」という前提から話し始めます。
期待するほど見てないけど、がっかりするほど見てなくもない
箕輪さんが持ち出したのは、けんすうさんとサイバーエージェントの藤田晋さんの共著本のタイトルです。「人は自分が期待してるほど自分のことを見てくれないが、がっかりするほど見てくれていなくもない」という長いタイトルでした。
本当に期待してるぐらいは見てないけど、そこまで見てないかってほどは見てなくない。
つまり、上司や周りは常にフィードバックするわけではないけれど、誰がアピール上手で誰が実際に頑張ったかは、上から見れば結構わかっている、という話です。
この仕事、Aさんめっちゃアピールしてるけど、実際Bさんの頑張りだよねとか、上から見たら結構わかりますよね。
ただし、これには自分側の錯覚もあると二人は指摘します。自分が100やっているつもりでも周りは120やっていたり、逆に自分が60だと思っていたら他の人は20しかやっていなかったり、という認識のギャップが起きるのです。
評価されない人は「プロジェクト全体」が見えていない
箕輪さんは、評価されない人には視野の狭さが共通していると言います。プロジェクト全体を見ておらず、自分がやった作業だけを大きく感じてしまうのです。
例として箕輪さんが挙げたのが、本づくりの構造です。ざっくり「調達・加工・出荷」の3つに分けられると説明します。
調達
著者を連れてきて書いてもらう約束を握る
加工
原稿を直す編集作業
出荷
本を売るためのプロモーション
この3つは全部大事ですが、その本の「肝」がどこにあるかは案件ごとに違う、というのが箕輪さんのポイントです。
たとえば加工、つまり編集作業は時間がかかって大変ですが、著者の原稿を言われた通り直す作業は誰かができる仕事でもあります。箕輪さんはこれを残酷な言い方すると代替可能と表現しました。
この本を作ったのは自分だ!ってワーッて思い込む。確かにやったけど、ぶっちゃけ残酷な言い方すると代替可能。
だから現場の人が「箕輪は何もやってない、私が全部やった」と思っても、上から見れば「箕輪が書くと言ったことがこの本の肝だ」と評価される、という食い違いが起きます。
本当にその調達がないと進まなかった仕事で、他が99パーセント時間とコスト使ってるけど、一番の肝はそこっていうのはすごいありますね。
寝ずに作った資料より、社長への3分が肝になる
この構造は本づくりに限りません。けんすうさんが挙げたのは、大企業でよくある社長プレゼンの例です。
現場の社員が2週間ほど寝ずに資料を作っても、プレゼン自体は部長がやる。若手からは「部長はおいしいところ取り」に見えますが、実際はそのプレゼンの方が肝だった、ということが起こります。
箕輪さんは、本の企画を通すときの自分のやり方も明かします。決裁権を持つ相手には、資料の中身よりも「いい機嫌のときにさらっと言うこと」の方が肝だと言います。
肝はいかにいい機嫌の時に俺がさらっと言うかみたいな。そこが肝で、俺はそれが肝がわかってて。
具体的には、いい話題で挟み込む「サンドイッチ」の技です。面白い話題で相手を乗せた直後にさらっと企画の話を挟み、またすぐ別の話題に移す。それでOKをもらう、というやり方です。
下の子は俺が作った資料なのにとか思うけど、資料なんて見せてもいないな。一応紙はありますけどねみたいな。
けんすうさんも、KDDIクラスの大企業では社長と話す時間そのものが貴重で、何ヶ月も前から伏線を打っておく必要があると補足します。
この日に社長とたまたまご飯をご一緒できる時間を作った人がいて、その人がポロっと言った3分とかで決まったりしますね。
センターピンとサードドア、そして会食とゴルフ
この「肝を見抜く力」を、箕輪さんはけんすうさんの思考スタイルに重ねます。物事の本質が努力ではなくどこにあるかを見抜く力が大事だ、という話です。
このプロジェクトのセンターピンはどこかみたいな。サードドアはどこかみたいな。
その結果、最終的には人と人のつながりや仲の良さが効いてしまう。だから箕輪さんは「いつも遊んでるよね」と見られがちだ、とけんすうさんは指摘します。
4回ご飯行った関係性があるから通せるみたいなのとか。
「言っとくよ」の一言で終わる関係性も、そこに至るまでの積み重ねがあってこそ。だからこそ、会食やゴルフのような仕事の方が代替しにくい、という結論になります。
真面目な人が損をする、AI時代の残酷さ
ここで話はAIへと広がります。けんすうさんが指摘したのは、肝にならない仕事ほど代替しやすく、しかも分量が多くて大変だという逆説です。
肝にならないところの方が代替できてしまう上に、そこの仕事の方が大変じゃないですか。
箕輪さんは、この構図がAI時代にさらに厳しくなると言います。大変で膨大だけれど代替できる仕事から、AIに置き換えられていくからです。
箕輪さん自身も、若い頃はコピー取りや、汚い赤字をきれいに書き写す「ゲラの赤字の転記」ばかりやらされていたと振り返ります。
赤字の転記とかってあるんですよ。日本、世界で一番無意味な仕事ですよ。
魂を入れてやれば自分のトレーニングにはなる。ただ、仕事として残酷に見れば作業であり、時給しか払われない仕事だと箕輪さんは整理します。
けんすうさんは、こうした「誰かがやらなきゃいけない大事な仕事」がAIに代替されると、それを頑張っていた人の仕事が急に雑に扱われてしまう、と悲しい側面を指摘しました。
テープ起こしが2万円から2円になった
代替の具体例として箕輪さんが挙げたのが、テープ起こしです。出版社ではバイトが延々とやっていた仕事でした。
10時間のインタビューを「これテープ起こししといて」と頼むと、3時間分やるのに8〜10時間かかる。少しでもミスがあれば箕輪さんが気づき、最初からやり直しになることもあったそうです。
もう地獄の仕事よ。テープ起こし業者さんいっぱいいたんだから。あれなくなったのかな?
今ではツールで一瞬。けんすうさんは、その価格の変化を端的に表現しました。
箕輪さんは、そこにお金を払っていたら部下に「お前バカか、いろんなツールあるぞ」と言われる時代だと苦笑します。真面目に手を動かしていた仕事ほど、あっという間に価値が変わってしまったのです。
1ヶ月で3倍速く、資料は3日から20分に
話は「では今みんな何をしているのか」に移ります。けんすうさんは、自分の仕事のスピードが上がり続けていると語ります。
僕でいうと、多分1ヶ月前よりも3倍ぐらい速くて。めっちゃ速くなってます。
箕輪さんは、落合陽一さんがCloudCodeを使って生産性が100倍になったと話していたのを聞き、自分は置いていかれているのではと不安になったと打ち明けます。
けんすうさんは具体例として、前日に20分ほどで作った資料の話をします。グラフやスクリーンショットを入れた会社向け資料が、かつては3日かかる仕事だったと箕輪さんも驚きます。
これがやっぱ20分で終わる。しかも20分って実作業だけなんで、実際はもうちょっとAIが動いてるんですけど、他の仕事もできる。
その結果、1社に使い回していた資料を10社それぞれに合わせて作り分けるなど、仕事はむしろ増えているといいます。「箕輪さん専用の資料はこれです」ということも可能になったのです。
差は「30分」しかない、あとはやるかやらないか
ここで箕輪さんは、AIで資料が作れることが自分にとって有利なのか不利なのかを問います。もともと資料が作れない自分は、差が広がるのか縮まるのか、という問いです。
けんすうさんの答えは意外なものでした。差はむしろ近くなっている、というのです。理由は、資料が作れない状態から作れる状態になるまでの時間が激変したからです。
今までほんと1年とかかかってたのが、(今や)30分になってるんですよ。
つまり、資料作りが得意なけんすうさんと、まったく作らない箕輪さんの差は、もはや30分ほどしかない。あとは「やるかやらないか」だけだ、というわけです。
箕輪さん自身、CloudCodeをパソコンに入れる作業に苦労し、生まれて初めてスクリーンショットを撮ったと明かします。ターミナルが誕生してからは怖くて一度もパソコンを開いていないそうです。
CloudCodeがいると思うと怖くて、開けない。なんですごいメールされたりしそう。
けんすうさんは、いきなり箕輪さんがAIにハマってウェブサービスやデザインを作り出す可能性もあると話します。実際、イケハヤさんはウェブサービスもゲームもアプリもアニメも一人で作っていると例に挙げました。
作るコストが下がると、広める力が効いてくる
最後に箕輪さんが投げかけたのは、全員が作れるようになっても、受け止めるサービスや売れる数が増えるわけではないのでは、という疑問でした。
全員ができるようになっても売れる数変わんないから。サービスみんな作り始めても、受け止めるサービスの数増えん…。
けんすうさんは、これを冒頭の「調達・加工・出荷」の話に戻して答えます。作るコストが下がると、今度は広める力が効いてくる、というのです。
たとえばアプリ開発は、以前は6ヶ月間エンジニア1人で500万円かかっていたのが、今は1人で5000円ほどでできる。すると、広める力がある人がめちゃくちゃ有利になります。
作ること自体の価値が下がった分、肝は「どう届けるか」に移る。冒頭の評価の話とAI時代の話が、同じ「肝を見抜く力」でつながって、この回は終わりました。
まとめ
評価されない人の多くは、プロジェクト全体を見ずに自分の作業だけを大きく感じています。大変な作業ほど代替されやすく、AI時代はその傾向がさらに強まる、という少し厳しい話でした。だからこそ「どこが肝か」を見抜く力が、これからますます効いてきます。
- 評価される人とされない人の差は、努力量ではなく「肝を見抜けているか」にある
- 大変で膨大な作業ほど代替されやすく、会食やゴルフのような関係性は代替しにくい
- AIによってテープ起こしや資料作りのコストが激減し、真面目に手を動かす仕事の価値が変わった
- 作れない人と作れる人の差は「30分」ほどに縮まり、あとはやるかやらないかになりつつある
- 作るコストが下がるほど、「広める力」を持つ人が有利になる







