実習報告会の季節に浮かぶ「何を発表すべきか」という問い
薬学部の実務実習は第3期が行われており、10月末で終わるため、残りは1か月を切っています。たいぞーさんは、残り1か月も患者さんと関わる機会を提供している受け入れ施設が多いのではないかと話します。
たいぞーさんが勤める薬局では、実習の終盤に必ず実習生の報告会が行われます。そのため実習の最後の1か月は、総まとめを過ごしながら、報告会の発表内容を選び準備に取りかかる時期になるといいます。
たいぞーさん自身も今回の第3期で実習生を受け入れ、報告会の準備をサポートしています。その中で毎回、学生は報告会でいったい何を発表すればいいのか、という問いが浮かぶそうです。
実習報告会で学生っていうのは一体何を、こう発表すればいいのかなというようなことをいつも思います。
自身の経験と現場で見た報告会は何が「もったいない」のか
たいぞーさんは6年制の教育課程を経て、2か月半の実務実習 ── 薬学部6年制課程で、学生が病院や薬局の現場で薬剤師業務を体験する臨床実習。病院と薬局でそれぞれ行われるのが一般的ですを受けて薬剤師になりました。実習中は病院でも薬局でも報告会があり、大学に戻ってからも成果報告の場で同級生の発表を聞いたといいます。
薬剤師になってからも、たいぞーさんは何人もの実習生と関わってきました。そうした学生の発表を見てきて、正直に言うと、かなりもったいないと感じる内容も多いと話します。
正直言うと、こう実務実習の発表会の内容っていうのが、まあ、かなりもったいないなというようなことを思うような、そんな内容のものも多数見かけるなということを思います。
たいぞーさんが挙げるもったいない発表の例は、薬局実習なら、在宅医療を見学した、学校薬剤師 ── 学校の環境衛生検査や薬物乱用防止教育などを担う薬剤師。学校保健安全法に基づき、多くの学校に配置されていますの業務を体験した、こんな薬を触った、といった内容です。病院実習では、経験した症例を紹介する症例発表が特に多いといいます。
たいぞーさんは、そうした症例や経験から学んだことはたくさんあるはずだと認めます。そのうえで、その話は本当にこの学生から聞かなければいけなかったのか、と感じるそうです。
その話はほんまにこの子から聞かなあかんかったのかなというようなことを思います。
大学で学んだことがこうした患者さんの治療に活かされていると経験しました、という症例発表を聞くと、たいぞーさんの頭には「で、君は一体何を思ったんだ」という問いがよぎるといいます。
報告すべきは「勉強の成果」か「教育機会の成果」か
たいぞーさんは、実務実習には、これまで勉強したことを使って臨床現場で仕事に近い形で薬剤師業務を経験するという面がある、と前置きします。そのうえで大事なのは、業務を経験したという事実そのものより、その事実を通して自分にどんな変化があったかだと考えています。
そのため、たいぞーさんは、実習報告会で語るべきは勉強の成果報告ではなく、教育機会を得たことによる成果報告ではないかと提案します。
在宅医療を見学した、こんな症例を経験した、など学んだ事実の紹介。現場の薬剤師には「それぐらいは知っている」内容になることもある
実習前の自分が何を考えていたか、経験を通してどんな変化が生まれたか。その学生にしか語れない内容になる
具体的には、実習に参加する前の自分がどんなことを考え、どんな思いで臨んでいたのかを語ります。そして学習機会を得たことで自分にどんな変化がもたらされ、それが自分にとってどういう意味を持つのかを語る、という流れです。
たいぞーさんによれば、こうした内容は自分の中にあるものなので、その実習生にしか語れない発表になります。症例の紹介は「勉強になる」と感じる一方、現場で働く薬剤師にとっては既に知っている話になることもあるといいます。
内的変化を語る発表は、指導薬剤師と学生に何をもたらすのか
たいぞーさんは、自分の中に生まれた変化や感覚、感情を実習成果として発表すれば、それはその学生にしか得られなかったものになると話します。
指導薬剤師にとって、そうした発表は、どんな機会を提供すると学生がどう変化するのかを知る手がかりになります。たいぞーさんは、学生との関わり方や、指導薬剤師としての実習への取り組み方を見直す機会にもなると述べています。
学生にとっては、自分の中の変化を捉えられるようになると、実習の経験が印象として強く残りやすくなるといいます。たいぞーさんは、それが薬剤師として働き始めてから、頑張っていく原動力のようなものになるのではないかと考えています。
変化を言葉にする
実習で自分の中に生まれた感覚や感情を報告会で語る
経験が強く残る
「あの時のあの経験が」と、実習の記憶が印象深く残る
原動力になる
薬剤師として働き始めてからの強みや頑張る原動力になる
たいぞーさんの軸をつくった病院実習の発表とは?
たいぞーさん自身、薬局実習の報告会では、こんなことを学びこんなことをやった、という取り組みそのものを発表したといいます。その発表も印象深く残っているものの、もう1つ忘れられない発表が病院実習でのものでした。
病院実習でたいぞーさんは、食事・睡眠・排泄などの生活から患者さんをみることを実践しました。得た情報を薬学的に分析し、患者さんの今の状態と今後の見立てを立て、カルテに記載して次につなぐという経験をしています。
生活からみる
食事・睡眠・排泄など、生活の面から患者さんの情報を得る
薬学的に分析
得た情報から、患者さんが今どんな状態かを考える
見立てを立てる
今後こうなるかもしれない、という見通しを立てる
カルテに記載
記録として残し、次の関わりにつなぐ
病院実習の報告会でたいぞーさんが発表したのは、この経験から得た気づきです。薬学部で勉強したことはこう使えると学び、今後はこうしたことに活かすと意識して勉強しなければいけないと気づいた、という内容でした。
これ(病院実習での発表)は非常に今も自分の中で大事な経験として残っていて、
(薬学で患者を語る実践の)軸を作るための経験のひとつだったなというふうに振り返ってみても思います。
たいぞーさんは、この病院実習での発表が、今の「薬学で患者を語る」という実践の軸を作るための経験の1つになっていると振り返っています。
学生と指導薬剤師に向けた、報告会を変えるための呼びかけ
たいぞーさんは、自分にしか語れないことを報告会で語ることが、学生自身が過ごした2か月半を総括するうえで非常に重要だと話します。
さらに、学習の内容だけでなく、どんな感覚や感情を育めたのかを発表してもらえると、指導薬剤師は、忙しい業務の中でも学生に関わってよかったと思えるといいます。
たいぞーさんは、報告会の準備を進める学生に、実習の経験を通して自分の中にどんな変化や感情が生まれたのかを考えてほしいと呼びかけます。学生指導に関わる薬剤師にも、学生がそうした気づきや振り返りをできる報告会にする関わり方を勧めています。
番組の最後には告知があり、たいぞーさんは来年2月14日に兵庫県姫路市で、薬剤師革命家りょうたさんと講演会を共同開催する予定だと話しました。会場と時間は未定で、お昼からの開催を考えているそうです。
この講演会では、臨床現場で専門知識を活かして働くうえでの課題と、それを突破する方法を、たいぞーさん自身の考えも交えながら参加者と考える予定だといいます。申し込みはまだ始まっていません。
まとめ
たいぞーさんは、実務実習報告会を、学んだ事実を並べる場ではなく、その経験で自分の中に何が生まれたかを語る場にしてほしいと提案しています。それは学生の成長の糧になり、指導薬剤師にとっても関わり方を見直すきっかけになると話されています。
- 見学した業務や経験した症例の紹介だけでは、その学生にしか語れない発表になりにくい
- 実習前の自分と、経験を通して生まれた変化を語ることで、自分にしか語れない成果報告になる
- 内的変化を言葉にした経験は記憶に強く残り、薬剤師として働く原動力になり得る
- たいぞーさん自身、病院実習での気づきの発表が「薬学で患者を語る」実践の軸の1つになった
- 指導薬剤師は、学生が気づきや振り返りをできる報告会になるよう関わることが勧められている


