荷物は多い派?少ない派?
SNSの話に入る前、今井さんは青木さんの荷物がいつも少ないことに触れます。今井さん自身は、Mac、iPad、日傘、歯ブラシ、充電器、SDカードを読み込むアタッチメントまで持ち歩く「備えたがり」だといいます。
毎日iPadを持っているが、多分実際触ってるのは3日ぐらいなんですよね。
ただ、打ち合わせで「今iPadがあったら見せやすかった」という場面に出くわすと後悔するため、今井さんは重いカバンを手放せずにいます。
青木さんは、今井さんが「作る仕事」の人だから道具が要るのだと受け止めます。一方の青木さんは自分で文章を作ることもほとんどなく、チャットとZoomが中心なので、外出時はスマホだけで足りるといいます。
経営者インフルエンサーが口にする「スマホだけで仕事ができる」という主張について、二人は「あなただからですよ」と口をそろえます。
皆さんに支えられた結果として、あのスマホで仕事ができるってことなんで。
青木さんの外出時の荷物は、鍵も入る8グラムの小さな財布とスマホだけです。話はコンビニにあるチャージスポット ── 街中のコンビニや駅などに設置されたモバイルバッテリーのシェアリングサービス。借りた場所と別の場所で返却できますにも及びます。
今井さんは、チャージスポットが時間課金のため急速充電する動機がなく、充電がのんびりしていると指摘します。そのうえで、傘や電源のように「社会に預けられるもの」が増えてきたと話をまとめます。
青木さんのXが「告知垢」になった理由
本題のテーマは、SNSとの付き合い方です。今井さんは、誰にどう見られているかを気にし始めると、何を書いて何を書かないかの線引きが難しくなると切り出します。
Xのフォロワーは、今井さんが7000人ほど、青木さんは1万人を超える規模で、どちらも世間一般では上位数パーセントに入る立場です。
青木さんは、かつてXを自由に使っていた時期もあったものの、コロナの少し前あたりから、Xは「告知垢」のようになったと振り返ります。考えたことを共有する場ではなくなり、そこにモチベーションもないといいます。
対照的に青木さんのFacebookは、リアルで会って仲良くなった人だけを友達にしている場所です。青木さんはそこを「自分の楽屋」のような感覚だと表現します。
(Xでは告知)以外のことなんて、あんまめったに本当、四半期に1回ぐらいじゃない?
Facebookは「決裁者へのニュースリリース」?
今井さんのFacebookの使い方は、青木さんとは逆です。今井さんにとってFacebookは、ニュースリリースのような場所だといいます。
理由として今井さんは、Facebookが高齢化し、40代後半から60代ぐらいのアクティブな利用者が多いことを挙げます。その層は予算と権限を持っている可能性があるため、決裁者の皆様へ向けたニュースリリースという気持ちで書いているといいます。
もう[LinkedInみたいな感じだよね。もはやね、日本においてはね。
青木さんは、日本のFacebookはもはやLinkedIn ── ビジネス向けのSNS。職歴やスキルを公開し、仕事上のつながりや採用・営業に使われることが多いサービスですのようだと応じます。
一方の今井さんのXは、ある時期までは青木さんのFacebookに近い、友達に向けて考えを書く場所でした。しかしXでもそうした投稿がしにくくなり、怖さを感じるようになったといいます。
今井さんがFacebookを楽屋のように使えない理由は、アクティブな層に先輩が多い世代の問題だと二人は整理します。映画が面白かったといった緩い投稿をすると、面倒なことになりそうだと今井さんは感じています。
リアルで会って仲良くなった人だけとつながる「楽屋」であり、日記のような場所
予算と権限を持つ40〜60代へ向けた「ニュースリリース」の場所
Facebook投稿は「人格のすべて」かもしれない
青木さんは、Facebookの友達承認をかなり絞っています。名刺交換しただけの人は入れず、できるだけ何を言ってもいい場所にしているといいます。
さらに青木さんは、同年代でさえFacebookを見ている人が少ないことに、かえって安心感を覚えています。見られたくて書いているわけでもないからです。
青木さんは、年末年始に1年分のFacebook投稿をすべてコピーしてnoteにまとめる作業を、8年ほど続けています。誰にも頼まれていない行動だといい、自分のログや日記のようになっているそうです。
今井さんは、このnoteに助けられたと明かします。番組を始める際、今井さんはnoteをすべてNotebookLM ── Googleが提供するAIノートツール。読み込ませた資料をもとに、要約や質問への回答を生成できますに入れ、放送作家のノジ君とも共有してネタ探しに役立てました。
あそこに書いてあることがなんか僕の人格の全てかもしれないなとも思うから。
読み返すと「この頃にこのことを思いついたのか」「随分同じことを一生言っているな」とわかるため、青木さんにとってFacebookは楽屋であり日記でもあります。日記だからこそ全公開はしたくない、というのが承認を絞る理由です。
息子世代にとって「鍵なしX」は謎の自意識
青木さんは、大学生の息子が中学生の頃に交わした会話を紹介します。青木さんがXのアカウントを教えると、息子はフォロワーが1万を超えていることに驚き、「どういうモチベーション?」と聞いてきたそうです。
要するに、その知らない人全員に投稿を見せたいって、鍵かけてないってどういう心境?みたいなこと言われて。
息子が一番使っているのはDiscord ── ゲーマーを中心に広まったチャットサービス。サーバー単位でテキストや音声のチャンネルを作り、仲間内で交流できますで、友達同士で遊ぶ場が一番大事だといいます。XでもInstagramでも鍵をかけずに使う感覚が、息子には理解できないようでした。
青木さんはこの一言で、X活動が「ちょっとシュンとなった」と笑います。Xで活躍しているのは意外と40代前後のおじさん世代が多い、とも二人は話します。
なんか自分全然知らない人になんか届いたら面白そうとかないんだとか。いや、ないっしょっていう感じだったから。
Discordの心理的安全性とその甘え
今井さんにとって、かつて思考のログを置いていたのはXでした。それが難しくなった今、今井さんの思考ログは社内SlackとDiscordに移っています。
社内Slackはインターンを含めて10人ほどが見るだけで、反応はスタンプ2つ程度だといいます。今井さんは多少の寂しさを感じつつも、書き続けています。
今井さんが「喜んでもらえるはず」と思える場所は、自身が運営する編集の学校の卒業生が全員いるDiscordです。卒業生は人格を含めて今井さんを理解してくれているはずなので、隙のない文章を書く必要がないといいます。
例えばもしこう、ちょっとルッキズムに寄ったような発言とかしたとしても、今井さんは別に(そういうやつじゃない)っていう前提を持ってくれてるはずなんで。
ただし今井さんは、その場が自分を否定しにくい構造であることも自覚しています。そこに甘えてもいけない、と今井さんは付け加えます。
Podcastのファンコミュニティはオンラインサロンと何が違う?
今井さんによれば、最近はPodcasterの多くがリスナー向けのDiscordサーバーを持っています。イベントの実況スレッドや最新回の感想が立ち、有料の番組では音声の先行公開や編集前バージョンの配信も行われています。
例として挙がったのは「ゆる言語学ラジオ」と「奇々怪々」です。どちらも運営がサーバーを立てていますが、奇々怪々はかなり自治に任されていて、ゆる言語学ラジオはもう少し統制が効いているといいます。
青木さんが、かつてのオンラインサロンとの違いを尋ねます。今井さんが挙げた違いの1つは匿名性でした。
Facebookグループで実名。年齢や仕事が見え、本人が意図しなくてもマウントが自然発生した
何をしている人か本当にわからない。共通点は同じ番組が好きということだけ
今井さんは、ゆる言語学ラジオの水野さんの初単著の話も紹介します。バリューブックス ── 長野県上田市に拠点を置く書籍の買取・販売会社。オンラインでの古本・新刊販売を手がけていますで予約を取ったところ1万冊を超え、初版は1万5000部以上が確定しそうだといいます。
予定を超える反響に、水野さんたちはバリューブックスとの対策会議をDiscordで生配信し、ファンが集まって祝福しました。今井さんは、この使い方をうまくて面白いと評価します。
Xで自分の思想をどこまで開示するか
Xでは、自分の思想をどこまで開示するかが問題になります。今井さんは政治的な発言をしないようにしていて、社員にも、プロフィールに社名を入れている場合は何かの批判を控えてほしいと伝えているそうです。
誰がどうクライアントになるかわからない仕事だから、僕らは。
一方の青木さんは、書かないことを特に意識してはいないといいます。ただ、個人的に嬉しかったことを書くことさえ、タイミングや受け手の心持ちによっては誰かを傷つける可能性があると考えています。
なんかやらんでいいことで人を傷つけるのやだなみたいな。
仕事上の責任なら仕方ない部分もありますが、プライベートの範疇ではそうしたことは避けたい、と青木さんは話します。その結果として、自分で思っておくだけでいいと判断する場面が実際には多いそうです。
青木さんの基準は、何を言うかよりどういう場所で何が求められているかというTPOです。Xは個人としても経営者としても重要な場所ではないため、「アニメが面白かった」程度の話でさえ、そこで言う必要はないと考えています。
Podcastは素の自分を出せる場所
青木さんは、友人や知人から「あれ聞いてますよ」と言われるのが一番嬉しいといいます。今井さんも、この番組への印象的な感想を紹介します。
感想の主は、クラシコムで働いていた今井さんの学生時代からの友人と、その夫です。九州に移った二人は、番組をよく聞いてくれているそうです。
私たちってさ、今井君のこと全然知らないねって言ってるんですって。
15年から20年近い付き合いで互いのSNSも見てきたはずなのに、今一番今井さんのことが伝わっているのはPodcastだった、ということになります。
青木さんは、Podcastは厳密にはSNSではないとしつつ、今一番素に近い発信ができるのはこの番組だと話します。素に近い状態を先に聞いてもらってから仕事の話に入ると、前提がそろっていて話しやすいといいます。
窮屈でもXを消すのは怖い
オープンなSNSが窮屈になっている流れを認めつつ、今井さんはXをやめるのは非常に怖いと打ち明けます。
今井さんの会社では、インターンや社員の求人を100%Xとnoteで行ってきました。自身の編集学校の集客も同じで、人を集めることにコストをかけたことがほぼないといいます。
何かを書けば賛同した人が拡散し、「自分が学生だったら行きたかった」と添えてくれる。この恩恵があるため、フォロワーを増やしたいわけではなくても、Xを触り続けなければという気持ちがあるそうです。
今井さんは自分たちへの警鐘として、Xで求められるものの変化も語ります。
「こういう記事を作りました」「こんな仕事をしています」と書くだけで、未来への期待としてフォローされた
意見を言わないといけないし、言い切らないといけない。賛否を呼ばないと増えない
いや、俺らはそのSNS向いてないと。
「わかんないけどね」「知らんけど」という態度は大事だと思う一方、それではSNSでは流行らない、と今井さんは話します。
青木さんは、批判だけでなく想像を超えた賛同も怖いといいます。時事問題に対して、うまいことを言う大喜利のような空気になっているのかもしれない、と青木さんは見ています。
青木さんのXは2011年頃からあるため、フォロワーが多く見えるだけで、リーチは数百程度にとどまるといいます。
結果論としてフォロワー多く見えるけど、マジで誰にも届いてないよ俺のX。
若手はSNSで「好き」を見える化すべき
今井さんは、ほぼ更新されない青木さんのXをRSS ── ブログなどの更新情報を配信する仕組み。購読すると新しい記事が出たときに通知を受け取れますのようだと例えます。そうしたアカウントでもフォローすることには意味がある、と今井さんは考えています。
今井さんは若い人に、やりたい仕事があるならSNS上で「それが好き」と見えるようにしておいたほうがいいと勧めています。
今井さんが挙げたのは、ドラえもんの仕事の依頼が来た場合の例です。Xでドラえもん公式アカウントを開き、自分がフォローしている人のうち誰がフォロワーにいるかを確認します。
依頼が来る
例えばドラえもんの仕事の依頼が来る
公式アカウントを見る
自分がフォローしている人のうち誰がフォロワーにいるかを確認する
関心が可視化される
このデザイナーやライターはドラえもんが好きだとわかる
当たりをつける
喜んでやってくれそうな人に声をかけられる
逆に今井さんは、一緒に仕事をしたい人をXやInstagramでフォローしておくといいます。青木さんも、フォローは「あなたに興味がある」と伝える手段になると応じます。
なんとなく僕興味持ってるよみたいなのを示せるっていう意味ではいいツールだよね。
相互フォローは軽い「品質保証」
今井さんはさらに、SNSのフォローが軽い品質保証として働いている可能性を挙げます。
その青木さんがフォローしてるから、まあ、しょうもないやつじゃないんだろうみたいな。
青木さんは、Facebookでも「この人と友達なんだ」と見ることがあると同意します。ただし、美女アカウントのような詐欺アカウントにも知人が多数つながっていることがあり、何でも承認する人がいる以上、そこを信じきるのは危ういといいます。
わかりやすい偽アカウントならまだしも、営業担当者らしい雰囲気の相手だと見分けがつかない、と青木さんは話します。そのうえで、誰が誰をフォローしているかは確かに意識しているかもしれない、と締めくくりました。
まとめ
この回では、同じSNSでも人によって役割がまったく違うことが浮き彫りになりました。青木さんにとってFacebookは楽屋で、今井さんにとってはリリースの場です。Xは窮屈になりつつも、採用や「好き」の可視化、フォローによる軽い保証として手放せない存在であり、素の自分を伝える場所としてPodcastやDiscordが浮上しています。
- 青木さんはFacebookを会った人だけの「楽屋」兼日記に、Xを告知用に使い分けている
- 今井さんはFacebookを決裁者層へのニュースリリース、思考ログはDiscordやSlackに置いている
- Xは「言い切る」ことが求められる場になり、曖昧さを大事にする人には窮屈になっている
- 若手は好きなものをSNSで見える化しておくと、仕事の声がかかりやすくなる
- Podcastは長年の友人にも素の人柄が伝わる、SNSとは違う発信の場になっている




