187名が見届けた「残火」、終演直後の反響は?
ダンサーのKAISEIさんは、踊場cueのソロダンス公演「残火」を10月31日に無事完走しました。今回の収録は、半年前、1か月前に続く3回目の出演で、踊場cueを追うポッドキャストシリーズの初回ゲストとして最後の回にあたります。
PUNCHしょーへーさんから「やってみてどうだったか」と聞かれたKAISEIさんの第一声は、とてもシンプルなものでした。
一旦、最高でした。
KAISEIさんが最初に反響を感じたのは、終演直後にロビーへ出たときです。来場者の表情に「よかった」と書いてあり、収録時点の終演5日後までに、連絡でも「よかったよ」「お疲れ様」という声が届いているそうです。
連絡いただいた方から「よかったよ」とか「お疲れ様」とか、グッと響いていただいたのもちょいちょい聞いてて。本当に幸せです。
PUNCHしょーへーさんは数字でも公演を振り返ります。ゲストはいたものの、休憩を含めて約90分ほぼ舞台に立ち続けたソロ公演に、招待客を含めて187名が来場しました。
ダンスイベントと違ってチケット代もかかり、舞台公演に慣れていない人もいる中で、1人のダンサーにこれだけの人が集まったことについて、PUNCHしょーへーさんは人柄とこれまでの活動のすべてが結びついた数字だと話しています。
PUNCHしょーへーさんが印象に残ったのは、開場の30秒前までKAISEIさんがホールを回り、一人ひとりに「お願いします」と声をかけていた姿でした。終演後には泣いている来場者も多く、スタッフもゲネプロから涙を流していたといいます。
「あれは実話?」ストーリーは曲に助けられて生まれた
公演を見た人から、KAISEIさんは「あれって実話なんですか」とよく聞かれたそうです。KAISEIさんの答えは、実話ではない、というものでした。
ここからは配信アーカイブで見られる期間中ということもあり、半分ネタバレを含めてストーリーの作り方の話に入ります。KAISEIさんによると、前半ラストの場面と、後半の終盤からエンディングまでは、構想の最初から変わっていません。
大体でこういう感じでこういう流れみたいなんはその時になんとなく考えながらで、でも探してる曲で「あ、これ合うかも」が結構、ストーリー、曲から助けもらったりしました。
KAISEIさんのやり方は、細かい台本を先に全部組むのではなく、ざっくり流れを組んでから、曲や場面に合わせて足し引きしていくものでした。完成したと思ったあとで「もう一展開欲しい」と感じ、増えたシーンもあったそうです。
先にやっぱ台本をしっかり組んで、ストーリーちゃんとこれでこれこれっていうのも、それはそれで自分もその力必要やなっていうのも今回感じたんですけど。
KAISEIさん自身は台本を組む力の必要性も感じていますが、PUNCHしょーへーさんは「初めてにしては上出来すぎる内容だった」と評価しています。
覆面はなぜ3枚あったのか
PUNCHしょーへーさんが気になっていたのは、目をくり抜いた覆面です。かなり前から「覆面を被る」と聞いていたものの、当時は全くイメージがつかなかったといいます。
本番では、その覆面が仮面のような役割に加え、休憩明けにまさかの入れ替わりを起こす演出にも使われました。ただKAISEIさんによると、作り始めた当初は覆面も、冒頭でほかの人にソロを踊ってもらう場面もなかったそうです。
後半のシーンに行った時に、あ、これ前半と一緒の始まり方したらおもろいかもと思った時に、僕じゃなかったらって思ったら、あ、これ頭から隠してたらみんな騙されるかもって。
最初の構想
覆面も、冒頭のほかの人によるソロもなかった
後半の発想
後半を前半と同じ始まり方にしたら面白いと思いつく
仕掛けの完成
冒頭から顔を隠せば、別の人でも観客は気づかないと考え、覆面を導入
覆面は布を切って縫い合わせた手作りです。サイズを調整するうちに、試作品も含めて結局3枚になりました。
KAISEIさんは、前半の最後で入れ替わる場面用には、あえて目のくり抜きがない覆面を用意しています。一番近くの観客が見たときに、目の穴があると気になるだろうと考えたためで、PUNCHしょーへーさんは「細かい気遣いだなあ」と感心していました。
PUNCHしょーへーさんは客席後方から見ていて、二部の仕掛けに観客が気づくタイミングの違いも観察していました。後方の人は早めに気づき、前方の人は中盤でようやく気づいて「え?どういうこと?」という顔をしていたそうです。2回見ると腑に落ちる作りなので、映像で見返してほしいと勧めています。
ダンスへの未練と、海の映像に込めた伏線
PUNCHしょーへーさんは、作品に登場するベストが「ダンス」を表していたのか、ダンスへの未練の物語だったのかを尋ねます。KAISEIさんは、物語の流れを次のように説明しました。
昔こうやって頑張ってた仲間がおって、やけど、やっぱこう大失恋やったりがあって、もう全部嫌ってなって。で、もうそっからも逃げ出してってしたけど、こう再会して。
そこからやっぱこう託されたものが残り続けて、最後にグッとこう引き戻してもらうっていう。
仲間との日々
昔、一緒に頑張っていた仲間がいた
挫折
大失恋などがあり、すべてが嫌になって逃げ出す
再会
離れていた仲間と再び出会う
引き戻し
託されたものが残り続け、最後に引き戻してもらう
終盤、主人公が海へ向かい、手で止められる場面は、事前に流した映像で海の中で踊るシーンとつながっていました。PUNCHしょーへーさんは、物語の要所が映像と結びついていた点を面白かったと振り返ります。
映像を担当したのは、映像も撮るダンサーのタツキさんです。KAISEIさんは「こういうストーリーで海で撮りたい」と伝えただけで、撮影場所の候補選びから、シーンごとの場所の提案まで任せたといいます。
特に反響が大きかったのが、道が分かれている場所での撮影です。タツキさんは見た瞬間に「絶対これ撮りましょう」と言い、歩いていく演出も決めてくれたそうです。
やからもう本当にそこも含めて一緒に作ってもらって。やから(タツキが)いなかったら完成しなかったです。
タツキさんは、KAISEIさんがゲストのユカさんと組むチーム「BLEACH」の最初のナンバーに13〜14年前に出演して以来の付き合いです。前日リハ、当日のゲネプロ、昼の部の終演後にもフィードバックをくれ、KAISEIさんは「心強すぎて」と話しています。
なぜ映像は二部の一度きりだったのか
PUNCHしょーへーさんが「憎い」と感じたのは、映像を二部のあの場面まで一度も使わず、その瞬間だけで使った構成です。舞台の映像はストーリーの補足に使われることが多い中で、今回は映像そのものがダンス作品として見せられていました。
KAISEIさんは別の場面で使うかも迷ったものの、その場面のインパクトを大事にしたかったといいます。さらに、映像を見る環境についての考えもありました。
映像作品ってどうしても、携帯やったり端末で見て、空気的にはやっぱ日常の自分の家やったり、電車とかで見てっていうのが、この流れの中でそのまま見てもらうっていうのが、見てる感覚も変わるかなと。
その場面は、主人公が自分の昔を回想するシーンでした。KAISEIさん自身も座って映像を見ることで、観客と同じ気持ちになれたらと考えたそうです。
PUNCHしょーへーさんも、KAISEIさんが椅子の向きを徐々に変え、最後は観客と同じ向きで映像を一緒に見る演出に触れ、一つひとつがつながっていると話しています。
ゲスト3人は電話一本で「OK」
公演には、KAISEIさんが「大好きで、大信頼」と語る3人のゲストが出演しました。出演の依頼は電話で、詳細を話した次の瞬間に全員が即答したそうです。
ゲストで出てほしくてって言った次の瞬間に「OKいける」ってみんな言ってくれて。
「じゃあちょっと確認して後日連絡します」じゃなくてやったんで、僕は逆に「ちょっと待って」ってなって。
3人とはそれぞれ長い付き合いで、KAISEIさんはその信頼を強く感じたといいます。ジャンルもタイプも違う3人で、関係を知る観客の中には、ユニゾンが始まっただけで泣いた人もいたそうです。
KAISEIさんがゲストを選ぶときに考えたのは、ストーリーへの合い方に加え、これまでの関係性と一緒に踊ってきた感覚を生かすことでした。関係を知らない観客には、また違う見え方になるとも考えていたそうです。
本番を重ねるごとに、ゲストのパフォーマンスにも変化が出ていました。ようこさんは、気持ちが入るにつれてKAISEIさんとの距離がどんどん近くなったと話していたといいます。
みなみさんとの後半の静かなシーンでは、不思議なことが起きました。KAISEIさんの肩に触れた手を下ろしていく場面です。
絶対喋ってないんですけど、「大丈夫です」って聞こえた気がして。
夜の部では、それまで握手で別れていたユカさんが、ラストでKAISEIさんを抱きしめました。KAISEIさんは「本当にずるい」と本人にも伝え、そのとき多分泣いていたと振り返っています。
公演中に涙を流すことには賛否があると承知しつつも、KAISEIさんは3人とのシーンを通して、ここまで一緒に歩んでこれたことへの感謝を強く感じたといいます。
客席の近さと、エンディング曲に込めた思い
今回の公演はステージだけでなく、フロアや花道の台も使われ、観客との距離がとても近い構成でした。PUNCHしょーへーさんは、どの席からも一度はKAISEIさんの表情がはっきり見える作りだったと話しています。
エンディングでは全員が登場し、About tonightが流れました。KAISEIさんは、この曲で終わることを構想の初めから決めていたそうです。
みんながソロを1人ずつ踊った最後に僕踊らせてもらったんですけど、自分で選んどいて、あの歌詞もう泣きそう。
PUNCHしょーへーさんは、「あとは家に帰って寝るだけだけど、素顔で自分を褒めろ」という趣旨の歌詞が、KAISEIさんのラストにふさわしかったと振り返ります。2公演目は特に盛り上がり、客席からKAISEIさんの名前を呼ぶ声も上がりました。
踊場cueとしての反省点もありました。座席をフロアに並べたため、後方の席からは見づらいという声があったそうです。
フロアに座席を並べたため、後方の席からは演者が見づらかった
ミニパイプ椅子を購入し、段差をつけてどの角度からも見えるようにしていく
これまではフロアだけ、ステージだけを使う公演が中心でしたが、今回は花道や壁際までホールを使い切る構成でした。PUNCHしょーへーさんは、ホールとしても次に向けたノウハウが得られたと感謝を伝えています。
グッズは5種類、お守りは5分で完売
PUNCHしょーへーさんは、グッズは1〜2種類だと思っていたそうです。実際には、Tシャツ、ステッカー、クリアアクリルシール、お守り、ポストカードの5種類が用意されました。
ポストカードは告知には載っておらず、公演の1か月ほど前に急きょ追加したものです。3枚入りのうち2枚はタツキさんの撮影で、フォトブースにも飾られていました。
物販スタッフのゆうきさんに準備段階から相談できたことが、物販に力を入れられた大きな理由だとKAISEIさんは話します。当日は、チームメイトで生徒でもある葵さんとアイさんも加わり、3人で販売を担当しました。
中でも反響が大きかったのが、KAISEIさんの手作りのお守りです。開場後5分ほどでなくなったと聞いたそうです。
お守りはレジンを固めて作るもので、4つほどまとめて作業しても、1つずつ磨いてコーティングする工程があります。1回の作業に4〜5時間は余裕でかかるといいます。
PUNCHしょーへーさんは、舞台を1人で準備しながら、これだけの手間をかけて作った思いが伝わったからこそ、多くの人が欲しいと感じたのだろうと話しています。開場前から購入時間を尋ねる人がいて、開演前に物販に列ができたのも印象的だったそうです。
グッズは、舞台をやるから作るだけで簡単に売れるものではなく、苦戦する例も見てきたとPUNCHしょーへーさんは言います。スタッフからも観客からも「もっとあったほうがいい」という声があり、KAISEIさんは「頑張るか」と次を見据えていました。
演技経験ゼロからの挑戦と、次にやりたいこと
公演のアーカイブは7日間で、日曜日に終了します。そのうえでPUNCHしょーへーさんは、ソロ公演を終えた今、次に何を思うかをKAISEIさんに尋ねました。
KAISEIさんは、舞台のために抑えていたチームや作品づくりの活動をもとのペースに戻すとしたうえで、改めて舞台が好きだと感じたと話します。
今回も演技っぽいことも挟んでみたんですけど、実際僕自身がその演技指導を受けたっていう経験とかもなく。ゼロです。
PUNCHしょーへーさんは、冒頭の麻雀シーンのようなコミカルな演技も、シリアスな場面も、長年やってきたかのように自然だったと驚きます。KAISEIさんは自分の動画を見ながら試行錯誤したそうで、演技の方面も学びたいと考えるようになりました。
KAISEIさんは、今回の公演で「もっとこう伝えられた」と感じた点を次のソロに生かしたいと語ります。さらに、生徒を巻き込んだ公演も少しずつ準備していく考えです。
見に来てくれた子が、あ、こういうのって楽しいな、やってみたいなと思ってくれる子が増えたらいいなっていうのも思って。
自分で踊り、作るだけでなく、それを生徒に伝えながら、舞台をつくる文化を周りに波紋のように広げたいというのが、KAISEIさんの次の目標です。
踊場cueに初めて生まれた「つながる物語」
PUNCHしょーへーさんは、半年前の収録で聞いた話を振り返ります。KAISEIさんは20代の頃から、師匠の一平さんの影響もあって舞台に憧れつつ、ダンス活動の忙しさから踏み出せずにいました。
今回、満を持して挑戦したことで、今度は下の世代にメッセージを伝える番になったのではないか、とPUNCHしょーへーさんは見ています。
公演には、TENのデュオ部門で踊場cue賞を受賞したNAADの2人と、TEN関東のソロ部門で踊場cue賞を受賞したメイさんも来場していました。2組は「めっちゃプレッシャー、頑張ります」と話していたそうです。
踊場cueは、舞台公演をやりたい人を後押しするプロジェクトとして始まり、これまでに十数団体が公演を行ってきました。PUNCHしょーへーさんは、TENで出会った人が公演を終え、それを追う人が現れるという流れが、今回初めて生まれたと話しています。
長尺の舞台だからこそ、作品の一瞬の良し悪しだけでなく、余韻や次へのつながりが積み重なる、とPUNCHしょーへーさんは考えています。今回の公演はPUNCHしょーへーさんにとってもターニングポイントとなり、KAISEIさんの次の舞台もまたぜひ同じホールで、と期待を伝えました。
KAISEIさんの「宣言」は?
喋場cueの恒例企画として、最後にゲストが「○○宣言」をします。PUNCHしょーへーさんの会社が掲げる「一生ダンサー宣言」にちなみ、今本気で心に決めていることを言葉にしてもらう企画です。
KAISEIさんは、今回の公演を通して一番感じたこととして、次の宣言をしました。
宣言の対象は、一緒に踊ってくれる人、支えてくれる人、生徒、先輩、見に来てくれた人たちです。PUNCHしょーへーさんは、公演期間中も周りへの感謝を伝え続けていたKAISEIさんらしい言葉だと受け止め、3回の出演と舞台公演への感謝を伝えて番組を締めくくりました。
まとめ
KAISEIさんの初めてのソロ公演「残火」は、187名の来場者に届いただけでなく、仲間との信頼や、次に続く人たちへのつながりも生む舞台になりました。KAISEIさんは、関わる人への感謝を胸に、生徒とともに舞台の文化を広げていく次の挑戦を見据えています。
- ストーリーは細かい台本からではなく、ざっくりした流れに曲から得た発想を足して作られた
- 覆面の入れ替わりは後半の構想から逆算して生まれ、観客の目線に合わせて3枚が用意された
- 映像は日常とは違う「舞台の流れの中」で見てもらうため、二部の一度きりに使われた
- 手作りのお守りは開場後5分ほどで完売し、物販は踊場cue史上最多の5種類になった
- KAISEIさんは「恩返しをしていけるよう踊って生き続ける」と宣言した




