若者言葉と科学用語、クイズにしたら見分けられる?
サイエントークのレンさんは、今流行っている若者言葉がニュースになっているのを見て、意味がわからなすぎると感じたそうです。そこで思いついたのが、若者言葉に科学用語を混ぜてクイズにする企画でした。
題して、「若者言葉と科学用語は区別できない説」。
(若者言葉に)科学の用語混ぜて、君にクイズとして、「これは若者言葉か科学の言葉かどっちでしょう?」ってクイズ出したらわかんないんじゃないかなと思って。
エマさんも若者言葉には詳しくないため、この企画に乗り気です。若い人なら知っているかもしれないし、そうでない人も一緒に考えられるので、リスナーも楽しめるのではないかと話しています。
レンさんが用意した単語は全部で7つ。エマさんは、それぞれが若者言葉か科学用語かを答えていきます。
第1問「ギュン」は胸キュンの進化系?
第1問の「ギュン」について、エマさんは「若者言葉だろう」と予想しました。意味は、胸キュンの強いバージョンで、心をギュンと掴まれるような感覚ではないかと推測します。
正解は若者言葉で、意味もほぼエマさんの予想どおりでした。レンさんによると、キュンを超えて心臓を強く掴まれるようなときめきを指す言葉だといいます。
(ギュンは)キュンの上位互換っぽいじゃん。あの、なんか濁点ついたらさ、強くなりそうというか。
レンさんは、ポケモンが進化すると名前に濁点が付きがちだという印象を挙げます。例として出たのはヒトカゲからリザードンへの進化で、エマさんも「ご」や「が」が入ると強そうに聞こえると同意しました。
レンさんは2020年ごろにポケットからキュンです ── 2020年ごろSNSを中心に流行したフレーズ。楽曲をきっかけに「キュンです」という言い方が広まりましたという曲で「キュンです」が流行ったと話しますが、エマさんはこのブームを知らなかったそうです。そのブームが過ぎた今、2026年夏のZ世代の言葉として「ギュン」が挙がっているといいます。
Z世代・Y世代・X世代はどう決まった?
「ギュン」がZ世代の言葉だと聞いたエマさんは、Z世代ももう新社会人以上を含んでいて、高校生のイメージとは違ってきているのではないかと疑問を持ちます。今の高校生よりさらに下は「アルファ世代」と呼ばれるそうです。
レンさんが調べたところ、Z世代は2026年現在で13歳から31歳前後。生まれ年でいうと1990年代半ばから2010年代初頭までという説があり、かっちり決まった区分ではないようです。
Z世代の「Z」の由来について、レンさんは、その前にY世代、さらに前にX世代があったと説明します。エマさんは、XYZの次がアルファで、その次はベータやガンマになるのではないかと想像を広げました。
X世代という呼び名は、1991年のベストセラー『ジェネレーションX 加速された文化のための物語たち』から来ているそうです。日本人が書いた本ではなく、世界的にヒットした本が由来だからこそ、「GenZ」のように世界で通じる呼び方になったのだと、レンさんは説明します。
第2問「ドロンパ」は「ど論破」ではなかった
第2問の「ドロンパ」に、エマさんは「若者言葉」と回答しました。最近流行っている「論破」を強めた「ど論破」ではないかという予想です。
今のめっちゃどろんぱじゃね?みたいな。
レンさんも「ありそう」「ここから生まれる可能性すらある」と面白がりましたが、正解は科学用語でした。ドロンパは理化学研究所で見つかった、光がついたり消えたりする蛍光タンパク質 ── 光を当てると蛍光を発するタンパク質。細胞の中で特定の分子を目印として光らせる研究などに使われますの名前だといいます。
(ドロンパの)由来は、忍者が姿を消す時の「どろん」と、パッと光が灯るっていう「ぱ」。で、どろんぱ。
エマさんは、科学の世界には遊び心のある名前が意外と多いと感じたようです。レンさんによると、新しいタンパク質や遺伝子、新種の生き物には自由な名前が付くことがあり、化学の合成法ではスズキカップリング ── パラジウム触媒を使って炭素同士をつなぐ反応。開発者の鈴木章氏は2010年にノーベル化学賞を受賞しましたのように発見者の名前が付く例もあります。ジブリ作品にちなんだ名前の生き物もいた気がする、と話していました。
一方でエマさんは、若者言葉なら意味を想像できても、科学用語は意味の想像が難しいとも指摘しています。
第3問「フレネミー」が今また流行語になる理由
第3問の「フレネミー」は、英語のフレンドとエネミーを合わせた言葉です。エマさんは、昔からある英語由来の言葉だとすぐに見抜きました。
めっちゃ優しい言葉かけてるように見えて、表面では。実はマウント取ってるみたいなのとかさ。
フレネミーは昔からある言葉ですが、2026年の若者の流行語に入っているそうです。レンさんが調べた理由は、SNSで広く浅くつながった結果、相手の本性を見極める余裕がなくなり、マウントや陰口に後から気づくケースが増えているから、というものでした。
エマさんは、言葉そのものが新しく流行ったというより、状況が増えたから、それを表す言葉を昔から探してきたのではないかと解釈しています。日本人にはなじみが薄かった言葉なので、新語のように扱われているのかもしれません。
ドパガキ、ガキコラ、すばらしお。家の中だけの流行語
2026年の流行語リストでは、フレネミーが「ドパガキ」や「メロい」と並んでいるそうです。ドパガキは「ドーパミン中毒のガキ」の略で、レンさんは「結構ひどい」と苦笑いしています。
そこからエマさんは、レンさんが使い始めた「ガキコラ」という言葉を暴露します。イギリスで住んでいたエリアで子どもを見かけたとき、愛情を込めて「ガキコラたちが今日も遊んでるな」と言っていたそうです。日本に帰ってからは周りにわからないよう「GKコラ」と言い換えているとのこと。
なんかさ、こう、僕らの中だけで流行ってる言葉が結構あって。
ほかにも、素晴らしいことが起きたときに言う「すばらしお」は、同棲を始めたころから続く2人の口ぐせだそうです。
レンさんはさらに、ドパガキの対義語をAIに尋ねた話をします。候補として出てきたのは、セロトニン仙人の略の「セロ仙人」と、「ギャバじじい」でした。
ドーパミンのまあ逆というかね、抑制系のね、アミノ酸としてギャバを言ってるわけだから。
パンジーとパンバーは誰が生んだ?
「ギャバじじい」の「じい」から連想したエマさんは、夫婦間のもう1つの流行語「パンジーとパンバー」を披露します。毎朝エマさんがパンを焼き、レンさんがそれを待っていることから生まれた呼び名です。
(れんくんが)待ってるから、「パン待ちじいさん」っていうあだ名をつけたんですよ。
エマさんがレンさんを「パン待ちじいさん」と呼び、レンさんがエマさんを「パン焼き婆さん」と呼び返しました。それを「パンジー」「パンバー」と略し出したのはレンさんで、どちらが生み出したかで揉めたこともあるそうです。
最後は2人とも自分の中のドパガキ度を見積もり、レンさんは「ドパガキ6、ギャバじい3、パンじい1」、エマさんは「ドパガキ7、パンバー1、ギャババー2」と答えて、収録中に久々に笑い合っていました。
第4問「ホビ」はキラキラした女の子らしさ
第4問の「ホビ」について、エマさんは「趣味のホビー」をわざわざ略す意味はないと考え、科学用語と予想しました。しかし正解は若者言葉で、「キラキラした女の子らしい生活や雰囲気」を表す言葉だそうです。
ホビの由来は、SNSの趣味専用アカウント「ホビーアカウント(ホビアカ)」です。そうしたアカウントで可愛い部屋などを投稿する文化から、「ホビっぽい」「ホビな部屋」のような使い方が生まれたといいます。
エマさんは平成女児のおもちゃを連想し、話題はシルバニアファミリー ── 動物の人形と家具で遊ぶドールハウス玩具。日本のエポック社が1985年に発売し、海外でも販売されていますへ。レンさんはアメリカのものだと思っていましたが、調べると日本のエポック社の商品だとわかりました。ほかにもデコシール帳、ねるねるねるね、スクイーズなどが「ホビっぽいもの」として挙がっています。
第5問「エピメる」は研究室で生まれた動詞
第5問の「エピメル」は、レンさんが「エマさんは知っているかも」と前置きした単語です。正解は科学用語で、有機化学の研究室で使われる言葉に近いといいます。
「これがこうエピメってて」みたいな。「ここでエピメたら」とか。
エピメるは、エピメリゼーション ── 分子の中にある複数の不斉炭素のうち、1か所の立体配置だけが反転する現象。反応条件によって意図せず起きることがありますを動詞にした言葉です。簡単に言えば、分子の中の不斉炭素が反転し、立体の形が変わることを指します。
レンさんは、アミノ酸に鏡写しの右手型と左手型があることを例に出します。形が違うだけで、片方は味がしてもう片方は味がしない、ということもあるほど、立体の違いは重要なのだそうです。
レンさんは、こうした「〜る」型の略し方こそ若者言葉的だと話します。凝集(アグリゲーション)を「アグる」と言うのも同じで、さらに言えば一般語の「サボる」も元はフランス語のサボタージュから来ています。
フランス語由来で、ストライキのような意味合い
授業を休む、バイトに行かないなど、怠けることを広く指す
第6問「ミンタカ」は「みんなでたかる」?
第6問の「ミンタカ」に、エマさんは「みんなでたかる」、つまり偉い人におごってもらうような意味の若者言葉だと予想しました。一方でレンさんは、「みんなで高ぶる」という意味を想像していたそうです。
君はさ、「高」でさ、こう高ぶる、「みんなで高ぶる」っていうのを思いついてたけど、私は「たかる」っていうのを思いついてたっていう。
正解は、オリオン座の星の名前でした。アルファベットでは「Mintaka」と書き、オリオン座の真ん中に並ぶ3つ星のうち、一番西側の星だそうです。
第7問「悟り」はメスに求愛しないハエの遺伝子
最終問題は「悟り」。エマさんは、若者言葉なら元の意味が強すぎるだろうと考え、科学用語と答えて正解しました。悟りは、ショウジョウバエの遺伝子の名前です。
あの、メスに求愛しなくなったっていう。この遺伝子がこう変異すると。それでね、悟りっていう名前を付けられた遺伝子がある。
日本で見つかった遺伝子で、アルファベットでも「Satori」と表記されます。ほかにも、体の節が足りなくなる「節足らず」という遺伝子もあるそうです。
レンさんが挙げたトリッキーな例が「SEPT1」という遺伝子です。Excelに入力すると勝手に日付に変換されてしまうため、わざわざ名前を変えることになったといいます。遺伝子名は比較的自由に付けられるものの、こうした例があるため一定の制約もあるようです。
内輪の言葉は、どうやってカルチャーになるのか
クイズを終えたレンさんの結論は、未知の用語という意味では、若者言葉と科学用語の区別は結構難しい、というものでした。
エマさんは、エピメるのような言葉がどこかの研究室で始まった点に注目します。レンさんによれば、エピメるは最初に教授が使い、学生がそれを覚えて浸透していったようです。
内輪ネタ的に始まったやつが、なんかわかる人の間で広まっていくみたいな感じでさ。
エマさんは、科学用語は科学がわかる人に、若者言葉は若者に広まっていくという点で、両者には共通点があると考えています。
レンさんは、番組の締めの挨拶「ウルトラフォー」も同じだと話します。知っていると仲間意識が芽生える言葉で、集団ごとの呼び方の違いこそがカルチャーではないかと感じているそうです。
その例として挙がったのが、溶媒のジクロロメタンです。研究室によって呼び方が違い、学会で人が集まると違和感を覚えるほどだといいます。
| 呼び方 | 由来 | 番組内の話 |
|---|---|---|
| ジクロロ | ジクロロメタンの略 | レンさんの研究室はほぼ略さずこちら |
| メチクロ | 別名メチレンクロライドの略 | エマさんが使っていた。メチクロ派は多い |
| DCM | ジクロロメタンの頭文字 | DCMと呼ぶ研究室もある |
エマさんは、関西の大学では「何年生」ではなく「何回生」と言うことも同じだと指摘します。レンさんは最初、「三回生です」と聞いて、何度も浪人しているのかと思ったそうです。
番組も家庭もマンションも、それぞれのミームを持っている
レンさんは、カルチャーを作っていくことが大事なのではないかと考えています。サイエントークのリスナーの中には自分たちを「サイファー」と呼ぶ人もいて、番組内のカルチャーも生まれているといいます。
そういうのを作っていったらいいんじゃないかっていう。まあまあわかんない、狙って作るもんじゃないかもしれないけどね。
エマさんは、ウルトラフォーやパンジー・パンバーのように、どの家庭にもその家でしか通じない言葉があるのではないかと話します。マンション内でのさようならの言い方も、同じように1つの文化だといいます。
だからなんかもういろんな単位でいろんな当たり前ができていってる。
クイズの結果、エマさんは7問中4問正解。意味まで当てられたのはギュンとフレネミーの2問だけでした。レンさんは「絶妙なバランスのいい問題」と満足げで、リスナーにも何問正解したか教えてほしいと呼びかけています。
番組ではサイエンスアゴラやPodcastStickerBaseへの出演のお知らせのほか、若者言葉っぽい科学の単語や面白い科学ワードの募集も告知されました。
まとめ
若者言葉と科学用語を混ぜたクイズは、エマさんでも7問中4問しか当てられず、「区別は結構難しい」という結論になりました。その背景には、どちらの言葉も小さな集団の内輪ネタとして生まれ、わかる人の間に広がっていくという共通点があるようです。
- ギュンやホビは若者言葉、ドロンパ・エピメる・ミンタカ・悟りは科学用語で、響きだけでは見分けにくい
- フレネミーは昔からある言葉だが、SNSで広く浅くつながる状況が増えたことで再び流行語になった
- 「エピメる」「アグる」のような略し方は、研究室の言葉にも若者言葉にも共通している
- 研究室、家庭、番組など、集団ごとの呼び方の違いがそのままカルチャーになっている



