アンケートで見えてきたリスナーの顔
『考えすぎフラグメンツ』では7月8日配信時点でリスナーアンケートを実施中で、あと1週間回答を受け付けていると今井さんが案内しています。音声の中でアンケートに触れるのは、この回が初めてです。
青木さんは、誰がなぜ番組を聴いているのかをずっと知りたかったと話します。ポッドキャストはリスナーがリアクションを返すハードルが高く、再生数も大きく上下しないため、反応を感じにくいメディアだといいます。
(ポッドキャストの)リアクションはさ、ハードル高いじゃない。
今井さんも、番組の話題はよく言えば普遍的、悪く言えば時流に乗らないので、当たり回も大外しもないと補足します。だからこそ、アンケートで聴き手の興味がわかったのは大きな収穫だったようです。
回答の中には、収録場所を変えてビデオポッドキャストにした直後の回について、「映像にすることで面白さが目減りするのは、されなくてもいいのでは」という温かい指摘もありました。二人は、この画角にも少し慣れてきたと振り返っています。
「人を見る目」は年齢で鍛えられるのか?
この回のテーマは「人を見る目は年を重ねると鍛えられるのか?」です。今井さんは、年齢を重ねるうちに「信頼できそうな人」「距離を詰めすぎないほうがいい人」を直感的に判断するようになる、その中身を紐解きたいと切り出します。
青木さんは、自分より十何年若い今井さんのほうが、仕事柄はるかに多くの人を見ているはずだと言います。いろいろなクライアントと組む今井さんは、変な相手と仕事をするリスクも大きく、判断の回数も多いという見立てです。
今井さん自身は、編集者になってしばらくした頃、先輩との飲み会で「超能力を1つ手に入れるなら何が欲しいか」と聞かれた経験を明かします。当時は書籍編集をしていて、才能のある人に出会えるかどうかが仕事を大きく左右していました。
当時僕書籍の編集してて、書籍の編集ってやっぱその才能に合うかどうかみたいなのが非常に大事なので、才能スカウターみたいなのが欲しいですみたいな。
今も記事1本をつくるにも、ライター、フォトグラファー、デザイナーと組む必要があります。今井さんの仕事は、人と組むかどうかの判断を日常的に重ねる仕事だといえます。
直感は変わらず、説明できるようになっただけ
青木さんは、会社員時代から独立後にかけて、今井さんの人を見る感覚が変わったのかを尋ねます。今井さんの答えは「基本的にはあまり変わっていないかもしれない」というものでした。
今井さんによれば、昔から直感的に「素敵な人だ」「面白い」と感じた人たちについて、年を取るにつれて「やっぱりそうだよな」と理由を説明できるようになってきたといいます。実際に、のちにとても有名になった人と、その前から知り合いだったことも何度かあるそうです。
今井さんが人を見るときにいちばん気にするのは、才能や強さよりも、チャーミングかどうかです。クライアントに対しても同じ観点で見ているといいます。
一番は僕はそのやっぱなんか、チャーミングかどうかみたいなところを見るかもしれないですね、クライアントさんとかでも。
青木さんは、今井さんには「大怪我をしていなさそう」な印象があると言います。同業者には、大怪我をしてネタを抱え、それが面白さになっているタイプもいますが、今井さん本人も自分は慎重なほうだと認めています。
自己紹介で「前職」が先に出る人に身構える理由
では、今井さんはどんな人を危なっかしいと感じるのか。特定の誰かではない架空の例として挙がったのが、自己紹介でいきなり前職を言う人です。
今井さん自身は元リクルートの編集者で、現在はツドイの代表ですが、それは「どんなキャリアなんですか」と聞かれたら答えるものだと考えています。キャリアを聞いた瞬間に大学名を答える人にも、同じように反応するといいます。
それはじゃあ何か、例えば今に自信がないってことなのか。(そういう人には)ちょっとセンサーが動きますね。
青木さんも、聞いていないのに親がすごいという話をする人や、世の中で「すごい人」とされる人との関係を最初に放り込んでくる人には身構えると共感します。後から自然にわかるなら「え、何それ面白い」となるのに、冒頭に並ぶと警戒してしまうそうです。
一方で今井さんは、それが一長一短だとも話します。立食パーティーのようなネットワーキングの場では、短時間で自分の全貌をわからせるために言ったほうがいい場合もあるからです。
今井さんは自分で言うのが苦手なので、そうした場には誰かと一緒に行き、お互いを紹介し合いたいと話します。自分で言わずに済む他己紹介のほうが、気持ちよく伝わるという感覚です。
多弁さは、自信のなさを隠す「塩」なのか
今井さんに理由を聞かれた青木さんは、最初にそうした情報が来ると、心のシャッターがスッと降りる感覚があると言います。その背景には、怪しい販売サイトや情報商材のプレゼンの手口との類似があるようです。
青木さんによれば、高額なものを売られそうな場では、前提が怪しいからこそ、怪しくない権威付けの情報が大量に出されます。今井さんが「海外のお医者様が」と例えると、青木さんは「ローマ法王が」くらいの話まで出てくると応じます。
(初対面で)実は僕、誰々さんにはお世話になっててって。それはさ、僕との共通の友人とかだったら全然それありだと思うんだけど。
青木さんが引っかかるのは、自分も面識のない有名人との関係を、初対面の自己紹介に混ぜてくるケースです。今井さんはそれを料理に例えて言い表しました。
「悔しい」で相手の関心を引きにいかない
ただ青木さんは、そうふるまう人には悔しい思いをした経験があるのだろうとも感じています。青木さん自身、事業を始めた頃は実績がなく、誰からも相手にされない時期がありました。
恋人探しや友達探しではなく、自分の仕事にプラスになる相手を探す場では、何のメリットも提供できない人は相手にされないのが当然です。青木さんは、そこで悔しいと思わないようにしていたといいます。
いや、じゃなくて、(悔しいと思うと)そういうことしたくなるじゃん。その解決したくなるじゃん。
悔しさを解決しようとすると、「次は今井さんと知り合いだと最初に言おう」と考えてしまう、と青木さんは例を挙げます。話すそばから相手がみるみる関心を失っていくのを感じることは、今でもあるそうです。
青木さんが特に関心を持たれにくいと感じるのは、アーティストや研究者、そして大企業でキャリアを積んできた同年代の人です。歩んできた道が違いすぎて参考になることもないため、興味がないのも無理はないと受け止めています。
だからこそ青木さんは、失った関心を取り返そうとしないことに、いろいろな場面で気をつけているといいます。
成功者と比べるほど、「悔しさ」は無限に増えていく
青木さんがそう考えるようになったのは、若い頃に近くで見ていたある経営者の姿がきっかけです。その人は一代で数十億円規模の売上を立て、大きな家を建てるほど成功していました。
ところが社長たちの集まりでは、その経営者は格が低く見られていたようです。悔しさをばねにさらに成功しても、その上にはまた別の世界があり、また悔しがることになります。
だから俺、それ見てて、もうこれ悔しいの。無限地獄じゃんってその時思って。あ、もう絶対悔しがるのやめようって思ったのね。
青木さんが区別しているのは、悔しさの対象です。自分の仕事が思うようにいかないことへの悔しさはあっても、他者が自分の仕事や状態にどう関心を持ち、どう評価するかを悔しがると、その悔しさに支配されてしまうといいます。
相手にされない
実績がない時期や、上の世界の人たちから関心を持たれない
悔しさが生まれる
他者からの評価を取り返したくなる
すごさで引きつける
有名人との関係など、相手の関心を引く情報を並べる
うさん臭くなる
本当につながりたい相手とうまくつながれなくなる
今井さんが「関係のない銀行員にも、素敵な人だと思われたくないか」と尋ねると、青木さんは思われたいと率直に答えます。それでも、どの分野にも自然に関わってくる人はいるので、そういう人と関係を作れる自分でいたいと話します。
誰からも興味持たれようと思うと、かえってそういう本当につながりたい人とは繋がれなくなっちゃうから。
第三者の名前を「傘」にして話す人の危うさ
今井さんが挙げたもう1つの警戒ポイントは、第三者の名前を出して、その人の威光を笠に着る話し方です。それ自体が怪しいうえに、もっと気をつけるべき点があるといいます。
ほんと気をつけた方がいいのは、その人とは目の前のやつの方が仲いいかもしれない。
今井さんは架空の例として、若いスタートアップの経営者が「青木さんにメンターをやってもらっている」と自分に言ってきた場合を挙げます。青木さんと親しい今井さんからすれば、まずポッドキャストを聴いてほしいという話になってしまいます。
今井さん自身、実際に何度か、名前を出された人がそういうことを言わないとわかっていたり、その人がこの相手を可愛がっていないと知っていたりする経験があるそうです。
年齢を重ねて身についた「判断を保留する」技術
今度は今井さんが、青木さんに人を見る目が鍛えられたかを尋ねます。青木さんも、直感的に感じるもの自体は変わっていないと答えます。
なんだけど、昔の方が自分の直感を信じて行動できなかった。
昔の青木さんは、違和感があっても「こういう経歴だから期待できる」とロジカルに考え、すごい人の名前を出されることにも惑わされていたといいます。一方で、判断を保留できず、直感に従いすぎて早めにシャットダウンしてしまうこともありました。
アラートが出ても焦りや欲、強すぎる好奇心で距離を詰めすぎる。逆に早めに遠ざけてしまうこともある
警戒はしつつ一回判断を保留し、交流を続けながら見ていく
判断を保留して付き合いを続けると、合わなそうだった人の好きなところが見つかり、仲良くなるケースもあるそうです。青木さんは、その距離感が年ごとにいい塩梅になってきたと話します。
40歳になった今井さんは、人への見方を変えることも挙げます。以前は嫌だと思っていた部分が、自分の見方の誤りなのか相手の変化なのかはわからないものの、今はもうないかもしれないと感じることがあるそうです。
嫌な人はいない、こちらが弱いだけ?
青木さんは、本当に嫌な人はそういないと言います。すごい人の名前を出してしまう人も、悪意というより、その人なりの切なさや困りごとが影響していると考えています。
青木さんによれば、こちらに騙されずリスクを負わない能力さえあれば、そうした人とも付き合えるはずです。遠ざけなければならないのは、こちらにダメージを食らう弱さがあるからでもある、という見方です。
要するにひ弱だから、ちょっと乱暴なやつとは(一緒にいると)振り回されちゃうみたいな。
青木さんが「山の不動」のようにどっしりしていれば平気だと言うと、今井さんは「北斗の拳ね」と返します。ただ青木さんは、会社や家族など責任を持つ立場では変なつながりを引き寄せると周囲に迷惑がかかるので、慎重であるのはしかたないとも話しています。
新しく組む相手を、どう多角的に知っていくか
今井さんもチームに迷惑がかかることを意識しており、新しく仕事をする相手については、クライアントでも依頼するクリエイターでも、特にがっつり組む場合は多角的に情報を集めています。
クライアントなら、その会社に別の知り合いがいれば「どんな感じ?」と聞き、さらにSNSも見るそうです。何をしていてもかまわないけれど、自分たちと合うかどうかを確かめたいといいます。
青木さんも、作品は見えていても人柄がわからないフリーランスと組む場合、SNSで発信してくれていると手がかりになると同意します。個人を知るうえでは、SNSがあるほうがずっと楽だという結論です。
アートの才能がある人につい身構えてしまう
今井さんは、自分にはデザインやアートを作る才能がまったくなく、そこにコンプレックスがあると打ち明けます。そのため、デザイナーやアーティストに会うとビビってしまうそうです。
デザイナーとはたくさん仕事をしてきたので、ユニクロを着ている姿を見て「同じ人間だ」と感じるなど、今では普通に話せるようになりました。それでもアーティストやミュージシャンとは、何を話していいかわからなくなるといいます。
青木さんは、アーティストだから難しいというより、共通の素材が見つからないことが難しいのだと整理します。過去に一度もないものの、仮にギャルと対談することになったら、アーティスト以上にどうしていいかわからないだろうと例えます。
青木さんがアーティストとよく話すのは、「アーティストにとってのいい仕事とは何か」や、他のアーティストのどこを見て「うまい」と思うかです。もう1つが、作品をいつ終わりにするかという問いです。
その実は完成って種類あって、もうどこにも行けないから、これはその失敗なんだけど、ここで終えるしかないっていう、(将棋の)投了みたいな終わり方することもあるんだみたいな話は面白いなみたいな。
元警察官の後輩が語る「逮捕」のアドレナリン
今井さんがいろいろな人に会ったときによく聞くのは、「どの瞬間にいちばんテンションが上がるのか」です。デザイナーなら、いいものができたときか、ウケたときか、ウケた相手はクライアントか一般かなど、答えは本当に人それぞれだといいます。
警察官の後輩に聞いたときの答えは「逮捕」でした。言わなくていいのにドラマのように「確保」と言ってしまうほどで、現行犯を追い回して捕まえたときのアドレナリンはすごいそうです。
違う経験を持つ人と、共通の土台をどうつくるか
この話から青木さんは、相手の立場になってものを見ることが、人を見るうえでとても役立つと気づきます。たとえば元警察官の編集者志望が面接に来たとき、どう共通の土台を作って話すかで、相手の本当のところが見えてくるといいます。
何にもこっちがそういう用意なく、その逮捕の瞬間がぶち上がりますね。だけ聞いたら、ちょっとやべえやつかなとか思っちゃうじゃん。
自分にとっての「確保」は何かを念頭に置いて聞けば、「それはそうだわ」と納得でき、「じゃあこういうときはどうなの?」と自然に質問も出てきます。共通の土台がないと、相手が言った事実だけで判断しなければならなくなります。
青木さんは、判断を保留できることはかなり高度な技術だと考えています。それができないと、結局は相手の言葉で判断してしまうため、うまいことを言う人が実際に成果を上げているのだろうと話します。
有名人と知り合いだと言われたときも、「そういう人とはどんな瞬間に仲良くなるものなんですか」と聞けば、自分が誰かと仲良くなった経験と照らし合わせて、話のリアリティを判断しやすくなるといいます。
見る目より「対話する技術」のほうが鍛えられている
青木さんの結論は、見る目そのものはあまり変わっていないけれど、対話する技術は間違いなく上がっているというものです。
青木さんは、見た目や言葉から予想するのではなく、対話を通じて事実として確認できたことを判断している感覚が強いといいます。予断を持たずに話を聞き、「なるほど」と思えるまで聞き続けるため、見る目に頼らずに人を判断できるようになったという考えです。
こう見えるし、こういうことを言うから、こういう人かなと予想する
判断を保留して聞き続け、対話の結果として浮き彫りになった事実で判断する
今井さんは、ツドイが青木さんと仕事を始めたときを振り返ります。食事、打ち合わせ、挨拶、また食事と、2回ほど打ち合わせを重ねましたが、「見極められている」というプレッシャーより、単純に合うかを見ている感じがあり、ストレスがなかったそうです。
なんか単純に合うかどうか見てんだよなみたいな。だからストレスなくてなんかありがたかったです。
青木さんは、そのときは直感で一緒にやりたいと思いつつ、具体的に何をすればいいかを探っていたと振り返ります。警戒していたら、相手に「品定めされている」と受け取られたかもしれないとしつつ、やはり対話はすると話を締めくくりました。
まとめ
人を見る目は年齢で鍛えられるのかという問いに対し、二人は直感そのものはあまり変わらないと語ります。変わったのは、判断を保留する余裕と、違う経験を持つ相手と共通の土台をつくって対話する技術でした。
- 初対面で前職や有名人との関係を先に出す人には身構えるが、その背景には悔しさや困りごとがあるかもしれない
- 他者からの評価を悔しがると無限地獄になるため、関心を取り返そうとしない
- 直感でアラートが出ても、すぐ遠ざけず判断を保留して交流を続けると、仲良くなれることもある
- 相手にとってのいい仕事や、テンションが上がる瞬間を聞くと、違う経験の人とも共通の土台がつくれる
- 見る目に頼るより、対話を重ねて事実として確かめることで人を判断できる




