ドキュメンタリー好きへの憧れから見始めた1本
吉田さんは最近、ドキュメンタリー番組を見るのにハマっているといいます。もともとは全く見ていなかったものの、仕事のできる尊敬する先輩が「ドキュメンタリーが好き」と話していたことがきっかけでした。
いつか俺も、ドキュメンタリーを嗜む人間になりたいなって思ってたんだけど。
ヤベさんも、ドキュメンタリー好きという趣味そのものに「かっこよさ」を感じると同意します。エンタメの入り口にはなく、奥にあるものだからこそ憧れるという感覚です。
その短歌好きとかおんなじぐらいかっこいい、ドキュメンタリー好きって。確実に奥にあるからかっこいいんだよな。
そうして何本か見た中の1本が、今回の話題になる作品でした。
『マノスフィアの真相にあるもの』とは何か
吉田さんが取り上げたのは、Netflixで今年3月に公開された『ルイ・セロー:マノスフィアの深層にあるもの』です。ヤベさんはタイトルを全く知らず、前半の説明が「何を言っているかさっぱりわからなかった」と正直に反応します。
作品は、ネット上で広がる男性至上主義や反フェミニズムのコミュニティ「マノスフィア」の実態に迫る内容です。ルイ・セローさんが、その現象が過熱しているというアメリカ・マイアミに乗り込み、活動するインフルエンサーたちに直接取材していきます。
そもそもマノスフィアとは何か。吉田さんは、男性を意味する「マン」と、空間や領域を意味する「スフィア」を組み合わせた造語だと説明します。
男性空間とか、まあ男コミュニティみたいなニュアンス、和訳するとなんだけど。
ヤベさんが「ホモソーシャル的なことに近いのか」と尋ねると、吉田さんは近いと認めつつ、より過激だと補足します。男はマッチョで働き、女性を従えるものという思想だといいます。
3人のインフルエンサーと「ビジネスの正体」
作品では、マノスフィアのインフルエンサーと呼ばれる3人がそれぞれ取材されます。吉田さんによると、1人目はゴリゴリのマッチョで、「男は女を従えろ」と主張するタイプの人物です。
この1人目は、自分の会員制コミュニティへ人を誘導したり、セクシー女優が出演する動画を販売したりして、思想をビジネスとして成り立たせているといいます。
2人目は、スーツを着たパリッとしたビジネスマン風の人物で、不動産エージェントを名乗ります。「金持ちになればこの豪華な部屋に住める」と語り、自分の投資ツールの購入をすすめる流れになっていました。
俺は金持ちだから、いろんな女性と関係を持ってるし、それを妻は認めてるんだ、どうだ、すごいだろ、みたいな。
この展開に、ヤベさんは思わず「それ、話が変わってる気がする」とツッコミを入れます。思想の話が、いつのまにか物販や投資ツールの勧誘に着地している構造です。
あ、これビジネスじゃんっていう。
3人目は、番組内の吉田さんたちのように、ビデオポッドキャストをやっている人物です。8人ほどで男女を議論させ、過激に相手を中傷したり、ライブ配信のコメントを読み上げたりするイベントで収益を上げているといいます。
思想で人を集める
「男は女を従えろ」「金持ちになれ」といった過激な思想で注目や共感を集める
コミュニティへ誘導
会員制コミュニティやイベント、ライブ配信の場へ人を引き込む
商品・ツールを売る
動画販売、投資ツール、有料イベントなどでお金に変える
吉田さんは、最初は男性のメンタルヘルスや生きづらさ、思想に至る変遷が見られる作品かと思っていたと振り返ります。しかし実際は、その裏でビジネスが動いている構造を暴く方向へシフトしていったといいます。
その思想で人を集めて、それを金に変えてみたいな感じでやってんだ。
ドラマ『アドレセンス』とSNSアルゴリズムの怖さ
作品を見終えた吉田さんは、Netflixのドラマ『アドレセンス』を思い出したといいます。13歳の少年が同級生の女の子を殺害した容疑で逮捕される、後味の厳しい作品です。
吉田さんによると、主人公の少年ジェイミーは、いわゆる弱者男性のようにクラスメイトの女の子から冷たくされ、傷を負っていた人物として描かれます。そして、その背景にマノスフィアの思想がありました。
この少年はマノスフィアの思想にSNSとかを通じて割と染まってて、そういう描写があるのね。
終盤、少年に女性のカウンセラーが話を聞く場面で、少年が豹変します。「女なんだから俺に従え」といった、13歳とは思えない激しい言動でざわつかせたまま物語は終わるといいます。
吉田さんは、この構造をSNSのアルゴリズムと結びつけて語ります。ユーザーが長く使うように過激なコンテンツが無慈悲に当てられ続けることで、思想が寄っていくという指摘です。
自分の趣味がどんどん寄ってって、そういうのしか出てこなくなって、どんどん思考とか思想が先鋭化していってみたいなのは怖いよね。
特にティーンの子は判別がつきづらく、より過激になりやすいといいます。ドキュメンタリーでも、若い男の子2人がインフルエンサーに会って目を輝かせ、「成り上がって女を侍らせたい」と語る場面があり、そのリアルさに恐ろしさを感じたと吉田さんは話します。
弱者が強者に影響されるという「グロさ」
ヤベさんは、この構造そのものへの違和感を口にします。マノスフィアと聞いて最初は、虐げられた弱者男性の側の話だとイメージしていたといいます。
そのインフルエンサーサイドが割とこう強者寄りというか、社会的にも一定の成功されててみたいなのに違和感あったんだけど。
つまり、思想を広めているのは社会的に成功した強者で、その影響を受けているのは立場の弱い人たちだという構図です。ヤベさんは、これを歓迎できる事態ではないと語ります。
男子校とマノスフィアの隣接性
話題はここから、2人自身の中高男子校時代へと飛び火します。吉田さんは、時代が違っていたら自分たちも危うかったかもしれないと本音を漏らします。
時代が違ったら危うかったなっていうのはすごく感じるところでございますね。
ヤベさんも、良くはないと前置きしつつ、男子校という環境がそうした思想に隣接していると感じると同意します。
なんか良くないと思うけど、やっぱ男子校ってそういう思想に隣接してるよね。
吉田さんは特に、中学の方がその傾向が強かったと振り返ります。中高男子校で過ごした自分にとって、中学時代は女性との距離を一層遠く感じていたといいます。
ヤベさんも、高校の方が中学から共学出身の生徒が入ってきたり、他校との接点があったりして多様性があったと語ります。一方、中学は「本当によくわからないけど遠かった」環境だったと振り返ります。
思想が先鋭化されていくよね、あの環境ね。
話は、TikTokが流行する今の中学生の状況にも及びます。ただし2人は、当時の自分たちや、仮に過激化しているとしても今の中学生が「悪」なのかといえば、決してそうではないと確認し合います。
男子校は風前の灯火なのか
議論は、男子校をなくすべきかという問いへ広がります。ヤベさんは、多様性という言葉が、見る範囲によって意味が変わることを指摘します。
1つの学校の中に多様性を作るなら女性を入れた方がいい。しかし社会全体で見れば、男子校も女子校も共学もあった方が多様だという整理です。
どの範囲で見るかによって意外と変わったりもするから。
そこへ吉田さんが、友達から聞いた話として、そもそも中学の男子校・女子校は全体の中でごく少数だと持ち出します。
我々今純度100%の男子校野郎だから認識してなかったけど、めっちゃ全体からして少ないんだって。
友人の8割ほどが男子校出身という感覚のせいで気づいていなかっただけで、実際はすでに淘汰され、かなりのマイノリティになっているらしいといいます。
ああ、確かにそう考えるともう風前の灯火だ。
ヤベさんは、明治や大正の頃は男子校が多かったのに、そこから減り続けてきたのだろうと推測します。共学化する学校は聞くものの、その逆はほとんど聞かないという実感も重なります。
共学化する学校は聞いたことあるけど、男子校化するっていうのは聞いたことない。
ジェイミーは普通部に来た方が良かった?
最後に2人は、ドラマ『アドレセンス』の主人公ジェイミーに話を戻します。ジェイミーは共学の男の子で、インセルと呼ばれ、非モテとして深く傷ついていた人物でした。
ヤベさんは、そういう意味ではジェイミーは普通部(男子校)に来た方が良かったのではないか、と半ば冗談めかして語ります。虐げられず、傷を舐め合う仲間がいるからです。
クラスメイトの男の子ですごいかっこいい子には、その女の子はもうメロメロみたいな。自分と全然態度違うっていうのをまざまざと見せつけられるわけだから。
共学だからこそ突きつけられる格差が、男子校にはない。2人はそこに、男子校という環境の別の側面を見出します。
普通部そんなことないよ。全員弱者男性みたいなことになるんだから。
吉田さんは、面白そうだと気楽に見始めたドキュメンタリーが、思いがけず自分の学生時代へ刺さってきたと締めくくります。マッチョとインテリの話かと思ったら、なぜか普通部を思い出していたというオチです。
考えさせられたわ。自分の人生とか普通部というものを。
まとめ
Netflixドキュメンタリー『マノスフィアの真相にあるもの』を入り口に、2人は男性至上主義がインフルエンサーのビジネスとして成り立つ構造を語り合いました。話題はドラマ『アドレセンス』やSNSのアルゴリズム、そして自分たちの男子校時代へと広がり、笑いを交えつつも「時代が違ったら危うかった」という本音がこぼれる回になりました。
- マノスフィアは、過激な思想で人を集め、コミュニティやツール販売へ誘導するビジネス構造を持つ
- SNSのアルゴリズムは過激なコンテンツを当て続け、特にティーンの思想を先鋭化させやすい
- 思想を広める側が強者で、影響を受けるのが立場の弱い人たちという構図に2人は違和感を語った
- 男子校という環境はそうした思想に隣接しやすいと2人は振り返り、特に中学時代の距離感を挙げた
- 中学の男子校・女子校は今や少数派で、男子校は風前の灯火かもしれないという話に着地した




