患者がよく聞く「この薬、強い?」という問い
この回でたいぞーさんが取り上げるのは、患者から寄せられる「この薬は強いのか弱いのか」という問いです。前回、この「強い」という言葉を患者と具体的に共有しておくことが大事だと話したうえで、もう一つ話しておきたいことがあるとして今回のテーマに入ります。
たいぞーさんによれば、薬の強い弱いは患者からの質問のなかでも多いものだといいます。特に、どの薬を使っている人がこの話題を出しやすいのか、個人的な感覚として3つの薬を挙げています。
挙げられたのは、降圧剤 ── 血圧を下げるために使う薬の総称。作用の仕方によって複数の種類があります、抗菌剤 ── 細菌による感染症の治療に使う薬。抗菌薬・抗生物質とも呼ばれます、そして睡眠薬です。これらを使っている人ほど、強い弱いを話題にすることが多いかもしれないと話しています。
同じ「血圧を下げる薬」でも働きは違う
たいぞーさんがまず大前提として説明するのが、同じ目的の薬でも体の中での作用が異なるものが複数あるという点です。降圧剤を例に、血圧を下げる治療に使っていても、作用の異なる種類が複数存在すると述べます。
そのため、血圧を下げる薬を飲んでいるAさんとBさんでも、実際には体の中で全然違う働きをしながら血圧を下げていることが十分あり得るといいます。
ここから問題になるのが、薬を切り替えたときの受け止め方です。Aという薬からBという薬に切り替えたときに、患者から「この薬の方が前の薬より強いんでしょう?」と聞かれる場面を、たいぞーさんは挙げます。
この問いに対して、たいぞーさんは単純に比較するのはとても難しいと考えています。働きが違う以上、強い弱いというより「前とは違う薬を使っている」という事実があるだけだという立場です。
(切り替えた薬が)強いかどうかというと、ちょっと明確に断言するのは難しいなということを患者さんには伝えるようにしています。
新しい薬は前より「強い」薬に切り替わったと考える
働きが違うだけで、強い弱いとは断言できない
比較するには何が必要なのか
では効果の差は本当に比較できないのか。たいぞーさんは、まったくそうではないと補足します。効果の差を論じるには、薬効を比較するために、人に対して薬を使う臨床試験 ── 人を対象に、薬の効果や安全性を確かめる試験。比較のためには試験の設計を整える必要がありますを、きちんとした試験デザインのもとで行う必要があると説明します。
それなら試験を確認すればわかるはずですが、ここに壁があります。すべての薬でそうした試験が行われているわけではないため、必要な情報になかなか行き当たれないことがあるといいます。
さらに、たとえ試験デザインを整えたとしても、思うように効果の差が確認できる結果が得られるとは限らないと述べます。単純に強さを比較するのは、やはり難しいというのがたいぞーさんの見方です。
作用時間や規格なら「事実」として比較できる
一方で、薬同士の比較が何もできないわけではない、ともたいぞーさんは考えています。作用時間の差や、体の中での働きの違いといった、事実ベースで語れることはあるという立場です。
例に挙げるのが睡眠薬です。睡眠薬には作用の持続時間が大きく異なるものが複数あるため、強い弱いというより「長く効く」「短く効く」という違いとして捉え、睡眠の困りごとに応じて使い分けるものだと説明します。
(睡眠薬は)強い弱いというよりも、長く効く、短く効く、そういった睡眠の困っている状態に応じて使い分けるということがあるんだよと。
もう一つ、明確に比較できるものとして挙げるのが同じ薬の規格違いです。同じ薬なら、5ミリより10ミリの方が薬の働きとしては強くなるため、規格違いは強い弱いという表現で比較できると述べます。
働きが違う薬同士
体の中での作用が異なり、強い弱いでの比較は難しい
試験があるか
薬効の比較には臨床試験が必要だが、行われていないことも多い
事実ベースの違い
作用時間の長短や規格の違いは事実として比較できる
規格が多くても「強い」とは言い切らない理由
規格違いなら比較できるとしても、たいぞーさんはそれを患者にそのまま「強い」とは伝えません。伝えるのは「これよりも規格、薬の量は多いですね」という事実だといいます。そのうえで、体に合うかどうかは飲んでみて確認するという立場です。
理由は、強さが患者の体の状態によって変わるからです。同じ血圧の薬を飲んでも、AさんとBさんで同じだけ血圧が下がるとは限らないため、強い弱いは安易に伝えられる情報ではないとたいぞーさんは考えています。
抗菌薬についても同じ質問をよく受けるといいます。ただ、抗菌薬もこの薬よりこの薬の方が強い弱いという比較はとても難しいと説明します。薬の働きが違うと、対応する菌の種類が違うためです。
症状が改善しない場合には、違う菌の種類にアプローチできる薬剤に変更することがあると述べます。ここでも「対応する菌が違う」という事実として伝えられることがある、というのがたいぞーさんの整理です。
「強い弱い」より、自分に合うかどうか
たいぞーさんは、薬の特徴を知れば知るほど、強い弱いという二元化した判断は難しくなると話します。それぞれの薬の特徴をきちんと捉え、患者の体に応じて必要な薬を使うのが最もよいという結論です。
大事なのは、薬単体の情報を知ろうとするのではなく、自分に使ってどうなのかという視点だといいます。それを患者ときちんと共有しながら薬を使っていくことを重視しています。
そして、薬を使ってみてどうかは薬剤師と一緒に状況を確認し合いながら判断していくものだと述べます。薬剤師としては、そのあたりを評価し、薬学で患者の状態を見ていくことが重要だとまとめています。
まとめ
たいぞーさんは、「この薬は強い?」という問いに対して、比較できることとできないことを分けて考える姿勢を示しました。働きの違う薬は安易に比べられない一方、作用時間や規格の違いは事実として伝えられ、最後は自分の体に合うかどうかを薬剤師と確認していくことが大切だと語ります。
- 薬の強い弱いは、降圧剤・抗菌剤・睡眠薬などで特に質問が多い
- 同じ目的の薬でも体の中での働きが異なり、強い弱いでの単純比較は難しい
- 効果の差を論じるには臨床試験が必要だが、すべての薬で行われているわけではない
- 作用時間の長短や、同じ薬の規格違いは事実として比較できる
- 薬単体の強さより、自分に合うかどうかを薬剤師と確認していくことが大切



