なぜ「科目をバラバラに勉強していていいのか」と疑問を持ったのか
今回のエピソードでたいぞーさんが取り上げるのは、自身が学生時代に国家試験の勉強をしていたときに考えていたことです。
国家試験の勉強では、それまで学んできた様々な薬学の科目を一から復習し、総ざらいしていきます。たいぞーさんは、その一つひとつの科目をバラバラに勉強していることに疑問を持ったと話します。
この一個一個の科目をバラバラに勉強しているっていうのは、本当にこれでいいんだろうか
この疑問を、当時指導してもらっていた教員の先生とディスカッションする中で、一つの気づきにたどり着いたといいます。たいぞーさんはそれを勉強の考える軸として、実際に国家試験対策に使っていたそうです。
解剖生理学を出発点に、体はどう病気へ向かうのか
たいぞーさんが軸に置いたのは、まず「人の体がどういう構造で、どういう仕組みで動いているのか」を学ぶ解剖生理学です。解剖生理学 ── 人体の構造(解剖)と、その各器官がどのように働くか(生理)を学ぶ学問。医療系の学びで基礎に位置づけられることが多い。
解剖生理学で学ぶ「人一人の正常な状態」を中心に置き、そこから体が何かしらの変化を起こして病気になっていく、という流れで科目を整理していきます。
病気へ向かう変化のきっかけには、外的要因や環境要因などが影響することが多いといいます。たいぞーさんは、その病的な変化に向かうきっかけを突き詰めていくのが衛生薬学だと捉えていました。
一方で、そうした影響を打ち消して元に戻していく体の仕組みもあり、それがいわゆる免疫学にあたると説明します。
解剖生理学
人一人の正常な状態を学ぶ
衛生薬学
病的な変化に向かうきっかけを突き詰める
免疫学
外的要因などの影響を打ち消し、元に戻す体の仕組み
病態生理学
病気になったとき、体の仕組みがどう変わるかを学ぶ
予防の観点を通り越えた先に病気という状態があり、病気になったときに体の仕組みがどう変わるのかを学ぶのが病態生理学だと、たいぞーさんは位置づけています。
薬を使うと、なぜ体が元に戻るのか
病態生理学で変わった状態を、また正常な解剖生理の状態に戻していくために、薬を使うことが治療の選択肢になります。ここでたいぞーさんの整理は、薬に関わる科目群へと進みます。
どんな薬を使えばその病気を治療できるのかを学ぶのが薬物治療学です。そして、なぜその薬で治療が叶うのかを、薬理学や薬物動態学を使って読み解いていくと説明します。薬物動態学 ── 体内に入った薬が、吸収・分布・代謝・排泄というかたちでどのように動いていくかを扱う学問。
体の中に入った薬がどのように働き、どのように動くのか。それを踏まえて、どれぐらいの時期にどのような変化をもたらして体が正常に戻っていくのかを予測していくといいます。
さらに有機化学や製剤学という、薬そのものの知識も学びます。どういった特徴を持つ薬だからこそその変化を起こせるのか、薬が体の中で効くためにどのような設計や工夫がされているのかを理解した上で、体をより良くしていくことを学んでいくと話します。
こうして薬が働いた先で、また解剖生理学の最初に学んだ正常な状態に戻っていく。この一連の流れが、たいぞーさんの言う薬学の学びの基本です。
ミクロとマクロを往復して、人の体を薬学で読み解く
たいぞーさんは、様々な科目はそれぞれ単独で存在するのではないと強調します。一つの薬学という学習形態の中で、関連して起こる人の体の変化を読み解くためのものだという捉え方です。
解剖生理学が人の体そのものを学ぶ科目である一方、薬学部では細胞単位で人を捉える生化学や、遺伝子単位で体を捉える分子生物学なども学びます。
たいぞーさんは、こうした科目によって人の体をミクロにもマクロにも見ていき、その間を往復しながら、体への影響を薬学で読み解いていくのだと語ります。
解剖生理学で、人一人の体の構造と仕組みを見る
生化学で細胞単位、分子生物学で遺伝子単位から体を捉える
そして、これらすべてを薬学で読み解いていく営みを内包する形で、法律という枠組みの制度があると位置づけます。
さらに、エビデンスが構築されている臨床試験のデータが、実際に人に使ってどうだったのかという理論の裏付けとしてある、とたいぞーさんは整理しています。
科目をつなげて学ぶと、学習の深まり方はどう変わるか
様々な科目がつながっているという意識を持って勉強していると、それぞれの科目をバラバラに学ぶのではなくなる、とたいぞーさんは言います。
たとえば、ここで学んでいることはこの先のこういうことにつながっている、これを学ぶことで患者さんにこういう関わりができる、といった見え方に変わっていくといいます。
一人の患者さんを通して、全ての科目がつながって見えてくる
たいぞーさんは、この見え方を得たことで学習の深まり方がすごく大きくなったと振り返ります。
学んできた薬学を、現場でどう患者さんに活かすか
国家試験も先日終わり、次の年の国試に向けて勉強を始める学生もいれば、国試の問題を見聞きして改めて薬学を見つめ直している薬剤師も多い時期だと、たいぞーさんは語りかけます。
たいぞーさんは薬学の学問を、体系化されたとても良い学びが得られる素晴らしい学習形態だと評します。薬剤師の専門性の軸になるものがたっぷり詰まった宝物を、4年ないし6年の勉強の中で学んできていると表現します。
その学びを最大限に活かして患者さんに関われると、薬剤師はより良い医療を届けられ、患者さんがより健康に過ごせる時間や体を手に入れるお手伝いができる、とたいぞーさんは考えています。
たいぞーさんは、こうした学問のつながりも意識しながら、薬学で患者を語ることを現場の中で実践していきたいと述べます。
そして今回の放送を、薬学部で勉強することが人の体を読み解くためにどう活かされるのかを、改めて考えるきっかけにしてほしいと締めくくっています。
まとめ
今回のエピソードは、たいぞーさんが国家試験の勉強で抱いた「科目をバラバラに学んでいていいのか」という疑問を出発点に、薬学の各科目を一人の患者さんの上でつなげる思考法を語った回でした。
- バラバラに見える薬学の科目は、一人の患者さんの体の変化を読み解くためにつながっている
- 解剖生理学の「正常な状態」を起点に、衛生薬学・免疫学・病態生理学で病気への流れを捉える
- 薬物治療学・薬理学・薬物動態学・有機化学・製剤学で、薬がなぜ効いて体を正常に戻すのかを読み解く
- 生化学や分子生物学でミクロに、解剖生理学でマクロに、人の体を往復して見る
- 科目のつながりを意識すると学習が深まり、その学びを現場で患者さんに活かせる



