女性リーダーというテーマを選んだ理由
今回のテーマは「急に来る燃え尽き 女性リーダーのバーンアウト問題」です。女性起業家自身の話であると同時に、女性を幹部に登用したい男性経営者にも関わるテーマとして選ばれています。
皆さん男性の経営者の中にはね、女性を幹部に引き上げたいとか、引き上げた女性が長く活躍してほしいっていうこともあると思うんですけれども。ということで、今日女性っていうテーマでつけてみました。
話を始めるにあたり、池原さんはまず前置きを置きます。女性といっても個人差は大きく、当てはまらない人も当然いるという点を強調しました。
大前提として、ここでエクスキューズしておきたいのは、当然女性といっても千差万別、個人差めちゃくちゃありますと。
そのうえで、多くの研究論文でキャリアとジェンダーを比較すると、構造的な違いがあることは明らかになっていると池原さんは説明します。個人の感覚ではなく研究の蓄積として語られる点が、この回の土台になっています。
強く見せると嫌われ、優しく見せると軽んじられる
女性リーダーならではの悩みとして、池原さんはまず社会が求めるステレオタイプの問題を挙げます。職場で男性に許される行動規範と、女性に許される行動規範が明らかに異なるという研究があるといいます。
男性リーダーなら多少傲慢でも免責される行動が、女性が同じことをするとより強い批判にさらされる。性別とリーダーという役割が掛け合わさったときに生じるダブルバインドだと池原さんは指摘します。
私自身はあんまり偏見みたいなものは持たないようにしているのと、それを超えている女性リーダーの方が結構周りに多かったりもしているので。
一方で宇尾野さんは、女性リーダーを新しく登用する経営者には、事前にこうした偏見にさらされやすい構造を伝えていると話します。乗り越え方を用意しないと本人にダメージが来る、という認識です。
女性に集中する「昇進につながらない仕事」
池原さんは、2017年のアメリカの研究として、女性には昇進に寄与しにくい仕事が多く依頼される傾向を紹介します。会議の調整のような業務が集中しやすく、その結果「経験がない」と見られてしまうといいます。
さらに、そうした業務を断ったときの評価にも差があると池原さんは続けます。男性が断ると「忙しいから」と免責されるのに対し、女性が断ると人格への批判に向かいやすい傾向があるそうです。
女性が断ると人格の方に批判がいく傾向があるそうなんですね。これ面白いですよね。
こうした積み重ねが、燃え尽きの差にもつながります。役職が上がるほど女性の燃え尽きは男性より大きくなり、マッキンゼーの調査ではシニアレベルの女性の6割が頻繁な燃え尽きを報告し、同じ層の男性はその半分以下だといいます。
燃え尽きの兆候に、どう介入するか
燃え尽きには前兆があるものの、構造上それを救う仕組みが用意されていないことが問題だと2人は話します。池原さんは、疲れている、仕事に感情が伴っていないといった兆候に気づいたとき、男性上司として介入しやすいかを宇尾野さんに尋ねます。
宇尾野さんは、女性だから距離があるわけではないとしつつ、女性にしかわからない事情に配慮する場面があると答えます。生理現象のように、男性から言われると受け取りにくい話題があることを踏まえた対応です。
男性からそれ言われると嫌だけど、女性から言われるとそれならいいみたいなシチュエーションってあるんだろうなっていうのは思うんで。
そのため宇尾野さんは、自分が直接伝えるのではなく、別の人から伝えてもらうこともあると話します。フィルターがかかって意図がずれるリスクよりも、相手が受け入れやすいやり方を優先するという判断です。
加えて宇尾野さんは、女性リーダーが家庭で過重な役割を担っていても職場からは見えにくい点にも触れます。だからこそ、リーダーになった人とは家庭の状況まで会話できる環境を意識的に作っているといいます。
「お手並み拝見」される、女性リーダーの目立ちやすさ
構造的な問題として、池原さんは女性リーダーが少ないために目立ってしまう現象を挙げます。これはハイパービジビリティと呼ばれ、「女性初」といった立場になると周囲から品定めされやすくなるといいます。
女性のリーダーって少ないので目立っちゃうっていう問題があるなと思っていて。女性初のですよってなると、お手並み拝見される。
この解消法について宇尾野さんは、女性であることを象徴として置かないことが基本だと答えます。「女性初のリーダー」といったバッジをつけたくなる気持ちは理解しつつ、チームビルディングでは性別の文脈をあまり使わないようにしているそうです。
なるべくその象徴として置かないっていうことは当然ながらやるべきかなと。特に経営のチームビルディングにおいては、女性男性の文脈はあまり使わないようにしてますかね。
ただし池原さんは、性を強調しすぎないことと、マイノリティの声を消してしまうことは別だと補足します。男性が多いチームでは進め方が男性寄りになりがちなため、少数派の声をどう上げていくかは大事なポイントだといいます。
燃え尽きたリーダーを、時間をかけて再設計する
燃え尽きてしまった後の回復について、宇尾野さんは自身の実体験も交えて語ります。火が消えている状態で目的の再設定を迫っても逆効果で、時間をかけた立て直しが必要だといいます。
燃え尽きてる時にもっとあれやこれやとか目的の再設定とかをしすぎると、結局もう火が消えてる状態なんで。
具体的には、仕事や人間関係を再設計したり、一度仕事から離れたりしながら、改めてジョブクラフトをしていくことが大事なサポートだと宇尾野さんは話します。本人が望んで得た役割や報酬を、いきなり全部取り払うのではなく徐々に調整するという方針です。
ケアしてくれる人がいない、経営者自身の燃え尽き
話題は経営者自身の燃え尽きに移ります。池原さんは、経営者にはケアしてくれる人が社内にいないため、この問題は深刻だと指摘します。
宇尾野さんは、参謀がいれば一度その場を離れるサポートも可能だが、ワンマンで燃え尽きた場合は会社として苦しいと話します。事業譲渡や経営の刷新につながる場面もあるといいます。
参謀もいなくて、結構ワンマンで燃え尽きましたっていうシチュエーションは、会社としては苦しいシチュエーションかなっていうふうに思いますよね。
だからこそ、経営者は社外に相談できる場を持つべきだと池原さんは提案します。自分がトップの場合、自分で管理するか、経営者同士で悩みを話せるチャンネルを持っておかないと、気づいたら燃え尽きてしまうといいます。
宇尾野さんも、燃え尽きは個人の問題ではなく構造の問題として捉えるほうが健全だと応じます。リーダーが燃え尽きるということは構造に欠陥があり、新しいリーダーを任用しても同じ構図に巻き込まれてしまうからです。
回復力は、余裕があるうちに準備しておく
池原さんは、あるデータでは中小企業の社長の71%が時々燃え尽きを経験していると紹介します。そのうえで、回復力は余裕があるうちに準備しておくことが重要だといいます。
人間の回復は一定のパターン運動で起きると池原さんは説明します。ランニング、瞑想、日記を書くジャーナリングなど、シンプルだけれど習慣化された行動が自己回復に役立つといいます。
宇尾野さんも、自分の状態をモニタリングする習慣を挙げます。体調を測る指輪を身につけたり、外部の人との1on1でポジティブ・ネガティブを問わず「今こう見えている」とフィードバックをもらうことで、燃え尽きの手前で気づけるといいます。
今疲れてそうだから、ちょっと一回仕事ペース落とさないとみたいな、自己認識と他人から見える自分が見えてくると、燃え尽き手前で気づくことにつながる。
減圧装置を、複数持っておく
女性リーダーならではのレジリエンスについて、池原さんは「減圧」という言葉で説明します。自分にかかる過剰なプレッシャーを抜く作業は男女ともに必要ですが、その減圧装置は女性のほうが少ないといいます。
池原さんによれば、男性には健全かどうかは別として夜の街のような減圧の場が比較的多い一方、女性にはそうしたアクセスが少なく、圧が溜まりやすいそうです。だからこそ、上手な人は減圧装置を自分でいくつも用意しているといいます。
好きなことっていうのをいっぱい見つけてる人はやっぱり長くリーダー続けてるなと思います。
逆に、すべてを100%完璧にしようとする完璧主義になると途中で折れてしまい、リーダー職を諦めたり事業を閉じたりすることもあると池原さんは話します。減圧の装置を複数持っておくことが、長く続けるための鍵だといいます。
受け身で時間が空いたらしようって言ってると絶対開かないんですよ。週に一回、この時間は絶対にマッサージに行くって、ルーティンにしちゃうのがいいんじゃないかなと思います。
「めんどくさい」が口癖になったら燃え尽きのサイン
池原さん自身もバーンアウトしかけたことは何度もあるといいます。ただ、やる気がゼロになる感覚から、自分でも気づけるそうです。
今もう完全にやる気ゼロみたいな感じなので、割と気づくんですよね。
気づいたときは、減圧装置を発動しまくると池原さんは話します。マッサージに行くほか、連休に初めてパソコンを数日持たない日を作ったところ、だいぶ回復したといいます。
仕事とちょっとアクセスを離して、全く違うことを振り切るっていう時間がないと回復しないんだなと思いました。
さらに池原さんは、かつてコーチから燃え尽きかけたときの口癖を指摘されたエピソードを紹介します。「めんどくさい」と言い出したら燃え尽きかけているサインだといいます。
この口癖が出ると「あ、こうなんだな」と振り返れるようになったと池原さんは話します。宇尾野さんは、それはもう完全にメタ認知できていると感心していました。
燃え尽きは個人ではなく、チームで気づく
最後に2人は、この回のテーマは女性に限らずリーダー全員が考えるべきものだと振り返ります。池原さんは、こうした感覚を抱える女性リーダーがいることを経営者が意識すると、関わり方が変わるといいと話しました。
宇尾野さんは、自分が何で燃えて何で燃え尽きそうになるかを知り、複数の燃料タンクを持っておくことの大切さを挙げます。そのうえで、燃料不足に自分で気づく仕組みと、組織としてのサポートの両方が必要だといいます。
めんどくさいって池原さん最近言ってますよって、自分で気づくことも大事ですし、周りが気づいてくれるみたいなチームができると、すごくいいんじゃないかな。
チームのリーダーへのサポート体制が足りないと感じたら、リーダー同士で話してみてほしいと宇尾野さんは締めくくりました。
まとめ
女性リーダーの燃え尽きは、性格や努力不足ではなく、社会規範や業務の偏り、目立ちやすさといった構造から生まれます。回復力や減圧の習慣を余裕があるうちに準備し、個人ではなくチームで気づき合う体制を作ることが、リーダーを長く続ける鍵になります。
- 女性リーダーは強く見せると嫌われ、優しく見せると軽んじられるダブルバインドに置かれやすい
- 役職が上がるほど女性の燃え尽きは男性より大きく、シニアレベルの女性の6割が頻繁な燃え尽きを報告している
- 燃え尽きは構造の欠陥のサインであり、新しいリーダーを立てても同じ構図に巻き込まれてしまう
- 好きなことという「減圧装置」を複数持ち、ルーティン化しておくと長く続けやすい
- 「めんどくさい」のような自分の口癖を知り、自分と周囲の両方で燃え尽きの前兆に気づく仕組みを作る




