「ご利益より面白い」ガイドはなぜ生まれた?
この回で取り上げるのは、八木さんが自ら仮置きで作った予約ガイドのLP ── ランディングページの略。広告や検索から訪れた人に、1つの商品や企画の内容を伝え、申し込みにつなげるためのWebページですです。八木さんは事前に土田さんへ資料を送り、収録ではそのLPを2人で見ながら話を進めています。
八木さんのガイドのタイトルは「ご利益より面白い」です。寺社を訪れる人の多くは願掛けや御利益を目的にしますが、八木さんは、よほど好きでなければ普段は足を運ばないだろうと話します。
(神社仏閣には)普通にしてても行かないなっていう、私もよっぽど好きじゃないと行かないなって思ってますけど。
八木さんのガイドが生まれたきっかけは、去年あわら市が社会実験として始めた、夜詣という企画でした。温泉街に回遊性を持たせる狙いの企画に、八木さんが自分なりのガイドを作って参加したのが始まりです。
知り合いに試してもらうと「面白いね」という反応が多く、八木さん自身もさらに調べたくなっていったといいます。
だからみんな、なんでこんな近くに3つあるのかわかってないんですよ。
八木さんによれば、地元の人にとっては当たり前にあるものなので、疑問にも思われません。しかし疑問を持って調べ始めると、面白い話がいくつも出てくるそうです。
土地を「読む」とまちづくりが動き出す
土田さんは八木さんのガイドについて、普通の観光ガイドとは違う、どこにもない内容だと評価します。八木さんは、知識の押し売りにはしたくないと前置きしたうえで、ガイドの根っこにある考えを語ります。
どんな土地でも、その土地を読む、これ面白さって私ガイドの時に言うんですけど、絶対ストーリーっていうか、何かしらあって。
それを読んでいくっていうか、紐解いていくと、絶対その自分たちの土地って面白く見えてくるんじゃないのかなっていう。
土田さんは、場所はまだ明かせないとしつつ、小さなまちづくりの相談を受けていると話します。昔から交通の要所だった場所がなぜか廃れてしまい、ハブとしての役割に立ち返って人の流れを取り戻したい、という相談です。
土田さんは、その相談への手がかりとして地名を挙げます。地名には必ず成り立ちやストーリーがあり、そこから過去・現在・未来をつなぐことで、再認識や新たな発見が生まれると考えています。
地名
成り立ちやストーリーの手がかりにする
過去
そもそもどういう成り立ちがあったかをたどる
現在
今の姿と照らし合わせる
未来
再認識や新たな発見につなげる
土田さんは、八木さんの企画を突き詰めると、以前から話している「あわら温泉は何を発信していくか」という問いに戻ってくると指摘します。ハードではなくソフトの一部として、動的な賑やかさとは違う静的な魅力を打ち出すのは、あわら温泉のブランディングの1つの方向性になりうるという見立てです。
インスタだけでは伝わらない?LPが担う役割
八木さんのガイドは、自分でも「めちゃ面白い」と思う一方で、申し込みはまだ少ないそうです。申し込みはGoogleフォームで受け付け、告知はあわら市の特設インスタグラムで行っており、市の公認企画として実施されています。
土田さんは、LPのようなものがあると企画内容がより分かりやすくなると話します。八木さんも、インスタグラムの写真や動画だけでは中身が伝わりきらず、テキストでなければ伝えられないことがあると同意します。
発信する側と、まあ受信受け取る側ってやっぱ違うと思うんですね。
土田さんは、受け取る側にとってテキストは今も重要で、どう表現すれば理解してもらえるかが大事だと語ります。そのうえで、LPはインスタグラムとはまったく違う立ち位置で使えるだろうと話し、八木さんも使い分けの必要性にうなずきます。
八木さんは、LPを作っておけば、ホテル八木に泊まっていない人でも申し込める流れができると考えています。これに対し土田さんは、仕事目線で見ると「誰でも参加できるのか」がLPからは分からないと指摘します。
これ社長のね、案内人で社長が出ていらっしゃるので、ヤギに絡む人しか行けないのかな。
八木さんは、宿泊していなくても参加できることや、地元の人も参加できるかといった点を「よくある質問」として加えると応じます。気づいた点は随時送ってもらい、差し替えていく方針です。
八木さんは、LPを作り込みすぎるとお金がかかり本末転倒になると話します。まずは簡易的に作って実験として回すというのが、八木さんの考えるLPの進め方です。
「小さく始める」は「とりあえず」とどう違う?
土田さんは話題を少し広げ、自身がLinkedIn ── ビジネス向けのSNS。職歴の公開や仕事上のつながりづくりに使われ、経営者や専門職が考えを発信する場にもなっていますに書いた投稿を紹介します。要点は「中途半端にするならやらない方がいい。ただし、小さく始めることは否定していない」というものです。
大きく始めちゃうとリスクが伴うじゃないですか。で、じゃあちっちゃく始めると。で、それも一つのやり方。
土田さんが問題視するのは、小さく始めることを「とりあえず」と勘違いし、本当に適当に始めてしまうケースです。土田さんはそうした取り組みを、検証もできない「ちっちゃな打ち上げ花火」にたとえています。
適当に始めるため、検証もできず効果もよくわからない
規模は小さくても、やることはやって発信し、検証と改善につなげる
土田さんは、八木さんのLPを中途半端だとはまったく思わず、まさに「しっかりやることはやって小さく始める」例だと評価します。八木さんも、ここに至るまでには相当考えてきたと応じています。
AI時代に問われるのは考える力
八木さんはAIを使う中で、成果物は簡単に作れるようになったと感じています。ただし、そこに至るまでの思考やプロセスが積み重なっていなければ、相手に届くものにはならないと話します。
AIとか使ってて思うんですけど、そのアウトプット成果物はめっちゃ簡単にできるようになったんですが、そこに来るまでの、やっぱりその思考とかプロセスが多分相当積み重なってないと。
土田さんも、ちゃんとインプットするかどうかでAIのアウトプットの質が変わると同意し、インプットの能力がますます求められると語ります。一方で、そこまで意識している人はまだ少ないのではないかとも話しています。
八木さんは、こうした力を持つ人材をどう育てるかが、中小企業にとって今後の課題だと考えています。何にでも疑問を持つこと、主体性のようなものを、スタッフに根づかせていく必要があるという見方です。
土田さんは、SNSで見かけるAI関連の広告がプロンプトなどのテクニック論ばかりで、「そもそも」の部分に誰も触れていないと指摘します。
八木さんは、人の育成は永遠の課題であり、経営者としてのライフワークでもあると語ります。最後に2人は、ガイドのLPをさらに揉みながら実装していくことを確認して、この回を締めくくっています。
まとめ
八木さんの寺社ガイドのLPをきっかけに、土地のストーリーを読み解く面白さと、小さく始めても考えは深くするという姿勢が語られた回でした。
- 身近な寺社や地名も、疑問を持って調べると土地の物語が見えてくる
- 静的な魅力を打ち出すことは、あわら温泉のブランディングの方向性になりうる
- インスタは入口、LPはテキストで中身を伝える場として使い分ける
- 小さく始めるのは「とりあえず」ではなく、今できる最良の状態で始めて検証すること
- AIで成果物は簡単に作れても、その手前の思考とインプットが質を左右する







